消化器内視鏡 35巻12号 (2023年12月発行)

選択した文献の文献概要を表示する書誌情報をダウンロードする

すべて選択

特集　消化管内視鏡AI：Updated

扉 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1647-1647

PDF(1799KB)

フリーアクセス

序説　内視鏡AIを上手に活用するために星原　芳雄 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1648-1649

PDF(187KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　ChatGPTによってさまざまな事務の簡素化が進められており，AIの力がいかに強力であるかを見せつけられる昨今である。また，有料版ChatGPTではデータを整えることができれば，Pythonなどのプログラム言語でそれらを解析するプログラムを作成し，その結果を算出後，必要な図表を作成して，解析結果をまとめてくれる。生成AIのさらなる進歩によって即投稿できるレベルの論文も作成可能となる日もそう遠くないであろう。しかし，ChatGPTの回答には時にとんでもない誤りや誤解を生む記述も見られるので，その使用にあたっては十分な注意が必要とされており，EUではChatGPTをはじめとする生成AIの規制を検討している。

［総論］

Medical AIとは浜本　隆二 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1650-1659

PDF(928KB)

有料閲覧

文献概要を表示

要旨

深層学習（ディープラーニング）技術の登場に伴い，近年人工知能（artificial intelligence：AI）の社会実装が急速に進んでいる。医療分野も例外ではなく，日本を含む世界レベルでAIを利用したプログラム医療機器（software as a medical device：SaMD）の研究開発が活発に行われており，多くの製品が医療機器承認を取得し，実臨床応用されている。また，transformerと呼ばれる深層学習モデルの登場で，大規模な生成モデルの実現が可能となり，昨今のChatGPTを中心とした生成AIの進歩は著しく，医療分野も含む社会全体に大きな影響を与えている。そこで本総論では，医療分野におけるAI（medical AI）に焦点をあて，その発展の歴史・現状・課題・将来性に関して紹介する。

消化管内視鏡AIの開発と現状―上部消化管― 上野　純 , 小澤　毅士 , 柴田　淳一 , 石岡　充彬 , 中尾　栄祐 , 平澤　俊明 , 由雄　敏之 , 藤崎　順子 , 多田　智裕 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1660-1668

PDF(1360KB)

有料閲覧

文献概要を表示

要旨

近年AIはさまざまな分野にて活用され，特にAIと親和性の高い画像診断での活用が注目を集めている。食道，胃でのAIによる病変の検出，腫瘍の鑑別が報告され，AI単体での診断能だけではなく，AIと医師との比較やAIによる上乗せ効果の検証も行われている。また，最近では，生成AIを活用した内視鏡検査の自動レポーティング作成や内視鏡検査のクオリティを客観的に判断するAI（CADq）の開発も盛んになってきており，画像診断AIと同様に高い精度が示されている。すでに臨床使用されている製品もあることから，今後は前向き研究を重ねて，実臨床でのAIの有用性を明らかにする必要がある。消化器内視鏡診断・治療は本邦が世界トップレベルの医療水準を保っており，内視鏡AIも日本から世界に通用する産業になることが期待される。本稿では，各種内視鏡AIの現状と今後の展望について概説する。

消化管内視鏡AIの開発と現状―下部消化管― 三澤　将史 , 工藤　進英 , 森　悠一 , 加藤　駿 , 峯岸　洋介 , 前田　康晴 , 一政　克朗 , 若村　邦彦 , 宮地　英行 , 馬場　俊之 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1669-1678

PDF(1196KB)

有料閲覧

文献概要を表示

要旨

人工知能（AI）技術の発展により，AIによる画像診断支援の研究開発が盛んである。特に消化器内視鏡領域においては，国内外問わず多くのAIを用いた研究が報告されている。内視鏡診療におけるAIの役割は，病変の検出支援と鑑別支援に大別される。いずれにおいても，すでに一部の製品が規制をクリアし市販されており，実臨床における有用性が報告されている。本稿では第一にわれわれが開発に携わったEndoBRAIN^Ⓡの開発経緯に関してまとめ，薬機法承認を得るまでの課題などを共有する。第二にこれまで報告されている大腸内視鏡AIの臨床研究をレビューする。

【Topics】日本消化器内視鏡学会におけるAIに関する試み松田　浩二 , 田中　聖人 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1679-1684

PDF(1433KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　日本消化器内視鏡学会では2017年度から，日本医療研究開発機構（Japan Agency for Medical Research and Development：AMED）の支援をいただき，臨床研究等ICT基盤構築研究事業の一環として「全国消化器内視鏡診療データベースと内視鏡画像融合による新たな統合型データベース構築に関する研究」を開始した。その成果報告は，日本消化器内視鏡学会のホームページに記載されており^1），成果報告会の内容はAMEDのYouTubeチャンネルで視聴可能である^2）。また，概要はAMEDのホームページにも記載されている^3～5）。本稿では，内視鏡学会におけるAIに関する試みを，抜粋して解説する。

【Topics】日本消化器病学会の取り組み（ビッグデータ・AI研究会）中本　安成 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1685-1687

PDF(440KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　日本消化器病学会では下瀬川徹/小池和彦理事長，三輪洋人/持田　智副理事長の肝煎りの諮問委員会として，2018年にビッグデータ・AI委員会が設置された。高山哲治担当理事のもとでエキスパートの委員の先生方とともに担当した経験にもとづいて，本取り組みの創生期から2022年末に生成AI（ChatGPTなど）がブレイクする直前までの概略を，消化管内視鏡AIに関連する話題を含めて振り返って今後を展望した。

［上部消化管AI：市販化されたAIの特徴とその使用法］

上部消化管内視鏡診断支援機能 “CAD EYE” ―上部消化管領域におけるAIの活用― 楠原　光謹 , 阿部　清一郎 , 水口　康彦 , 野中　哲 , 鈴木　晴久 , 吉永　繁高 , 斎藤　豊 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1688-1694

PDF(2419KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　深層学習（ディープラーニング）の登場により人工知能（artificial intelligence：AI）は急速に進化し，われわれの日常社会に溶け込んできている。医療現場も例外ではなく，内視鏡画像診断分野においてAIによるコンピュータ診断支援（computer-aided diagnosis：CAD）の研究開発が盛んに行われている。消化器内視鏡領域においては上下部消化管内視鏡のみならず，カプセル内視鏡や超音波内視鏡画像など研究開発は多岐にわたる^1）。近年さまざまな画像強調内視鏡，拡大内視鏡の発展に伴う画像情報量の増加により，消化管腫瘍性病変に対する存在診断，質的診断，量的診断の診断能は向上した^2）。一方で内視鏡医に求められる技術や知識も高度化し，熟練医と修練医では病変の検出能や診断能に差があるのも事実である^3）。AIによる検査の支援は高いレベルで診断能の均てん化に期待ができ，医師の技術や診断能の格差を解消できる可能性を秘めている。すでに複数の企業がAI搭載の製品を開発し市販化を開始している。本稿では，富士フイルム社で開発されたCAD EYEシステムについて概説するとともに，同機器の使用経験にもとづいた現状での使用感について述べる。

胃腫瘍内視鏡診断支援AIシステム（AIメディカルサービス）貝瀬　満 , 樋口　和寿 , 多田　智裕 , 野田　啓人 , 後藤　修 , 岩切　勝彦 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1695-1701

PDF(2928KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Ⅰ．胃癌診断支援AI内視鏡の意義

　本邦において胃癌は第3番目の癌死原因であるが，2020年ごろから胃癌死亡数は減少に転じている^1）。一方，胃癌罹患数は高齢罹患者が増加しているため，2025～2029年をピークに2030年以降に漸減すると予測されている^{2, 3）}。このため，今後しばらくの間は上部消化管内視鏡（EGD）において，胃癌の早期発見・早期治療が重要な臨床的課題であり続ける。

【Topics】咽頭・食道扁平上皮癌に対する検出支援AIの開発中條　恵一郎 , 稲場　淳 , 池松　弘朗 , 矢野　友規 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1702-1705

PDF(1190KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　近年，ディープラーニングという機械学習の手法が登場し，計算機の性能向上やビッグデータの収集環境整備とともに，人工知能（artificial intelligence：AI）に関する研究が大きく進展した。現在，医療のさまざまな領域でAIを利用することを目指して研究開発が進められている。特に内視鏡AI分野では，早期癌の検出支援や癌・非癌の鑑別診断支援など，内視鏡診断にAIを活用して実用化するための研究開発が活発に行われている。

【Topics】上部消化管AI―海外での現状― 池田　仁 , 前川　祐子 , 西光　雅弘 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1706-1708

PDF(490KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　海外における上部消化管AIの商用化事例は少なく，バレット食道（Barrett’s esophagus）の病変検知を対象とした商用化製品としてNEC社のWISE VISION^Ⓡ Endoscopy とOdin Vision社のCADUがある。

［下部消化管AI：市販化されたAIの特徴とその使用法：CADe］

EndoBRAIN^Ⓡ-EYEにおける動画解析による性能評価（偽陽性に関して）奥村　大志 , 今井　健一郎 , 堀田　欣一 , 伊藤　紗代 , 岸田　圭弘 , 高田　和典 , 小野　裕之 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1709-1714

PDF(978KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　大腸癌は本邦だけでなく国際的に癌死の主要な原因である。大腸内視鏡検査における腺腫発見割合（adenoma detection rate：ADR）は大腸内視鏡検査後大腸癌（post colonoscopy colorectal cancer：PCCRC）の発生・死亡と逆相関を示し，ADRが向上することで大腸癌死亡率を低下させる可能性が示唆されている^1）。腸管洗浄不良や回盲部到達不能以外のPCCRC発生原因の60％が病変の見落としとされ，実臨床では腫瘍性ポリープの約22％が見落とされていると指摘されている^2）。

CAD EYE（富士フイルム）による大腸ポリープ検出支援の臨床応用北沢　尚子 , 中島　寛隆 , 榊　信廣 , 門馬　久美子 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1715-1720

PDF(3455KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　人工知能（artificial intelligence：AI）を活用した各種医療機器のなかで，消化器内視鏡は研究と実用化の両面で急速な進化を続けている。この領域では機械学習を基盤としたコンピュータ診断支援（computer-aided diagnosis：CAD）が開発され，すでにいくつかの医療機器が臨床で使用されている。本稿では下部消化管AIのCAD EYE（EW10-EC02，富士フイルム社: 以下CAD EYE）について，computer-aided detection（CADe）の視点から，その特徴と臨床応用の各論を解説する。

WISE VISION^Ⓡ―内視鏡画像解析AIの研究開発と臨床応用― 山田　真善 , 近藤　裕子 , 山田　滋美 , 浜本　隆二 , 斎藤　豊 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1721-1727

PDF(2153KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　ChatGPTが2022年11月に公開され，人工知能（artificial intelligence：AI）が身近に感じられるようになってきた^1）。2006年にHintonらによって報告された深層学習（ディープ・ラーニング）はAIの一つの手法であり，ニューラルネットワークを多層に重ね，ファインチューニングを加えることでそれまで問題となっていた過学習を制御し，AIの性能が飛躍的に向上した^2）。その後，畳み込みニューラルネットワークとして発展し，AIが画像や音声などの分類の能力においては人類を超えたといわれるまでになった^3）。さらに，2017年のTransformerというニューラルネットワークの登場によってChatGPTに代表されるような再帰型ニューラルネットワークを用いた大規模言語モデルの性能が飛躍的に向上し，言葉の意味を深い次元の特徴としてとらえることができるようになり，現在のAIのブレイクスルーとなっている^4）。これらのニューラルネットワークを用いたAIは生成AIと呼ばれ，画像やテキストなどの情報で学習された生成AIは，例えば入力する説明文にもとづいて新しい画像を生成することができる（図1）。われわれは，内視鏡診療におけるアンメット・メディカル・ニーズの解消のために，AIのなかでもより知的な推論を行う深層学習を用いて，院内で診療記録として蓄積されるにとどまっていた内視鏡画像を分析・学習させ，内視鏡画像から病変の位置や性状を自動的に推定することができるAIを研究開発し，プログラム医療機器（Software as a Medical Device：SaMD）として承認されてきた（WISE VISION^Ⓡ）^5～9）。

医師と共にある人工知能EIRL Colon Polyp 樺　俊介 , 伊藤　守 , 炭山　和毅 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1728-1734

PDF(1438KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　2022年11月に薬事承認を取得したEIRL（エイル）（エルピクセル社）は，国内で4番目に実用化に至った人工知能（artificial intelligence：AI）を搭載した大腸内視鏡用病変検出支援（computer-aided detection：CADe）システムである。日本医療研究開発機構（Japan Agency for Medical Research and Development：AMED）の支援のもと，東京慈恵会医科大学（以下，慈恵医大）とエルピクセル社が共同開発を行った。当初はオリンパス社製内視鏡システムのみに対応していたが，2023年8月に薬事承認事項の一部変更が完了したことで富士フイルム社の内視鏡システムにも対応し，これにより国内で稼働する大半の内視鏡施設での使用が可能となった。製品化直前のプロトタイプによる臨床環境での腺腫見逃し防止効果が明らかになっている点に加え^1），省スペース，省コスト，最適化されたインターフェースなど，EIRLは後発製品ながらユニークな特徴を備えている。本年度より全国の施設への試験導入が開始されているが，その導入の手軽さから大規模施設からクリニックまで幅広く引き合いがあり，開発当初のコンセプトでもある「医師と共にある人工知能」としての活躍が期待される。本稿では，その特徴や使用方法，そしてEIRLが製品化に至るまでに蓄積されたエビデンスについて概説する。

【Topics】内視鏡AIシステム（ENDO-AID）のUp-to date―ENDO-AID, オリンパス株式会社による開発プロセスと検証― 千野　晶子 , 片山　美穂 , 井出　大資 , 五十嵐　正広 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1735-1739

PDF(1098KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　がん罹患数および死亡数は，国内外で増加の一途をたどっており，高齢化社会も相まって医療費の増大が問題となっている。さらに，医療費の抑制に加え，医療の効率化が世界規模で重要な課題となっている^1）。これらの課題を背景に，AI技術（artificial intelligence：AI）を消化器内視鏡の検査や治療ワークフローのさまざまなプロセスに活用する取り組みが進められており，その一部については，すでに臨床現場での使用が開始されている^2～4）。オリンパスメディカルシステムズ（以下，オリンパス）では，先立って大腸内視鏡病変検出用AI「EndoBRAIN^Ⓡ-EYE」の国内販売に携わっている。「EndoBRAIN^Ⓡ」シリーズは，昭和大学横浜市北部病院とサイバネットシステム株式会社の共同開発による機器である^2）。一方，オリンパスが中心となり開発を行っている大腸内視鏡用のAI診断支援アプリケーションを搭載した内視鏡CADプラットフォーム「ENDO-AID」（図1）について，筆者らは2023年5月に多施設共同研究による性能評価を報告した^5）。本稿では，ENDO-AID開発の進捗状況と今後の展望について述べる。

【Topics】大腸CADe/CADx―海外での現状― 森　悠一 , 工藤　進英 , 三澤　将史 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1740-1743

PDF(570KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　消化管内視鏡AIがにわかに注目を浴びているのは，内視鏡検査自体が不完全と考えられているからであろう。人間が検査を実施する以上，不注意による病変の見落としや内視鏡診断能力が不十分でないことによる誤った病理診断予測などは，可能性として必ず起こり得る。このような，ヒューマンエラーに関しては，本邦よりも海外において積極的にデータ化・エビデンス化を促進する動きがあった。すなわち，欧米では感覚よりもデータを重視する風潮が強いことに加え，特に内視鏡検査時の病理診断予測（通称optical biopsy）が日常臨床に組み込まれておらず，その有用性に関するデータを樹立する必要性が高かったという点が背景にある。実際にデータをひも解くと，大腸検査中に約25％の腫瘍が見落とされていることが多くのランダム化比較試験（randomized controlled trial：RCT）の結果解明されており^1），また，たとえポリープを検出できたとしても，腫瘍性変化を診断できる精度は，感度・特異度ともに90％を下回ることが複数の前向き研究で確認されている^{2, 3）}。このように，大腸内視鏡検査においては多くの腫瘍が切除されることなく見落とされているのが現状であり，残念ながらその一部は内視鏡検査後大腸癌の一因となることが知られている。これは，われわれが描いている内視鏡診療の理想像からはほど遠く，このような現況を変えるべく，多大な注目を浴びているのが人工知能（artificial intelligence：AI）を用いたポリープ検出（computer-aided detection：通称CADe）およびポリープ病理診断予測（computer-aided diagnosis：通称CADx）である。すなわち，ヒューマンエラーをコンピュータの力でカバーし，患者にできるだけ品質の高い医療を提供するところにこれらの技術の意義がある。本稿では，特に海外でのCADeおよびCADxの導入状況を概説するとともに，それらの有用性についてどのようなエビデンスが発出されているかについて概説したい。

【Topics】AIを用いた大腸内視鏡の挿入支援技術池松　弘朗 , 高松　利寛 , 新村　健介 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1744-1747

PDF(776KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　近年，大腸癌の罹患者数は増加しており，2021年の統計資料によると，大腸癌は全世界で死因の2位となっている^1）。大腸内視鏡検査は，前癌病変や大腸癌の早期発見ができ，また内視鏡的な切除も可能であり，大腸癌の予防に有用な検査である一方，挿入技術の面で難易度が高く，医師にとって時間や労力の負荷が大きい。内視鏡挿入技術は，内視鏡の単純な先端の彎曲操作と押し引きだけでなく，捻りなどの複雑な操作を取り入れながら挿入されているため，感覚的で言語化が難しく，大腸内視鏡挿入法に関する教育方法は，いまだ確立されていないのが現状であり，技術習得するために長い年月を必要とする。そのため，熟練医師の数を増やすには限界があることから，誰でも簡便かつ安全に大腸挿入を行うことのできる手法の開発が求められている。

［下部消化管AI：市販化されたAIの特徴とその使用法：CADx］

EndoBRAIN^Ⓡシリーズ（オリンパス）前田　康晴 , 工藤　進英 , 三澤　将史 , 黒木　隆典 , 田村　恵理 , 小形　典之 , 宮地　英行 , 馬場　俊之 , 森　悠一 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1748-1752

PDF(1615KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　本邦での大腸腫瘍・炎症性腸疾患といった大腸疾患の増加により，大腸内視鏡検査の必要性が増している。また，拡大内視鏡観察や画像強調観察など，内視鏡診断技術の進歩とともに，内視鏡医に求められる診断能力も明らかに高くなっているため，内視鏡医の習熟度により検査の質に差が生まれてしまうのもまた事実である。そうした限界を打開する新たな解決策として人工知能（artificialintelligence：AI）を用いたコンピュータ診断支援（computer-aided diagnosis：CAD）に注目が集まっている。本号で特集されているようにいくつかのCADが薬機法承認を取得し，一般診療でも使用可能となっている。本稿ではその一つである，EndoBRAIN^Ⓡシリーズ（病変検出支援を行うEndoBRAIN^Ⓡ-EYEは別稿が設けられている）について，①腫瘍・非腫瘍の鑑別をするEndoBRAIN^Ⓡ（2019年3月市販開始），②非腫瘍・腺腫（粘膜内癌含む）・浸潤癌を鑑別するEndoBRAIN^Ⓡ-Plus（2021年2月市販開始），③潰瘍性大腸炎の炎症活動性を評価するEndoBRAIN^Ⓡ-UC（2021年2月市販開始）の機能と使用上の注意点について概説する。

CAD EYE（富士フイルム）坂本　琢 , 斎藤　豊 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1753-1759

PDF(1575KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Ⅰ．CAD EYEの概略

　コンピュータ診断支援（computer-aided diagnosis: CAD）は，画像情報をコンピュータが定量化および分析を行い，そこから得られた解析結果を第二の意見として医師が画像診断へ積極的に利用することに意義がある。早くは1960年代から報告されるようになり，1998年には，検診マンモグラフィー専用のCADシステムが米国食品医薬品局（Food and Drug Administration：FDA）の認可を得て商品としての販売に成功した。一方で，人工知能（artificial intelligence：AI）という言葉が誕生したのは，1956年の米国で開催されたダートマス会議であった。このあと，ニューラルネットワークの基礎となるパーセプトロンというディープラーニングのもととなるアルゴリズムが1958年には誕生した。第一および二次AIブームから，コンピュータが自律的に学習（機械学習およびその一種である深層学習）できるようになった結果，現在は第三次AIブームとなっている。

［下部消化管AI：市販化されたAIの特徴とその使用法：病理AI―診断から転移予測まで］

病理組織AIのもたらす病理診断のパラダイムシフト―病理医の立場から― 高松　学 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1760-1765

PDF(1009KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　「病理医が形態学的な所見を集約して，癌取扱い規約のような分類法にもとづき治療方針を決定するための情報を臨床に提供する」というのが現在の病理診断の基本スタンスである。では，病理組織を対象とした人工知能（artificial intelligence：AI）はどのような役割を果たすのかといえば，まず思いつくのは現在の病理診断の模倣であろう。AIとデジタル病理画像を駆使して組織型を推定し，脈管侵襲を見つけ出し，郭清リンパ節内の転移巣を検出する，といったアイディアは，病理診断を補助するという点で一見合理的なようにも見えるが，実際には人間たる病理医が評価可能な項目を再現しているだけで，医療レベル自体はあまり進歩していない。もちろん，医療の均てん化という目標からすれば，病理診断の自動化は重要であるが，病理組織画像という非常に高次元なデータと最先端の人工知能の組み合わせを駆使して，わざわざ人間の考えることを解にする必要性もないように思う。実際に，分類作業たる病理診断そのものを模倣するAIモデルの他に，より直接的に診療に結びつくAIモデルの開発が進められている。具体的には，リンパ節転移などの予後予測，分子標的治療に結びつくような腫瘍遺伝子の予測，化学療法の効果予測などである。遺伝子解析技術の応用が一段と進む個別化医療時代においては，患者にとって真に有益な情報を引き出すために進化し続けることがより一層求められるが，高次元化・複雑化するデータを意味のある形で解釈するためにはAIによる解析が必要不可欠となってきている。

AI支援下digital pathologyによる早期大腸癌のリンパ節転移予測―内視鏡医の立場から― 一政　克朗 , 工藤　進英 , 三澤　将史 , 高階　祐輝 , 神山　勇太 , 根本　哲生 , 石田　文生 , 馬場　俊之 , 宮地　英行 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1766-1771

PDF(1015KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　大腸分野における人工知能（artificial intelligence：AI）の活用は，内視鏡による病変の検出（detection）および診断（characterization）のみならず，今後，治療法の選択（decision-making）にも応用されることが期待される。

［内視鏡費用対効果］

大腸CADe/CADxの費用対効果と保険収載浦岡　俊夫 , 田中　寛人 , 都丸　翔太 , 中田　昂 , 佐藤　圭吾 , 糸井　祐貴 , 橋本　悠 , 保坂　浩子 , 栗林　志行 , 竹内　洋司 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1772-1777

PDF(684KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　医療やヘルスケアにおいて，人工知能（artificial intelligence：AI）の研究開発は，疾患リスク評価，治療計画の立案，ゲノム医療を含む診断・治療，業務管理，医薬品開発，介護などさまざまな分野でその社会実装の動きが活発化しているが，現時点で画像診断支援が最も先進的である。画像診断支援AIと医師やメディカルスタッフの知識や経験を組み合わせることで診断精度・効率の向上や質の均てん化が得られ，医師の肉体的・身体的負担の軽減や働き方改革にも貢献することが期待されている。さらには，画像診断支援のなかでも消化器内視鏡診断が最も実用化が進んでおり，特に大腸内視鏡画像診断支援AI，存在診断支援（computer-aided detection：CADe）と鑑別診断支援（computer-aided diagnosis：CADx）がその代表といえる。

連載　臨床研究をやってみよう！・シーズン3　第5回

DPCデータベース研究の特徴と実際八田　和久 , 桵澤　邦男 , 阿部　寛子 , 小池　智幸 , 藤森　研司 , 正宗　淳 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1779-1783

PDF(634KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　近年，臨床現場から得られる患者データであるリアルワールドデータを用いた研究が注目されてきている。リアルワールドデータには，学会レジストリーに由来する疾患登録データ，病院情報システムに由来する電子カルテデータや患者レジストリーdiagnosis procedure combination（DPC）データ，診療報酬明細書に由来するレセプトデータなどが含まれ，膨大な医療情報（医療ビッグデータ）を用いることでさまざまな知見が得られる。一方で，リアルワールドデータには限界もあり，これらをよく認識したうえで研究を行っていく必要がある。本稿では，リアルワールドデータのなかでもDPCデータベースを用いた研究におもに着目し，その利点，欠点を述べるとともに，実際の研究結果を示しながらDPCデータベース研究に迫っていく。

--------------------

目次 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1642-1643

PDF(703KB)

フリーアクセス

英文目次 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1644-1645

PDF(183KB)

フリーアクセス

次号予告 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1784-1784

PDF(226KB)

フリーアクセス

バックナンバー 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1784-1784

PDF(224KB)

フリーアクセス

投稿規定 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1785-1785

PDF(217KB)

フリーアクセス

編集後記 35巻12号 , 2023年12月 , pp.1786-1786

PDF(259KB)

フリーアクセス

2023年総目次 35巻12号 , 2023年12月 , pp.i-xvi

PDF(862KB)

フリーアクセス

2023年Key words index 35巻12号 , 2023年12月 , pp.xvii-xxii

PDF(385KB)

フリーアクセス

基本情報

消化器内視鏡
35巻12号
(2023年12月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0915-3217 東京医学社

お気に入り登録(雑誌)
お気に入り登録(号)
最新号をみる

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング(
12月1日～12月7日
)

第1位胃神経鞘腫劉博,大圃研消化器内視鏡 34巻 13号 pp. 98-99 (2022年10月20日) 東京医学社
第2位ガイドワイヤー土井晋平,藤佑樹,齋藤剛,足立貴子,渡邊彩子,勝倉暢洋,辻川尊之消化器内視鏡 37巻 10号 pp. 1229-1236 (2025年10月25日) 東京医学社
第3位直腸NETに対するESMR-L，EMR-C 西川雄祐,藤本愛,松田尚久消化器内視鏡 34巻 10号 pp. 1727-1730 (2022年10月25日) 東京医学社
第4位 ERCPカテーテル竹中完消化器内視鏡 37巻 10号 pp. 1216-1223 (2025年10月25日) 東京医学社
第5位食道静脈瘤に対する予防的治療：内視鏡的硬化療法中村健二,岸川浩,財部紗基子,片山正,市川将隆,窪澤陽子,西田次郎消化器内視鏡 36巻 12号 pp. 1657-1660 (2024年12月25日) 東京医学社
第6位十二指腸リンパ管腫今枝博之,山口浩,山田健人消化器内視鏡 35巻 6号 pp. 758-759 (2023年6月25日) 東京医学社
第7位 GERDの内視鏡治療―ARMS/ARMA― 田邊万葉,角一弥,島村勇人,井上晴洋消化器内視鏡 35巻 5号 pp. 661-666 (2023年5月25日) 東京医学社
第8位食道裂孔ヘルニアの診断と分類秋山純一消化器内視鏡 35巻 5号 pp. 597-602 (2023年5月25日) 東京医学社
第9位胃蜂窩織炎谷口英明,松下浩志,相見正史消化器内視鏡 34巻 13号 pp. 282-283 (2022年10月20日) 東京医学社
第10位 Superficially serrated adenoma（SuSA）の特徴と意義水口康彦,橋本大輝,豊嶋直也,関口正宇,高丸博之,山田真善,小林望,関根茂樹,斎藤豊消化器内視鏡 34巻 5号 pp. 950-955 (2022年5月25日) 東京医学社

消化器内視鏡 35巻12号 (2023年12月発行)

特集 消化管内視鏡AI：Updated

［総論］

［上部消化管AI：市販化されたAIの特徴とその使用法］

［下部消化管AI：市販化されたAIの特徴とその使用法：CADe］

［下部消化管AI：市販化されたAIの特徴とその使用法：CADx］

［下部消化管AI：市販化されたAIの特徴とその使用法：病理AI―診断から転移予測まで］

［内視鏡費用対効果］

連載 臨床研究をやってみよう！・シーズン3 第5回

--------------------

基本情報

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング( 12月1日～12月7日)

特集　消化管内視鏡AI：Updated

連載　臨床研究をやってみよう！・シーズン3　第5回

文献閲覧数ランキング(
12月1日～12月7日
)