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特集 消化管内視鏡AI:Updated
[下部消化管AI:市販化されたAIの特徴とその使用法:病理AI―診断から転移予測まで]
病理組織AIのもたらす病理診断のパラダイムシフト―病理医の立場から―
The paradigm shift brought about by artificial intelligence in pathology
高松 学
1
Manabu Takamatsu
1
1がん研究会がん研究所病理部
キーワード:
人工知能
,
大腸癌
,
T1癌
,
予後予測
Keyword:
人工知能
,
大腸癌
,
T1癌
,
予後予測
pp.1760-1765
発行日 2023年12月25日
Published Date 2023/12/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000001163
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はじめに
「病理医が形態学的な所見を集約して,癌取扱い規約のような分類法にもとづき治療方針を決定するための情報を臨床に提供する」というのが現在の病理診断の基本スタンスである。では,病理組織を対象とした人工知能(artificial intelligence:AI)はどのような役割を果たすのかといえば,まず思いつくのは現在の病理診断の模倣であろう。AIとデジタル病理画像を駆使して組織型を推定し,脈管侵襲を見つけ出し,郭清リンパ節内の転移巣を検出する,といったアイディアは,病理診断を補助するという点で一見合理的なようにも見えるが,実際には人間たる病理医が評価可能な項目を再現しているだけで,医療レベル自体はあまり進歩していない。もちろん,医療の均てん化という目標からすれば,病理診断の自動化は重要であるが,病理組織画像という非常に高次元なデータと最先端の人工知能の組み合わせを駆使して,わざわざ人間の考えることを解にする必要性もないように思う。実際に,分類作業たる病理診断そのものを模倣するAIモデルの他に,より直接的に診療に結びつくAIモデルの開発が進められている。具体的には,リンパ節転移などの予後予測,分子標的治療に結びつくような腫瘍遺伝子の予測,化学療法の効果予測などである。遺伝子解析技術の応用が一段と進む個別化医療時代においては,患者にとって真に有益な情報を引き出すために進化し続けることがより一層求められるが,高次元化・複雑化するデータを意味のある形で解釈するためにはAIによる解析が必要不可欠となってきている。
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