INTENSIVIST 9巻4号 (2017年10月)

特集 脳卒中

巻頭言

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脳卒中は,長らく我が国の死因の第3位であったが,平成27(2015)年の調査で第4位となり,肺炎に追い越されている。また,平成26(2014)年の脳血管疾患の総患者数は3年前の調査よりも約6万例(5.1%)減少している。一方,脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)の医療費は1兆7,821億円で,訪問看護医療費や療養費の増加がみられている。このことから,患者数および患者死亡数の減少にもかかわらず,重篤な後遺症をもつ要介護・要介助者の増加が伺える。ガイドラインによる治療の標準化や新規薬物・デバイスの普及が進み,生命転帰は改善している一方,長期転帰を見据えた急性期・集中治療管理とシームレスなリハビリテーションへの移行が重要と思われる。本特集は上記を趣旨におき,集中治療のスペシャリストとして知るべき基礎知識と,最新文献の渉猟によるアップデートされた知識を得ることを目標に編集した。

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2015年に脳卒中治療ガイドラインが改訂され,特に虚血性脳卒中の治療と予防が大きく変更された。発症4.5時間以内の脳梗塞では,アルテプラーゼ静注療法を行うが,発症から治療開始までの時間が極力短くなるようにしなければならない。アルテプラーゼ静注療法により閉塞血管の再開通が得られない場合や,アルテプラーゼ静注療法の適応外となった場合,発症8時間以内の主幹動脈閉塞例に対し血管内治療を行うことが考慮される。非心原性脳梗塞の予防に,シロスタゾールの投与を考慮する。1年以上の抗血小板薬2剤併用療法は行わない。また,アスピリンとジピリダモールの併用も行わない。非弁膜症性心房細動による心原性脳塞栓症の予防のため,非ビタミンK阻害経口抗凝固薬を考慮する。

Main points

●rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の適応時間が発症4.5時間以内に拡大された。

●発症8時間以内の主幹動脈閉塞例に対し,経皮的脳血栓回収療法による血行再建術を考慮する。

●急性期の非心原性脳梗塞に対し,抗血小板薬の2剤併用療法を考慮する。

●慢性期の非心原性脳梗塞に対し,脳梗塞の再発予防としてシロスタゾールも推奨される。

●慢性期の心原性脳塞栓症に対し,脳塞栓症の再発予防として非ビタミンK阻害経口抗凝固薬/直接経口抗凝固薬を考慮する。

●脳出血では早期に収縮期血圧を140mmHg未満に降圧し,7日間維持することを考慮する。

●くも膜下出血の治療について大きな変更はない。

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二次性脳損傷は,脳への直接的な損傷(一次性脳損傷)がきっかけとなり,脳虚血の進行や脳代謝障害の増悪,形態的な頭蓋内環境の変化などにより生じる二次的な脳障害である。二次性脳損傷は原因によらず予後が悪いことから,その予防は重要である。脳循環代謝を最適に維持するためには,脳圧,酸素化,脳血流,生化学的パラメータ,電気生理学的パラメータなどを組み合わせたmultimodality monitoringを行う。二次性脳損傷を予防するためには,一般的処置として頭部挙上し,酸素化や輸液・血糖を適切に維持しつつ,外科的減圧,鎮静・鎮痛管理,脳灌流圧(CPP)の適正化,意図的な過換気,浸透圧利尿,低体温療法を段階的に行うことが推奨されている。

Main points

●二次性脳損傷は,脳虚血の進行や脳代謝障害の増悪,形態的な頭蓋内環境の変化などによる二次的な脳障害である。

●二次性脳損傷をきたす原因は,大きく頭蓋内と頭蓋外疾患とに分類される。

●脳循環代謝管理において神経モニタリングは重要であるが,いずれのモニタリングも単独で予後の改善を示したものはなく,神経モニタリングを組み合わせるmultimodality monitoringが推奨されている。

●二次性脳損傷予防のためのモニタリング,治療は,頭蓋内圧を適切にコントロールし,脳へのダメージを最小限に食い止めることが主目的である。

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日本国内ではマンニトールとグリセロール(グリセオール)が浸透圧性利尿薬として広く使用されているが,どちらもリバウンド現象を起こすリスクがある。マンニトールはグリセロールに比べてリバウンド現象のリスクが高いと考えられているが,根拠に乏しい。近年注目されている高浸透圧食塩液(HTS)はマンニトールに劣らぬ頭蓋内圧(ICP)低下効果があり,効果持続時間も長く,副作用が少ないとされている。どの薬物もICPを低下させることを目的に投与されるが,ICP管理だけに目を奪われることなく,CPP(cerebral perfusion pressure),CBF(cerebral blood flow)を考えながら,循環管理をする神経集中治療が望ましい。

Major Point

●日本ではマンニトールとグリセロール(グリセオール)の2種類が浸透圧性利尿薬として使用されているが,どちらもリバウンド現象が起こり得る。

●日本では,グリセロールが優先的に使用されているが,そのエビデンスは実は少なく,また海外での使用は少ない。

●近年注目されている高浸透圧食塩液は,現時点のエビデンスをみるとマンニトールに劣らぬICP低下効果があり,効果持続時間も長く,副作用が少ないと示されており,そのうえ安価である。

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脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は致死率の高い疾患である。再破裂をきたすとその半数以上が死亡することから,初期治療は再破裂の予防であり,根治的治療では,開頭手術によるクリッピング,血管内治療によるコイリングが行われる。多くの動脈瘤はそのいずれでも治療可能であるが,近年では治療デバイスの進歩により,低侵襲な血管内治療の割合が増えている。

 しかしながら,クリッピング術は根治性が高く,また,大型の動脈瘤や解離性動脈瘤で母血管および分岐血管の温存が困難な動脈瘤ではバイパス術や各種手法を併用した開頭手術が必要となる。頭蓋内血腫を伴いその除去が必要な症例,頭蓋内圧コントロールのために外減圧術が必要となる重症症例でも開頭術が必須となる。腎機能障害,造影剤アレルギーがある症例,動脈硬化が強くアクセスルートが確保できない症例ではコイリングは不可能であり,血管内治療にシフトしつつある近年の動脈瘤治療においても,クリッピング術は必要不可欠な手技である。

 本稿では,術前の血圧管理や鎮静,鎮痛,そして手術適応,通常のクリッピング術とクリッピングのみでは治療困難な症例における術式の使い分け,術中のモニタリングについて,症例を提示しながら概説する。

Main points

●再破裂予防のために血圧管理は重要である。ニカルジピン持続投与で収縮期血圧を160mmHg未満にすることが望ましいが,脳灌流圧低下による脳虚血の可能性を意識した管理が必要である。

●GradeⅠ〜Ⅲは基本的に手術適応,Grade Ⅳ,Ⅴは付随する急性水頭症,血腫に対する外科治療により症状の改善が見込まれる場合に手術適応となる。

●手術は基本的に出血後72時間以内の早期に行う。特に水頭症や血腫を伴う症例,椎骨動脈解離などは早期手術がすすめられる。

●開頭,動脈瘤のアプローチ方法は動脈瘤の性状,部位,向き,サイズによって決定する。

●脳動脈瘤外科治療の基本戦略は脳動脈瘤内への血流遮断と,動脈瘤周囲の母血管,分岐血管,穿通枝の血流保全による脳虚血防止である。血行再建が必要な症例では可能なかぎり行うことが肝要である。

●脳虚血予防には術中モニタリングが極めて重要である。超音波Doppler,術中蛍光色素診断(ICG-VAG,FL-VAG),MEPを中心におのおのの検査特性を理解し,相補的に使用する。

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破裂脳動脈瘤の再破裂予防にはクリッピング術やコイル塞栓術が行われるが,いずれでも治療可能な動脈瘤に対しては,コイル塞栓術のほうがクリッピング術よりも良好な長期生存率および自立率が得られることが示されている。またバルーンアシストテクニックやステントアシストテクニックなどのadjunctive techniqueにより,従来治療困難であった動脈瘤の治療も可能となり,治療成績が向上した。このような理由から,近年,破裂脳動脈瘤の治療として血管内治療が選択されることが増えている。しかし,クリッピング術とコイル塞栓術の治療選択は,患者背景や動脈瘤の部位,大きさ,形状,術者の技術などから総合的に判断することが重要である。

Main points

●破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術は,クリッピング術よりも再発率と再治療率が高いが,いずれでも治療可能な動脈瘤に対しては,コイル塞栓術のほうがクリッピング術よりも良好な長期生存率および自立率が得られることが示されている。

●バルーンアシストテクニックやダブルカテーテルテクニック,ステントアシストテクニックなどのadjunctive techniqueにより,従来治療困難であった動脈瘤の治療も可能となり,治療成績が向上した。

●このような理由から,近年,破裂脳動脈瘤の治療として血管内治療が選択されることが増えているが,クリッピング術とコイル塞栓術の治療選択は,患者背景や動脈瘤の部位,大きさ,形状,術者の技術などから総合的に判断することが重要である。

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本稿では「脳動脈瘤によるくも膜下出血に対してクリッピングもしくはコイリングを施行された患者がICUに入室となった際に,どのように管理を行うか?」をテーマとして,本邦および米国と欧州のガイドライン1〜3)に準拠しながら,実臨床で遭遇するであろうclinical questionを中心に解説していく。

 読者のなかには「ICUでくも膜下出血の症例を診ているが,治療方針は脳神経外科が決めているため管理の細かいところには不安がある」と思っている方が少なくないのではないだろうか。本稿では,くも膜下出血subarachnoid hemorrhage(SAH)の周術期管理について理解して主体的にICU管理を行うことができ,適切なタイミングで脳神経外科を含めた他科にコンサルトできる,ということを目標として執筆した。

Main points

●くも膜下出血は全身に影響を及ぼす疾患であり,また全身状態の悪化により頭蓋内の病態も悪化するため,周術期は十分な全身管理が必要である。

●輸液管理はeuvolemiaを維持し,身体所見やin-outバランス,超音波検査などを含めた総合的な評価を行い,hypovolemiaおよび予防的なhypervolemiaは避ける。

●本邦では遅発性脳虚血(DCI)予防に十分なエビデンスのあるnimodipineは承認されておらず,ニカルジピン,ファスジルなどの薬物で代替せざるを得ない現状がある。

●バイタルサインや神経所見,TCD/TC-CFIの評価を繰り返し行い,DCIを疑う所見を逃さないように努める。

●DCIが生じた場合には,意図的に輸液負荷や高血圧管理を行うことで脳灌流を改善させる対応を行いながら,脳神経外科にコンサルトして脳血管攣縮に対する直接的な介入を早期に行う。

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急性期脳梗塞に対する治療法が劇的に発展するなかで,急性期脳出血の治療法にめざましい進展はなく,高血圧性脳出血に対する外科的治療の有用性を強く推奨するエビデンスはない。本稿では,脳卒中治療ガイドライン2015やSTICHなどのキーとなる論文を取り上げ,実臨床での症例や低侵襲治療にも触れつつ,急性期脳出血治療について述べる。

 SITCHの結果のみからテント上脳出血に対する早期外科治療の有効性を否定することはできないと考えられ,メタ解析では外科的治療が有効な群もあり,今後のさらなる検討が望まれる。また,脳出血に対する低侵襲手術の報告が近年増えており,その有効性も示されている。今後,低侵襲手術への期待はますます高まるであろう。

Main points

●急性期脳梗塞に対する治療法が劇的に発展してきているなかで,急性期脳出血の治療法自体には大きな変化がない。

●テント上脳出血の手術適応については定まった見解がなく,目的(救命もしくは機能予後改善)に基づいた適応決定は各施設に委ねられている。

●小脳出血に対する血腫除去,脳室内出血,閉塞性水頭症に対する脳室ドレナージ術は確立した方法である。

●新たな脳出血の治療法として,低侵襲手術の有用性が示唆されている。

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脳出血の周術期管理については,脳卒中治療ガイドライン2015を中心として,SAMURAI-ICH研究などの新たな臨床研究結果がアップデートされ,治療の標準化が進められている。しかし,実臨床の場面において個々の症例の対応を行ううえで,その判断に悩むことも少なくない。本稿では,脳出血における周術期管理を行う際に注意したいことを,文献的な根拠を交えて概説する。

Main points

●トラネキサム酸の投与は,発症早期のみに限定すべきである。

●抗てんかん薬の予防投与はすすめられない。慢性期に痙攣発作があれば,抗てんかん薬は迷わず開始する。

●抗血小板薬服用中の中和としての血小板輸血はすすめられない。

●抗凝固療法や抗血小板療法の再開時期は,症例に応じて判断する。

●脳出血と診断されたら,すぐに血圧管理は130〜140mmHgを目標に管理する。

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脳梗塞の治療において抗血小板療法,抗凝固療法はともに重要な位置を占める。脳梗塞急性期の抗血小板療法としてはアスピリン投与の有用性が確立しているが,近年,抗血小板薬の短期間の2剤併用療法が単剤療法より優れている可能性が示されている。他方,脳梗塞急性期の抗凝固療法は脳出血によって予後を悪化させる可能性があり,開始時期や適応を慎重に選ぶべきである。慢性期の非心原性脳梗塞の二次予防として,本邦ではアスピリン,クロピドグレル,シロスタゾール,チクロピジンが使用できる。慢性期の心原性脳梗塞の予防薬として非ビタミンK阻害経口抗凝固薬はワルファリンと同程度の脳卒中,全身性塞栓症の予防効果があり,ワルファリンより頭蓋内出血のリスクが少ないが,腎機能,年齢,体重などに配慮して使用する必要がある。

Main points

●脳梗塞急性期の抗血小板療法としては,発症48時間以内のアスピリン投与の有用性が確立されているが,近年抗血小板薬2剤併用療法の短期間使用に関するエビデンスが蓄積されつつある。

●脳梗塞急性期(発症2週間以内)の抗凝固療法は,脳出血によって逆に予後を悪化させる可能性もあり,開始時期や適応を慎重に選ぶべきである。

●非心原性脳梗塞の二次予防として,アスピリン,クロピドグレル,シロスタゾール,チクロピジンが使用できる。

●非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)は非弁膜症性心房細動の患者にワルファリンと同程度の脳卒中,全身性塞栓症の予防効果をもち,ワルファリンより頭蓋内出血のリスクが少ないが,腎機能,年齢,体重などに配慮して使用する必要がある。

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近年の脳卒中診療の進歩はめざましい。急性期脳梗塞の治療薬であるアルテプラーゼ(alteplase)の発症4.5時間以内の静脈内投与は広く施行されるようになった。また,Penumbraシステムやステント型血栓回収器などの新規デバイスの登場により,脳血管内治療(血栓回収術)のエビデンスも明らかとなった。現在は,これらのコンビネーションを意識し,治療戦略を立てることの重要性が強調されてきている。本稿では,急性期脳梗塞について,各種治療法のエビデンス確立までの背景,実際の薬物治療や血管内治療(血栓回収術)の方法,画像診断,当施設での診療のワークフローを含めた経験,その後の神経集中治療(二次性脳損傷の防止を意識した全身管理)について解説している。

Main points

●発症時間を意識した脳卒中診療を行う。

●チームワーク良く,1秒でも早い治療を行う。

●rt-PA静注療法を行う際には,血栓回収術も視野に入れ適応を判断する。

●血栓回収術にはステントリトリーバーが頻用される。

●再灌流後の神経集中治療までしっかり行う。

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本邦では脳卒中治療ガイドラインが2015年度に改訂されており,本邦における脳梗塞治療の指標となっている。本稿においては,American Heart Association/American Stroke Association(AHA/ASA)ガイドラインと,その後のエビデンスを加えて,脳梗塞の周術期管理に関して解説を行う。

 脳梗塞急性期の降圧薬の利益は証明されておらず,220/120mmHgを超えなければ経過観察が妥当である。また,抗凝固療法に関しては,発症48時間以内にアスピリンを投与し,その後に病型ごとの治療を開始する。抗血小板薬2剤併用療法は,軽症脳梗塞,一過性脳虚血発作に適応はあるが,まだエビデンスは十分ではない。

 心原性脳梗塞では,画像評価を行い,梗塞巣のサイズ次第で最短3日目,必要であれば14日目以降に抗凝固療法を開始する。一方,出血性梗塞は脳出血とは異なる病態であり,特に血圧管理,抗血栓薬導入に関しては,別個に考える必要がある。脳出血後の抗凝固薬再開に関するエビデンスは不足しているが,塞栓症,脳出血の再発リスクを理解して,可能であれば2〜10週後の時点で再開すべきである。また,脳梗塞治療においてラジカルスカベンジャーを使う根拠は,現時点では乏しい。

 進行性のmalignant MCA infarctionに対しての開頭減圧術は48時間以内に施行するべきであるが,60歳を超える場合にはリスクを吟味するべきである。

Main points

●現時点でも脳梗塞急性期の降圧の利益は証明されておらず,220/120mmHgを超えなければ経過観察が妥当である。

●脳梗塞発症48時間以内にまずはアスピリン投与を行い,その後に病型ごとの治療を開始する。

●脳梗塞急性期の抗血小板薬2剤併用療法は軽症脳梗塞,TIAに適応があるがまだエビデンスは十分ではない。

●心原性脳梗塞では画像評価を行い,梗塞巣のサイズ次第で最短3日目,必要であれば14日目以降に抗凝固療法を開始する。

●脳出血後の抗凝固薬再開に関してのエビデンスは不足しているが,塞栓症,脳出血再発のリスクを理解して,可能であれば2〜10週後のどこかで再開するべきである。

●出血性梗塞は脳出血とは異なる病態であり,特に血圧管理,抗血栓薬導入に関しては別に考える必要がある。

●現時点では脳梗塞治療において,ラジカルスカベンジャーを使う根拠は乏しい。

●進行性のmalignant MCA infarctionに対しての開頭減圧術は48時間以内に施行するべきであるが,60歳を超える場合にはリスクを吟味するべきである。

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脳卒中は,虚血性の脳梗塞と,出血性の脳内出血とくも膜下出血に大別される。脳卒中の原因としては,高血圧や脂質異常症,糖尿病などの動脈硬化性疾患,また,脳梗塞であれば心房細動などの明らかな塞栓源を有していることが多い。しかし,臨床現場ではそういった危険因子がない脳卒中の症例に出会うことがある。また,頭蓋内外の心血管疾患や全身性疾患に関連した脳卒中もある。本稿では,虚血性脳卒中と出血性脳卒中について基本的な診断の流れを提示しながら,どういった鑑別を挙げながら特殊な原因による脳卒中を診断していくのかについて解説する。また,それぞれの特殊な疾患について基本的な疾患概念や治療について述べる。

Main points

●脳梗塞はTOAST分類をもとに原因を確定して診断する。

●標準検査で潜因性脳梗塞と考えられたものは,さらに精密検査を行い原因を検索する。

●脳内出血において,皮質下出血の場合,出血が多発する場合,高血圧の既往がない場合については,MRIや脳血管造影などで原因精査を行う。

●脳動静脈奇形ではSpetzler-Martin分類をもとに治療方針を検討する。

●もやもや病では二次性の原因がないかを検索する。

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無症候性頸動脈狭窄例は,内科的治療の進歩に伴い,内科的治療を第一選択とする症例が多くなっている。一方,症候性病変では血管形成術が必要となる場合は多く,代表的な治療法である頸動脈内膜剝離術carotid endarterectomy(CEA)と頸動脈ステント留置術carotid stenting(CAS)の特徴を理解しておく必要がある。CEAは,内科的治療に対する有効性が示されており,CASはデバイスの進歩によりCEAに対する非劣性が示されている。ガイドラインでは,CEAをまず考慮し,CEA高リスク群でCASが推奨とされている。実臨床ではどちらが優れているということではなく,術前評価によるプラーク性状や患者背景に合わせた治療選択が必要である。本稿では,術前評価から治療選択,術後管理までを解説した。

Main points

●術前評価の目的は,治療方法の選択のため,狭窄率やプラーク性状,アクセスルートを評価することである。

●術後管理のうえで周術期合併症を評価することは重要で,特に重要なCAS・CEA共通の合併症に過灌流症候群がある。

●CAS・CEAのメリットとデメリットをふまえて治療方法を選択する。

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最近否定的な報告が示されたものの,脳卒中患者への超早期リハビリテーションはやはり有益といえる。しかし,議論のなかで急性期リハビリテーションのあり方について,適切な開始時期だけでなく頻度,量など,さらに研究を進める必要が出てきた。リハビリテーション開始時期を決めるうえで,急性期脳循環病態や頭蓋内圧,血圧に関する離床リスクのエビデンスがまだ十分ではないなか,脳梗塞超急性期患者へのrt-PA静脈投与後の早期介入でも転帰良好との報告も現れてきた。脳卒中後嚥下障害は,早期スクリーニング評価する重要性と嚥下訓練の有効性が知られている。脳卒中に伴う高次脳機能障害を急性期病院で掌握することの重要性に言及するとともに,先進的ロボットリハビリテーションの有効性に関する最新知見を紹介した。

Main points

●脳卒中超急性期リハビリテーションは,発症早期(24時間以内)介入について最近の大規模研究では否定的な結果も示されたが,依然として有益であることに変わりはない。週7日介入の有効性を示す大規模研究も現れ,今後は適切な介入開始タイミングだけでなく,適切な頻度,強度に関する研究をさらに深めていく必要がある。

●脳卒中急性期の脳循環,頭蓋内圧,脳灌流圧と離床リスクの関係はまだ十分なエビデンスはないが,少なくとも病態別に考慮する必要がある。

●ごく最近,rt-PA静注療法後(投与当日から)の早期リハビリテーション介入は転帰が良好であることが国内大規模研究により示された。

●脳卒中後の嚥下障害を早い段階でスクリーニング評価し,結果に応じて経口摂取の可否,適切な食形態の提案やポジショニング,嚥下リハビリテーションを施行するのが望ましい。

●急性期脳卒中に伴う高次脳機能障害を正確に把握しその程度に応じ適切な対応をするなど,急性期病院の果たすべき役割は大きい。

●先進的ロボットやバーチャルリアリティを用いたリハビリテーションの最新事情や有効性についての最新知見をまとめた。

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前回(Intensivist Vol.9 No.1)は,ここ最近登場した新しい心拍出量モニターの紹介と基礎的知識について紹介した。今回は「心拍出量モニター」の第2弾として,一般的によく使用される肺動脈カテーテル(Swan-Ganzカテーテル)と動脈圧測定法による動脈圧心拍出量測定センサー(フロートラックセンサー)について,少しマニアックに原理的な面から,使用するうえでの注意点やモニタリング精度の理解などについて解説する。

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連載 港島ICU×ICTカンファレンス

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神戸市に浮かぶ人工島「港島」に位置する神戸市立医療センター中央市民病院には救急患者を中心としたEICU,心臓血管外科術後や院内急変を中心としたGICUがある。それぞれのICUスタッフと感染症科,総合内科が集まり,月1回「ICU×ICTカンファレンス」を開催している。

 今回は医療関連感染症として診断・治療のみならず,感染管理まで重要になるClostridium difficile infection(CDI)について,2つの症例を通して,診断の基本や重症例での治療戦略,最後に感染管理の面から議論したい。

連載 Methodsを読むMethod

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「ある治療法を受けた患者のアウトカムは改善するのか?」を観察研究で評価するにあたり,治療を受けた患者と受けなかった患者の比較可能性が大きな問題となります。つまり,より重症である患者ほど,その治療法を受けやすかったり,特定の疾患をもつ患者はその治療を避ける傾向があったりするような場合には,2群をそのまま比較することはできません。

そこで,プロペンシティスコアマッチングを行うと,重症度や特定の疾患といった交絡因子の影響を取り除くことができるため,2群のアウトカムを比較することで治療効果を推定できることを前回述べました。しかし,プロペンシティスコアは未測定の交絡因子の影響は排除できません。

このような場合に利用する方法が操作変数法です。

今回は,未測定の交絡要因を調整するための方法である操作変数法について,その概要を解説し,後半でこの方法を用いた研究を取り上げ,その“Methods”を詳しく見ていきます。

連載 JSEPTIC簡単アンケート

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This ongoing series provides the readership of Intensivist with the opportunity to read concise reviews of current topics in Critical Care Medicine, in English. It is hoped that these reviews will stimulate the pursuit of other literature written in English.

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倫理規定

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基本情報

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INTENSIVIST
9巻4号 (2017年10月)
電子版ISSN:2186-7852 印刷版ISSN:1883-4833 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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