産婦人科の実際 69巻5号 (2020年5月)

特集 専門医はもういらない? せまりくるAI時代

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機械学習・深層学習技術の発展,計算機能力の向上,ビッグデータの利活用により人工知能(AI)が社会の様々な場面で活用され,医療現場の課題に対してもAI技術が基礎研究や臨床応用において広まりつつある。本稿では,AI開発の歴史と,AI特に機械学習において用いられる技術について概説し,医療におけるAI活用の現状と展望について述べる。

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現在の日本における医療現場では高齢者医療,医療保険制度,医療費抑制,医師不足や勤務環境など様々な課題が山積するなか,どう効率的に医療を行っていくのかという議論が進み,そのなかでAIを活用して人が判断しなくてもよい業務を減らし,人でしか対応できない業務に集中できるようにしていく取り組みが進んでいる。本稿では,初診患者を対象とした「AIによる問診サポートシステム」と医療施設内で行っている「AIチャットボット」の取り組み事例を紹介する。

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上皮性卵巣癌(EOC)は,臨床病理学的に複雑な表現型に分類される。さらに初回手術前の正確な診断が困難であることから,症例の層別化による個別化医療の導入は依然として不十分である。われわれの行った人工知能(AI)技術を用いた血液検査データによるEOCの術前予測アルゴリズムは,表現型推定で一定の精度を認め,予後に応じた症例層別化に貢献する可能性を示した。婦人科悪性腫瘍領域でのAI研究は世界中で急速に進展しており,AI技術の臨床応用実現が,EOCなど婦人科腫瘍の個別化医療の構築に寄与することが期待される。

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近年,産婦人科での胎児超音波スクリーニングは,その啓発によりわが国において広く普及している。しかし,検査者が超音波プローブを手動走査することで画像を取得するため,検査者間での技術レベルのばらつきが大きく,画像精度管理に問題が生じている。また,超音波画像は他モダリティと比較して音響陰影の影響を受けやすいこともその一因となっている。そこで筆者らは,高度な診断技術が要求される胎児心臓について,深層学習による物体検知技術を活用し,その異常所見を自動的にリアルタイムで検知する超音波画像診断支援技術の研究開発を進めている。

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細胞を動かしている多種多様なタンパク質を俯瞰的,かつ,網羅的にみるプロテオミクスは,生体システムの究極のプロファイリング法であるが,これまでは技術的に時間も費用も要したので,その適用対象が研究や一部の高度医療に限られていた。しかし近年,汎用化するための技術が開発されて,新たな分野へのプロテオミクスの展開が始まっている。さらに,① 未知の知識を内包するプロテオミクスのデータがAIの得意とする画像データであること,② 多種多様なメタデータ(そのデータを説明すると考えられる情報)の統合がAIにより可能であることから,近年のAIの能力の向上がプロテオミクスの実用化,社会実装を強力に後押ししている。本稿では,新たなコンセプトによる検査を実現するAIプロテオミクスを説明し,産婦人科での可能性と展望を論説する。

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AIによる画像認識は,深層学習による画像特徴の自動解析が実用化して以後,多分野への応用が試みられている。医療画像におけるAI研究も深層学習の登場によりパラダイムシフトが起こっており,わが国が豊富なリソースを有する放射線画像や内視鏡画像,ならびに病理組織画像について多種多様な検討が行われてきた。本稿では,AIによる病理組織診断支援の概要と実際について,特に実臨床における有用性および発展性を主体に述べる。

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機械学習,深層学習といったいわゆる人工知能を用いた医用画像解析が現在盛んに行われており,産婦人科領域のMRIに関する研究成果も報告されはじめている。従来型の機械学習では,適切な画像的特徴量を設定することができれば比較的少ない症例数でも腫瘍の質的診断などが可能となる場合があるが,特徴量の設定や選択といった,やや複雑な過程が必要となる。深層学習では,画像自体を解析用の入力データとして用いることができるが,機械学習と比較すると大量のデータが必要となる場合が多い。本稿では,産婦人科MRIに関して機械学習や深層学習を適用した最近の研究報告を概説する。

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子宮腟部前癌病変LSIL/CIN1とHSIL/CIN2+CIN3を対象とし,独自のneural network architecture作成によるdeep learningを行ってAIの診断性能を評価した。まず画像だけからAIで診断する場合,対象患者はLSIL 97例とHSIL 213例で,教師あり学習法を用いたAIによる正診率は0.823,HSILに対する感度,特異度は0.800,0.882であった。次に,画像とともにHPV型を学習させたAIによる診断では,対象患者がLSIL 43例とHSIL 210例となり,AIによる正診率は0.941,HSILに対する感度,特異度は0.956,0.833で,成績は向上した。なお,どちらのAIの場合も有意差はなかったが,腫瘍専門医の成績をおおむね上回るか同等だった。今後ビッグデータが得られれば,対象病変種類の拡張も診断精度の向上も期待できる。

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手術ナビゲーションシステムにおいて軟部組織の変形は大きなナビゲーション誤差の原因となるため,そのような変形の影響が少ない整形外科領域に限定されているのが現状である。例えば脳手術におけるブレインシフトは,精密なナビゲーションを実現するためには無視できない変形といえる。ナビゲーションシステムのもう1つの課題として,手術計画の直感的な可視化が挙げられる。拡張現実(AR)やプロジェクションマッピング(PM)のような技術が提案されているが,臓器変形に対する補償についてはほとんど考えられていない。そこで本稿では,ブレインシフトによる変形を補償しつつ,手術計画の直感的な可視化が可能なプロジェクションマッピング型手術ナビゲーションシステムについて紹介する。

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人工知能(AI)の医療分野への進出は目覚ましく,生殖医療分野も例外ではない。ARTにおいてはすでに胚の発育などからの妊娠予測,グレード分類などで応用が始まっている。これをICSI時の精子の選別に応用できないか,われわれは研究を続けている。現在までにAIにより精子を認識することは可能となり,ICSIに適した精子の選別,TESE時の探索補助のシステム開発を行っている。

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体外受精治療において,体外培養環境を最適化するため,タイムラプスインキュベーターを共同開発し,さらにAIを用いた自動受精判定研究を進めてきた。Deep learning技術を用いた画像解析の「教師あり学習」を実施し,アルゴリズムを構築した。前核の輪郭を抽出し,Z軸マルチスライス画像を用いることにより,前核数自動検出の精度を高めることができた。異常受精に関しては解析画像数が少なく検出精度が正常受精より低かった。今後は,さらに精度の高いアルゴリズムを目指し,受精判定技術だけでなく,胚盤胞までの画像解析を進め,非侵襲的な胚の発育予測システムを構築したい。

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CPiCとは,CPC(臨床病理検討会)に,medical imagingのiを加えた造語です。われわれ産婦人科臨床医はしばしば術前の画像診断と術中所見が乖離する症例,手術所見からは予期せぬ病理診断となった症例,病理診断からその後の治療方針に悩む症例など経験することがあります。

このシリーズでは,放射線診断医,病理医,婦人科腫瘍専門医が,日常診療のなかで遭遇した『悩ましい症例』に対してそれぞれの立場から議論する“臨床病理画像検討会”の様子をレポートします。

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女性アスリートの摂食障害は一般人口に比し発症リスクが2〜3倍高く1),痩身のほうが有利と思われがちな競技群で多いとされる。今回,婦人科,メンタル科,栄養科の多領域連携の診療によって改善したアスリートの摂食障害症例を報告する。症例は16歳,陸上競技選手,続発性無月経を主訴に外来受診。明らかな低体重・低栄養状態(身長163cm,体重37.7kg,BMI 14.2,体脂肪率6.9%)で,摂食障害の傾向が認められたため,メンタル科へコンサルトし,選手,保護者に対しカウンセリングを行った。婦人科,メンタル科,スポーツ栄養士との診療を定期的に行うとともに,診療状況をカルテとカンファレンスにて情報共有した。初診から11カ月後に体重44.8kg,BMI 16.8,体脂肪率11.6%となり,診療中の表情に変化や精神状態の安定が認められた。本症例は続発性無月経が受診のきっかけとなって,早期介入につながったもので,長期的な計画を立て多領域がかかわることでより治療効果が高まることが示唆された。

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香川県内の中学,高校43校の女子スポーツ選手の指導者を対象に意識調査を行い,選手の健康管理に対する産婦人科のかかわりを検討した。19種目の59名から回答を得た。調査内容は,選手の月経について,OC・LEPの使用,選手の健康管理,指導で困難なこと,勉強会への参加希望の有無などである。月経困難症にOC・LEPが有効なことは多くの指導者が認識していたが,月経コントロールには消極的だった。健康管理内容では月経関連は少数だったが,指導で困難な点は月経などが含まれた。指導歴が30年以上では勉強会参加希望の割合が比較的高かった。産婦人科のかかわる課題として月経関連の啓発と,現場との連携を深めることが必要と考える。

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腸管子宮内膜症患者は,消化器症状を主訴とするため婦人科を受診しないことが多い。しかし,腸管子宮内膜症は内科的精査による診断が難しく,外科的治療時診断に至ることが少なくない。今回われわれは,様々な経緯で診断に至った回盲部腸管子宮内膜症の腹腔鏡手術を4例経験した。1例のみ月経周期と一致するイレウス症状を呈したため,術前に腸管子宮内膜症を想定しえた。全4例で子宮・付属器周囲に軽度〜高度の子宮内膜症病巣を認めた。子宮内膜症で婦人科手術を行う際は回盲部も観察し,早期診断・治療への端緒とするのが望ましいと考える。

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症例は41歳。9.3×7.2cm大の子宮頸部筋腫に対して,腹腔鏡下子宮筋腫核出術を施行した。子宮頸部の正常筋層は菲薄化しており,核出後の子宮頸部は筋層が大きく欠損したような状態となった。再建に苦慮したが,体部側・頸部側それぞれの薄くなった筋層をフラップ状に形成し,子宮筋フラップ法を応用して再建した。術後に月経瘻などを認めずに経過した。術後6カ月目にMRIを施行したところ,子宮頸部はほぼ正常な所見に回復していた。

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産婦人科の実際
69巻5号 (2020年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0558-4728 金原出版

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