胃と腸 34巻1号 (1999年1月)

今月の主題 Ⅱ型早期大腸癌肉眼分類の問題点

序説

  • 文献概要を表示

 肉眼分類の目的

 大腸癌の肉眼分類は胃癌のそれに基づいている.すなわち,大腸癌取扱い規約1)では胃癌と全く同様に0型から5型に分類されている.また,早期大腸癌もⅠ型すなわち隆起型がⅠp,Ⅰsp,Ⅰsと分けられている以外は胃癌のⅠ~Ⅲ型と全く同様で,全く同じ記号で記載するように定められている.

 この分類で進行癌の1型から5型まではその分類に多少の施設間の差はあっても,2型とか4型という肉眼型によって,内科医も外科医も病理医もほとんど皆共通したイメージを抱き,大きさと合わせて大まかな予後まで思い浮かべることができる.仮に肉眼分類を用いずに説明しようとすれば複雑で時間を要し,お互いの意思疎通が困難になるかもしれない.

  • 文献概要を表示

 われわれの用いている早期大腸癌(および腺腫)の肉眼型分類とその基準をFig.1,2に示す1)2).肉眼型の判定はホルマリン固定材料で行っている.組織像は病変の高さの判定や,表面陥凹を絶対的陥凹と相対的陥凹3)(Fig.2)とに亜分類する際に参考にするが,組織ルーペ像のみでの肉眼型分類は行わない.

 隆起と陥凹から成る病変は,面積的に優位なものを先に記載する(Fig.2).隆起がⅠ型に相当する場合は,Ⅰ+Ⅱc(またはⅡc+Ⅰ)とする.陥凹周囲の隆起は腫瘍,非腫瘍(反応性粘膜)の別を問わない.

  • 文献概要を表示

 1.肉眼型の決定方法

 病理の場合,肉眼型は臨床診断を参考にして固定標本上で判定することが多い.過伸展の状態で固定した標本で判定をしている.けれども標本の固定は様々なことから,組織学的な解析を併せて最終的に診断している.症例によっては組織所見が主となることもある.また,臨床の情報が十分に得られた場合には,それらを参考にする比重が高くなる.

  • 文献概要を表示

 1.肉眼形態分類(Fig.1)

 隆起型は主に,有茎性(Ⅰp),亜有茎性(Ⅰsp),無茎性(Ⅰs)に分けられ,表面型は,表面隆起型(Ⅱa),表面平坦型(Ⅱb),表面陥凹型(Ⅱc)に分類される.表面陥凹型は,5mm前後からsm深部に浸潤し,Ⅱc+Ⅱaから隆起の目立つⅡa+Ⅱcへ形態推移するものと考える.Ⅱa+Ⅱcには陥凹型由来と隆起にⅡc局面を併せ持つものと2つのタイプがあるが1),最近の検討により,ほとんどが前者であることが明らかとなった。また,sm深部浸潤に伴い,陥凹内隆起が目立つ腫瘍群をⅠs+Ⅱcと亜分類している.一方,局面のない陥凹を持ち,棘状不整を呈する表面隆起型病変をⅡa+depとして亜分類している.また,腫瘍径10mm以上の側方発育を主体とする病変をlaterally spreading tumor(LST)と総称し,顆粒型と非顆粒型に亜分類している.Ⅲ型については,経験がなく,分類は必要ないと考える.

  • 文献概要を表示

 われわれは早期大腸癌の肉眼分類は臨床所見を重視しX線像・内視鏡像から判断しているが,中心陥凹と辺縁隆起を有する小さな表面型ではルーペ像も加味して分類している.また,病変の大きさは,切除後の固定標本で計測し,陥凹を伴う病変で周辺隆起が認められるものは腫瘍成分がなくても周辺隆起部も含めた大きさを測定している.

 以下,Fig.1に示すように,隆起型は,明瞭な茎を有するものはⅠp,基部が隆起最大径より小さいものはⅠsp,隆起最大径と同等のものはⅠsとしている.ⅠsとⅡaの判別は病理学的扁平率(手術例における切除標本の腫瘍の最大高/最大径×100%)を基準として20%を超えるものをⅠsとしている.その理由は,この病理学的扁平率は注腸検査によるX線学的扁平率(X線側面像最大高/X線正面像最大径×100%)とも極めてよく相関し,この病理学的およびX線学的定義を用いたⅠsとⅡaの早期大腸癌の比較から両者には臨床病理学的な相違がみられたことから,臨床的にも利用可能な指標であるからである.

  • 文献概要を表示

 早期大腸癌の肉眼分類は施設によってその定義が全く異なっており現在混乱を生じているが,その中でも特に問題となるのは,一般に頻用されている“Ⅱa+Ⅱc”,“Ⅱc”,“Ⅱc+Ⅱa”,“LST”(laterally spreading tumor)などである.われわれは早期大腸癌の肉眼分類を,主に内視鏡所見を中心にして,Fig.1に示すように,Ⅰ型,Ⅱ型,結節集簇病変の3型に大きく分類している.Ⅲ型については,消化性潰瘍のない大腸では存在しないと考えている.以下,Fig.1に示した分類の定義のポイントを述べる.

 “ⅡC”の定義については,陥凹局面(領域性のある陥凹)の存在を重視し,陥凹が絶対陥凹であれ,周囲の反応性過形成粘膜に対する相対陥凹(工藤分類のⅡc+Ⅱa)であれ,陥凹を主体とする病変は一括してⅡcとする.したがって,原則として陥凹局面以外には腫瘍成分は存在しない.

  • 文献概要を表示

 1.肉眼形態診断基準

 1)判定方法

 病変の肉眼形態診断は,病理組織標本のマクロ像で行うのが妥当と思われる.しかし,標本の伸展程度により治療前の形態に一致しない場合が多いため,その判定には色素内視鏡像(0.1%indigocarmine撒布)を重視している.また,病変の形態は,空気量による腸管の伸展や観察角度などによって微妙に異なるため,ある程度腸管を伸展させた正面像を基準にして種々の伸展度や観察角度を総合して判定する.

  • 文献概要を表示

 1.早期大腸癌肉眼分類の意義

 ①組織学的構築(線腫成分の有無,多少)の推定,②生物学的悪性度(深部浸潤傾向)の推定,③深部浸潤量(深達度)の推定が行える肉眼分類に意義を求めている.

  • 文献概要を表示

 早期大腸癌の肉眼型判定は多くは臨床の時点で求められるので,内視鏡所見重視で行っている.この場合,十分な空気量で腸粘膜を伸展させ,色素内視鏡も加味して判定している.病変部位などの理由で観察条件が悪く十分な内視鏡像を得られないときは,切除標本やルーペ像を参考にすることもある.

 早期大腸癌の肉眼分類は,早期胃癌肉眼分類に準じて隆起型(Ⅰ型),表面型(Ⅱ型)に大別される(Fig.1).大腸には消化作用を有する胃液のような存在がないので,深い潰瘍形成を伴う陥凹型(Ⅲ型)は,炎症性腸病変で見られても早期大腸癌では通常認められない.

  • 文献概要を表示

 肉眼分類を決定する際には,まず,どの診断法肉眼分類による所見を優先すべきかが問題となる.一般に,最終肉眼診断は切除標本上の判定に従うこととされているが,早期癌の多くは分割切除を含めた内視鏡切除が適応されることが多く,すべての病変を切除標本上で判定することは困難である.また,組織ルーペ像を肉眼分類判定の参考所見とすることも考えられているが,半月ひだ上に存在する表面型腫瘍では,隆起型として判定されてしまうことや,腫瘍巣に対する割線の位置によっては,同一病変でありながら肉眼型が異なって診断されることもまれではない.このため,筆者らは早期大腸癌の肉眼形態分類については,内視鏡による判定が最も妥当であると考えている.この場合,所見の再現性が問題となるが,十分な送気の下で腸管が伸展された状態を判定可能な条件としている.

 肉眼分類は単純明快で,かつ各病変の病態を正確に情報提供できるものでなければならない.このような視点から,筆者らはⅡa,Ⅱa+Ⅱc,Ⅱb,Ⅱcを基本型とし,工藤らが提唱するⅡa+depやⅡc+Ⅱaについては前者をⅡaに,後者はⅡcに含めている(Fig.1).陥凹を伴う病変については,側面視に近い状態で,その陥凹の深さからⅡa+ⅡcとⅡcの診断基準としている.また,Ⅱc+Ⅱaについては早期胃癌における佐野の解釈に準拠し,Ⅱc局面の片側にⅡa型隆起を伴うものとし,同様にⅡc+Ⅰ(p,sp,s)などの複合型についても同様に取り扱っている.また,Ⅰ(s,sp,p)+Ⅱcについては,Ⅱa+Ⅱcの形態的特徴像に準拠し,Ⅰ型隆起の頂部に陥凹局面を有するものとしている.

  • 文献概要を表示

 肉眼型分類をFig.1に示す.Ⅰ型は,隆起の目立つ病変を言う.Ⅰp型は非腫瘍性粘膜から成る明らかな茎を持つもので,有茎性に相当する.Ⅰsは非腫瘍性粘膜から成る茎を持たないもので,広基起性または無茎性に相当する.Ⅰsp型は短茎性・亜有茎性に相当するもので,Ⅰp型とⅠs型の中間であり,短い茎を持った病変で基部のくびれとして認識される.

 Ⅱ型は隆起の目立たない病変で,表面型と呼ばれる.Ⅱa型(表面隆起型)は,丈の低い扁平な病変である.Ⅱb型(表面平坦型)は,周辺粘膜に対してほとんど凹凸のないものである.Ⅱc型(表面陥凹型)は,浅いびらん程度の陥凹を呈し,陥凹部にも腫瘍腺管が存在するものである.Ⅱa+Ⅱc型は,周囲正常粘膜と段差の明瞭な丈の低い隆起で,一定の広さを持つ陥凹を有するもので,陥凹よりも隆起が主成分であるものとしている.対して,陥凹性病変が主体で,周囲にわずかに隆起を呈するものを,Ⅱc+Ⅱa型としている.Ⅲ型は潰瘍があり,その周りに,または一部に癌が併存するもので,大腸ではほとんどみられない.

  • 文献概要を表示

 早期大腸癌における肉眼形態の判定は内視鏡所見を重視し,腸管が過伸展にならない程度に伸展した状態で判定を行っている.病変の辺縁部が腫瘍性あるいは非腫瘍性かを判定するために,色素撤布法や拡大内視鏡検査は有用と考えている.切除標本での腫瘍径の計測は最大径を計測したうえで,長径,短径,高さの形式で記載する.陥凹型病変での腫瘍径の計測は,陥凹部分のみの大きさと周囲の反応性隆起部分を含めた大きさで計測を行っている.反応性隆起部と陥凹部分の境界が不明瞭の場合は実体顕徴鏡所見で判定する.以下に早期大腸癌の肉眼形態分類を示す(Fig.1).

  • 文献概要を表示

 肉眼型の判定は病理ではホルマリンで固定された切除材料において行っているが,正しく判定するにはそれが十分伸展された標本であることが重要である.しかし,日常の外科手術材料は特に長軸方向が伸展不良であることが多いので,それを補正するために輪状方向での形態を重視して判定すると内視鏡像やX線像とのずれが少ないように思われる.しかしながらそれでも不十分であるので,やはり十分伸展された腸管における内視鏡像を参考にする必要があると考える.

 次にその判定基準であるが,Ⅰs型とⅡa型の区別が問題になる.私は組織像で粘膜筋板からの高さが正常粘膜の2倍くらいまでの高さで,表面が平坦なものをⅡa型としているつもりである.正常粘膜の2倍の高さというのは組織と肉眼の対比に基づく目安であって,私は組織標本(割面)で測定し判定するのではなく肉眼で判断するので,高さに関しては必ずしも正確ではない.表面が平坦なものは球面状のものとは組織構築が異なり,また肉眼で厳密に高さを判断するのは不可能であるので,個人的には高さだけに固執せず表面の形態との総合的判定が最良と考える.陥凹の判断は臍状の窪みでなく面としての陥凹成分を認めるときのみⅡc型と判断する.もう1つの問題点は反応性隆起の判断のことである.規約では腫瘍成分のみならず反応性過形成成分なども含めて肉眼型を判定することになっているので,私もそれに従っている.

  • 文献概要を表示

 1.肉眼型の判定

 本来,肉眼分類は発育進展を考慮したものではなく,またX線像,内視鏡像,ルーペ像が一致していることが原則である.更に,診断医によってその分類が異なってもいけない.内視鏡像は空気量の違いにより,Ⅰ型がⅡa型になったり,高濃度の色素を用いるとⅡc局面ができる.X線像ではⅡC型でも必ず透亮像が描出されるし,陥凹面が描出できないこともある.ルーペ像も切除標本の伸展状態で変化する.すべての所見が一致することはむしろ少ないかもしれない.しかし,われわれ臨床医の立場では肉眼分類の判定は,X線像,内視鏡像を重視すべきと考える.内視鏡による空気変形は考慮に入れない.なぜなら,内視鏡像は腸管を伸展させた状態で判定しなければ,X線像で得られる所見と対比することができないからである.表面陥凹型とする病変は,内視鏡検査で空気変形を用いなくても,過伸展させた状態でも色素撤布を行えば陥凹の有無,深達度診断に有用な陥凹面の性状の判定は可能である.

  • 文献概要を表示

 5mm以下の表面型大腸腫瘍は,隆起型と陥凹型に分けるとの大方のコンセンサスが得られている1).しかしながら,更に大きな病変になるとsmに浸潤するにつれて形態変化を来すため,その時点で表現されている肉眼分類とするのか,大腸癌の発育・進展を考慮した肉眼分類にするのか,また深達度を想定できる肉眼分類にするのか,などで混乱が生じている.また,m内にとどまる病変でも陥凹周囲の反応性隆起の取り扱いが異なり,腫瘍の計測法にも問題が生じている.

 今回は,大腸癌の発育・進展を含めた診断学に積極的に取り組んでいる比較的若手の13名の研究者に各自の肉眼分類の診断基準を示してもらい,実際の症例の読影を通じてその相違点を明らかにし,胃の肉眼分類を踏襲するのか,大腸癌独自の肉眼分類が必要なのか,肉眼分類統一への道を探ることを目的として本号が企画された.提示された症例(Ⅰpは除外)は診断者の施設から肉眼分類に必要と思われる写真を特に枚数の制限を設けず提出してもらっており,著しく枚数の多い症例を除きそのまま提示してある.また,診断にあたっては,あくまでも肉眼分類であるとの判断で,ルーペ像,プレパラートまでは準備したが,病理の先生方にはお気の毒であったがあえて顕微鏡は準備しなかった.また,切除標本上での腫瘍の範囲は誌面では示してあるが,症例の診断時には示していなかった.なお,肉眼型の判定は,内視鏡,あればX線,切除標本,ルーペ像でそれぞれ判定し,それらをまとめ総合診断としてある.症例は,純粋な陥凹型に近いものから隆起の様相が強くなっていく型へと診断者の数の多かった順番に並べてある.

  • 文献概要を表示

〔患者〕65歳,女性.1993年3月ごろから肛門痛が出現し,同年4月他院において直腸粘膜下腫瘍を指摘された.手術を勧められたが拒否し,そのまま放置していた.肛門痛の増強と血便出現のため1994年4月に当科を受診し,精査治療のため入院となった.

〔注腸造影所見〕直腸前左壁中心に,径7cm大の表面平滑な隆起性病変が存在し,表面の一部にバリウムの溜まりが認められた(Fig.1a, b).

  • 文献概要を表示

〔患者〕59歳,男性.高血圧で当院外来通院中であった.特に自覚症状はなかったが,1998年2月21日に検診目的の胃内視鏡検査を施行したところ,前庭部後壁に隆起性病変を指摘され,生検にてGroup Ⅴ,低分化腺癌と診断された.

〔胃X線所見〕仰臥位第2斜位二重造影(Fig.1a, b)で前庭部後壁に低い隆起(以下病変部A)にやや高い隆起(以下病変部B)が重なる双子山型の隆起性病変が認められた.病変部A,病変部Bともに円形で辺縁は整であった.バリウムを薄く溜めた撮影(Fig.1a)では病変部Aは透亮像,病変部Bはその辺縁が接線像として明瞭に描出された.バリウム層をやや厚くした撮影(Fig.1b)では病変部Bが透亮像として描出された.拡大率を補正すると,病変部Aは直径10mm,病変部Bは6mmと計測された.

  • 文献概要を表示

〔患者〕66歳,男性,主訴:下腹部痛

海外だより

  • 文献概要を表示

 inflammatory bowel disease(IBD)の診療分野のみならず臨床的研究でも世界的に有名な,Oxford大学のDr Jewellのもとに短期(3か月間)留学した.旧知の仲であったため,非常に丁寧に欧米流の診療を解説していただいた.わが国とは医療事情が多少異なるものの理論的かつむだのないcompactな診療に感心することも多く,その一部を紹介させていただく.

 Dr Jewellの属するJohn Radcliffe(JR)病院の沿革を紹介する.Oxford大学は20あまりのcollegeから成り,更にcollegeからは独立した幾つかの病院(すべて国立National Health Service,NHSに属する)が関連病院として存在する.この病院で診療が行われ,更にOxford大学の学生臨床教育と臨床研究が行われている.John Radcliffe(JR-Ⅰ)病院は,その名を冠した国王の侍医の寄進によって約200年前に設立された伝統を誇る病院である.市の中心に位置し,古典的外観を有し,古いcollegeの建物に隣接している,現在では,診療の中心は,市の郊外に位置する第2病院JR-Ⅱに移った.JR-ⅡはJR-Ⅰとは異なり巨大な近代的病院である.消化器科の医師たちは,診療をJR-Ⅱで週に3.5日行い,研究は古典的構えのJR-Ⅰで2.5日行っている.Oxfordにはほかに大きな内科系の病院があり,更に整形外科,精神科の単科病院がある.さすがに著明な大学だけに各診療科には日本や旧英国連邦からの留学生,更に欧州各国からの見学も多い.

アメリカ留学体験記(2) 斉藤 裕輔
  • 文献概要を表示

 私は,1998年4月から1年間の予定で米国テキサス州にあるUniversity of Texas Medical Branch at Galveston(UTMB)に留学しております.今回はアメリカの内視鏡検査の現状について報告いたします.なお,内視鏡検査の内容はアメリカの州,施設により異なっていることをご了承ください.

 まず検査室ですが,広い検査室が7系統あり,各部屋に看護婦が1~2名付き,検査,治療を行っています.もちろん内視鏡はすべて日本製のビデオスコープです.1部屋にポータブルの透視装置があり,1室はERCP用のX線撮影装置が装備されております.患者さんはベッドごと入室し,検査後ベッドごと退室します.靴を履いたままベッドに横たわっている患者さんが多いのには驚きました.文化の違いですね.また,20床ほどの広いrecovery roomがあり,検査前の点滴,検査後の患者の容態のチェックが行われています.UTMBにおける内視鏡検査は,ASGE(American Society for Gastrointestinal Endoscopy;米国内視鏡学会)の勧告に従って全員ルート確保とconscious sedationのもとに行われています.前投薬としてmidazolamを2~10mg,meperidineを20~150mg静注後に行っています.上部消化管内視鏡検査ではmidazolamを2mg,meperidineは25mgぐらいと少量?でよいようですが,大腸内視鏡ですと倍以上に増えますし,ERCP時には更に増えることが多いようです.アメリカの患者さんは痛みに非常に敏感であり,ちょっとしたことで”“Ah―,Ah―”とつらがり麻酔薬の追加投与が必要となります.更に,前回にも書きましたが,ここテキサスの患者さんは大きいため,相当な量のsedationが必要なようです.日本人なら呼吸が完全に停止してしまうほどの量を投与するときもしばしばあります.多くの麻酔薬を投与しても,痛みや刺激などで一度目を覚ますと,薬を追加投与してももうろうとしているせいか,なかには暴れる患者さんもいます.ときには医師,看護婦数人で暴れる患者さんを必死に押さえることもあり,“like a battle with SUMOU wrestler”と検査医が笑っていたこともありました.ERCPのときに暴れて検査,治療が中止になり,翌日全身麻酔で再検査,治療が行われることも時々あります.また,あらかじめ患者さんが全身麻酔で検査を希望する場合もあり,このときには初めから麻酔科の先生も登場して内視鏡検査が行われます.

早期胃癌研究会

  • 文献概要を表示

 1998年10月の早期胃癌研究会は10月21日(水),東商ホールで開催された.司会は牛尾恭輔(国立病院九州がんセンター)と星原芳雄(虎の門病院消化器科)が担当した.ミニレクチャーは,「早期食道癌のEMR」として,幕内博康(東海大学第2外科)が行い,きれいなスライドとビデオおよび積極的な内視鏡的治療で,聴衆に感銘を与えた.

 〔第1例〕26歳,女性.直腸の広範囲な良性潰瘍(症例提供:三重県立総合医療センター外科 増田亨).

  • 文献概要を表示

要旨 患者は64歳,男性.35年前に胃潰瘍のために胃切除術を受け,結腸後のBillroth Ⅱ法によって再建されている.下血を主訴に当院を受診した.出血の原因はMalloryWeiss症候群によるものであったが,残胃吻合部小彎にⅡc型早期癌を見出した.X線像ではひだ集中が,内視鏡的には褪色調が目立つ病変であった.残胃吻合部切除を行った摘出標本では,大きさは2.0×1.2cm,組織学型はtub2で,深達度はmであった.このほかに0.1cmの微小癌を有していた.肉眼的には明らかでなかったが,吻合部の胃側粘膜には全長にわたって,胃小窩の延長,偽幽門腺の増殖と囊胞化,固有腺の萎縮,腺の粘膜下侵入といった吻合部ポリープ状肥厚性胃炎の組織像が確認された.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は69歳,男性.検診で胃潰瘍を指摘され,上部消化管内視鏡検査で中下部食道に縦走する不整な潰瘍性病変を指摘された.精密食道造影検査ではⅠmEi境界部に十字に交わる深い陥凹と周囲の隆起した長径2cmの0-Ⅲ型表在型食道癌を認め,深達度sm3と診断した.食道内視鏡検査では陥凹部を除いてヨード不染はなく,上皮下発育を示す特殊型の癌が示唆された.切除標本病理所見は,2.0×1.5cmの0-Ⅲ型,深達度sm3,中分化型扁平上皮癌,ie(-),ly1,v0,n2(+)であった.0-Ⅲ型食道表在癌はその発育過程として0-Ⅱc型から進展したものや,0-Ⅰ型に深い陥凹を形成したものなどが考えられる.本症例では,深い陥凹を有してはいるが,粘膜表層進展がなく,上皮下発育を示すことから,0-Ⅰsep型の食道癌からの発育,進展を念頭に置く必要があると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は41歳,女性.職場検診で胃の異常を指摘され当院を受診.胃X線検査では体上部前壁と幽門前庭部小彎に不整な胃小区の領域が存在し,内視鏡検査では強い白色調を呈した病巣が体部前壁を中心に幽門前庭部まで島状に散在していた.内視鏡生検で赤色顆粒(Russell体)を多数有した形質細胞がみられ,またHelicobacter pyloriの感染が確認された.胃全摘術を行った切除標本の組織学的検索で,病巣部の粘膜内から粘膜下層にかけてRussell体を有する多数の形質細胞の増殖以外に,MALTリンパ腫に特徴的なlymphoepithelial lesionの存在やcentrocyte-like cellの増殖も認められた.本例は,胃形質細胞腫ではなく,高度の形質細胞分化を示した低悪性度胃MALTリンパ腫と診断された.リンパ腫の新たな分類が提起された現在では,胃形質細胞腫の診断は慎重さが要求され,また従来の症例は再検討されるべきであろう.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は51歳,男性.職域の胃検診で胃角部の不整を指摘され,精査目的で上部消化管内視鏡検査を受診した.十二指腸第2部下部に径10mm弱の粘膜下腫瘍様の隆起病変が認められた.初回の内視鏡検査時に生検を1か所実施したが,治療目的の内視鏡検査時には病変の形態がかなり変化していた.内視鏡的に切除した病変の病理学的検索では,粘膜下層に正常十二指腸粘膜が憩室様の形態を示しつつ迷入しており,それが粘膜下腫瘍様の形態を呈した原因と考えられた.また,腫瘍細胞は病変の粘膜表層に限局し,高分化腺癌0-Ⅱcと診断された.このような粘膜下腫瘍様の形態を示した早期十二指腸癌はわが国では報告はなく,貴重な症例と思われた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は70歳の男性で,心窩部痛,タール便を主訴として入院.X線および内視鏡検査で十二指腸下行部の乳頭部近傍に出血性の陥凹性病変を認め,十二指腸癌を疑ったが,生検組織にアミロイド沈着を認めた.十二指腸出血が遷延し,X線および内視鏡検査で病変の伸展性があり,悪性リンパ腫も否定しえないため,膵頭十二指腸切除,胆囊摘除,小腸切除を行った.十二指腸下行部乳頭部の外側に2個の潰瘍,口側に線状瘢痕を認め,十二指腸全体に小血腫が散在性に多数認められた.切除小腸に3か所血腫を認めたが,胆囊,胃,膵に著変を見なかった.組織所見は十二指腸粘膜下層に広範なアミロイドの沈着と出血を認め,Ul-Ⅱの潰瘍と癩痕を伴っていた.高度のアミロイド沈着は十二指腸のみでなく,小腸の粘膜下層にも認めたが,胃,胆嚢,膵の血管壁にも認められた.アミロイド蛋白はAL型を示した.アミロイドーシスの上部消化管病変で,胃,小腸の切除報告はあるが,十二指腸病変の切除例は本例が初めてと思われる。膵頭十二指腸切除により,十二指腸のみでなく,他臓器にもアミロイド沈着があり,全身性アミロイドーシスと診断しえた.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 1998年4月,厚生省の「がん検診の有効性評価に関する調査研究事業」研究班(総括委員長:久道茂)の報告書が公表された.わが国の老人保健法の保健事業の中に取り入れられている5種目のがん検診について,内外の学術雑誌や報告書を精査し,がん死亡率減少効果を示す確かな科学的根拠があるかどうか,その証拠の質の程度はいかほどか,などについて調査した.最終的に,わが国のがん検診についての“勧告”まで行った.

 その中で,胃がん検診については,“逐年のX線検査を用いた胃がん検診受診を勧奨する証拠がかなりある.ただし,検査の限界に関する十分な説明を事前に行うべきである”とまとめた.これまでの胃がん検診の有効性を評価する種々の研究,例えば,症例対照研究,時系列研究,地域相関研究,非無作為化コホート研究,生存率比較研究など,RCT(無作為比較対照試験)以外の多くの研究で,いずれも胃がん検診は胃がん死亡率を減少させる証拠がかなりあるという判断をしたのである.

  • 文献概要を表示

 “若い外科医諸君よいざ集まらん,この場所へ!”と叫ぶがごとく訴えかけている手術書,外科手技解説書である.今日までに発行されてきた教科書の型に真似て新たな教科書を完成させようとすることはやさしかろうが,本書はそこからの脱却を目指した,21世紀に向けた新しい形の教科書と言えよう.カルテ,そして手術記録の記載により自ら学ばんとする積極的姿勢のある若い外科医,そしてたとえ指導的立場あるいはそれに至らんとしている中堅外科医においても,是非読んで(観て)いただきたい教科書である.また,いざというときのためにも,大切な座右の書の1つとして側に置いていただきたいと考える.本書からは,手とり足とりコツとポイントを教えて下さるかのごとき情熱が伝わってくる.これぞ小越教授の精神=THE OGOSHI'S SPIRITともいうべき心意気がすべての頁に満ち満ちている.たとえ安易な気持ちでイラストに眼を通し始めたとしても,気がつかぬうちに己の大脳皮質に集中力が形成されていて,のめりこんでしまう.英語記載についても外科手術記録であることを踏まえた念入りな表現となっており,留学されようとする方にも必携の書と言えよう.

 自らが手術野で展開させようとする芸術をいかに発展・進歩させるかについて教わるには,何と言っても術者あるいは第一助手となって手術に参加し,執刀することが重要であるが,それと同様の比重をもって手術の技術と考え方の“コツ”と“ポイント”を,熟達・完成した外科医ならではのイラストとむだのない短い必要最小限の語句による解説から教わることができるのである.外科医から外科医へと厳しく語るがごとく,そして一方では内容的には優しく指導表現されていると思う.厳しい指導者のあのしっかりとした肉声が耳に入ってくるようである.表紙から最後の頁までのすべてを,教育上の哲学ともいうべきお考えによって浸しており,それを若い人たちに分与したいという気持ちで満たしている.加えて,めったに耳にすることのできない名医の本音も聞こえてくる.将来ある若い外科医にむだを熟知させつつもむだなく時間を過ごしてほしい,勉強してほしいという大きな期待をかけているがゆえと拝察するところである.

  • 文献概要を表示

 畏友長廻紘君が「Colonoscopic Interpretation」という著書を出版した.単著である.和文ではかなり多作の彼も「Differential Diagnosis of Colorectal Diseases」以来2冊目の英文本である(なお,編集本としては9月新刊のAtlasがある).前回はcolonofiberscopyが臨床に定着し,開発以来12年ほどの成果をまとめ世に問うた書であったが,今回は16年を経てvideo-endoscopeによる大腸内視鏡の集大成である.

 主に表面を観察する内視鏡も,生体の内部構造を知る画像医学もよってたつ処は形態であり,良好な画像が得られて,初めてより確かな診断が得られる.

編集後記 小池 盛雄
  • 文献概要を表示

 内視鏡像・X線像(一部)・切除標本像・ルーペ像をセットにして,25症例の表面型大腸癌肉眼分類が試みられた.個々の症例の判定では,診断基準の差が鮮明に浮かび上がってくる.大腸では粘膜,粘膜筋板が薄く,伸展の程度により形態が変化する.特に診断基準の差の1つであるⅡc病変の周辺隆起が変わり,切除例では固定の際の伸展の程度によりその形態が変化する.かつて,故白壁彦夫先生は症例検討にさいし,病理標本の固定は臨床像を全く反映していないとよく言われていたのを思い出す.新鮮切除材料と伸展固定標本では肉眼像が異なる.内視鏡像やX線像の空気量による形態変化と同様の関係にある.理想的に伸展固定した肉眼像が臨床像の裏付けとなる必要がある.現在の肉眼分類は,実体顕微鏡によるpit patternを考慮したり,組織発生を念頭に置いた分類など,それぞれ異なる要素を同一の規範に入れて考えているために混乱を招いているような気がする.表面型大腸癌の分類に使われている記号は早期胃癌のそれに準じている.凹凸を基本とした分類は単純であるべきで,組織発生を念頭に置いて分類する必要はないのではないか.いずれにせよ,消化管疾患に関するオピニオンリーダーとしての本誌は,単純,かつ早期胃癌と共通性を有する分類を構築する責任があるのではないか.

基本情報

05362180.34.1.jpg
胃と腸
34巻1号 (1999年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)