症例検討 緩和医療
これからの療養先を考えて鎮痛方法を工夫する—最低限の症状緩和は保証しよう
生駒 美穂
1
Miho IKOMA
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科 緩和医療学分野
pp.1084-1089
発行日 2014年11月1日
Published Date 2014/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200049
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症例
64歳の女性。身長155cm,体重55kg。肺小細胞がんで化学療法施行,胸膜播種に対して緩和的放射線照射を行った。脊椎と左第7〜11肋骨に浸潤し,骨破壊が進んでいる。主訴は両側胸部から左下腹部の痛みであり,持続痛〔数値評価スケール(NRS):3〕のほかに1日に数回の差し込むような痛み(突出痛)がある(NRS:9)。主治医によりオキシコドン徐放性薬が開始されたが,鎮痛不十分であり,食欲がなく,内服も負担であったため,フェンタニル貼付薬へ変更された。それでも満足のいく鎮痛が得られていなかったため,モルヒネの持続静注に変換し,1日投与量は90mgまで増量されていた。レスキューにはモルヒネの静注が使われていた。プレガバリン,アセトアミノフェン,COX-2阻害薬もそれぞれ最大量まで増量していたが,それでもコントロールが難しいと緩和ケアチームに紹介された。
もともと患者は当院から30km離れた田舎町に住んでいた。夫と二人暮らしで,ほかに頼れる子どもや親戚はいない。夫は当院まで自家用車で通っていたが,冬季は雪に閉ざされ外出もままならず,面会の回数も減っていた。患者の居住地域では,まだ在宅緩和ケアの環境が整っていない。主治医は,痛みがある程度落ち着けば,自宅近くの個人病院への転院を念頭においていた。
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