ちょっと一言 総婦長のつぶやき
趣味の程度
武藤 美知
1
1国立療養所村山病院
pp.834
発行日 1985年7月1日
Published Date 1985/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921144
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入学試験があった.毎年のこととはいえ,受験生1人に6分間の面接時間なので,神技的洞察力を働かせなければならない一瞬である.願書に趣味は‘読書’とある.とっさに愛読書を問うてみると,女の子には珍しく“徳川家康”と答える.次に,作者は,感銘を受けた内容は,と聞いてみると,作者も内容も,感銘の余韻もしどろもどろである.隣の席の学校長は‘そんな意地悪しなさんな’と受験生に同情を寄せる.
記入する側からすれば,欄があるのだから一応は埋めておこうというくらいの気持ちなのだろう.さりとて,書かずに空白のままにしておくには勇気が要る.学生に限ったことではなく,実は私もこの趣味の欄に書く内容には悩まされている.昔はよかった.半紙に毛筆で履歴書を書いた時代には,自分の趣味など記入する必要もなかった.今,突然人から趣味は,と聞かれたらやはり困る.
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