- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
クリニカルパス学会のホームページによると,クリニカルパスとは「患者状態と診療行為の目標,および評価・記録を含む標準診療計画であり,標準からの偏位を分析することで医療の質を改善する手法」とされている1).すなわち,クリニカルパス(パス)とは医療を可視化し標準化することで,医療の質の向上と効率化という一見相反する目標を達成するためのツールなのである.病院での適用に際してはパスを物差しとして,それからの逸脱をバリアンスとして抽出し,その要因を探り,そしてその対策をとることでさらなる医療の質向上をめざすというPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルが基本となっている.
クリニカルパスは1980年代にアメリカのカレン・サンダーによる管理工学的手法の医療への適用を嚆矢とし,その後,診断群分類に基づく1入院あたり包括払い(いわゆるDRG/PPS)の導入により,その利用が拡大したと説明されている2).わが国においても2004年に診断群分類(DPC)に基づく包括評価制度が導入されたことで,パス活用が加速した.その理由は,DPC導入により病院の医療情報の標準化と電子化が進んだことが大きい.特に,行われた医療行為を詳細に記録するE/Fファイルの活用が可能になったことが大きい.
本稿でこれから説明するように,DPCのデータベースを活用することで,パスの体系的な評価が可能になる.そして,このような評価を通して,診療プロセスの問題点や,あるいはパスそのものの問題点(例:無理なパス)を明らかにすることが可能になるのである.本稿では,DPCデータをクリニカルパスによる医療評価にいかに活用するのかについて,筆者の分析事例をもとに説明してみたい.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.