特集 肝胆膵
【総論】
4.腹水とその合併症,体液貯留のマネジメント—腹水検査・治療の実際と,特発性細菌性腹膜炎(SBP),特発性細菌性胸膜炎(SBEM)
森 英輝
1
Hideki MORI
1
1沖縄県立中部病院 消化器内科
pp.605-622
発行日 2018年9月1日
Published Date 2018/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900583
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腹水貯留をきたす疾患は,まずは門脈圧亢進症の有無により大きく分けられる。実際の臨床に沿って,まずは腹水貯留に伴う症状や身体所見,腹水の存在診断と穿刺の適応に関して述べる。腹水穿刺時は,最初に腹水の肉眼的性状を確認し,ある程度の鑑別を行う。ルーチン検査として提出する項目に加え,腸管穿孔や膵炎などを疑った場合に追加する腹水検査を把握する。
肝硬変に伴う腹水と診断したら,次は腹水の治療に移る。塩分制限,利尿薬に関して解説する。また,内科的治療に抵抗性の難治性腹水に対する大量腹水穿刺排液/アルブミン静注療法のほか,腹水濾過濃縮再静注法(CART),経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)の適応に関しても概説する。
特発性細菌性腹膜炎(SBP)が疑われる場合は,腹水検査目的の腹水穿刺が「絶対適応」となる。特にSBPと二次性細菌性腹膜炎の鑑別にRunyon's criteriaが重要であり,それを利用した診断・治療のフローチャートに関しては具体例を交えて解説する。さらに,腹水コントロール中にあって突然腹水が減少し,呼吸困難などの呼吸器症状を訴える患者が存在するが,その場合は腹水が胸腔に移動している肝性胸水を鑑別に挙げる。肝性胸水もSBPと同様に感染を起こすことがあり,特発性細菌性胸膜炎(SBEM)とよばれる。これらについても言及する。
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