特集 腎疾患
【水・電解質異常の管理】
【コラム】CSWSとSIADHの鑑別—腎臓専門医を悩ます低ナトリウム血症鑑別
赤井 靖宏
1
Yasuhiro AKAI
1
1奈良県立医科大学 臨床研修センター
pp.119-120
発行日 2014年3月1日
Published Date 2014/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900399
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中枢性塩類喪失症候群cerebral salt-wasting syndrome(CSWS)は,くも膜下出血,頭部外傷などの中枢神経疾患において,尿中にNaが不適切に排泄されることによって,低ナトリウム血症と細胞外液減少をきたす疾患である。実臨床においてCSWSと抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)の鑑別はしばしば困難である。これは,①両病態で,尿浸透圧上昇(CSWSでは循環血漿量低下,SIADHでは不適切なADH*1分泌による),尿中Na>40mEq/L(CSWSでは不適切な尿中へのNa排泄,SIADHでは循環血漿量増加による),血清尿酸値低下(CSWSではBNP*2などの内分泌因子や交感神経系の不全の影響で近位尿細管における尿酸排泄増加による影響が推測され,SIADHでは循環血漿量増加とADHのV1受容体への直接作用による1))などの生化学的指標で有意な差異がないこと,②両病態がともに中枢神経疾患に合併すること,による。
中枢神経疾患に合併した低ナトリウム血症で両病態を鑑別することは重要である。これは両病態で治療が異なり,両病態の診断を誤ることが患者の予後に影響を及ぼす可能性があるためである2)。例えば,SIADHではしばしば飲水・輸液制限が行われるが,実際にはCSWSである患者に飲水・輸液制限が行われた場合には,さらに循環血漿量が減少して血圧が低下し,脳梗塞などの血管合併症を惹起・悪化させる可能性がある。両病態の鑑別のポイントを以下にまとめる。
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