Close-up 理学療法士が「死」に向き合うということ
終末期医療の実際と理学療法士の役割
平原 佐斗司
1
Satoshi HIRAHARA
1
1梶原診療所
キーワード:
病の軌跡
,
エンドオブライフケア
,
緩和ケア
,
advanced care planning
,
ACP
Keyword:
病の軌跡
,
エンドオブライフケア
,
緩和ケア
,
advanced care planning
,
ACP
pp.1189-1193
発行日 2020年10月15日
Published Date 2020/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202075
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はじめに
先進国では死亡する人の約6割に緩和ケアが必要とされており,緩和ケアを必要とする人のおよそ3人に2人が非がん疾患患者である1).緩和ケアは末期がん患者だけに提供されるものではなく,非がん疾患患者も含むすべての「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者と家族」に提供されるべき基本的ケアであると考えられるようになった.
具体的には,心疾患,脳血管疾患,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)などの非がん性呼吸器疾患,神経難病や認知症,腎不全,肝不全といった慢性疾患の進行期や下降期から終末期の患者に対しても緩和ケアが必要とされている.
21世紀になり,先進国においては老いとともに死を迎える時代が到来した.70歳以上の高齢者では突然の死亡は16.9%にすぎず,ほとんどの高齢者は,病や老いによって機能が低下し,何らかのケアが必要な時期(下降期)を経て死を迎える2).
先進国のなかでも最も高齢化が進んだわが国では,男性の死亡のピークは87歳,女性の死亡のピークは92歳となり,男性はその2〜3年前から,女性はその数年前から介護が必要となる.これらのほとんどは認知症を核とした老年病のmultimorbidity(嚥下障害,心不全,腎不全,フレイル)と多障害をもつ高齢者が,肺炎などの疾患を引き金に,多疾患・多障害の連鎖のなかで迎える死である.このような変化のなかで,終末期における緩和ケアとリハビリテーションのかかわりについて考える.
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