LiSA 21巻11号 (2014年11月)

徹底分析シリーズ 研修医の素朴な疑問に答えます 周術期管理

巻頭言 角倉 弘行
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素朴な疑問シリーズも4回目である。タイトルをざっと眺めると,素朴な疑問というよりも「えっ!そうだったんですか?」という疑問もあるかもしれない。最近の医療を取り巻く環境は,効率化を至上主義とした標準化が進んでおり,周術期管理においても,われわれ麻酔科医が素朴な疑問を抱く余地は少なくなっている。しかし疑問をもつことを放棄し,術式ごとに定められた標準的な麻酔法を盲目的に選択し実行しているかぎりは,重症患者に遭遇したときに適切な対応をする能力が磨かれないばかりでなく,麻酔科医の仕事に対する誇り(プロフェッショナリズム)を醸成し維持することもできないだろう。研修医の読者には,この特集を読んで納得する回答が得られたとしても得られなかったとしても,同じ質問を自分の指導医にぶつけてみて欲しい。また,指導する立場にある読者も,明日,同じ質問が研修医から投げかけられたとき,自分ならどのように答えるかを考えながら読んでいただきたい。研修医からのドキッとするような質問は,研修医だけでなく指導医も成長させるのである。

高濃度酸素が有害な理由 紙谷 義孝
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術中に低酸素血症に遭遇したら,まず吸入酸素濃度(FIO2)を上げて対応することが多いと思うが,上級医から「高濃度酸素は肺に悪いから,原因が検索され,状態が落ち着いたらFIO2を下げるように」と指導されることもあるだろう。なぜ,高濃度酸素は肺に悪いのだろうか。

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●換気血流比とは

まず,一つの肺胞とそれを灌流する肺毛細血管の血流の組合せをイメージしてみよう。理想的な状態では,単位時間当たりに肺胞を出入り(換気)するガスの量と,肺毛細血管の血流量は一致し,換気血流比は1となる(図1A)。このとき,換気によって吸気時の肺胞内のガス組成は毛細血管内に比べて酸素分圧が高く,二酸化炭素分圧が低くなるため,圧勾配に従って二酸化炭素が毛細血管内から肺胞内に移動し,逆に酸素が肺胞内から毛細血管内に移動する。このガスの移動によって,一時的に肺胞内の二酸化炭素分圧は高く,酸素分圧は低くなるが,次の瞬間には換気が行われるので,肺胞内のガス組成は再びもとのレベルに戻る。このようにして換気が維持される限りは,肺胞内と毛細血管内のガス交換が続くことになる。

 ところが,換気と血流の組合せは,このように理想的な状態にあるものばかりではない。例えば,気管支が血液や分泌物で閉塞すると,そこより末梢の肺胞では換気が行われなくなり,その結果,肺胞と毛細血管の間の圧勾配がなくなり(平衡状態)ガス交換が行われなくなる。これは血流が肺胞を素通りすることを意味しており,この状態を「シャント」と呼ぶ(図1B)。一方,換気は行われているにもかかわらず,何らかの理由で毛細血管の血流が途絶している状態を「死腔」と呼ぶ(図1C)。換気と血流の組合せのうち,シャントと死腔は最も極端な異常の例であり,それぞれ換気血流比はゼロと無限大の状態に相当する。

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術中の低体温は,日常臨床において頻繁に麻酔科医を悩ませるトラブルの一つである。一部の手術室スタッフ,特に術者のパフォーマンスの質や精度が損なわれない程度に快適な室温を保とうとすると,比較的低い室温となることが多く,時としてわれわれ麻酔科医は寒いとさえ感じる。そのような環境で手術を受けている患者の体温が,麻酔導入後にみるみる低下していくのは,漠然と“当たり前”のことと捉えているかもしれない。

 しかし,同じ環境下にいるわれわれ手術室スタッフが患者同様に低体温に陥ることはまずない。では,覚醒時に比べ,全身麻酔下の患者の体温は,なぜ容易に低下するのだろうか?

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神経軸麻酔は麻酔効果の範囲が限られ,意識が保たれる。そのため,神経軸麻酔では体温は低下しにくい,と考えてしまうかもしれない。しかし,神経軸麻酔での体温低下は全身麻酔と同程度と報告1)されている。これは,神経軸麻酔による中枢への間接的な作用と,末梢への直接的な作用の二つの機序によると考えられる(図1)。

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大血管手術のなかで最も多い手術が,腹部大動脈置換術である。大血管手術の入門編とも言えるこの手術の麻酔管理は,ダイナミックなだけではなく奥が深い。大動脈近位の遮断部位によって,術式は腎動脈上と腎動脈下に分けられる。腎動脈より上の大動脈を遮断すると腎血流がなくなることは容易にわかり,腎機能障害が起こることは想像に難くない。しかし,腎動脈下で大動脈を遮断した場合はどうであろう。

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自発呼吸,人工呼吸いずれにおいても,吸気時,呼気時に心拍出量および血圧が変動する。全身麻酔下で人工呼吸を行っている際に,動脈圧波形や経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)の波形を注視していると,この変化はすぐに確認できるであろう。呼吸による胸腔内圧や肺容量の変化が,前負荷,後負荷,心拍数,心筋収縮力に影響を与えることが,その背景にある。本稿では,自発呼吸,人工呼吸それぞれにおける心拍出量と血圧変動の機序について述べる。

 呼吸による循環動態変動を考える場合,影響を及ぼす胸腔内圧,静脈灌流,肺容量は,吸気時と呼気時で異なる動態を示すため,吸気時と呼気時に分けて考える必要がある。

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呼吸の第一の目的は,酸素の供給と二酸化炭素の排出であり,肺を介した換気とガス交換によってなされる。普段われわれは,胸腔内に生じる陰圧により自発的に換気を行っている。しかし,周術期の患者は人工呼吸器で管理されている場合が多い。人工呼吸器は,近年さまざまなモードを備えたものがもてはやされているが,そのほとんどが陽圧換気をベースとしている。陰圧による自発呼吸と,陽圧を用いて行う人工呼吸は,ともに呼吸している点では変わりないが,違いはある。呼吸生理学の観点から説明する。

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●尿量と循環血液量の関係

腎臓における尿の産生と制御は,循環血液量(正確には機能的細胞外液量)を制御するうえで重要な役割を果たしている。例えば,脱水状態で尿量が低下するのは,尿細管で水とナトリウムの再吸収を促進することで,循環血液量を保持しようとする腎臓の働きによる。

 尿量は主に,腎血流量,糸球体濾過量glomerular filtration rate(GFR),尿細管における再吸収量で規定される。腎血流量とGFRは,自己調節能のために腎灌流圧が80〜180mmHgの範囲内では一定に保たれる。尿細管での再吸収量は主に,抗利尿ホルモンantidiuretic hormone(ADH)とアルドステロンによって制御されている1)

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周術期の低体温はさまざまな有害事象を引き起こし,患者の予後に影響を及ぼす(表1)。ここでは低体温の有害な作用とその機序について,生理学的な知見を交えて解説する。

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脳低温療法は低体温の有用な作用を期待した治療法といえる。脳虚血が起こると脳は重大な障害を受け,脳組織が破壊されていく。この脳組織の破壊の進行を止める,または遅らせるために,脳低温療法が用いられる。

 脳低温療法の作用機序は,①エネルギー消費の抑制,②グルタミン酸放出の抑制,③炎症・アポトーシスの抑制,④脳浮腫の抑制,の四つに分類される。以下,それぞれの作用機序について解説する。

症例検討 緩和医療

巻頭言 生駒 美穂
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緩和医療にかかわっていると,「基本的緩和ケア」だけでは解決が難しく,「専門的緩和ケア」を必要とする症例に遭遇することは多い。このような「難しい症例」を,麻酔科出身の緩和医療に従事している医師から提示していただき,どのように悩み,患者と向き合い,解決の糸口をみつけていったかを解説していただいた。今回は,がん患者に対する緩和医療に絞ったが,いずれも,疼痛管理を行っただけではない。疼痛以外の身体症状,精神症状,社会的問題,スピリチュアルな問題を含んだ症例に対して,最終的にいかにQOLを上げるかをエンドポイントにおいている。

 さらに今回は,日本緩和医療学会専門医のNTT東日本関東病院 緩和ケア科の鈴木正寛先生と慶應義塾大学医学部 麻酔学教室/慶應義塾大学病院 緩和ケアセンターの橋口さおり先生によるコメントが各症例に付されている。各症例に対して別の視点からのアプローチの可能性も読みとっていただきたい。緩和医療の分野は,まだエビデンスが確立していない治療法を選択することも少なくない。その選択にいかに客観性をもたせるか,自問自答する毎日である。そしてその経験をわかち合い,多方面からの学術的な意見に耳を傾けることの重要性を痛感する。今まさに緩和医療に携わっている麻酔科医だけでなく,これから緩和医療で力を発揮したいと思っている麻酔科医にも,本症例検討は一つの指針となるだろう。

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緩和医療はここ10年ほどの間に,がん医療を中心として急速に発展してきた。麻酔科の専門性を活かして緩和ケアチームや緩和ケア病棟で活躍する麻酔科医も増え,緩和医療に携わるキャリアパスの入り口の一つとなっている。緩和医療にかかわるうえで,痛みの緩和は重要な要素であるが,患者が抱える苦悩は多岐にわたっている。精神的,社会的,スピリチュアルな問題も含まれ,互いに影響する。

 本稿では,麻酔科医が緩和医療において果たす役割と,緩和医療に携わるにあたって,意識して身につけていかなければならないことについて述べる。

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症例

87歳の女性。身長143cm,体重34kg。1年前から持続する乾性咳嗽の精査の結果,原発性肺がんと診断された。CTでは,右肺尖部に腫瘤影,右主気管支の狭窄像,右側肺門部リンパ節および右鎖骨上から頸部リンパ節の腫大,肝右葉に直径5cmの腫瘍を認めた。血液検査では血算,肝腎機能などに異常はなかった。今回,咳と右頸部から側頭部にかけての痛みを主訴に,オピオイド導入目的で緩和ケア外来を受診した。痛みは,右頸部から側頭部にかけて発作的に生じ,性状は「ずきずきする」と表現された。アセトアミノフェン1200mg/日を服用し(コメント1),数値評価スケールnumerical rating scale(NRS)によるペインスコア(想像し得る最悪の痛み:10,痛みがない:0)は,最悪時7,緩和時2であった。痛みの悪化・軽減因子は明確でなかった。

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症例

64歳の女性。身長155cm,体重55kg。肺小細胞がんで化学療法施行,胸膜播種に対して緩和的放射線照射を行った。脊椎と左第7〜11肋骨に浸潤し,骨破壊が進んでいる。主訴は両側胸部から左下腹部の痛みであり,持続痛〔数値評価スケール(NRS):3〕のほかに1日に数回の差し込むような痛み(突出痛)がある(NRS:9)。主治医によりオキシコドン徐放性薬が開始されたが,鎮痛不十分であり,食欲がなく,内服も負担であったため,フェンタニル貼付薬へ変更された。それでも満足のいく鎮痛が得られていなかったため,モルヒネの持続静注に変換し,1日投与量は90mgまで増量されていた。レスキューにはモルヒネの静注が使われていた。プレガバリン,アセトアミノフェン,COX-2阻害薬もそれぞれ最大量まで増量していたが,それでもコントロールが難しいと緩和ケアチームに紹介された。

 もともと患者は当院から30km離れた田舎町に住んでいた。夫と二人暮らしで,ほかに頼れる子どもや親戚はいない。夫は当院まで自家用車で通っていたが,冬季は雪に閉ざされ外出もままならず,面会の回数も減っていた。患者の居住地域では,まだ在宅緩和ケアの環境が整っていない。主治医は,痛みがある程度落ち着けば,自宅近くの個人病院への転院を念頭においていた。

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症例

70歳の男性。身長167cm,体重60kg。既往歴・特記事項なし。ヘモグロビン(Hb)7.1mg/dL,ヘマトクリット(Ht)23.0%,血中尿素窒素(BUN)32.4mg/dL,クレアチニン(Cr)3.61mg/dL,推定糸球体濾過量(eGFR)14と,貧血と腎機能低下を認める。前立腺小細胞がん・膀胱浸潤で泌尿器科通院中であったが,膀胱出血からタンポナーデとなり,泌尿器科に緊急入院となった。下腹部痛を主訴にオキシコドン徐放性薬60mg/日を内服していたが,鎮痛不十分とのことで,緩和ケアチームに紹介となった。病室を訪問すると,眠そうな表情であった。

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症例

65歳の男性。食道がんに対する化学療法を目的に入院。もともとあった腰痛が悪化傾向であったため,MRI検査を施行。L5転移性骨腫瘍の診断となり,放射線治療が先行された。オキシコドン徐放性薬1回60mg 3回/日にて内服。トイレ移乗時に激痛〔数値評価スケール(NRS):10〕が走るため,予防的にオキシコドン速放性薬30mgを使用。下痢のために,使用頻度は7〜10回/日。コルセットを装着するも,臥位・半坐位など落ち着かなく動くため,ずれて胸部に装着されていることが多い。レスキュー後はウトウトしてしまうことが多く,1日中「傾眠」と看護記録に記載されている。それでも,安静時のNRSは7と表現される。

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症例

58歳の男性。身長170cm,体重65kg。3年前に直腸がんに対して低位前方切除術が行われた。背部痛を生じたことから多発脊椎腫瘍を指摘され,直腸がんの転移ならば生命は長くないと言われ,強いショックを受けた。外科医からオキシコドン徐放性薬(20mg/日)と速放性薬(5mg/回)が処方された。生検の結果,脊椎腫瘍は悪性リンパ腫と診断され,血液内科で化学療法を開始し,寛解状態となった。背部痛も減少し,オキシコドン徐放薬を中止した。しかし,患者は「リンパ腫の治療をしているときのほうが不安は少なかった。寛解となりありがたいが,逆に自分に対する無力感と不安を強く感じるようになった」と訴えるようになった。内科医から,患者のこころの苦痛にどのように対応すればよいのだろうかと相談を受けた。

連載

Editorial拝見
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Anesthesia & Analgesia

Editorial:

Memtsoudis SG, Liu SS. Do neuraxial techniques affect perioperative outcomes? The story of vantage points and number games. Anesth Analg 2014;119:501-2.

Article:

Kooij FO, Schlack WS, Preckel B, et al. Does regional analgesia for major surgery improve outcome? Focus on epidural analgesia. Anesth Analg 2014;119:740-4.

■神経軸麻酔は全身麻酔よりも患者予後を改善する?

脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔などの神経軸麻酔を用いると,術後合併症発生率や,死亡率が低下するという報告は数多くあり,エビデンスレベルは低いものの,可能であれば硬膜外麻酔を実施するようにしている麻酔科医も多いと考えられる。一方,抗凝固療法や抗血小板療法を周術期に実施するために,神経軸麻酔が禁忌となる症例も増加している。術後鎮痛に関しては,静脈内患者自己調節鎮痛(IV-PCA)の活用により,神経軸麻酔を用いなくとも,良好な術後鎮痛が得られるようにもなってきている。しかし,神経軸麻酔をしないことにより,患者に不利益が生じていないかを気にかけている麻酔科医は多いのではないかと思う。

連載 漢方の歩き方 レーダーチャートで読み解く痛みの治療戦略:第13回

ゆるめる 矢数 芳英
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荒:今回から新しい戦略に入るのですね。楽しみです!

矢:そうです。今回は「ゆるめる」戦略についてお話しします。

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連載 昼下がりの薬膳 食・薬・医

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がん患者は,がん自体による栄養障害に加え,治療およびその有害事象による栄養障害が必発なので,積極的な栄養介入が求められます。筆者が以前所属していた国立がん研究センター中央病院(以下,当院)は,2005年に栄養サポートチーム(NST)を立ち上げました。その後,2007年に日本静脈経腸栄養学会よりNST稼動施設認定を受け,2010年よりNST教育施設に認定され,同年6月よりNST加算の算定を開始しています。今回は,データの集計ができている2010〜2012年の実績から,当院のNST活動を振り返り,がん専門病院ならではの特徴をご紹介します。

連載 Tomochen風独記

⑪子供の学校 山本 知裕
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ドイツの学校は制度も行事も日本と大きく異なります。自分が外国に住むだけでも大変なのに,子供のことが絡んでくるとなるとなおさら大変なもので,それゆえ,いろいろなエピソードも生まれます。

連載 知識をいかに体系化するか

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自国語に強い誇りをもっている人たちが,どういう風に英語を受け入れているかを,ドイツ語で検討します。フランス語の場合も似ていると推測しますが,私はフランス語の学力が乏しいので。

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11月29日(土)に第21回日本静脈麻酔学会が香川で開かれます。そこで今回は,香川大学医学部麻酔学講座の宮脇有紀先生に,地元住民だからこそ知る香川の名物,お土産,観光地などの情報をご紹介いただきます。旅のお供に是非LiSAを!

連載 当世 問はずがたり

朝日の夢は夜開く 石黒 達昌
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なんで今更,朝日新聞は謝罪なんてしたんだろう?と私なんかは思ってしまうのですが,いかがでしょうか。しかも,それが事実としては誤りだけれど,事の本質は誤っていないなんて開き直ったら,バッシングの嵐になることはわかりきっていただろうに。朝日の記事に世論が盛り上がっていたわけでもないなかの,まさに自作自演。あの日の朝刊を開いた私の頭の中は?だらけでした。

 最近スクープがないから自社叩きというわけでもないのでしょうが,そもそも,マスコミ報道なんて,言ってみりゃ,誤報の嵐で,いい加減な記事にいちいち責任取っていたら,そもそも週刊誌など存在し得ません。各新聞社は雑誌も出しているわけで,絶対,根っこは一緒です。読者も「正しい」新聞が存在するとは思っちゃいないでしょう。訴訟になってしぶしぶ謝罪広告を出す場合を除けば,訂正しないのが暗黙の了解,お約束です。

映画紹介

「救いたい」 川村 隆枝
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この度,麻酔科医を主人公とした映画『救いたい』が11月22日より新宿ピカデリー他全国で公開されます。

この映画は,拙著『心配ご無用─手術室には守護神がいる』(パコスジャパン刊)が原作で,古田 求 氏の脚本により製作されました。

Medical Books 自薦・他薦

『心臓手術の麻酔 第4版』
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from LiSA
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◆街を歩いていると,いろいろなものが差し出されます。飲食店の割引券だったり,近くで分譲されたマンションのご案内だったり。ご丁寧に,各戸も訪問してくださるようで,毎日,ポストにはその手のチラシが山盛りです。折角のご案内ですが,こちらにはまったく興味のないものが大半ですので,集合ポストの脇に設置されている“不要チラシ入れ”に直行です。

 ただし,ティッシュが付いていると違います。ティッシュと一緒に透明の封筒に入った新聞の勧誘は,めでたく家の中までは運ばれます。駅前でもティッシュが差し出されれば,ありがたく頂戴しています。

◆紙野厚美氏の「朝の通勤途上,次の駅まで20分以上も停まらない快速急行電車が,相互直通運転をしている遠方路線で発生した事故のために突然,駅間で停止。ちょうど前夜の酒宴の食い合わせが悪く,下部消化管を支配する副交感神経活動が最高潮。ぎりぎりセーフで駅のトイレに駆け込んだあなたの目に飛び込むのは,痩せ細ったトイレットペーパーの哀れな姿である」(2012年LiSA11月号「はへほのはなし」より,許可なく改変して転載)という脅しに屈したのではありませんが,ティッシュに価値を感じているからです。

 ものの価値は受け取る人によって,マイナスからプライスレスまで,大きな幅があります。私にとっては,ゴミが増えるのでマイナス評価(たぶん-5くらい)のチラシも,片面印刷の裏面をメモ用紙として活用している母にとっては,まあまあ価値のある紙(たぶんプラス評価)のはず。

◆配布する側は,この“まあまあプラス”な物を見つけるのに一苦労です。安価で大量に作成でき,多くの人が,ちょっとした価値を感じて受け取ってくれる物。気軽に手に持てるサイズと重量であることも求められるでしょう。

 消費者金融や不動産会社など多くの業種はポケットティッシュを,製薬会社は3色ボールペンを見いだしました。そして「うちわ」もそうですね。一部の人には残念ですが“まあまあ”価値があるものです。帽子も日傘も家に忘れ,40℃を超える猛暑の日中に,さて,今からこの炎天下をひたすら徒歩で移動をするのか…というタイミングで「どうぞ」と差し出されれば,日よけとしてありがたくいただくでしょう。プラスチックの柄がついていれば,なおさら受け取りやすいですね。渡してくれた人に深い恩義を感じるかもしれません。

「価値のある物を配るな」は「何も配るな」と同意です。誰しもが「価値なし」とする物があったとして,それを配布するのは嫌がらせですし,誰も受け取りませんから。

◆LiSAでも「年間購読」をお申し込みいただいた方に渡す“まあまあ”を思案しました。「LiSAうちわ」も誰かには喜んでいただけるかもしれません。

 でも,「また1年,LiSAを楽しめる」というワクワク感を“プライスレス”と感じていただけるよう,内容を充実させる努力をまずしなければ,と正気に戻りました。

基本情報

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LiSA
21巻11号 (2014年11月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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