特集 「ADC時代」の到来―チソツマブ ベドチン,そしてその先へ
2.ADC開発の歴史と今後の展望
松村 保広
1,2
Y. Matsumura
1,2
1国立がん研究センター研究所免疫創薬部門(客員研究員)
2株式会社凜研究所(研究担当取締役)
pp.643-648
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003444
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抗体薬物複合体(ADC)とは,狭義の定義としては,がん細胞に発現する標的抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)に毒性の強い抗がん剤がリンカーを介して結合され,目的のがん細胞に送達させるがん治療薬である。現在,14種類のADCがFDAで承認されており,さらに80種類以上のADCが臨床開発または前臨床へ進んでおり,ADCは今や,がん治療薬としてメジャーなモダリティーとなっている。一方で,上皮系がん細胞の膜タンパクは正常上皮幹細胞にも少なからず発現しているために,間質性肺炎や皮膚障害や下痢などの有害事象が問題となっている。加えて,ADCの抗腫瘍効果ががん細胞への内在化に依らないという基礎と臨床のデータが出始めており,がんの間質でペイロードを遊離させ,がん細胞外からがんを攻撃するというADCのドラスティックな戦略の変革が起きている。

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