臨床雑誌外科 71巻10号 (2009年10月)

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進行食道癌に対しては外科手術単独では限界があり補助化学療法が必要である。最近の臨床試験の結果からStage II、III食道癌に対しては術前化学療法+外科手術がベストの治療と考えられる。術前化学療法の有効例においてはdownstagingが得られ、脈管侵襲の軽減や手術操作による癌細胞の揉み出しも抑えられ、予後の改善がみられる。今後は術前治療の正確な組織学的効果判定法の確立、さらには効果予測法の開発が急務である。

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腹膜播種を伴う胃癌症例を対象として、S-1+paclitaxel(PTX)経静脈(iv)、腹腔内(ip)併用療法の臨床試験を施行した。第I相試験では、好中球減少および下痢を用量制限毒性として、PTX ipの推奨投与量を20mg/m2に決定した。第II相試験では、1年全生存率78%、奏効率(RECIST)56%、腹水減少62%、細胞診陰性化86%であった。有害事象(Grade 3以上)は好中球減少(38%)、悪心・嘔吐(8%)であった。本療法の有効性および安全性が確認された。

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切除不能進行・再発胃癌の予後は、化学療法の進歩により1年を超えるようになってきた。中心的薬剤であるフッ化ピリミジン系薬剤は、静注のfluorouracil(5-FU)から経口薬のtegafur-gimeracil-oteracil potassium(S-1)、capecitabine(国内未承認)へ移行してきた。今後、胃癌に特筆すべき病態の腹膜播種や胃癌ではじめて有効性が示された分子標的薬のtrastuzumabの対象であるHER2陽性例といった個別化治療がすすむと考えられる。本稿では胃癌に対する化学療法の最近の進歩について概説する。

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近年の大腸癌化学療法においては、fluorouracil(5-FU)、irinotecan(CPT-11)、oxaliplatinの三つのkey drugとともに分子標的治療薬のbevacizumab、cetuximabを加えたコンビネーションレジメンによって著明な予後向上が得られてきた。わが国においては、従来多用してきた経口5-FU剤のレジメンも含めて、大規模臨床試験によって本邦の標準治療を構築するとともに、新たなエビデンスを創出して海外に発信していく必要がある。

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従来外科切除が中心であった消化管悪性リンパ腫は、化学療法の発展と分子標的療法の進歩により非切除療法が主体となりつつある。その中心となるR-CHOP療法(rituximabとcyclophosphamide/doxorubicin/vindesine/prednisoloneの併用療法)は高い治療効果が報告され、限局期の腫瘍には放射線治療も併用効果がある。胃悪性リンパ腫に対する治療ガイドラインは整備されつつあるが、小腸・大腸の悪性リンパ腫に対する治療方針はいまだに標準化していない部分もあり早急な臨床データの解析が必要と思われる。

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ImatinibとsunitinibはKIT、血小板由来増殖因子受容体α(platelet-derived growth factor receptor α:PDGFRA)など膜型チロシンキナーゼを阻害する経口分子標的治療薬である。imatinibはKIT陽性の進行再発消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)に用いられ、良好な認容性と高い病変コントロール率を示し全生存期間を5年に延長した。しかし、約2年で半数の患者に耐性が出現する。SunitinibはKIT、PDGFRに加えvascular endothelial growth factor receptor(VEGFR)も阻害し、腫瘍進行を抑制する。Sunitinibは相対的に有害事象が重篤であるが、imatinib耐性GISTの約半数に有効で、無進行再発期間を延長し全生存も改善した。

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長らく肝細胞癌には、高いエビデンスをもって推奨される薬剤やレジメンが存在しなかった。近年分子生物学の飛躍的な進歩により、癌の増殖転移に必要な分子を特異的に制御する分子標的薬が開発されている。一昨年、sorafenibが生存期間の延長に寄与することがはじめて第III相試験で証明された。本稿では現在本邦で多用されている肝動注療法の紹介と従来の殺細胞性化学療法の成績、分子標的治療の現在までの成績と今後の展望について報告する。

胆嚢癌の化学療法 浦上 淳 , 角田 司
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進行胆嚢癌の化学療法で、エビデンスの得られた標準治療はまだ確立していない。国内では胆道癌に対して、2006年にgemcitabine(GEM)、2007年にtegafur-gimeracil-oteracil potassium(S-1)の保険適用が承認されたため、GEM+S-1、GEM+cisplatin(CDDP)などの臨床試験が行われている。GEM単剤では奏効率22~36%、生存期間中央値(MST)7~14ヵ月と報告されている。国外ではGEM+capecitabine、GEM+CDDP、GEM+oxaliplatinなどでMSTが10ヵ月を超える報告がみられている。2009年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でGEM+CDDPの有用性が英国と日本から報告された。国内でも大規模な多施設共同研究で胆嚢癌の標準化学療法を確立していくことが必要と思われる。

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膵癌は症状が出現しにくいことや早期発見が困難であることから、消化器癌の中でも予後不良な疾患の一つである。膵癌の予後改善のためには有効な化学療法が不可欠である。切除不能膵癌および術後補助療法としてのgemcitabine hydrochloride(GEM)の有効性については認められているものの、まだ十分に満足できるものではない。本邦ではGEM単剤療法を上回る治療としてGEM+tegafur-gimeracil-oteracil potassium(S-1)併用療法が期待されており、多施設共同研究の結果がまたれる。

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石灰化を伴う病変62病変に対してステレオガイド下マンモトーム生検(SGMMT)を行い、臨床病理学的に検討した。その結果、1)癌病巣を認めたのは20病変(32%)で、うち17病変は非浸潤癌、3病変が浸潤癌であった。石灰化標本168本のうち癌病巣を認めた標本は57本(34%)で、非石灰化標本94本のうち癌病巣を認めたのは4本(4%)であった。2)石灰化標本についてはcategoryが上がるにつれて癌病巣を認める割合が増加し、形態では多形性、線状、分枝状石灰化に、分布については集簇性と区域性に癌が多く認められた。一方、非石灰化標本では癌の検出に特別の傾向はみられなかった。3)石灰化標本のみで検索した場合は20例すべてで診断可能であったのに対し、非石灰化標本のみで検索した場合は癌の診断に至ったものは12例中4例(33%)で、67%に癌を見逃す可能性があった。

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70歳女性。患者は左腋窩腫瘤を主訴に受診となった。マンモグラフィーでは左乳房U領域に境界不明瞭な腫瘤陰影が認められ、超音波では左C領域に径1.9cmの内部不均一、境界不明瞭な低エコー像が確認された。また、穿刺吸引細胞診では小型の上皮細胞が多数認められた。以上より、本症例は悪性の左乳癌(Stage IIA)と診断され、乳房円状部分切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行したところ、病理組織学的に乳腺glycogen-rich clear cell carcinomaであり、腋窩リンパ節転移が認められた。ホルモンレセプターがいずれも陰性であったため、残存乳房に50Gy照射し、weekly paclitaxelを4クール施行した結果、目下、術後18ヵ月経過で再発は認められず、生存中である。

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61歳女性。患者は左乳房腫瘤を主訴とした。触診では左乳房C領域に硬い腫瘤が認められ、直上の皮膚には皮膚浸潤があり、腫瘍周囲の皮膚には浮腫がみられた。マンモグラムでは石灰化を伴う4.0cmの不整な腫瘤が認められ、エコーでは充実性腫瘤として描出され、CTでは左腋窩リンパ節の腫大が認められた。また、穿刺吸引細胞診では乳頭腺管癌が疑われた。以上より、本症例は左乳癌(Stage IIIB)と診断され、術前化学療法としてFEC100後にweekly docetaxelが施行されたが効果がみられず、大胸筋温存乳房切除術+Level IIIリンパ節郭清が行なわれた。その結果、病理組織学的に扁平上皮癌であり、術前化学療法が扁平上皮癌への分化を促進した可能性が考えられた。尚、術後は補助療法を行わず、経過観察とした。

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62歳男性。患者は食道扁平上皮癌術後11ヵ月に嚥下時違和感が出現した。精査の結果、食道癌術後肺転移と診断され、化学療法としてCDDP/5-FU投与を3コース施行したところ、CRが得られた。しかし、その後、S-1投与を2コース行なわれたが、終了後3週目(術後19ヵ月)に腫瘍の再増大が認められた。そのためDOCを3コース施行されたが無効で、術後24ヵ月より化学放射線療法を施行したところ、終了2ヵ月でCRが得られた。以後、治療から14ヵ月経過で放射線肺臓炎を合併したが、症状は咳と微熱のみで対症療法にて改善した。目下、術後57ヵ月、化学放射線療法後31ヵ月間でCRを継続中である。

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65歳男性。患者は検診の上部消化管内視鏡にて食道中部の隆起性病変を指摘され、精査加療目的で著者らの施設へ入院となった。所見では腫瘍マーカーは正常であったが、上部消化管内視鏡では上切歯列より29cmの部位で約4cmにわたり隆起性病変が認められ、その肛門側は約1/2周性の潰瘍性病変が確認された。また、胸部CTでは病変部に一致して食道壁の肥厚がみられた。生検の結果、本症例は低分化扁平上皮癌と診断され、右開胸開腹胸部食道亜全摘術、2領域リンパ節郭清、大彎側胃管による胸骨後再建術が施行された。病理組織学的に中部食道に発生した類基底細胞癌(Stage III)で、術後28日目よりFP療法を開始したが、嘔気や全身倦怠感が著明となり中止した。以後、手術から10ヵ月経過で頸部リンパ節転移、縦隔リンパ節転移、多発肝転移が認められたため、用量を減少したFP療法を再開した結果、一時的にリンパ節転移巣、肝転移巣の縮小がみられたが、病状は進行し、患者は術後1年8ヵ月で死亡となった。

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4歳女児。患者は腹痛を主訴に腹部超音波およびCTにて腹腔内腫瘤が認められ、著者らの施設へ入院となった。所見では腹部超音波では右下腹部に隔壁を有する嚢胞性病変がみられ、CTでは上腸間膜動脈を中心に腸間膜が渦巻き状に回転するwhirlサインが認められた。以上より、本症例は腹腔内腫瘤による小腸軸捻転症と診断され、緊急手術を行い、小腸捻転を解除後、嚢腫を含めた小腸を部分切除した。その結果、病理組織学的に小腸腸間膜リンパ管腫であり、術後2年3ヵ月経過現在、再発はみられていない。

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70歳代女性。患者は検診にて左側腹部腫瘤を指摘され、著者らの施設へ紹介となった。入院時、貧血およびLDHの上昇が認められ、腫瘍マーカーはCEA、CA19-9ともに異常高値を示していた。注腸造影ではS状結腸から下行結腸移行部で腸管がループが形成され、ループの前後で狭窄像が認められた。一方、胸部CTでは両側肺野に転移巣みられ、腹部CTではS8、S5/S8、S6、S7に肝転移巣、下行結腸への腹膜浸潤が認められた。以上より、本症例は下行結腸癌によるS状結腸瘻および同時性多発性肺転移、多発性肝転移と診断され、原発巣切除が行なわれた。その結果、病理組織学的に腫瘍は中分化腺癌(Stage IV)で、術後化学療法としてFOLFOX4投与を開始したが、徐々に肺や肝転移による病状が悪化し、患者は最終的に術後9ヵ月後に死亡となった。

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71歳男性。患者は35年前より痔瘻を繰り返し、今回、肛門部痛を主訴に近医を受診、難治性複雑痔瘻を指摘され、著者らの施設へ紹介となった。入院時、肛門周囲の4~11時方向にほぼ全周性の2型腫瘤が認められ、4時、6時および7時方向には二次口がみられた。血液検査では軽度炎症所見が認められたが、腫瘍マーカーはいずれも正常範囲内であった。骨盤部CTでは肛門部から一部皮膚外に突出する腫瘤がみられ、臀部に炎症性で膿瘍形成を疑う低吸収域が認められた。一方、骨盤部MRI T2強調画像では直腸左側を中心に著明な高信号がみられ、組織生検結果は高分化腺癌であった。以上より、本症例は難治性痔瘻に合併する痔瘻癌と診断され、開腹にて上直腸動脈を結紮・切離するとともに腹会陰式直腸切断、リンパ節郭清、人工肛門造設術が施行された。その結果、病理組織学的に長期にわたる難治性痔瘻より発生した痔瘻癌と診断され、目下、術後13ヵ月経過で再発の徴候なく健在である。

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63歳男性。患者は高所より転落受傷後に右季肋部痛を自覚するも放置し、約1ヵ月後に右季肋部痛が増強、路上で倒れているところを通行人に発見され、著者らの施設へ救急搬送となった。入院時、右側腹部に広範な皮下出血斑が認められ、右季肋部から右下腹部にかけては膨隆がみられた。血液検査では貧血、炎症反応の亢進が認められ、HCV抗体陽性であった。腹部CTにて外傷による腹腔内血腫や消化管穿孔による腹腔内膿瘍が疑われ、入院9日目に開腹手術が行なわれた。手術所見では上行結腸間膜に巨大な血腫が確認され、約500gの血腫を可及的に除去した。その結果、手術から8日目に麻痺性イレウスが認められたたものの、イレウス管留置にてイレウス症状は改善し、術後12日にイレウス管を抜去した。以後、手術から36日目に血腫はほぼ消失し、術後46日目に退院となった。

基本情報

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臨床雑誌外科
71巻10号 (2009年10月)
電子版ISSN:2432-9428 印刷版ISSN:0016-593X 南江堂

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