理学療法ジャーナル 54巻10号 (2020年10月)

特集 疼痛に対する最新の理学療法—治療効果を最大化するための理論と実践

EOI(essences of the issue)
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 疼痛は理学療法の主たる治療対象となる症状であり,その概念,疼痛モデル,捉え方,介入方法は急速に変化している.理学療法士はその変化に対応し,患者の苦しみを軽減する努力を怠ってはならない.しかし,その変化が急速であるがゆえ,情報が混乱している状況がうかがえる.そこで本特集では,疼痛に関する最新の情報をご提示いただき,さまざまな状況での実践例を通して具体的な介入方法について示していただいた.

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Point

●一次運動野や背外側前頭前野に対する非侵襲的脳刺激法が鎮痛効果をもたらすことが報告されている

●非侵襲的脳刺激法による鎮痛メカニズムは不明な点が多いが,広範な脳領域に作用していると考えられる

●非侵襲的脳刺激法と運動の組み合わせによって,より高い鎮痛効果が得られる可能性がある

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Point

●恐怖-回避モデルでは,恐怖条件付けとその般化によって痛みが慢性化すると考えられている

●恐怖の評価で重要なことは,患者の破局的な考えを聴取し,恐怖の対象を明確化することである

●慢性痛に対する「段階的曝露療法」では,課題の段階付けが重要となる

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Point

●腰痛は労働生産性を低下させる要因の第3位である

●産業理学療法の基本は,健康管理・作業管理・作業環境管理の3管理!

●産業理学療法の対象者は,患者とは異なり,働けるレベルの健康状態の人であることを念頭に置く必要がある

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Point

●近年報告されている変形性膝関節症のclassificationに関するreviewについて紹介した

●われわれが実践している痛み関連因子と身体知覚の指標を用いた変形性膝関節症初期評価時のclassificationについて紹介した

●われわれが行ったclassificationの結果に基づく,介入の実践例について紹介した

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Point

●近年,世界的にVRを用いたリハビリテーションが注目されている

●疼痛の慢性化,憎悪には「運動恐怖」が密接に関与しているため,定量化が求められている

●VRを用いた運動恐怖の定量化と,その評価結果に基づいた新たなリハビリテーションの構築が求められる

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Point

●急性痛の慢性化には患部の炎症状況のみでなく多因子が関与する

●急性期からの疼痛推移に注意し,患者への適切な情報提供と患者教育が重要である

●急性期からの活動向上段階では,活動日記などを用いて疼痛の推移に注意しながら活動量を向上させることが重要である

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Point

●集学的リハビリテーションでは患者を生物心理社会的モデルで捉えることが重要である

●集学的リハビリテーションは運動療法,認知行動療法,患者教育が3本柱である

●今後はプライマリケアにおける集学的リハビリテーションのさらなる普及が望まれる

Close-up 理学療法士が「死」に向き合うということ

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はじめに

 先進国では死亡する人の約6割に緩和ケアが必要とされており,緩和ケアを必要とする人のおよそ3人に2人が非がん疾患患者である1).緩和ケアは末期がん患者だけに提供されるものではなく,非がん疾患患者も含むすべての「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者と家族」に提供されるべき基本的ケアであると考えられるようになった.

 具体的には,心疾患,脳血管疾患,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)などの非がん性呼吸器疾患,神経難病や認知症,腎不全,肝不全といった慢性疾患の進行期や下降期から終末期の患者に対しても緩和ケアが必要とされている.

 21世紀になり,先進国においては老いとともに死を迎える時代が到来した.70歳以上の高齢者では突然の死亡は16.9%にすぎず,ほとんどの高齢者は,病や老いによって機能が低下し,何らかのケアが必要な時期(下降期)を経て死を迎える2)

 先進国のなかでも最も高齢化が進んだわが国では,男性の死亡のピークは87歳,女性の死亡のピークは92歳となり,男性はその2〜3年前から,女性はその数年前から介護が必要となる.これらのほとんどは認知症を核とした老年病のmultimorbidity(嚥下障害,心不全,腎不全,フレイル)と多障害をもつ高齢者が,肺炎などの疾患を引き金に,多疾患・多障害の連鎖のなかで迎える死である.このような変化のなかで,終末期における緩和ケアとリハビリテーションのかかわりについて考える.

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終末期とグリーフケアは切っても切れない

 医療専門職が死に向き合う場面の緊張感を考えると,苦手意識を抱く気持ちは理解できる.この期間・場面とは,ルーチンワークに付加された“タスク”なのか平常ワークそのものなのかと問う人もいるかもしれない.いずれ自分にも訪れる「終末期」や「死別」の予行演習そのものであり,人生における重要なこと,問題となることのヒントなどを,患者さんが医療者に身をもって教えてくれている機会である.そう考えるとアドバンス編のライフ学習と言える.医療者はもとより誰でもが伴走者でありたい.難しく考えず,しかし真剣に“一緒に”を試みれば…それは立派なケアとなる.

 筆者はグリーフケアを実施してきて20年になる.患者(故人)が抱く終末期の悩み,特にスピリチュアルな悩みと,死別を経験し遺族期に入った家族(遺族)から聞かれる苦悩の言葉に「おや…似ている…」と思ってきたことがある.それは,終末期の看護とグリーフケアは切っても切れないほどに結びついているということである1)(図1「1〜2」の時期)2)

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緩和期のリハビリテーション

 当院は広島県北部にある地域がん診療拠点病院だが緩和ケア病棟はなく,地理的にも緩和ケア病棟のある病院まで1時間はかかるため,一般病棟で看取りを行うケースが多い.

 がん患者では死亡前2〜3か月まではある程度問題なく日常生活を送ることができるが,1〜2か月前になると急激にADLが低下していく1).予後が月単位になると急激にADLが下がり始め,腫瘍の増大により呼吸困難や嘔気・腹水による腹満感などの症状に加え,痛みが最も多くみられる2).緩和期にリハビリテーションが導入されるケースでは,痛みなどで動くことが難しくなってきた上記のタイミングが多い.

連載 とびら

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 「理学療法士の専門性とは何か?」ひとえに考え続けて30年あまり.考える転機となったのは,臨床3年目からスポーツ現場にかかわり始めたことです.主に個人で高校や大学,実業団のチームにトレーナーとして参加していましたが,現場では理学療法士であることのアドバンテージはほとんどありませんでした.当時は「整体」,「マッサージ」,「鍼灸」,「接骨院」などの知名度が高く,理学療法士については毎度説明が必要な状況でした.チーム関係者に紹介してもらうにも「理学療法士の…」という紹介では「何ができる人なの?」という反応が返ってきます.スポーツ関係者に限らず世間一般的に,理学療法士についての認知度が低かったという時代背景もあったと思われます.

 私は理学療法士になった後で鍼灸マッサージ指圧師の国家資格を取得したこともあり,スポーツ現場ではむしろ鍼を打てることが重宝されました.監督からは「鍼も打てます」と必ず紹介されたものです.つまり,一個人として現場にかかわる場合には,「即効性」,「インパクト」が重要視され,いわゆる理論的な思考過程や研究などのエビデンスは,あくまで学術としてのカテゴリーなのでしょう.

連載 目で見てわかる 今日から生かせる感染対策・3

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Question 1. 5分間のPC作業で,どのくらい周囲を触っているでしょう?

連載 脳画像から読み取る障害像と理学療法・22

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Question

この脳画像から障害像が読み取れますか?

連載 内科疾患患者における理学療法介入に必要なアセスメント・Part 4

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はじめに

 本邦の腎代替療法を必要とする末期腎不全患者のうち,95%以上は血液透析療法を選択している.慢性血液透析療法を受ける患者数は年々増加し,2018年末の総数は339,841人と報告されている1).これは日本国民のうち372.1人に1人が透析患者であることを意味し,台湾に次ぐ世界第2位の高い割合である.

 透析患者の高齢化は世界的に認められているが2),特に本邦で顕著に認められ,2018年の新規透析導入者の高齢化率は79%ときわめて高い1).また,近年では,糖尿病や高血圧といった生活習慣病の重度化に伴う透析導入者が全体の約6割を占める1).こうした高齢化の進行,生活習慣病の重度化に加えて,透析患者には低栄養状態の遷延,慢性炎症,代謝性アシドーシス,異化亢進/同化抵抗性,身体不活動および透析療法に伴うアミノ酸の喪失3)が認められることからフレイルサイクルを形成し4),骨格筋量の喪失,身体機能の低下,やがては日常生活活動障害が引き起こされる.

 2005年にKidney Disease Outcome Quality Initiatives(K/DOQI)は診療ガイドラインを発表し,透析患者に対する身体活動の促し,身体機能の評価および身体機能向上を目的とした理学療法の実施をルーチンケアに含めるべきであると主張した5).K/DOQIのガイドライン発表から遅れること15年,日本透析医学会と日本腎臓リハビリテーション学会は世界で初めての腎臓リハビリテーションに特化したガイドラインを発表した6).本ガイドラインのなかでは,透析患者の身体機能評価の重要性や具体的な方法だけでなく,運動療法の効果についても言及された6)

 透析患者に対する運動療法は筋力,歩行能力,運動耐容能およびquality of lifeを改善することがメタ解析から明らかにされている6,7).先行研究で用いられている運動様式は,透析施行中に行う有酸素運動が最も多い6〜9).そのほかには透析施行中のレジスタンス運動10〜12)や神経筋電気刺激13,14),透析施行時間外に行う歩行運動15),立ち座り運動16)およびバランストレーニング17)がある.このように透析患者に対する運動療法が一定の効果を有することはすでに証明されている.

 しかしながら,こうした先行研究の多くは,高齢患者や多疾患有病者を対象から除外している.そのため,実臨床でわれわれが対峙する透析患者に対して先行研究のエビデンスをそのまま適応することは避けるべきであり,患者個々に応じたリスク管理をしながら,運動療法・理学療法を安全に提供する必要がある.

連載 質的研究の魅力と可能性・第1回【新連載】

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はじめに—多元的医療体系のなかに生きる私たち

 小雨が降り出すなか,やって来る路面電車に気づき坂道を小走りで下りかけたその瞬間,足を滑らせアスファルトにしたたかに体を打ちつけた.痛みもさることながら,左腕が上がらなくなり服の脱着もままならない.2,3日我慢したが,結局近所の整形外科のクリニックへ行った.X線を撮ると骨は折れていないとのこと.医師から「元に戻るには6か月ぐらいかかるでしょう」と言われた.

 クリニックでは,週1,2回,理学療法士に指導を受けながらリハビリテーションを行い,患部を温めるなどの治療も行った.しかし,数回通ってクリニックに行くのをやめてしまった.子供はまだ手がかかる,夫は多忙で当てにはならない,仕事は待ったなし.半年も片手しか使えない状態では困る.私は時間をみつけては整体,鍼灸に行った.カッピング療法(ガラス玉の陰圧を利用)も試した.背中に真っ赤な溢血斑が並んだのを見て,医療従事者の夫は「内出血しているから跡が残るぞ」と顔をしかめた.少し楽になってからはジムのプールで泳ぎ,徐々に腕の可動域は広がり2か月ぐらいで元通りに回せるようになった.

 日本は医療サービスへのアクセスもよいし,公的医療保険制度も整備されている.しかし,臨床現場にいる医療者は,患者は必ずしもタイムリーに医療施設に来るわけではないし,医師の指示どおりに治療を継続するとも限らないことを知っているだろう.病いをめぐる人々の行動を理解するには,近代医療は,社会のなかに共存する複数の医療体系のなかの一つであると考える「多元的医療体系」の視点が手がかりになる.医療人類学者のチャールズ・レスリーとアーサー・クレイマンによると,どの社会にも図のように伝統医療体系(folk medicine),近代医療体系(modern medicine),民間医療体系(popular medicine)という部分的に重複する3つの体系からなる多元的医療体系が存在する1,2)

 このような多元的医療体系の社会のなかで,私たちは病気になると治療を求めて一つの医療体系から別の医療体系へ移動し,あるいは併用し,時には体系間を行き来するという行動をとる.また,図が示すようにこの多元的体系が存在する社会の文脈そのものが行動を規定し,動機づけをし,あるいは阻害する.どのような治療を希求するかは,病いを経験する患者の性別,年齢,教育レベル,職業,家族や地域社会での役割やほかのメンバーとの結びつきの度合い,経済状況,病気の種類によっては生や死に対する価値観やさらに大きな世界観など,実に多様な要因と関連している.日本においては,漢方を含む東洋医学も代替医療体系として存在し,民間療法として食べ物や薬草を使った治療薬も知られているが,このほかにも世界には豊富な医療体系が存在する.世界の三大伝統医学として知られる中国医学,アーユルヴェーダ(インド文化圏),ユナニ医学(イスラム文化圏)は,各地に正式な専門医学校をもつ.また,18世紀のドイツに起源をもつホメオパス(同種療法)は,特に南インド,中南米で広く庶民に受け入れられている.

連載 理学療法士が知っておきたいヘルスケア産業・10

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 豊田通商グループが運営する保険外の自費リハビリテーションを提供する施設「AViC THE PHYSIO STUDIO」は,2018年2月に開設された.昨今の自費リハビリテーション業界では珍しく,evidence-based practiceを行動指針とし,実証とデータに基づく情報(エビデンス)と顧客の価値観を踏まえて介入方法を決定していくというプロセス(shared decision making)を徹底している.また,リハビリテーションの本質である“なりたい自分”,“社会参加”までの道筋を,オーダーメード型で提供することをめざす施設である.

 自費リハビリテーションは,医療保険や介護保険で担うことが難しい対象者が,10割の費用を自己負担して受けるサービスである.この数年で参入する事業者も増えてきていることからも,潜在ニーズが大きいことが推測される.他方で,自費リハビリテーション事業者のなかには,経験知に依存したサービスに特化している事業者が多い印象がある.サービスを提供する国家資格の有資格者(主に理学療法士)が,自身の好む単一的な手技を実践し,客観的なデータを示すことなく,または都合のよいデータのみを選択して開示し,改善と判断するものである.また,介入方法が機能回復を目的とした練習に特化している施設もみられる.保険外でも“なりたい自分”をめざして自費リハビリテーションを受ける顧客に対して,このような事業者が散見されることは業界全体の課題であると筆者は考えている.

連載 国試から読み解く・第10巻

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78歳の女性.布団を持ち上げようとした際,背部から腹部への強い帯状痛を生じ,寝返りも困難となったため入院となった.入院時のエックス線写真(a)とMRI(b)とを下に示す.

この患者の病態はどれか.2つ選べ.

連載 臨床実習サブノート 運動器疾患の術後評価のポイント—これだけは押さえておこう!・7

頸椎症性脊髄症 森田 伸
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はじめに

 頸椎症性脊髄症は,加齢による頸椎の解剖的な変化が原因で症状が出現した頸椎症により脊髄の圧迫が生じて脊髄障害を来したものです.上肢機能障害(手指巧緻運動障害,myelopathy hand,筋力低下,感覚障害など)や下肢機能障害(歩行障害,バランス能力低下,感覚障害,筋力低下など)を生じ,日常生活活動に支障を来します.

 本稿では,頸椎症性脊髄症の特徴および手術療法と術後の評価について,ここだけは押さえておこう! というポイントについて述べます.評価を解釈するためには,何のためにこの評価を行うのか(意義),評価によって何がわかるのか(判断)などを理解しておくことが重要です.

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骨太方針2020

 2020年7月17日,「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針2020)が経済財政諮問会議での答申を経て,閣議決定された.

 骨太方針とは,政策の基本骨格を成すもので,骨太方針に基づき,各論とその実施プロセスの工程表を各省庁(大臣)がつくり,定期的にその進捗状況を報告させることで,政策実施の進行管理を行っている.社会保障政策に関する政府の政策の方針も,この骨太方針に示されている.

連載 甃のうへ・第76回

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 現在,私は理学療法士を育成する教育の場で働いています.学生には理学療法士について強く志をもつよう指導し,社会に輩出していますが,私が理学療法士をめざしていた頃は,職業理解をしないまま養成校へ入学しました.理学療法士となった後,私は理学療法士として「責任感をもつ」,「相手の気持ちを考える」,「チームの大切さ」の3つの経験を通じて学ぶことができました.

 1つ目は責任感についてです.臨床現場では小児施設に勤務していました.私は勤務当初,誰に対しても自信のなさから話の冒頭に「たぶん」という言葉をつけており,表現を曖昧にしていました.ある日,施設の子供から「綺麗に歩けるようになりたい,生まれつき障がいをもっているから何が正しいのかわからない」と言われました.私はそれまで仕事について深く考えておらず,その場しのぎの曖昧な表現を使っていましたが,担当する子供は私を頼っていると感じ,全力で向かい合っていないと痛感しました.それ以来,「たぶん」というような曖昧な表現をやめ,自身が発した言葉に責任をもち,施設利用者と本気で向き合えるようになりました.

連載 Relay Message・第10回

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 理学療法士として働くなかでやりがいを感じることもありますが,複雑な事例に直面し理学療法を進めていく際の悩みや患者さんとの人間関係なども多岐にわたり,悩むことがあります.数少ない私の経験のなかでですが,特に進行性の疾患をもつ患者さんとのかかわりで悩むことが多くありました.身体機能面に関する悩みだけでなく,死生観についての話を伺うこともありました.そのため,訪室前には必ず緊張していたことを覚えています.

 タイトルにある“こんな状況でも楽しんでんねん”という言葉は,進行性の疾患をもつ,ある患者さんから伺いました.関西弁のニュアンスが正しいか定かではありませんが,今でも鮮明に覚えている言葉です.この患者さんの言う“こんな状況”とは,四肢の随意性が失われ,排痰には吸引のケアが必要で,かろうじて聞き取れる程度の声が出せるという状態でした.吸引時に苦痛の表情をみせた後,いつものように和やかに笑いながら言った言葉でした.随意性が失われつつある身体を“こんな状況”と表現され,さらに“楽しんでいる”と言われた私は,自分が理解できない範疇の言葉に対して返答できず困惑したことを覚えています.

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要旨 【目的】本研究の目的は,健常若年者を対象として,前方降段および後方降段の2つの異なる降段動作中の膝関節内側負荷を比較検討することとした.【方法】健常若年成人12名の前方降段および後方降段を赤外線カメラ,床反力計を用いて記録した.降段動作時の先導脚および後続脚の外的膝関節内反モーメント,膝関節内反および屈曲角度を算出し,2つの動作間において,対応のあるt検定を用いて比較検討した(p<0.05).【結果】前方降段時の先導脚と比較して,後方降段時の先導脚の外的膝関節内反モーメント最大値は有意に高値を示した.後続脚については,外的膝関節内反モーメントに有意な差を認めなかった.【結論】本研究結果から,後方降段は前方降段と比較して,先導脚の膝関節内側負荷を高め,後続脚の膝関節内側負荷も同等の負荷がかかる可能性があることが示唆された.

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要旨 【はじめに】脳卒中後片麻痺者の歩行再獲得は,リハビリテーションにおける主要な目的となる.今回,中臀筋への機能的電気刺激(functional electrical stimulation:FES)を使用した歩行練習が,非対称性歩行の改善につながった症例に関して報告する.【症例】右被殻出血により左片麻痺を呈した40歳台の男性.Brunnstrom Recovery Stage下肢Ⅲ,感覚は表在・深部感覚ともに正常.【方法】理学療法の経過のうち,通常練習期,介入期,コントロール期の3つの時期に分けて検証を行った.評価項目は10m歩行時間,歩数,時間的対称性とした.【結果】杖歩行と独歩における歩行速度と歩幅の差が短縮し,コントロール期に行った評価においても効果を示した.また,独歩では介入期以降で非対称性にも改善がみられた.【考察】今回FESで筋収縮を促すことで,筋感覚情報に注意を向けることができ,処理すべき内在的なフィードバックの課題設定が可能となったことが,歩行再獲得につながったと考える.

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 私が鈴木大介氏に初めてお目にかかったのは2016年9月だった.『脳が壊れた』(新潮新書,2016年)に描かれている高次脳機能障害の描写に感激し,出版社に問い合わせ,実現した.

 その後,何度か対談をさせていただき,鈴木氏のお話が非常に具体的であり,なおかつ豊富な工夫や対応策にあふれる実行可能な内容であることがわかった.私は,鈴木氏の経験や工夫を多くの「脳コワさん」本人や家族,リハビリテーションスタッフ等に伝えたいとかねてから思っていたため,本書の出版は,心から待ちわびたものだった.

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目次

文献抄録

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

バックナンバー・次号予告のお知らせ

編集後記 山田 英司
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 新型コロナウイルスの影響で昨年には想像できなかった環境の変化に戸惑いながら生活を送っています.先の見えないもどかしさに歯がゆさを感じる毎日ですが,このような時期だからこそ,過去を振り返り,新たな社会や理学療法のあり方を考え直す必要があるのではないでしょうか?

 本号の特集は「疼痛に対する最新の理学療法—治療効果を最大化するための理論と実践」です.疼痛は理学療法の主たる治療対象となる症状であり,その概念,疼痛モデル,捉え方,介入方法は急速に変化しています.しかし,その変化が急速であるゆえ,情報が混乱している状況になっていると考えられます.そこで,本特集では,最新の疼痛に関する情報をご提示いただき,さまざまな状況での実践例を通して具体的な介入方法を示していただきました.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
54巻10号 (2020年10月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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