臨床外科 73巻11号 (2018年10月)

増刊号 あたらしい外科局所解剖全図—ランドマークとその出し方

序文 遠藤 格
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 解剖学は時の外科学の進歩に応じて深化してきた.リンパ節郭清が花盛りの時代にはリンパ管,リンパ節の解剖に関する多くの論文が発表され,拡大肝切除が盛んになるとその安全性向上のために肝臓の局所解剖が発展した.最近30年間の外科を取り巻く環境には,いくつかの大きな変化が生じた.腹腔鏡下手術(ロボットを含む),術前化学療法,動脈合併切除,技術認定制度の導入,そしてNCDによる自施設データの客観化などが挙げられるのではないだろうか?

 腹腔鏡下手術が頻用されるようになり,従来の手術とは異なる視野で手術をする必要が出てきた.典型的な例はta-TMEであろう.肛門側からTMEを行うと,前立腺やneurovascular bundleが肛門側からは近く直視できるうえ角度も良好になる.しかし当初は,解剖学的位置関係の誤認による尿道損傷が相次いだという.また,ロボットの導入によって解剖学的に狭い場所の手術の質が向上した.すなわち縦隔内手術や,骨盤手術が安全かつ根治的に行われるようになった.

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●point

●狭い空間に重要器官が密集する頸部の局所解剖を理解し,特に深頸筋膜との関係を認識して手術に臨む.

●郭清範囲を明確化して,ランドマークとなる重要器官(血管,神経,筋肉)を常に想定・確認しつつ,慎重かつ丁寧に手術を進める.

●郭清を安全,確実に行うために,出血や神経損傷のクリティカルポイントを常に意識して手術を行う.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2023年10月末まで)。

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●point

●頸部アプローチ視野における気管・食道・血管・神経の解剖学的位置の把握

●気縦隔の利点と単孔式デバイスの特徴を考慮した剝離操作

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●point

●縦隔にも明確な解剖層構造が存在し,この層に沿って本のページを捲るような剝離が理想的である.

●食道は咽頭と胃の間の短い臓器が肺の発達とともに引き延ばされた発生学的特徴があり,肺門より頭側で周囲臓器と複雑な関係をもつ1)

●リンパ節は臓器であり,リンパ節門には血管,輸出リンパ管,血管作動性無髄神経が存在し,リンパ節を固定している(図1).

●主要血管,気管・気管支とcontralateralに剝離すると微細出血を回避できる(図2).

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●point

●心囊や大動脈,左右壁側胸膜などのメルクマールとなる臓器の解剖を理解し,それぞれの臓器と郭清範囲との位置関係について十分に把握することが重要である.

●術野展開により,狭い縦隔内であっても良好な視野を確保することができ,過不足のない下縦隔郭清が可能となる.

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●point

●幽門下領域の解剖学的特性を理解する.

●切除すべき間膜の脂肪と温存すべき間膜内構成成分(膵や血管)との間に存在する疎性結合組織の層,いわゆる剝離可能層(dissectable layer)を見極める.

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●point

●膵上縁郭清に必要な局所解剖の理解と,術者と助手の協調した的確な視野展開による適切な層での剝離が過不足のない郭清につながる.

●細かい脈管を丁寧に処理して出血・リンパ漏を予防することが術野をドライに保ち,ひいては正しく安全な郭清につながる.

●デバイスによる熱損傷や助手による膵の圧迫により,術後膵液漏を引き起こす可能性がある.膵液漏・膵炎の予防のためにデバイスの取り扱いに注意するとともに,膵臓を極力触らずに視野を展開する工夫が必要である.

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●point

●迷走神経腹腔枝温存にあたっては,神経近傍でのエネルギーデバイスの使用は最小限にとどめ,神経をテーピングして愛護的に牽引しながらの繊細な操作が重要である.

●迷走神経腹腔枝温存胃切除術は,早期胃癌(cT1N0)を主な対象としており,進行癌でD2郭清を要する症例では腹腔枝温存は行っていない.

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●point

●Toldt膵後筋膜を正確な層で広範囲に剝離する.

●リンパ節を含む脂肪組織を間膜化することで郭清手技が容易になる.

●脾門部の血管解剖をバリエーションの頻度も含めて熟知しておく.

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●point

●NACの有無にかかわらず,標準的なD2郭清に必要なランドマークを理解しておくことが最も重要である.

●根治切除するために,標準的な剝離層でよいか,NACによる線維化や癌の浸潤を考慮してさらに深い層で剝離すべきかの見極めが必要である.

●NACにより周囲臓器との強い癒着や浸潤がみられる場合には後に回し,同部位を周囲から挟み撃ちに郭清する.

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●point

●胃癌で最高難度の手術であり,大出血を避けるために解剖の熟知と脈管周囲の丁寧な剝離技術が必要である.

●ランドマークとなる血管のうち,特に腰静脈,上行腰静脈との交通枝周囲の剝離に厳重な注意が必要である.

●4領域に区分して郭清するが,血管へのテーピングを利用し各領域の郭清を連続させることが肝要である.

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上部消化管 《Special Lecture》

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 モロゾ間膜(ligament interpleural de Morosow)とは,19世紀のロシアの解剖学者兼外科医であったMorosowが命名した左右の胸膜を結合する線維性の結合組織である1).和名は胸膜間靱帯1,2).モロゾ間膜は後述するようにここ数年,食道外科関連の学会発表において頻繁に用いられる解剖名となったが,その詳細について実はよく知られていないのではないかと思う.本稿では,モロゾ間膜に関して筆者らが見た(思った?)こと,調べたことについて述べてみたい.

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●point

●右側結腸癌のD3郭清では血管根部の露出が必要であり,動静脈の解剖ならびにその相関関係を認識することにより副損傷を回避できる.

●なかでも副右結腸静脈は,右胃大網静脈や前上膵十二指腸静脈と合流して胃結腸静脈幹を形成し複雑な分岐形態を呈するので,症例ごとに攻略する必要がある.

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●point

●横行結腸間膜:右側は十二指腸下行脚内側,膵頭部に始まり,左側は膵体部下縁に沿って付着する.

●動脈系:中結腸動脈の中枢付近は,共通管を形成していることが多いが,約15%程度で右枝,左枝おのおの独立している.

●静脈系:中結腸静脈は,膵下縁の約1〜2 cm尾側で下腸間膜静脈または胃結腸静脈幹に合流する.

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●術前に3D-CT angiographyなどにて,左結腸動脈の走行およびRiolan arcadeの有無について確認しておくことが重要である.

●内側アプローチで下行結腸間膜を広範に後腹膜から剝離しておくことが,安全に左結腸の授動を行うコツである.

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●側方郭清に必要なランドマークを理解し,郭清の範囲を把握することが重要である.

●尿管下腹神経筋膜,膀胱下腹筋膜に沿った層で剝離することによって,機能温存しつつ,過不足のない側方郭清が可能である.

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●骨盤内臓神経から神経血管束(NVB)までの神経走行に注意した剝離操作が必要である.

●肛門管を構成する横紋筋と平滑筋の構造,特に男性の直腸尿道筋周囲の解剖構造の把握は,尿道損傷を予防するうえで重要である.

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●骨盤内臓全摘に必要な,解剖におけるメルクマールを理解し,それに沿った手術法を把握することが重要である.

●メルクマール近傍の重要血管を理解し,術中出血を避ける手技を行うことが重要である.

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●腎静脈以下の大動脈周囲リンパ節郭清に必要な解剖を理解し,中途半端な層で郭清しないことが重要である.

●上腸間膜動脈系(盲腸〜脾曲)と下腸間膜動脈系(脾曲〜肛門管)では,主リンパ節から大動脈周囲リンパ節へ至る経路が異なることを考慮して郭清を行う.

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●脾彎曲授動の重要なランドマークは,「脾下極」「膵下縁」「Gerota筋膜」である.

●脾下極の確認方法は,横行結腸側から網囊に入り膵下縁をランドマークにする.

●横行結腸側,下行結腸側のどちらから攻めるにしても,Gerota筋膜は重要なランドマークとなる.

●脾彎曲の良好な視野確保のためには,患者の体位変換が有効である.

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●直腸固有筋膜,下腹神経前筋膜,壁側骨盤筋膜および自律神経の位置関係を理解する.

●基本的に直腸側方〜前方では直腸固有筋膜に沿って剝離を行うが,直腸後腔では下腹神経前筋膜の背側で剝離することも可能である.

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●下腸間膜動脈根部における血管処理の際に,左右の腰内臓神経の損傷に注意する.

●直腸後壁では直腸固有筋膜に沿った剝離層を意識し,側方においては骨盤神経叢から分岐する直腸枝を切離するように心掛ける.

●癌の局在と深達度に応じて,Denonvilliers筋膜の剝離層を選択し,前側方では神経血管束(NVB)の損傷に注意する.

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●痔核は,肛門クッション組織の痔静脈叢が強くうっ血し,弾性線維などの結合組織が断裂・肥大したものである.

●痔核結紮切除術の適応はGoligher分類Ⅲ〜Ⅳ度の内痔核(外痔核,直腸粘膜脱などの並存も含む)1)である.

●痔核結紮切除術は,病的な痔核組織を過不足なく切除,縫合閉鎖し,正常な組織構造および機能を残す術式である2)

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●痔瘻は,肛門陰窩を原発口(一次口),感染巣となる原発巣,瘻管とその出口である二次口より構成される.

●低位筋間痔瘻は指診・双指診で,原発口の陥凹から二次口までの瘻管を皮下に索状に触知する.

●痔瘻の手術の要点は,膿瘍,炎症の再燃防止と肛門機能の温存である.

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はじめに

 骨盤内の膜構造は複雑であり,過去の研究を経てもいまだに完全に解明されているとは言いがたい.また,解剖用語に関しても統一されておらず,同じ骨盤内臓器を扱う大腸外科,泌尿器科および婦人科のなかでも解剖認識が異なることもある.本稿では,内骨盤筋膜(endopelvic fascia)を中心に,骨盤内の膜構造について解説する.

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●MDCTから作成した三次元画像を用い,術前に右肝動脈後枝の分岐と走行を把握しておく.術中の経験的判断に依存すると誤認切離の可能性が高まる.

●同時に,門脈・胆管の右後枝の解剖も把握しておく.3つの脈管は同じ右後区系であるが,その走行と分岐には個人差がある.

●右門脈との位置関係から右肝動脈後枝はinfraportal typeとsupraportal typeに大別される.前者は左肝・尾状葉切除の難易度を上げる変異である.

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●point

●腹腔鏡下肝区域切除は高難度術式であり,安全確実に実施するにはレネック被膜の概念の正確な理解に基づいて定型化することが不可欠である.特に次の2点が重要である.

●ポイント1.肝外Glisson鞘の一括確保

●ポイント2.肝静脈の剝離・露出

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●心囊膜の周囲には脂肪織(pericardial fat)が存在し,この脂肪織を認識することが重要である.

●心囊膜を大きく切開することにより,心囊内〜肝上部下大静脈の可動性が上がる.

●後腹膜を切離し,肝下部下大静脈を左右腎静脈流入部まで十分に授動しておくことで可動性が上がる.

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●術前の造影CTおよび直接胆管造影像から癌の進展範囲を正確に診断し,各肝切除術式における胆管分離限界点との比較から適切な術式を立案することが重要である.

●脈管走行の立体的位置関係の把握を術前に行っておく.

●右肝切除では門脈臍部をランドマークとして肝切離および肝門板切離を行うことが重要である.

●肝門板切離および胆道再建の際は,胆管に並走する肝動脈の損傷に注意する.

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●point

●胆囊摘出術の治療戦略を理解する.

●胆囊摘出術に必要なランドマークとそれが意味するものを理解する.

●胆囊摘出術に必要な切離層およびCVSを露出する方法を理解する.

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●胆管,膵管の切除範囲には限界があるため,術前の腫瘍進達度診断が重要である.

●胆管,膵管周囲を十二指腸粘膜と縫合・形成し,かつおのおのにステントチューブを留置し,胆管・膵管の狭窄予防とする.

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●肝動脈の解剖学的破格である置換右肝動脈(ReRHA)は約15%に認められ,膵頭十二指腸切除(PD)を行う場合には術前のCT画像でReRHAの有無を確認しておく必要がある.

●ReRHAが温存可能か,合併切除が必要かを術前に確認し,合併切除する場合は肝血流を維持するための対策を講じておく必要がある.

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●SMA周囲のplexusにアプローチする際,SMA起始部にテーピングしランドマークとすれば,不慮の出血時にも迅速に対応できる.

●SMA起始部は,大動脈前面の左腎静脈上縁で拍動をもって認知するが,テーピングの際には近傍のSMA分枝をチェックしておく.

●標準的郭清では,SMA周囲に3 mm程度の線維性組織を残存させる(PLsma温存)が,直接浸潤が及んでいれば,できるだけ小さい範囲を付加切除する.

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●point

●Treitz靱帯は十二指腸壁から連続して移行する筋束でありSMA起始部左側壁に付着する.

●第1,第2空腸動脈はTreitz靱帯を切離することで左側に展開しやすくなる.

●Treitz靱帯の背側は左腎静脈である.

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●第一空腸動脈を再建に用いる場合,第一空腸動脈は下膵十二指腸動脈と共通幹を形成する場合が多いため術前画像での確認が必要である.

●第一空腸動脈の発達具合,血管径,走行には個人差があり,再建に適さない場合は第二空腸動脈を再建に用いることもある.

●第一空腸動脈は通常上腸間膜動脈(SMA)の背側から左下方へ分岐し,吻合のために挙上する際にループを形成するため,その分の長さを確保する必要がある.

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●切離予定の動脈だけでなく,門脈系静脈を含む主要血管をテーピング確保し,安全に腹腔動脈にアプローチする.

●術前画像診断により,動脈周囲神経叢浸潤の最先進部を決定し,適宜術中迅速組織診断を行い,左胃動脈起始部方向か,腹腔動脈根部方向かの剝離ラインを決定する.

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肝胆膵 《Special Lecture》

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 根治的肝切除を施行するには病変部の正確な位置と切除範囲を確定する必要がある.そのために,術前に切除すべき門脈枝,肝動脈枝,胆管枝の同定とともに切除する肝静脈枝,温存させる肝静脈枝,再建する肝静脈枝(inconstant)を確認しておくことが重要である.たとえば,肝上部下大静脈寄りに病変が存在する場合,必要最小限の切除を行ったとしても,その際に,近接する肝静脈を損傷してしまったときには,その肝静脈により還流されている遠位側の肝実質はうっ血により少なからず機能不全に陥り,小範囲切除のつもりであったものが結果的に広範囲切除をしてしまったのと同じことになってしまう可能性が考えられるからである1,2).また,生体肝移植ではグラフトを提供したドナーの安全と移植グラフトの良好な再生と生着を確保するために温存すべき肝静脈,再建すべき肝静脈の確定は重要な戦術の1つである3,4)

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尾状葉/dorsal sectorの領域分類

 尾状葉は肝両葉および肝門の背側で,下大静脈を取り囲むように位置している.一般に肝葉切除では,切除側片側のみの切除であったり,尾状葉を切除しないことが選択される.しかし,肝門部領域胆管癌では,尾状葉胆管枝への浸潤が高率に認められ,尾状葉の切除は根治に重要とされている.

 日本では公文1,2)が,尾状葉を「門脈本幹もしくは一次分枝に支配される領域」と定義し,下大静脈部,Spiegel葉,尾状突起の3つに細分類することが一般的となった(図1).しかし,Couinaud3)は形態学的に「肝門から主要肝静脈の背側にかけて下大静脈を取り囲む領域」をdorsal sectorと捉え,肝門から主要肝静脈根部にかけて,門脈一次分枝部から中肝静脈根部を結び,下大静脈と平行な断面で左右2分した領域を,right dorsal sector,left dorsal sectorと分け,肝門より尾側の下大静脈を取り囲む領域をcaudate processとした(図2),right dorsal sectorは下大静脈の前面の領域であり,さらにb-veinから供血されるb-region,下大静脈の右側から右肝静脈根部前面の領域でc-veinから供血されるc-region,下大静脈の右背側から右肝静脈根部背側の領域でd-veinから供血されるd-regionに細分類している.このように尾状葉とdorsal sectorの概念は異なるものであり,両者の領域は完全には一致しない.

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胆囊動脈のバリエーション 梅澤 昭子
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胆囊動脈

 胆囊動脈は,右肝動脈(right hepatic artery:RHA)から分岐し,Calot三角内を経て浅枝(superficial branch)と深枝(deep branch)に分枝する.浅枝は胆囊の腹腔側,漿膜下を走行する.深枝は肝臓と胆囊床の間を走行して肝実質に細分枝する1).ここでのCalot三角とは胆囊管・総肝管・肝下面で構成される三角の呼称である2).胆囊頸部〜Calot三角前面に存在するsentinel node(前哨リンパ節)は,その背側に胆囊動脈が走行することが多いので,胆囊摘出術におけるランドマークとして知られている(図1)2)

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 「膵頭神経叢の正体」というお題をいただいた.しかしながら,これは非常に難しい.解剖学用語には「膵神経叢」という用語はあるが,「膵頭神経叢」というのはないからである.よって,これは膵頭十二指腸切除の時に意識される「膵神経叢」の一部のことであると考えられる.本稿では,この一部である「膵頭神経叢」について考えることにする.

 膵臓の神経は,主に腹腔神経叢(腹腔動脈と上腸間膜動脈の起始部を取り巻く神経線維の集合)からくる交感神経と副交感神経である.もちろん内臓性知覚神経も含まれる.交感神経は大・小内臓神経,副交感神経は迷走神経に由来する.腹腔動脈と上腸間膜動脈は,膵頭部と膵体部の間に位置する膵頸部付近を上下から挟むように腹側に向かって走る.これらの動脈の通路は,膵頭部の膵後筋膜(Treitz膵後筋膜)と膵体・尾部の膵後筋膜(Toldt膵後筋膜)の間隙によってつくられる.神経もこの間隙を通って動脈とともに膵臓に達し,分布することになるのである.

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●point

●Pubic fascicle(挙睾筋恥骨枝)を切離し,恥骨結節から2〜3 cm陰囊側に剝離を進め,メッシュを展開する.

●挙睾筋膜を認識し外側の付着部(鼠径靱帯,iliopubic tract)で切離することで,メッシュ留置の外側縁が明確となる.

●挙睾筋膜を温存することで,輸精管や血管,神経を損傷することなく精索を授動でき,合併症のリスクを軽減しうる.

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●腹壁の形成とともに,横筋筋膜と腹膜前腔によって形成される腹膜外腔の3次元構造をイメージすることが大切である.

●TEP法には経腹直筋前鞘アプローチと正中アプローチという2つの進入経路がある.

●Retzius腔から腹膜前腔に進入しヘルニア囊を捉えるまでの手順を中心にランドマークの確認と手術手技のコツを紹介する.

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●TAPP法に必要な鼠径部の解剖を理解し,ランドマークとなる重要な解剖学的構造物を視認および確認しながら腹膜前腔の必要かつ十分な剝離を行うことが重要である.

●メッシュを固定する際には,留意すべき血管(異所性閉鎖動静脈や下腹壁血管の恥骨枝など)や神経(陰部大腿神経,外側大腿皮神経など)の解剖の理解は不可欠である.

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●point

●腹壁を形成する前外側腹壁の解剖を熟知し,腹部外科手術における主な開腹法を理解する.

●sublay法を行うための解剖の理解によって,腹壁瘢痕ヘルニア修復術におけるさまざまな手技への応用が可能となる.

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1200字通信・123

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 この世に生れてきて,一人の人間がその一生で体験できることなどといったら高が知れているのではないでしょうか.現代のように多くの情報が容易に手に入る時代に生きていてさえそうなのですから,太古の昔であれば,生きてゆくだけで精一杯であり,自分の周りの世界が唯一無二,その中で全てが完結していたのではないでしょうか.ただ,それはそれで,むしろ幸せだったのかもしれません.

 幸か不幸か,現代に生きる私達は,学問を修めることで過去の経験や知識を学び,自分が実際に体験できないことや違う世界を知ることができています.さらには,最近の情報化社会は,ありとあらゆる知識や情報(無用かつ有害なものまで)を簡単に提供してくれ,プロ顔負けの知識を持った素人衆も登場し,時にその道のプロを辟易させていることは皆さんも体験済みのことと思いますが,それで幸福かというとちょっと違うようです.

ひとやすみ・169

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 与えられたチャンスは積極的に受け入れるべきで,断れば二度と巡って来ない.さらにはチャンスが新たなチャンスを呼び込み,またたとえ失敗しても全ては肥やしとなり,後日必ず役に立つものである.

 不肖私が平成29年度の日本臨床外科学会賞を受賞し,総会で受賞講演を行うとともに学会誌に講演内容について寄稿した.それを読んだ学術委員より,今年度の学会総会特別企画「人生100年時代における外科医のキャリアシフト」での講演を依頼された.

昨日の患者

元気溢れる高齢者 中川 国利
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 30年ほど前は70歳以上の高齢者には根治手術は施行せずに姑息手術を,また癌化学療法も行わないのが標準治療であった.しかし近年は元気溢れる高齢者が増え,治療が変わりつつある.

 90歳代前半のIさんは耳が遠いが,身の回りは自分で行い,買い物にも出かける元気印のおばあちゃんであった.しかし3か月前から嘔気が生じ,体重も減少したため来院した.内視鏡検査を行うと,胃噴門部に進行期癌が見つかった.

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基本情報

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臨床外科
73巻11号 (2018年10月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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