発行日 2009年10月1日
Published Date 2009/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2010028529
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71歳男性。患者は35年前より痔瘻を繰り返し、今回、肛門部痛を主訴に近医を受診、難治性複雑痔瘻を指摘され、著者らの施設へ紹介となった。入院時、肛門周囲の4~11時方向にほぼ全周性の2型腫瘤が認められ、4時、6時および7時方向には二次口がみられた。血液検査では軽度炎症所見が認められたが、腫瘍マーカーはいずれも正常範囲内であった。骨盤部CTでは肛門部から一部皮膚外に突出する腫瘤がみられ、臀部に炎症性で膿瘍形成を疑う低吸収域が認められた。一方、骨盤部MRI T2強調画像では直腸左側を中心に著明な高信号がみられ、組織生検結果は高分化腺癌であった。以上より、本症例は難治性痔瘻に合併する痔瘻癌と診断され、開腹にて上直腸動脈を結紮・切離するとともに腹会陰式直腸切断、リンパ節郭清、人工肛門造設術が施行された。その結果、病理組織学的に長期にわたる難治性痔瘻より発生した痔瘻癌と診断され、目下、術後13ヵ月経過で再発の徴候なく健在である。
©Nankodo Co., Ltd., 2009