連載 理学療法士が知っておきたいヘルスケア産業・10
保険外(自費)リハビリテーションの社会的意義と理学療法士の参入
藤本 修平
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1元 株式会社豊通オールライフ ヘルスケア事業部
pp.1223
発行日 2020年10月15日
Published Date 2020/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202086
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豊田通商グループが運営する保険外の自費リハビリテーションを提供する施設「AViC THE PHYSIO STUDIO」は,2018年2月に開設された.昨今の自費リハビリテーション業界では珍しく,evidence-based practiceを行動指針とし,実証とデータに基づく情報(エビデンス)と顧客の価値観を踏まえて介入方法を決定していくというプロセス(shared decision making)を徹底している.また,リハビリテーションの本質である“なりたい自分”,“社会参加”までの道筋を,オーダーメード型で提供することをめざす施設である.
自費リハビリテーションは,医療保険や介護保険で担うことが難しい対象者が,10割の費用を自己負担して受けるサービスである.この数年で参入する事業者も増えてきていることからも,潜在ニーズが大きいことが推測される.他方で,自費リハビリテーション事業者のなかには,経験知に依存したサービスに特化している事業者が多い印象がある.サービスを提供する国家資格の有資格者(主に理学療法士)が,自身の好む単一的な手技を実践し,客観的なデータを示すことなく,または都合のよいデータのみを選択して開示し,改善と判断するものである.また,介入方法が機能回復を目的とした練習に特化している施設もみられる.保険外でも“なりたい自分”をめざして自費リハビリテーションを受ける顧客に対して,このような事業者が散見されることは業界全体の課題であると筆者は考えている.
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