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はじめに
消化管内視鏡AIがにわかに注目を浴びているのは,内視鏡検査自体が不完全と考えられているからであろう。人間が検査を実施する以上,不注意による病変の見落としや内視鏡診断能力が不十分でないことによる誤った病理診断予測などは,可能性として必ず起こり得る。このような,ヒューマンエラーに関しては,本邦よりも海外において積極的にデータ化・エビデンス化を促進する動きがあった。すなわち,欧米では感覚よりもデータを重視する風潮が強いことに加え,特に内視鏡検査時の病理診断予測(通称optical biopsy)が日常臨床に組み込まれておらず,その有用性に関するデータを樹立する必要性が高かったという点が背景にある。実際にデータをひも解くと,大腸検査中に約25%の腫瘍が見落とされていることが多くのランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)の結果解明されており1),また,たとえポリープを検出できたとしても,腫瘍性変化を診断できる精度は,感度・特異度ともに90%を下回ることが複数の前向き研究で確認されている2, 3)。このように,大腸内視鏡検査においては多くの腫瘍が切除されることなく見落とされているのが現状であり,残念ながらその一部は内視鏡検査後大腸癌の一因となることが知られている。これは,われわれが描いている内視鏡診療の理想像からはほど遠く,このような現況を変えるべく,多大な注目を浴びているのが人工知能(artificial intelligence:AI)を用いたポリープ検出(computer-aided detection:通称CADe)およびポリープ病理診断予測(computer-aided diagnosis:通称CADx)である。すなわち,ヒューマンエラーをコンピュータの力でカバーし,患者にできるだけ品質の高い医療を提供するところにこれらの技術の意義がある。本稿では,特に海外でのCADeおよびCADxの導入状況を概説するとともに,それらの有用性についてどのようなエビデンスが発出されているかについて概説したい。
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