臨床外科 73巻10号 (2018年10月)

特集 胃癌治療ガイドライン最新版を読み解く—改定のポイントとその背景

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 胃癌治療ガイドライン第5版が本年1月に発刊された.第4版出版以降,化学療法の分野を中心に数多くの臨床試験が決着したため大幅な改定となった.そこで,本特集号では第5版での改定内容を中心に解説するとともに,大きく改定されていない分野についても,その背景を含めて解説していただいた.大きな変更のない分野のうち最も注目される腹腔鏡下胃切除術の取り扱いについては,臨床試験としてのエビデンスは現在構築中であるため,ガイドラインでの取り扱いは慎重に進められているが,NCDデータの解析によりわが国全体での動向も明らかになっている.この点についても解説していただいた.

 胃癌治療ガイドラインは最も歴史の長いガイドラインである分,最近のガイドライン作成マニュアルに則っていない側面もあるのが特徴である.また,一般論として,ガイドラインに書かれていることだけで日常臨床が完結するわけではない.この点も含めてご理解いただき,読者の皆様にはガイドラインの有効な活用に本特集をお役立ていただきたい.

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【ポイント】

◆胃癌治療ガイドライン第4版(2014年5月改訂)発刊以降の新しいエビデンスに基づいて第5版(2018年1月改訂)が発刊された.第5版では,従来の教科書形式を踏襲しつつMinds推奨形式が大幅に取り入れられた.

◆治療アルゴリズムの重要な分岐点は,合計26のClinical Questionの中で解説されている.

◆また,ガイドライン遵守率について自己評価することを目的として,Quality Indicatorが付録として添付されている.

◆ガイドラインの大部分は,75歳以下の比較的全身状態の良好な症例を対象とした臨床試験の結果が反映されていることから,急増する高齢者患者に関して主治医の柔軟な判断が必要である.

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【ポイント】

◆M1であっても外科的切除を弱く推奨しうるケースについて列挙し,CQに誘導できるようにした.

◆内視鏡的切除を受ける早期胃癌で,新たに設けられた根治度分類(eCURA分類)を反映させた.

◆2群リンパ節が腫大している症例(bulky N症例)において術前補助化学療法を弱く推奨した.

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【ポイント】

◆腹腔鏡下幽門側胃切除術はcStage Ⅰの胃癌症例に対する標準治療の選択肢の一つである.

◆進行胃癌における腹腔鏡手術の適応は,現時点では推奨する根拠に乏しい.

◆cStage Ⅰの胃癌症例に対する腹腔鏡下胃全摘術・噴門側胃切除術も標準治療の選択肢の一つになる可能性が高い.

◆標準治療の選択肢となる症例でも,実臨床での適応は各施設で慎重に決められるべきである.

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【ポイント】

◆NCDのビッグデータは本邦における日常診療のreal worldを表したものであり,NCDデータベース事業の研究課題として,腹腔鏡下胃切除術の短期成績に関する前向きおよび後ろ向きの臨床研究が行われた.

◆腹腔鏡下胃全摘術および幽門側胃切除術は開腹手術と比較し,それぞれ安全に施行されており妥当な術式と考えられたが,腹腔鏡下幽門側胃切除術においてグレードB以上の膵液漏が有意に多かったことは注視すべき結果であった.

◆RCTによる内的妥当性の検討結果と,NCDのビッグデータを利用した臨床研究による外的妥当性の検討結果とを補完的に解釈し,今後ガイドラインに反映させていくことが期待される.

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【ポイント】

◆幽門保存胃切除術はM領域の早期胃癌(cT1N0)を対象に行われる縮小手術である.最近は腹腔鏡下で行われることが多い.

◆噴門・幽門機能を温存する術式であり,術後stasisが発生しうるが,下痢・ダンピング発生抑制などの利点,ならびに術後栄養状態,予後良好と報告されている.

◆施行に際しては,術前の的確な腫瘍範囲の把握と,幽門下動静脈などの局所解剖に精通しておくことが肝要である.

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【ポイント】

◆横行結腸間膜前葉から膵被膜を剝離して網囊を一括に切除する方法は,進行胃癌に対する標準治療であった.

◆ランダム化比較試験(JCOG1001)の結果,網囊切除は生存期間を延長しないことが判明した.

◆現在,大網切除(網囊非切除)が暫定的な標準と考えられるが,大網切除の是非についても今後検討が必要である.

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【ポイント】

◆わが国では徹底したリンパ節郭清のため,脾摘を伴う脾門部リンパ節郭清が行われてきた.

◆JCOG0110により脾摘は術後合併症を増加させ,生存期間の改善に寄与しないことが明らかとなった.

◆大彎線上の病変,4型胃癌,残胃癌での脾摘の是非は明らかではなく,今後の臨床試験による検証が必要である.

食道胃接合部癌 山下 裕玄 , 瀬戸 泰之
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【ポイント】

◆食道胃接合部腺癌は,食道浸潤“胃癌”と区別して扱っていくべきである.

◆長径4 cm以下の腫瘍であれば,No. 4,5,6リンパ節は予防的郭清を行う腫瘍学的意義は少ない.

◆長径4 cmを超えた場合は,食道・胃への浸潤距離に応じた術式選択がされるが,未解決な課題が多いところである.

どこまで伸びる? ESDの適応 小野 裕之
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【ポイント】

◆胃癌治療ガイドライン第5版において,①2 cmを超える潰瘍合併のない分化型粘膜内癌および,②3 cm以下の潰瘍合併粘膜内癌,がESDの絶対適応となった.

◆2 cm以下の潰瘍のない,未分化型粘膜内癌は適応拡大病変であるが,2018年度に結果が報告され,絶対適応病変となる可能性がある.

◆高齢者に対するSM癌へのESDの適応拡大の臨床試験が計画されている.

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【ポイント】

◆根治度評価において,治癒切除,非治癒切除の代わりに,内視鏡的根治度(eCura)という概念が導入された.

◆内視鏡的根治度ごと(eCura A, B, C-1, C-2)に異なった内視鏡的切除後の治療方針が提示されている.

◆内視鏡的根治度C-2(eCuraC-2)で経過をみる場合は,リスクを十分説明し同意を得なければならない.

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【ポイント】

◆胃癌術後補助化学療法の標準治療はS-1あるいはCapeOXである.今後はS-1+ドセタキセルも含め,各レジメンの使い分けが必要である.

◆術後補助化学療法後早期の再発に対する化学療法は,少なくとも薬剤を変更して行うことが適切と考えられる.

◆SP療法による術前化学療法は,高度リンパ節転移を有する症例において有効と考えられるが,今後さらなるエビデンスの蓄積が必要である.

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【ポイント】

◆改訂された胃癌治療ガイドライン第5版では,「推奨されるレジメン」と「条件付きで推奨されるレジメン」という分類が用いられた.

◆「推奨されるレジメン」を用いることが困難あるいは,それ以外のレジメンを行うほうがむしろ妥当と判断される場合があることが明記され,個々の症例に最善と思われる治療を選択することの必要性が強調されている.

◆現在も多くの新規治療開発が進んでおり,ガイドラインのアップデートには注視する必要がある.

ひとやすみ・168

手術同意書の作成 中川 国利
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 検査や手術など危険を伴う医療行為を行う際,患者や家族にわかりやすく説明し,同意のうえで行うのが基本である.患者のためを思っても,同意がなければ医療を行うべきではなく,いわんや主治医の興味本位の行為は絶対に許されるものではない.

 手術同意書を作成する際には,手術に伴う危険より手術を行う利点が多く,また他の治療法より有効であることを説明し,了解を得る必要がある.しかし患者や家族は医学に関してはまったくの素人であり,危険性を含むすべてを理解することは,はなはだ困難である.大きな不安を抱えながらも,外科医の情熱にほだされて信頼し,同意しているのが現状だと思う.それだけに外科医は真摯に対応することが求められる.すなわち自分自身がしてほしい最善の治療法を患者に提案し,丁寧に説明するとともに,患者の信頼に全力で応える必要がある.外科医にとって果たすべき責務は大きいが,それだけに遣り甲斐があり,達成したときの充実感は格別である.外科医の最大の醍醐味である.

1200字通信・122

職人の手 板野 聡
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 1988年4月10日に岡山県倉敷市の下津井から対岸の香川県坂出市に掛かる瀬戸大橋が開通しました.そして,今年,4月8日の日曜日には,開通30周年の記念式典が催されたそうですが,そのニュースに接して,改めて当時の大工事を思い出すことになりました.

 私は1981年から5年間,地元の倉敷市内の病院に勤務していたことから,工事の途中経過を観に行く機会が何度かありました.とくに,下津井港の地道に入って,足元から見上げた橋脚の巨大さには目が眩んだことでした.

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はじめに

 近年,再発高リスク症例の選別を目的として,手術検体より抽出したRNAを用いて遺伝子発現プロファイリング解析を行い,再発症例に強く発現する遺伝子群を同定する試みがなされている.特に乳癌領域で研究が先行的に進められ,再発における重要なプロセスである細胞周期,血管新生,細胞移動,シグナル変換などに影響を与える70の遺伝子発現から再発リスクを判定するMammaPrint®や,同様に21の遺伝子発現から再発スコアを算出するOncotype DX®などの遺伝子アッセイが商品化されている.乳癌以外の癌腫においても同様の遺伝子アッセイの開発が進められ,大腸癌領域では術後の化学療法選択の一助として臨床応用が期待されている.

 大腸癌治療ガイドラインでは,「Stage Ⅱ大腸癌に対する術後補助化学療法の有用性は確立しておらず,一律に補助化学療法を行わないよう勧められる.ハイリスク患者の選別にあたり,より有用性の高いバイオマーカーの探索研究が進められている」と,今後の発展に期待を込めた記載がなされている1).しかしながら,測定費用は高価で,現状では一般診療での利用は限定的である.また,予後予測因子を化学療法の効果予測因子として利用することの妥当性は明らかにされていない.本稿では,遺伝子発現プロファイリング診断の構築方法,大腸癌における診断法の予後予測性能と特色について詳述する.

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はじめに

 神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)は神経内分泌系への分化を示す上皮系腫瘍であり,消化管をはじめとして様々な臓器に発生しうる.発生臓器は膵や消化管のほか,肺や甲状腺など多岐にわたり,発生臓器ごとに分類,検討されることが多かったが,これらは臓器が異なっても多くの生物学的特徴を共有することから,近年NENとして総括されるようになってきた.NENの頻度は比較的稀であり,その罹患者数はアメリカの報告ではNEN全体で100,000人あたり年間6.98人1),本邦の報告では膵・消化管原発NENで年間2.69人と推定されているが2),いずれも増加傾向にある1,3).また,2010年,2017年のWHO分類改訂を経て,この領域の病理分類は大きく変わりつつある.本稿では,2017年WHO分類から新たに定義されたneuroendocrine tumor(NET)G3の概念と治療について述べる.なお,2017年WHO分類におけるNET G3の概念は,今のところ膵原発NEN(pancreatic neuroendocrine noplasms:PanNEN)に限定したものであるが,ここでは膵以外の臓器原発のNETにおいても,この基準を満たすものを,いわゆるNET G3として述べることとした.

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はじめに

 クリニカルパス学会のホームページによると,クリニカルパスとは「患者状態と診療行為の目標,および評価・記録を含む標準診療計画であり,標準からの偏位を分析することで医療の質を改善する手法」とされている1).すなわち,クリニカルパス(パス)とは医療を可視化し標準化することで,医療の質の向上と効率化という一見相反する目標を達成するためのツールなのである.病院での適用に際してはパスを物差しとして,それからの逸脱をバリアンスとして抽出し,その要因を探り,そしてその対策をとることでさらなる医療の質向上をめざすというPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルが基本となっている.

 クリニカルパスは1980年代にアメリカのカレン・サンダーによる管理工学的手法の医療への適用を嚆矢とし,その後,診断群分類に基づく1入院あたり包括払い(いわゆるDRG/PPS)の導入により,その利用が拡大したと説明されている2).わが国においても2004年に診断群分類(DPC)に基づく包括評価制度が導入されたことで,パス活用が加速した.その理由は,DPC導入により病院の医療情報の標準化と電子化が進んだことが大きい.特に,行われた医療行為を詳細に記録するE/Fファイルの活用が可能になったことが大きい.

 本稿でこれから説明するように,DPCのデータベースを活用することで,パスの体系的な評価が可能になる.そして,このような評価を通して,診療プロセスの問題点や,あるいはパスそのものの問題点(例:無理なパス)を明らかにすることが可能になるのである.本稿では,DPCデータをクリニカルパスによる医療評価にいかに活用するのかについて,筆者の分析事例をもとに説明してみたい.

昨日の患者

空舞う白鳥に想う 中川 国利
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 宮城県北部には野鳥の越冬地として有名な伊豆沼や蕪栗沼が存在し,秋になるとシベリアからたくさんの白鳥やガンが飛来する.そしてわが家には,「今年も白鳥のお蔭で美味しいお米ができましたので,食べてください.Iの娘より」と書かれた手紙が添えられ,美味しい新米が届く.

 Iさんは10年ほど前に受け持った,60歳代後半の胃癌患者である.胃切除術を行ったが,1年半後に食欲不振となり,さらには腹水で腹が膨れ,嘔吐も生じたため再入院した.しかしながら「夫と同じ胃癌になり,そして同じようにお腹が腫れ,吐き気も生じます.しかし若くして逝かざるをえなかった夫の苦しみと比べれば,まだまだ軽いものです」と,明るく振る舞った.実はIさんは30歳代後半で夫を胃癌で亡くしたが,義理の両親とともに農業を引き継ぎ,一人娘を育てた.そして母親思いの娘は婿養子を迎え,亡き父親に代わり母親を支えていた.

Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・10

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はじめに

 鼠径ヘルニアに対するTAPP法は若手医師が習得する機会も多いが,まずは安全を意識した解剖やリスクの理解と,剝離や腹膜縫合閉鎖などの基本技術の確実な習得が重要である1).基本技術の習熟後には,より侵襲の少ない手術として一部の施設で単孔式TAPPや,細径器具を使用するneedlescopic TAPPが試みられている.本稿では筆者らが行っている,needlescopic TAPPの手技の実際を詳細に紹介する.

*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年10月末まで)。

病院めぐり

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 当院は2012年10月1日に鼠径へルニア・下肢静脈瘤・痔を中心とした独立型無床日帰り手術専門のクリニックを仙台市に開院いたしました.開院より5年半経ち,これまで鼠径・大腿・臍・腹壁瘢痕ヘルニア手術が約1500件,下肢静脈瘤手術が約1000件,痔核手術(ALTA+LE・分離結紮など)3000件を行って参りました.その他,皮膚・皮下腫瘍切除や乳腺腫瘤,陥入爪,ガングリオン,褥瘡に対する皮弁手術なども行っております.

 そして,2011年3月11日の東日本大震災を石巻市立病院で被災体験してから始めた在宅医療にも力を注ぎ,開業してからは外科専門を押し出しての在宅医療を行っております.2018年の診療報酬改定で在医総管を算定しているクリニックからの依頼でも専門医による定期訪問診療が可能になり,活動範囲が広がっております.WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師),在宅訪問管理栄養士,訪問薬剤師とともに在宅褥瘡対策チームを結成し,在宅褥瘡治療がメインの活動にはなりますが,他にも在宅での陥入爪手術や直腸脱・痔核手術,皮膚・皮下腫瘍切除術なども積極的に行っております.幸い,現在まで大きな術後の合併症はありませんが,地域の拠点病院や大学病院と連携して入院が必要であれば協力をいただいております.また,術後の患者さんには私の携帯番号を帰宅前に渡し,24時間365日体制でサポートしております.在宅も同様で,必要あればできる限り早急に対応できるように心がけております.

急性腹症・腹部外傷に強くなる・7

急性腸間膜虚血 川崎 恭兵
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 急性腸間膜虚血は腸間膜血管が閉塞または攣縮することで生じ,完全虚血であれば15分で腸管粘膜の線毛がダメージを受け,3時間経過すると粘膜は脱落し,6時間に及ぶと全層性壊死に陥ります1)

 血流障害の形態として,動脈閉塞(塞栓症,血栓症),静脈閉塞,非閉塞性腸間膜虚血に大別され,上腸間膜動脈塞栓症(SMA embolism)が50%,上腸間膜動脈血栓症(SMA thrombosis)が15〜20%,非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)が5〜15%,上腸間膜静脈血栓症(SMV thrombosis)5〜15%の頻度で起こるとされています2)

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要旨

【背景】膿瘍形成性虫垂炎に対する一期的手術は,拡大手術移行や合併症の発生率が高いため,当科では保存治療後に待機的に腹腔鏡下虫垂切除術を行うlaparoscopic interval appendectomy(LIA)を導入している.【目的】当科でのLIAの治療成績を報告し問題点を考察する.【対象と方法】2012年1月〜2016年3月に当院で加療を行った膿瘍形成性虫垂炎45例を対象とした.一期的手術を行った群と,初診時にLIAの方針となった群の治療成績を,カルテレビューによる後方視的解析を行い比較検討した.【結果】一期的手術は拡大手術になる可能性が高く,手術時間が長く,合併症率も高かった.総入院期間,総医療費は両群で差がなかった.【結語】LIAは有効な治療方針であると考えられる.

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要旨

症例は53歳,男性.左乳房に径10 cmの弾性軟,表面平滑,境界明瞭な腫瘤を触知した.超音波検査では無エコーと低エコー域,マンモグラフィでは円形の境界明瞭な腫瘤陰影を認めた.MRI(造影・T2),造影CTでは囊胞とその背側壁から内腔に突出する充実性病変を認めた.穿刺吸引細胞診ではClass Ⅴ(悪性)で,囊胞内の充実性病変に対して針生検を施行したところ,乳頭癌と診断された.左乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行した.病理組織所見は被包性乳頭癌,pTis, ly0, v0, pSN0(0/4), ER(+), PgR(+), HER2:1+, Ki-67:30〜50%であった.本邦21例目の男性囊胞内非浸潤性乳管癌の1例を報告する.

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要旨

患者は80歳代,女性.排便後の突然の右上下腹部痛を主訴に救急外来を受診した.腹部は平坦,軟で,血液検査でCRPとALPの軽度上昇を認めた.腹部CTでは胆囊に高度の浮腫があり,胆囊粘膜は造影されたが胆囊筋層と漿膜には造影効果を認めなかった.胆囊捻転症と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内を観察すると,胆囊頸部から体部は胆囊床に固定されていたが,底部は肝に付着していなかった.胆囊は胆囊漿膜から肝表面へつながる索状物で絞扼されており,暗赤色を呈し浮腫状であった.索状物を切離すると絞扼は解除された.型通り腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.絞扼による胆囊炎は稀な疾患であり,文献的考察を含めて報告する.

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要旨

症例は34歳,女性.妊娠36週に心窩部痛を自覚し,当院救急外来を受診した.腹部超音波検査,腹部単純CT検査を施行し,壁肥厚と周囲脂肪織濃度上昇を伴う胆囊腫大を認めたが,胆石は認めなかった.胎児の安全性を考慮し,同日下腹部正中切開で緊急帝王切開術を施行し,術中に創部から観察したところ,壊疽性に緊満した胆囊を認めた.その創部を利用し,気腹を行い,腹腔鏡下胆囊摘出術も施行した.術中所見では捻転は解除されていたが,術前の画像所見と術中所見から胆囊捻転症と診断した.術後経過は良好であり,術後8日目に退院した.本邦では妊娠中に胆囊捻転症を合併した報告はなく,出産直後に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した1例を報告する.

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要旨

78歳,男性.腹痛で前医に搬送され,腹部CT検査で小腸腫瘍と小腸軸捻転を疑われ当院へ紹介された.CT検査を再検し,空腸腫瘍とその口側の限局的な小腸拡張,さらに上腸間膜動脈を中心としたwhirl signを認めた.小腸軸捻転による絞扼性イレウスとして緊急手術を施行した.Treitz靱帯を起点に空腸は180度反時計回りに回転していた.また,Treitz靱帯より20 cm肛門側には直径5 cmの腫瘍を認め,左上腹部背側に落ち込んで,回転した空腸を牽引して強く捻転していた.捻れを解除し,腫瘍を含めて小腸部分切除術を施行した.腸管壊死は認めなかった.病理組織学的検査ではGISTの診断であった.腫瘍による続発性小腸軸捻転は稀であり,さらに経時的変化を追跡できたため,若干の文献的考察を加えて報告する.

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要旨

症例は86歳の男性.十二指腸癌に対する亜全胃温存膵頭十二指腸切除術後1年1か月目に下血を認めたが,内視鏡検査で出血源は同定できなかった.術後1年8か月目に大量の下血を認め,造影CTと血管造影で肝外門脈狭窄による側副血行路からの出血と診断した.経皮経肝門脈造影で肝外門脈閉塞を確認し,バルーン拡張を行った.1か月後に門脈再閉塞を認めたため,門脈ステント留置と側副血行路のコイル塞栓を行った.症状を伴う門脈狭窄に対しては,早期に門脈ステント留置を行うべきと考えられた.

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目次

原稿募集 「臨床外科」交見室

バックナンバーのご案内

次号予告

あとがき 小寺 泰弘
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 読者の皆様は,診療ガイドラインに何を望まれるのでしょうか.すでに当たり前となった事実の解説よりは,CQの充実でしょうか.Minds診療ガイドライン作成マニュアルによれば,ガイドライン作成の第一歩はアルゴリズムの作成であり,その際に何らかの迷いがあって作図が止まってしまうようなところにCQが策定されるのだそうです.つまり,実地臨床の中で少なからず遭遇する悩ましい疑問(例:胃癌の肝転移は切除してよいのか?)に答えるのがガイドラインの使命の一つであり,このために客観性の高いシステマティックレビューを行い何らかの解答を導き出すとともに,その推奨度,エビデンスレベルなどを記載するのです.それでは,その治療法が保険適用でない場合でもガイドラインには掲載されるのでしょうか.実は,胃癌診療ガイドラインで扱われる内容は,読者が速やかに実践できる内容,すなわちすでに保険適用となっている医療行為に限られています.

 先進医療や患者申し出療養制度で取り上げられ,話題となって久しい治療に,腹膜転移に対するパクリタキセルの腹腔内投与があります.これを検証する臨床試験は様々な不幸な偶発的な出来事の結果,統計学的に有意な効果を示すに至らず,厚生労働省は保険適用として認可しませんでした.「惜しい」結果なわけだし,パテントの切れた安価な薬剤だし,安全性に関わるデータも潤沢にあるのに新薬と同様のお堅い判定が出たことに対し,臨床試験に関わった医師たちは不満をため込んでいるところです.実は,せめてガイドラインに載っていれば認可しやすいという非公式な声もありますが,胃癌治療ガイドラインのこれまでのポリシーでは,記載されるはずがありません.ところが,Minds診療ガイドライン作成マニュアルには,「わが国における医療の質は,医療機関,医療者の自主的な努力によって支えられているが,同時に,医療保険制度などの公的な仕組みによる影響も大きい.したがって,診療ガイドラインの提案する推奨が,医療保険制度などの医療制度,医療政策の決定に際して配慮されることが望ましい」と記載されています.「世の中には自由診療など保険適用外でも実施する方法はあるのだから,良い方法であれば適用外でもガイドラインに載せなさい,そうしたら考えるよ」というのが天からの声です.「鶏が先か卵が先か」の類の話ですが,何とか載せてもらえないものでしょうか.ガイドラインは多くのものを背負っているのです.

基本情報

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臨床外科
73巻10号 (2018年10月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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