看護学雑誌 40巻2号 (1976年2月)

特集 看護評価を問う

  • 文献概要を表示

 看護の評価ということが,最近看護界の大きな話題のひとつとなってきている.看護に評価が必要と言われることは,‘看護の独立’と決して無縁ではない.与えられた仕事を,命じられた通りの方法で機械的に繰り返す時,仕事を与える側には与え方をめぐる評価があり,また部下の仕事の遂行状態に対しての評価があるとしても,仕事を与えられる側にとって評価は必ずしも必要ではない.しかし,ひとつの仕事を,自らの意志によって,自ら計画して行う時,実行の後には必ず評価がある.計画の修正によってよりよい内容の仕事,すなわちよりよい看護を目指して次の実行につながっていくからである.

 評価とは,一般に目標をもった活動の結果,目標がどれだけ達成されたかをみて,次の活動への改善をはかるために行われるものである.これから論ずる評価は,看護の評価であって,看護婦の評価ではないことをまず明らかにしておきたい.

  • 文献概要を表示

看護の評価と看護記録

 健康が障害され自分自身の力で生活できなくなったとき,人は自分の健康上の状況の改善や生活の方法・手段を医療従事者に求めてくることが多い.私たち看護婦は対象の求める生活手段を提供する立場の者であり,患者の要求に最高に応えられるか否かが,私たち看護婦の課題なのであろう.

 しかし,常に臨床看護婦は看護の結果が満足すべきものであったか否か,不確かな疑惑を残して看護体験を終わらせている.

  • 文献概要を表示

はじめに

 私たちの内科病棟で看護場面の再構成を試みるようになってから5年が経過している.きっかけとなったのは,外科病棟勤務が長かった私が内科病棟を受け持つようになり,内科の患者のもつ問題が内向的であることから,ともすれば見落しがちになる難しさに戸惑っていた時,ウィーデンバック著の“臨床看護の本質”を読む機会を得たことである1).この中に──‘看護婦が看護をしている時に感じたり,考えたりしていることは重要であり,それは患者が“援助を要するニード”をもっているかどうか,またその患者がどんな“援助”を必要としているか,そして看護婦はどのような方法でその患者にとって有効な援助をすることができるかなど決定するための複合的な“過程”に沿って方向づけられる必要がある’──と書かれていて,このことを毎日の業務の中で考えていくことは患者の状況の見落しを少なくすることにつながるものと思われた.そこで,病棟の看護婦全員でこの著書の抄読会を行い,その後で患者とのかかわり合いを再構成することにとりかかった.

 自己評価は,初めは,その場面で目指した目的にあわせ自由な形式で書いていたが,同著者の次いで発表された“臨床実習指導の本質”の中では,次のような自己評価のための5点が挙げられていたのでそれに従って行っている.

  • 文献概要を表示

 看護の評価は,自分または自分たちが行っている看護行為がその患者のためになっているかどうか,またその行為が看護の役割・機能であるのかどうかの観点が,常に核心となって問われていなければならないと考える.

 そのためにはばく然とした看護をしていては不可能なことで,かなり意図的に患者とのかかわりをもって看護をする必要がある.意図的な看護の接近にはいろいろな方法があろうが,最も一般的に用いられている看護計画との関係を通して,更にどんな側面への意識的な取り組みをすれば,看護評価への基本となるか考えてゆきたいと思う.

マイ・オピニオン

  • 文献概要を表示

 12月のある寒い朝,車中でほどよく温まりながら窓外の景色は視野になく,今年もまた,毎年毎回のように同じことを考える私である.‘今回の講習会はこれで良かったのか’──と.厚生省中国地方医務局主催の“実習指導者講習会”の閉講式に出席する車中でのことである.

 私たちは職務柄,年間の業務計画の中で幾種類かの現任教育を担当している。その対象のほとんどが,国立病院・療養所に勤務する看護婦であるが,中国地方における経営主体の異なる病院や看護学校の実習指導者を対象とし,2か月の長期にわたるこのような講習会を担当するのは毎年1度だけである.

ベッドサイドの看護

  • 文献概要を表示

 最近,入院患者の中で老人の占める割合がめっきり増えてきている.そして,問題なのは,いわゆる寝たきり老人が病院でもつくられる,ということである.そうした時に,私たちの病棟にも,看護上多くの問題をかかえた一老人が入院して来た.手足は硬直し,両便失禁,昼夜ほとんど口を開けたまま眠っている状態で,一見して全く生きる意欲のなさそうな老人であった.

 この老人を看護していく上で,大きな壁にぶつかった.それは,この患者の‘しあわせ’とはいったいなんなのか? ということが,患者自身も含め,その家族および医師・看護婦らの考え方に,大きなギャップがあったことである.これらの考え方のギャップが,日常行われたベッドサイドの看護実践の中で,どう変化していったかに触れながら,多くの問題を考えてみたいと思う.

  • 文献概要を表示

はじめに

 ‘人はこの地上の日々を通じて自らの魂をつくるのである’1)

 Grace P. Fassは,患者が‘知覚の欠陥’‘社会的隔離’によって,不安現象や肉体的不満を表わしたことを述べ,実証的な看護を考えようとしている.2)心疾患のため安静を必要とし,予後不良のこの患者の場合も,自己実現へのニードを持ちながらも,しばしば生きる意味を見失いそうになった.このような患者および家族が,‘病気や苦難のなかに意味を見出し’3)最後まで闘病心を失わず,どうして生の充実をはかるか,ともに指向していく過程で,患者に見い出した態度の変化を,患者・家族の言動,カルテ・看護記録から報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 未熟児看護の継続性を考えると,児の退院当日から母親が育児を担当することを考慮しなければならない.ことに次の育児相談日までの期間,または保健婦の訪問指導のあるまでは,育児に支障がないよう,必要な知識・技術の習得と併わせて母子関係の樹立を目指して指導しなければならない.そのためには画一的な指導ではなく,個々の家庭状況を踏まえた上での適切な指導とともに,児の退院前から母親が実際に自分の児に触れて,実習できる場を設けることが極めて大切となる.都立母子保健院(以下,当院)未熟児室では,昭和43年9月から保健所との情報交換を実施し,昭和47年6月から,育児指導の一環として母親の育児実習を実施している.本稿では退院準備期の業務の概要,特に育児実習に重点をおいて記述する.

  • 文献概要を表示

患者概略

 Tさんは43歳の女性.茨城県の農家の主婦で家事と農作業とに従事していた.

 入院時主訴:呼吸困難.発熱.

第5病棟の彼と彼女たち・2

新ちゃんのこと(2) 前浜 政子
  • 文献概要を表示

 彼,新太郎は世界旅行が好きで,大金持ちである.

 ‘僕,どこの国の人か知っているか’

寝たきり老人の訪問看護

  • 文献概要を表示

家庭訪問する看護婦は‘お客’である

 看護婦が健康を害している人の家庭を訪ねる──これが“訪問看護”の出発点である.看護婦が病人の家庭を訪ねることは,医師の往診の折に,主として医師の診療の介助が目的でついて行くことぐらいか,特別な場合を除いては余りなかった.戦前には,派出看護婦として家庭に看護婦が派遣され,家庭の病人に付き添い,看護に従事したことがあったと学んだことがある.

 しかし現在は,看護婦と接する機会を得るには,病院または診療所を訪れることから始まる.看護婦の仕事をする場所が病院または診療所に多く集中しているからであり,一般人も,医療に関係する人も‘看護婦’といえば病院とか診療所が頭に浮んでくるほど,そうしたイメージに慣れ親しんでいる.

  • 文献概要を表示

 サリドマイド・ショックの余韻まだ消えもせぬころ,ある製薬会社から新製品の毒性の検討を依頼されたことがありました.毒性学者の立場は,実を言うとはなはだ面倒なものなのです.

 まず,動物実験の成績からヒトに対する安全性をどの程度予測し得るか,という極めて厄介な問題がある上に,自分の成績なり予測なりを,どの程度,依頼先が採用するかという問題が,実は明瞭でないのです.

  • 文献概要を表示

 精神科や小児科のような立ったり座ったりの動きの激しい病棟に使用するために作りました だれにでも似合うデザインです 腰が隠れるような上着たけで サイドベンツにし 動きやすくしました

 ベージユという色はどんな年齢層にも合い それでいて病院全体のカラーをこわしません ステッチに白を使い 全体的に引きしまり活動的な感じになりました 実際に着てみて動きを激しくしても従来のユニホームのようにスソを気にしないで働けます

  • 文献概要を表示

足底挿板

らいにおける合併症の1つに足穿孔症があるこの足底挿板は足穿孔症の治療と予防のために 穿孔局所の歩行圧軽減が目的で エアークッションに ウェッジや中足骨サポートなどが症例に応じ組み合わされる 皮革 硬めのスポンジ 硬いゴムを足底の形に合わせて切り これを重ねるようにゴムのりではり合わせる

  • 文献概要を表示

 ぱあっと朝の陽が病室の中にさし込む 若い患者が多い病室はそれだけで明るく変化してしまう 車椅子がなかつたらまるで病院という感じをなくしてしまいそうである

 この1病棟は脊髄損傷の患者が中心のため 四肢麻痺 下半身麻痺のハンディがある そのためどの患者も車椅子が足がわり 看護婦に車椅子を押してもらう患者は少ない みんな自分の両手でどこへでも動いていく

  • 文献概要を表示

はじめに

 熱傷は我々の身近に起こりやすく,その程度により生命に及ぼす影響は大きい.また瘢痕治癒・機能障害などが残り,患者の受ける肉体的・精神的負担は大きい.8日間の短い実習期間であったが,状態のよくない火傷患者が植皮術を受ける術前の看護管理,尖足予防のための足底板の工夫,広範囲な火傷創への包帯材料の工夫を試みたので報告したい.

  • 文献概要を表示

 柳行李をあけて ここにひとり 看護と人生の 魅力的な先達がいる.日本看護のルネッサンス期 すなわち戦後20余年を教育一筋に打ち込まれ ようやく新しい看護の原理が定着しかかった1970年に 職をひいて郷里へ帰られた.以来その地で自適の生活を送っておられる.先生の人となりについては──すぐれた歌人でもある──という紹介を付すにとどめよう.なにしろ人間が大き過ぎて 私ごときの投げる貧弱な網では倒底すくいきれないのである.

 かく言う私は 大先達の不肖の不肖の弟子であった.その弟子が(のろまの知恵はあとからはたらくと言うが)今になって先生から何かを盗みたいという思いに取り付かれたのである.聞けば先生の書斎には 20年分の雑記・雑筆をつめた柳行李がいくつか引退の日のまま ヒモも解かずに放ってあるという.いっちょうのぞけるものならのぞいてくるか.秋も深まってきたある日 私は録音機とシャケのくん製をぶら下げて甲州路に先生をお訪ねした.

難病—在宅ケアの実際・1

難病とは何か 木下 安子
  • 文献概要を表示

 難病という言葉が社会的に使われ出したのはそう昔のことではない.宇尾野公義1)によれば‘患者友の会などが医療福祉を願い,病因の究明や医療費の公費負担などを訴えて国や地方自治体などに呼びかける場合に用いられていたが,それがいつの間にか一般的名称となってしまった’という.このように,いってみれば素人が,行政に対する運動を通じて言い出した言葉が一般的用語になったというこのこと自体,非常に病気の特徴を表しているように思われる.すなわち,少なくとも,今までの医学の概念ではないのである.

加齢と婦人科疾患・10

  • 文献概要を表示

はじめに

 性成熟期から更年期・老年期に入ると,この時期に特徴的な種々の疾患が現れてくる.その主なものとしては,性器の老化に伴って現れてくる疾患,その中には卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少に起因する老人性腟炎とか,子宮脱のような骨盤内結合織の萎縮か原因となって出現してくる性器の位置異常など,いわゆる器質的なものと,更年期障害という言葉で代表され,自律神経失調症状を主とする機能的疾患とがあげられる.

 もちろん,このほか子宮癌・外陰癌・卵巣癌などの悪性腫瘍あるいは卵巣のう腫などの良性腫瘍の頻度も低くはない.

注射事故について・7

静脈注射 赤石 英
  • 文献概要を表示

静脈注射は静注指定の注射剤で

 静脈注射には,通常,肘関節部の静脈が使われておりますが,人によって走向や深さが異なるため,注射のベテランの看護婦さんでも苦労している光景は時たま見かけるところです.そのため,ごくまれには,動脈注射になって前腕切断という不幸な悲劇が起こったり,正中神経麻痺という不測の事故がみられることがあります.

 後者の場合,人によっては,静脈から正中神経まで1cmもないことがありますので,神経に対する注射針の刺突はもとより,注射液を血管外にもらさないように注意しなければなりません.

やさしい心電図のみかた・2

臨床的意義と正常心電図 高階 經和
  • 文献概要を表示

1.心電図をとればすべての心臓病の診断がつくでしょうか

 この質問はいかがでしょうか.答えは‘つかない’です.第1回の“生理と解剖”を読まれた方はお分かりだと思いますが,心臓は‘生体のポンプ’であり,全身に血液を送り出すために一生働き続けています.

 今から約70年前にオランダの物理学者であったアイントーフェン(Einthoven)が,心臓の持っている電気的な変化が,いったいどんなものだろうかということを知るために,世界で初めて心電図の記録に成功しました.当時,アイントーフエンの作った心電計は,とても大きくそして重く,1人や2人では簡単に動かすことのできないものだったのです.その理由は,磁石がもちつきに使う‘うす’くらいの大きさであったからです.それが現在では優れた電子工学の技術の導入によって,重さの点でも,また心電計の器械内部の構造や部品の面でも,最近30年間に格段の進歩を遂げ,現在,皆さんが毎日見ているようなスマートな直記式の器械になってきたというわけです.

基本情報

03869830.40.2.jpg
看護学雑誌
40巻2号 (1976年2月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

文献閲覧数ランキング(
7月27日~8月2日
)