看護学雑誌 49巻7号 (1985年7月)

特集 排尿自立への援助

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はじめに

 近年,わが国では高齢者社会に突入し,脳卒中や脳脊髄変性疾患が増加し,また交通事故や労働災害もますます増加している.一方,医学的には,プライマリ・ケアの進歩により,これらの症例は救命され,その結果,リハビリテーション医療の必要性は高まってきている.

 20数年前には,脳脊髄に重大な障害を起こした場合,原因疾患そのものや泌尿器系合併症,呼吸器系合併症などにより,不幸な転帰をとる症例が少なくなかったが,最近は各方面の医療および看護水準の著しい進歩により,その予後がある程度安定してきた結果,障害患者の社会復帰(身体的,精神的,社会的な意味での)がリハビリテーション医療の主要なテーマとなってきている.社会復帰に向けては,障害の受容,患者を取り巻く周囲の人々への啓蒙,四肢の機能改善および排尿排便コントロールの確立が重要となる.したがって,リハビリテーション医療に携わるスタッフは各部門の連絡を密にし,総合的にかかわっていく必要がある.

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はじめに

 脊髄損傷患者の日常生活や社会復帰を考える場合,四肢の運動機能の障害はもちろんであるが,その他に排尿・排便の管理という問題が大きく立ちはだかってくる.

 上肢の機能は回復して社会復帰が望まれているのに,日に何度も不自然な形で導尿を受けたり,留置カテーテルでベッドにつなぎとめられていたりすることがよくある.これは患者にとっても看護者や家族にとっても大変煩わしいことであるし,患者の家庭復帰や社会復帰にとって大きな障害となっている.そればかりでなく,不適当な排尿管理は,水腎症や尿路感染等の尿路合併症を引き起こして患者に重大な侵襲を加えることさえある.

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はじめに

 排尿障害を有する患者が,排尿管理をする目的は,日常生活を円滑に行なうことにある.当然のことながら当科で行なっている排尿自立への援助は,障害の程度,年齢,性別等により異なる.しかし,種々の方法で自立に達したとしても,退院後継続できなければ真に自立したとは言えない.

 そこで,患者個々の退院後を取り巻く環境(会社,施設,家庭,学校など),本人の意思を考えた上での指導を行なってきた.

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 1985年,TSUKUBA EXPO’85は,人間・居住・環境と科学技術をテーマに開催された.今や地球は科学の時代と言われている.私たち看護婦もそうした時代にふさわしい看護と援助を行なわなくてはならない.

 近年のわが国における医療科学の進歩と,救命救急医療の発展には目覚ましいものがあり,延命の可能性の枠は以前より大幅に広げられてきた.このことが人口の高齢化にさらに拍車をかけ,今や日本は世界に名だたる長寿国となった.しかし一方では,脳卒中患者をはじめとして,多くの後遺症を残しながら生きていく人々が年々増加してきている.このような患者は重症になるほど,尿失禁や呆け,痴呆といった症状を伴うことが多くなるため,本人のみならず家族の苦労は計り知れない.

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 当内科病棟は,50名前後の入院患者中,半数以上がリウマチ患者である.リウマチは女性に多発し,男性の発病は少なく,当病棟でも男性リウマチは2例のみである.リウマチ患者は朝のこわばり,関節の腫張・疼痛・変形・拘縮を伴うため,自覚症状がたくさんあるので訴えをよく聞くことが大切である.

 訴えをよく聞くと同時に観察を深め,訴えた症状の確かめを患者と共にする.患者は痛みや関節の変形や拘縮を克服しながら,ADLの自立を図っていかなければならないが,ADLの自立できる部分をつくりだすには日々の努力が欠かせない.看護婦はそれを受け止められるように働きかけ,援助をする.

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編集室から

 人には様々な出会いがある.人との出会い,モノとの出会い,コト(出来事)との出会い,人と本との出会いもそのうちの1つだろう.1つの出会いがまた新たな出会いを呼び,私たちの世界を広げてくれる.本号の特集,そしてこの対談は,ある出会いの縁(えにし)によってつながれている.それは1冊の本との出会いが始まりだった.

 新潮社から向井承子著“たたかいはいのち果てる日まで—医師中新井邦夫の愛の実践”が出版されたのは昨年7月のことだ.4年前に発表された“小児病棟の子どもたち”を読んで以来,向井氏の著作活動に注目していた私は,早速“たたかいは……”を本屋で買い求めた.内容は期待通りのものだったが,それ以上に感心したのは,この作品が本という形になるまでに費やされた準備(取材)の周到さについてであった.特に中新井医師の医療実践を理解するために,向井氏が渉猟(しょうりょう)された専門文献はおびただしい数にのぼっていた.わずか数行を書くために,あるいはむしろ,その数行を書くことを断念するために,大変なエネルギーが注ぎ込まれている著作活動の厳しさを垣間見た思いがした.

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 青年海外協力隊,日本キリスト教海外医療協力会,難民を助ける会などから,多くの医療関係者が世界各地に派遣されている.

 彼らは,医療の手を緊急に,切実に求めている人々がいれば,とんな地へでも飛んでいく.

ホスピスからのレポート 続・死にゆく人々のケア・7

病名の告知 柏木 哲夫
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 病名を知り,自らホスピスでのケアを求めて入院してくる患者だけのケアであれば,事態はそう複雑ではない.しかし,現実には,病名を知らないままホスピスに入院してくる患者もかなり多い.このような場合,病名を知らせるべきかどうかに関して,ホスピスという場でも一般病棟と同じような葛藤がある.

 ここでは,病名を知らないままホスピスに入院し,入院後病名を知った2人の患者の例を通して,患者の心理,告げるタイミング,告げるための条件などについて述べてみたい.

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 在宅難病患者と一口にいっても,生活,療養にあまり不自由のない患者から,何らかの介護を要し,あるいは全く寝たきりの患者まであって,同列に論ずるわけにはいかない.難病患者に伴う身体障害の程度,生活上の不自由度によって,日常生活上の援助方法も異なってくる.

 現在,最も難しい問題をかかえているのは重度の身体障害を持った神経筋難病患者であろう.重度身体不自由者の在宅療養は一般的には極めて困難である.

癌患者の手記—私は前を向いて歩く たとえ声は奪われても・7

苦難,ふたたび 吉見 之男
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身をよじられるような激痛が

 再発の時にも感じたことだが,病というのは我々が考えるほど単純なものではない.一筋縄ではいかないというのが偽らざる心境である.回復の早さを謳歌し,退院準備を始めたというのに,その翌日から苦難の日日が始まるとは,正に神以外知る由もないことである.

 前回食事について触れたのは,それが回復のひとつの目安でもあるからで,食事が充分にとれなくして退院もありえず,勢い目が注がれることになる.何しろ人工食道が充分その機能を果たせるかどうか,ここが一番肝心な所である.

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 瀬戸内海が青く染まるころ,島の段々畑は,除虫菊の白い花で埋まります.その中を体の不自由な父と母が散歩を楽しむ姿は,私に看護を続ける勇気を与えてくれます.父は頑固な職人気質の人で,70歳になっても‘母さんを養わなきゃいかん’と仕立屋の仕事を続けていました.

 2年前,父が脳梗塞で入院した2日後,ひどい褥創ができ,妹は痛々しいと泣きながら電話で状態を知らせてきました.私は,父がどのような看護を受けているのか不安と口惜しさで,帰らねばと思い,父の状態を尋ねました.しかし,自殺企図があった患者さんがいる病棟を離れ難く,また突然の休暇も取にくい状態でした.

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 プライマリ・ナーシングを導入すると,ナースは個別的に患者に介入ができ,密度の高いケアを行なうことができ,そして患者の満足度は大変高いといわれている.また,ナース自身も,患者ケアに対する責任と権限を持ち,自立するので,看護に対する自信も高まり,看護職員と他部門との間の対等な関係も深まり,満足度が高いといわれている.

 このように,患者にとっても,看護婦にとっても満足度の高いプライマリ・ナーシングを導入するとしたら,病院の支出が増加するであろうか.病院にとっても,理想的な看護の実行は望ましいことであるが,病院経営上採算がとれなければ,この方式の採用は病院管理者から認められないであろう.

ここまできた日本の医療・7

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患肢温存療法の歴史

 ──10代の若者に多く発症する骨肉腫に対する治療は,患肢を切断するのがまず第一の治療法だと理解していました.しかし,最近では患肢を切断しないままで治療する方法が臨床で試みられているとのことですが,いつごろから,また,どんな目的で行なわれているのでしょうか.

 昔から,どうしても患者さんの希望で切断しなかったり,種々の理由で切断できなかった例はあります.しかし,意識的に患肢を温存しようと考え出したのは10年前ぐらいからでしょう.

CHECK IT UP 日常ケアを見直そう・43

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 現在どこの病院でも様々な検査が,毎日行なわれている.患者の病状によって医師がプランニングするわけだが,①診断を決定するための検査,②病状の経過・治療効果をみるため,予後判断のための検査,③患者急変に伴う緊急検査と,その目的も様々である.

 検査にかかわる人間も,以前は医師が中心であったが,現在では看護婦,臨床検査技師,X線技師,メッセンジャー,クラークなど,多くの人々が1つの検査終了までにかかわるようになってきている.

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 何年も続く干ばつ.家畜を売りつくし,種もみさえ食べつくす.毎日何千という人が飢えて倒れる.

 アフリカからの飢餓報道に全世界はショックを受けた.特にエチオピアのすさまじいまでの飢えによる死者の教は,発表されただけでも驚くばかり.

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ブロンプトン・カクテルとは

 癌性痛治療の現代の世界的すう勢は,麻薬性鎮痛薬を薬理学的理論に基づいて適切に使用することにより,可能な限り痛みを取ることにある.

 強度な癌性痛に対する第1の治療として世界で広く使われているのがブロンプトン・カクテル(ブロンプトン・ミクスチャー,ホスピス・ミックスなどとも呼ばれる)である.ひと言でいえぱ,これは薬理学的理論に基づくモルヒネの経口的投与法である.経口であるための投与の簡便さとともに,従来の麻薬使用で恐れられた耐性,依存性,人格破壊,意識混濁などが認められず鎮痛が与えられるので,患者は残された時を有意義に生きることが可能となる.

ぼけの臨床・3

ぼけの症状[2] 井上 修
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 前号ではぼけの症状のうち思考力障害,記憶力障害,計算力障害について述べた.今月も引き続き,いくつかの症状について述べてみよう.

変革の中の医療 21世紀をめざして・4

生涯教育 岩崎 栄
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一生学び続ける時代

 生涯教育とは文字どおりの解釈で,生涯とは“広辞苑”によるまでもなく,‘この世に生きている間,一生の間,終身,終生’の教育といえます.

 たいへん興味あることですが,教育とは教えて育てること,そのとおりのはずなのに,一般には‘成熟者が未成熱者に,心身の諸機能を発育させる目的で,一定の方法により一定期間継続して及ぼす影響.その作用の主体には,家庭・学校・社会・国家その他の別がある’と“広辞苑”に解説されていることです.

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クライエントにもタイプがある

 クライエントには,いくつかのダイブがあります(先月まで‘来談者’という言葉を使っていましたが,実際には‘クライエント’という言葉が多く使われているので,今月からはこの言葉を使うことにしました).そして,そのタイプによって,適切なアプローチの方法が異なります.

 このような知識は,自分がカウンセリングを引き受けるべきかどうかと自問する時に大いに参考になると思われます.そこで,今回はクライエントのタイプと,それぞれのタイプに適したアプローチの仕方を,米国の精神科医で心理療法家でもあるエリック・マーカス(Eric Marcus)博士(写真)の分類に従って紹介します.

インフォメーション 新しいナーシングケアのために

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閉じ込められた感情

 怒り,悲しみ,不安,絶望.これら様々な感情が,怒とうのように私たちの心に押し寄せてくる.この時,身体(筋肉)は,その防波堤となって感情の波を受けとめ,自我を守ろうとする.

 ところで,現代人は,複雑な社会生活に適応するために,このような自分の感情や心理的葛藤を抑圧して生きている.心理・精神レベルでの抑圧が,知らないうちに身体レベル(筋肉)へと波及し,身体の強固な防御壁を築いていく.これが,フロイドの弟子,ウィリアム・ライヒ(W.Reich)の名づけた‘筋肉の鎧(よろい)’である.

教育婦長

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 鳴門病院は徳島県の北東部に位置している.隣接する香川県,鳴門海峡を隔てた淡路島(兵庫県)からの患者も少なくない.6月8日に鳴門大橋が開通し,淡路島と陸路でつながった.

 「卒後3年目で看護観が確立できるよ方な教育を心がかけています.1年目は基礎看護技術の向上を目指して月に2回の研究会を設け,半分は講義に,半分はべットサイドなどでの実技指導に使っています.2年目ばチームナーシングがテーマです.3年目がチームリーダーの養成ということになります.患者さんの24時間の生活を大切にできる看護婦の養成が目標てす」

ちょっと一言 総婦長のつぶやき

趣味の程度 武藤 美知
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 入学試験があった.毎年のこととはいえ,受験生1人に6分間の面接時間なので,神技的洞察力を働かせなければならない一瞬である.願書に趣味は‘読書’とある.とっさに愛読書を問うてみると,女の子には珍しく“徳川家康”と答える.次に,作者は,感銘を受けた内容は,と聞いてみると,作者も内容も,感銘の余韻もしどろもどろである.隣の席の学校長は‘そんな意地悪しなさんな’と受験生に同情を寄せる.

 記入する側からすれば,欄があるのだから一応は埋めておこうというくらいの気持ちなのだろう.さりとて,書かずに空白のままにしておくには勇気が要る.学生に限ったことではなく,実は私もこの趣味の欄に書く内容には悩まされている.昔はよかった.半紙に毛筆で履歴書を書いた時代には,自分の趣味など記入する必要もなかった.今,突然人から趣味は,と聞かれたらやはり困る.

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 人間関係がうまくいくと,80-90%の人が幸せを感じると言われている.人間関係なしに仕事をしている人はほとんどいない.その人間関係につまずき,傷ついている人は多い.もちろん仕事そのものでも,ストレスをかかえながら多くの人は生きている.

 肩が痛い,腰が痛いと訴えられたからといって,作業環境だけを変えても解決にはならない.上司との関係,同僚とのあつれき,仕事に対する働きがい,家族との関係など‘総合的なアプローチが必要なんです.でも精神衛生の面が大きいですね’

南の島での保健医療 インドネシアで保健婦として働いて・7

婦人組織と活動 塚本 香代美
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 インドネシアの地域保健開発活動は,保健行政の一部としてより,国家建設,地域開発プログラムの面が強いように思いました.

 インドネシアにおける乳幼児の栄養不良は今でも社会問題ですから,栄養改善はUPGKと呼ばれる国家プログラムとなっています.そしてこのプログラムは図のように,あらゆる部門の人々が一致協力すべきものなのです.もし各々が自分の役割を正しく認識したら,相当な速さで目標に到達するでしょう.

子供たちの痛み 指導相談科からのお便り・7

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 T君は5歳11か月の時,病院に来た.廊下で待っている間にも盛んに何かを食べている.母親との面談が始まっても,母親の手提げから素早く取り出し食べ始める.‘かっぱえびせん’だった.

 母親によれば,とにかく食べることが大好き.お子様ランチでは不足.焼き肉をもりもり食べる.大食いする分,排泄も多く,寝てからも多尿多汗.赤ちゃんの時のおむつを利用して汗取りをする.寝ている間もおしっこは3-5回出るから,ポリバケツを枕元に置いている.寝ぼけて周りを汚すから困ると母親はこぼす.

基本情報

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看護学雑誌
49巻7号 (1985年7月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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