総合リハビリテーション 49巻6号 (2021年6月)

特集 リハビリテーション医療における新人教育

今月のハイライト
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 医療に限らず社会において職場における教育は重要ですが,特にon the job training(OJT)の比重が大きい医療職においては,勤務先において行われる「新人教育」は,本人のキャリアの出発点として大きな位置を占めると考えられます.

 本特集では,医療関連職の新人教育として共通して実施されるべき内容,学習・教育理論,さらには感染予防にも配慮した学習・教育方法を解説いただき,実践例を紹介していただきました.

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制度について

 医師の臨床研修制度は1946年に実地修練制度(いわゆるインターン制度)として創設された.1968年に実地修練制度は廃止され,代わって2年以上の臨床研修が努力規定として創設され,2004年より必修化された.これは,卒前教育を終え,医師免許を取得したとしても,診療に従事するために十分な臨床能力を身に付けているとはいえない現状を踏まえたものとなっている1)

 歯科医師においては,1987年に歯科大学・歯学部附属病院で卒後1年間の臨床研修が開始された.2000年には医療法の改正により,診療に従事しようとする歯科医師は1年以上臨床研修を受けなければならないとされ,2006年から必修化された2)

学習理論・教育理論 駒澤 伸泰
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はじめに

 医学医療界は,「高度先進化医療による新知識や新概念の登場」,「医学医療の細分化と対照的な総合診療のニーズ」,「生命科学の飛躍的発展と新たな倫理問題」,「ユビキタス社会の到来による情報駆動型社会」,「患者の知識増大と権利意識の増大」など多方面から継続的な影響を受けている(表1)1).医療者新人教育を取り巻く環境も,これらの社会環境や生命科学の発展により,年々変化している.

 このような予測できない近未来の医療現場に対応するため,医療者教育は以前の「知識獲得」第一から,自ら課題を発見し解決を目指す「アクティブラーニング」へと変貌を遂げてきた2,3).本稿では,現在の医学医療に対応できる人材育成を目的としたアクティブラーニング,成人学習理論,Gritおよび経験型学習理論に基づくシミュレーション教育法などの学習・教育理論について紹介する.リハビリテーション領域の新人教育において少しでもお役に立てれば幸いである.

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はじめに

 2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行により,われわれを取り巻く社会状況が一変し,生活における行動変容を余儀なくされた.医療現場はCOVID-19の治療の最前線として,さまざまな医療者やスタッフが一丸となって取り組んでいる状況だろう.そのようななかでも新しい年はやって来るし,各施設では4月になり新人医療者をいつもと変わらず迎えたことと思う.本号が発行されるころには,すでに新年度の新人医療者教育がスタートしていることと思うが,昨年度と今年度は以前のような実施というわけにはいかず,感染予防に十分に配慮して実施されていることであろう.

 筆者は医学科の学生への授業や実習を行っているが,2020年度は感染防止のために授業や実習の形態をかなり大きく変更せざるをえなかった.国内の医学・医療者教育がその対応を迫られた1).これまでは何の疑いもなく対面での授業や実習を行いその一部にe-learningなどのオンラインを利用してきたが,COVID-19の流行中にはそれが一気に逆転し,インターネットを利用した遠隔授業(オンライン実習や研修を含む,ここではオンライン授業/実習/研修と統一)へとほぼ全面変更となった.筆者も2020年度は授業のオンライン化に頭を悩ませ,始める前はオンラインに関してまったくの素人であったが,職場のスタッフと画策しながらオンライン授業の行い方を構築し,何とか1年を終えた.

 さて,2021年度に入職された新人医療者の多くは,大学などでオンライン授業・実習を多かれ少なかれ経験されてきたのではないだろうか2).そういう意味では,これまでとは違った新しい形式の教育を受けてきた一期生ともいえる.オンライン授業・実習は感染予防のために国内はもとより世界中に一気に広がったが,感染の危険性がある程度落ち着いてきたとしても,対面とオンラインをブレンドした新しい学習方法は今後も進化を続けながら継続的に実施されていくものと思われる(図1).

 ここでは主なリハビリテーション職である理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST)の新人教育でのオンライン研修をイメージしながら,筆者のこれまでの経験も織り交ぜてリハビリテーション領域における,オンラインシステムを用いた新人教育(新人研修を含む,ここでは新人教育と統一)について述べたい.

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看護の質向上に向けた看護行政の動向と新人看護職員の位置づけ

 看護職員は,保健師,助産師,看護師,准看護師の4つの職種を総合して示すときに使用する.この4職種併せて現在のところ約166万人が就業している.准看護師数は減少傾向であるが,看護職員全体では就業人数は増加している.就業場所としては60%が病院であり,訪問看護ステーションおよび介護施設での就業者数は増加傾向にある1)

 経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development;OECD)加盟国で看護職員数を人口1,000人当たりで比較すると日本の看護師数は北欧,米国よりは少ないが,英国よりは多く,OECD加盟国平均よりも多い.看護師不足は解消されつつあるようにみえるが,病床100床あたりでみると,下から6番目であり,OECD加盟国の平均より少ない.つまり,日本の病床数が多いということがわかる2)

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はじめに

 リハビリテーション医療を取り巻く環境は,近年大きく変化している.少子高齢化という社会構造の変化や医療提供体制の機能分化・高度化,さらに職域の多様化などにより,理学療法・作業療法・言語聴覚学生が卒業時に身につけているスキルと臨床現場で新人に求められるスキルとの間のギャップが指摘されている.一方で,理学療法士や作業療法士,言語聴覚士は診療収益の構造として,個別診療における出来高制であるため新人に対しても,経営的にある程度の単位数が求められる.

 また,新人教育という観点でも,年齢構成上若い職員が多い職場が多く,新人療法士に対する卒後教育の充実度は施設間で大きく異なっていることが指摘されている.芳野ら1)の報告によれば,理学療法士の卒後教育の現状に関して,現場指導者は,新人が独力で業務を行うためには3年程度の臨床経験が必要と感じているという結果であったが,実際に指導されている平均期間は9.4か月であったと報告している.また,明確な指導基準がなく,指導者単位での経験的指導が行われているとも報告している.さらに,理学療法士・作業療法士の卒後教育の現状について,2017年の厚生労働省資料によれば,「新人対象の教育プログラムがある」と回答した割合は,理学療法士65.8%,作業療法士65.5%であり,「On the Job training(OJT)等の教育がある」とした割合は,理学療法士・作業療法士ともに約20%であった2).このように臨床現場においては,「新人教育は重要だが新人療法士の育成にかかわる時間を十分に確保することができない」という教育環境の理想と現実の乖離が生じており,さらに卒前教育と卒後教育においてのシームレスな連携が十分図られていないという課題が存在している.

 さらに,2020年からの新型コロナウイルス感染症の脅威は,臨床現場での教育という観点でも大きな影響を及ぼしている.特に,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の臨床技術には,現場でしか習得できない経験学習的な側面があるために,臨床実習に行く機会を失った学生たちの人材育成については,卒前教育の課題から卒後教育の課題へと移行してきており,この課題解決は今後臨床現場での人材育成に委ねられる.

 広島大学病院(以下,当院)では,2011年に「チーム医療推進のための大学病院職員の人材養成システムの確立」というテーマで文部科学省より医療人材養成プログラム開発の予算を得て,教育体制の整備と実践を図ってきた.事業終了後も,「レジデント制度」として外部より研修生を受け入れて人材育成を行っている.本稿では,現在の医学教育の方向性に触れつつ,当院で実践している新人教育に関する方針とレジデント制度の取り組みに関して紹介する.また,実践を通して発見した課題と今後の展望に関する私見を述べる.

巻頭言

コロナ禍での性善説 三上 靖夫
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 最近,性善説についてのコラム記事を新聞やwebサイトで見かけることがありました.安部前総理が昨年5月に持続化給付金の申請について,「性善説に立って対応していく.」と述べました.不正な申請などないとの前提で事業が進められていますが,実際には不正受給が相次いで発覚しました.コロナ禍で叫ばれる自粛に関するお願いは,すべて性善説が前提になっていると思われます.おそらく国民全員が自粛を守れば,感染拡大は収束に向かうでしょう.しかし,感染拡大がおさまらない原因の一つは性善説が万人には当てはまらないことを示しているのかもしれません.

 昨年,無観客ながら選手と関係者だけで1,000人が集まるスポーツ大会の感染対策を任されました.感染が疑われる人を入場させないことが重要であり,会場に入場するすべての人に,手指衛生の実施や大会前に密となる場所へ行かないなどの事項への同意書と,大会2週間前からの健康記録表の提出を義務付けました.1,000人もいれば,過去2週間に何らかの症状があったとする人がいると予測しましたが,実際には上気道の症状や腹部症状,嗅覚異常などにチェックをした人は1名もいませんでした.同意書の中の「なんらかの症状があった場合は入場できない.」とした一文が効いたのでしょうか.性善説に立てば,「全員が感染対策を十分に講じて体調を管理した結果,誰一人症状を来さなかった.」ということかもしれません.しかし,本当に,1,000名全員が過去2週間に誰一人,まったく何の症状もなかったのでしょうか.

入門講座 認知行動療法・4

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はじめに

 認知症は,2025年には有病者数が675万人に上ると推測されており,経済的にも社会保障の面からも大きな問題となっている.本邦では,2020年に認知症施策推進大綱を打ち出して,認知症対策に力を入れている.そのなかで認知症の発症や進行の仕組みを解明し,予防法,診断法,治療法,リハビリテーション,介護モデルの研究開発などあらゆるステージや病態を対象に研究開発を促進する1)という記載があり,認知症に対する効果的な介入方法の提案や開発が急務とされている2)

 現在では,認知症発症予防に向けた生活習慣の啓発や認知症の鑑別診断や治療,症状の進行に合わせたケアやリハビリテーションの質が高まり,それぞれの成果が蓄積されてきている3).しかしながら,認知症そのものや発症後の症状を完治させる薬物の開発については世界的に取り組まれているものの,未達の状況である.したがって現状では,認知症者自身の尊厳を尊重した質の高い生活の実現は困難である.このため,認知症者へのさらなるリハビリテーションの取り組みが期待されている4)

 また最近では,認知症者への精神療法を臨床へ応用した報告もある5)〔例えば,支持的精神療法や認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBT),回想法や精神分析的精神療法・精神力動的精神療法など〕.また,認知症者に対しリハビリテーションと精神療法(特にCBT)を併用した実践の報告もある6-8)

 本稿では,まず,認知症のリハビリテーションについて述べ,次に認知症者への精神療法,特にCBTについて論じる.

実践講座 治療効果判定に役立つ病的歩行の診かた・2

特発性正常圧水頭症 二階堂 泰隆
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はじめに

 2020年に特発性正常圧水頭症診療ガイドラインが第3版に改訂された1).潜在的には多くの有病高齢者がいると推定される特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus;iNPH)について,本講座では,リハビリテーション診断・治療との関係が深い歩行障害やバランス障害の特徴を,病態生理学的観点や運動学的観点などから解説する.それとともに,歩行障害における類似疾患との鑑別のポイントや,腰椎穿刺による脳脊髄液排除試験(タップテスト)ならびにシャント術前後における評価のポイント,転倒リスク評価のポイントなどについて解説する.

 なお,iNPHとはくも膜下出血,髄膜炎などの先行疾患がなく,歩行障害を主体として認知障害,尿失禁を来し,脳脊髄液吸収障害に起因した病態であり,高齢者に多くみられ,緩徐に進行するが,適切なシャント術によって症状の改善を得る可能性がある症候群である1)

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要旨 【背景】広島県尾道市では2013年度より住民参加型の介護予防事業であるシルバーリハビリ体操事業を実施している.本研究では,シルバーリハビリ体操指導士としての介護予防ボランティア活動が地域の軽度要介護認定者数を抑制できているかについて検証を行った.【対象と方法】分析対象地域は広島県尾道市とし,市内の7つの圏域についてシルバーリハビリ体操指導士活動状況と軽度要介護認定率を調査した.【結果】軽度要介護認定率の変化量は尾道市全体において0.2±0.7%であり,北部圏域と東部圏域では減少に転じていた.軽度要介護認定率の変化量との関連については,シルバーリハビリ体操指導士認定率と有意な負の相関を認めた.【結語】本研究の結果,軽度要介護認定率の変化量とシルバーリハビリ体操指導士認定率に有意な負の相関関係を認め,2圏域では変化量が減少していた.このことから,シルバーリハビリ体操事業開始前に比べ軽度要介護認定率の増加を抑制している可能性が示唆された.しかし,本研究では要因分析までは行えていないため,各圏域の介護給付費やその内容なども調査に加えた検討が必要である.

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要旨 【目的】居宅介護支援専門員(ケアマネジャー)に,がん疾患終末期患者の訪問でのリハビリテーションについて認識調査を行うことを目的とした.【対象】東京都A区の居宅介護支援事業所に在籍しているケアマネジャーを対象とした.【方法】無記名自記式質問紙調査法により,がん疾患終末期患者に対する訪問リハビリテーションのイメージや期待すること,訪問リハビリテーション導入での不安や障壁を調査した.【結果】180施設のうち71施設から145名分の回答を得た.訪問リハビリテーションに期待することとして回答者の半数以上が選択した項目は,リラクセーション,精神面の介入,疼痛や呼吸苦の軽減,家族指導であった.また,訪問リハビリテーションをケアプランに組み入れる際に不安や障壁があると78名(54%)が回答した.【結語】がん疾患終末期患者の訪問リハビリテーションの低い実施率を高めるためには,ケアマネジャーからの回答が多かった訪問リハビリテーションの期待内容に加え,導入効果の共有が重要であることが示唆された.

集中講座 評価法の使い方 シリーズ2 各論(疾患別篇)⑥・第18回

膠原病 佐浦 隆一
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 膠原病は1942年に米国の病理学者Paul Klempererが提唱した病理組織学的概念である.臨床的には自己免疫異常を背景とした炎症による真皮・靱帯・腱・骨・軟骨などの結合組織のびまん性変性,特にその細胞外構成成分(=膠原/コラーゲン)の異常によって特徴づけられる急性または慢性の病態であり,具体的な疾患としてリウマチ熱,関節リウマチ,結節性多発動脈炎,全身性エリテマトーデス,全身性強皮症,皮膚筋炎の6疾患が報告された.その後,リウマチ熱は溶連菌感染が原因であることが明らかとなって膠原病の分類から外れたが,現在,膠原病・類縁疾患には全身性エリテマトーデス,多発性筋炎/皮膚筋炎,全身性強皮症,混合性結合組織病,シェーグレン症候群,血管炎症候群(大血管炎,中血管炎,抗好中球細胞質抗体(antineurotrophil cytoplasmic antibody;ANCA)関連小血管炎・免疫複合体性小血管炎,その他),若年性特発性関節炎,成人発症スティル病,ベーチェット病,抗リン脂質抗体症候群など多くの疾患が含まれる.

 一方,膠原病類似の症状を呈する疾患群にリウマチ性疾患と自己免疫疾患がある.リウマチ性疾患とは関節リウマチ,脊椎関節炎,全身性自己免疫疾患,血管炎,変形性関節症,結晶誘発性関節症(炎),乾癬性関節炎,全身性疾患に伴う関節炎,骨疾患,その他と多岐にわたり,一部は膠原病に含まれる結合組織疾患にも分類されている.そして,自己免疫疾患とは異物を認識し排除するための役割・機能をもつ免疫系が自己の正常な細胞や組織に対して過剰/異常に反応して症状を呈する病態であり,神経・筋に対する自己抗体が原因となるギラン・バレー症候群や重症筋無力症のような臓器特異性自己免疫疾患と関節リウマチや全身性エリテマトーデスのような全身性自己免疫疾患に分けられる.

連載 リハビリテーション関連職種のキャリアサポート・第8回

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 ここ数十年でリハビリテーション医療の業界は,知識技術,環境等において躍動的な変化を遂げていると実感している.また,診療報酬や介護報酬といった社会的な背景により医療サービスが目まぐるしく変化している.そんな情勢の中で,多くの若いスタッフがリハビリテーション医療業界に足を踏み入れてきており,職場では,当然それら若いスタッフに対するキャリサポート≒人財育成の必要性が迫られている.しかし,これまで医療現場において系統立った,しかもスタンダードな人財育成の方法やマニュアル的なものは存在しない.よって,全国の職場で手探りの人財育成を手掛けている現状ではなかろうか? 医療法人社団輝生会(以下,当法人)も16年ほど前より当法人独自の人財育成のシステムを構築し実践を重ね,トライ&エラーで都度ブラッシュアップを重ねてきている.今回,僭越ではあるが当法人がこれまで構築してきた人財育成のシステムや考え方を紹介させてもらい,少しでも読者の施設での参考になればと願う.

連載 リハビリテーション医療における退院支援

退院前準備 補永 薫
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 世界保健機関(Wold Health Organization;WHO)が定めるリハビリテーション医療の定義(1981年)では,「リハビリテーションは,能力低下やその状態を改善し,障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含む」とされる.そのため,障害者が社会環境に適応するために行う機能訓練だけでなく,適切な周辺環境の整備やサービスの調整を行うこともリハビリテーション医療には望まれる.特に,疾病の発症に伴って入院に至った患者が,急性期病院・回復期リハビリテーション病院から社会復帰に至るまでの過程を適切に支援していくことは非常に重要であり,戦略的に進めなければならない.本稿では退院支援において必要な制度や手順,多職種連携の重要性を概説する.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 大正14年に柳田国男が発表した『妹の力』(角川書店)では,「祭祀祈禱の宗教上の行為は,もと肝要なる部分がことごとく婦人の管轄であった」として,我が国では巫が女性だった理由を,次のように語っている.「この任務が,特に婦人に適すと考えられた理由は,その感動しやすい習性が,事件あるごとに群衆の中において,いち早く異常心理の作用を示し,不思議を語りえた点に在るのであろう」.

 そして柳田が,そうした事例の一つとして挙げるのが,盛岡の東にある山村の家族である.数年前,この地方の富裕な旧家で,「6人の兄弟が,一時に発狂をして土地の人を震駭せしめた」事件があった.その家は,「遺伝のあるらしい家で,現に彼らの祖父も発狂してまだ生きている」し,「父も狂気である時仏壇の前で首をくくって死んだ」.「長男がただ一人健全であったが,かさねがさねの悲運に絶望してしまって,しばしば巨額の金を懐に入れ,都会にやってきて浪費をして,酒食によって憂いをまぎらそうとしたが,その結果はこれもひどい神経衰弱にかかり,井戸に身を投げて自殺をした」という.

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 「きこえなかったあの日」(監督/今村彩子)は,東日本大震災(2011),熊本地震(2016),西日本豪雨(2018),新型コロナウイルス感染症の流行(2020)といったこの10年の災害下における聴覚障害者の状況を捕捉したドキュメンタリー.

 今村作品には,どこか病みつきになるような快い反復性がある.それは,自身の認識をより高めようとする自己教育性.前作「友達やめた.」(本欄2021年1月号参照)では,今村自身が聴覚障害者ゆえ,マイノリティとしての共通性を有するアスペルガー症候群のまあちゃんと友達になれると考えたが,それほど簡単なものではないということがわかり,次にまあちゃんの行動をアスペルガー症候群の「概念」を駆使して理解しようとする自身の態度を反省し,必要なのは自身の「常識」を疑い,本当の気持ちを「語り」として引き出す対話であるという境地に達する.

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8.不正行為

Q11 特定不正行為とは?

A11 学術研究における捏造(ねつぞう)とは,存在しないデータ,研究結果などを,あたかも自分が実施したかのように意図的に作成し,研究成果や学業成果として発表する行為です.文部科学省は,「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」1)(2014年8月26日決定)において,以下の通り,捏造,改ざん,盗用の3つを「特定不正行為」と命名しています.

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 肩関節のリハビリテーションは難しい.夜寝ていると起きたくなるような痛み,投球という高速の全身の協調運動中に生じる痛みや原因がよくわからない可動域制限.いずれも日常臨床でよく遭遇し,臨床医や理学療法士,作業療法士の悩みの種となる.「なぜ? 痛いのか?」「なぜ? 挙がらないのか?」このような臨床的な問題に,30年以上,悩みながら臨床・研究を追究してきた井樋栄二先生の歩みが詰まっているのが,この『肩学—臨床の「なぜ」とその追究』である.自分自身の臨床での悩みを思い出しながらページをめくると,自身の忘れかけていた知識や思いもよらなかった知見に出合う.肩だけではなく全身を専門とする理学療法士の臨床の「なぜ?」に向き合い,より良い治療を生み出したいと願う研究者として,本書の特徴を紹介させていただきたい.

 「はじめに」では,井樋先生の肩学にかかわる歩みがまとめられている.リハビリテーションに関しては,上腕二頭筋長頭の機能や脱臼後の外旋位固定といった今では多くの人が知っているメカニズムや固定方法を井樋先生が生み出されたことと,そこに至る歩みを知ることができる.これは研究者として大変興味がそそられる内容であった.これまで当たり前に行われてきた内旋位固定をどうして外旋位で固定しようと考え始めたのか? これは新たな治療を生み出すために必要なエッセンスを感じることができた.

お知らせ

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 ここで「新型コロナ」の話題を初めて取り上げたのが昨年の4月号.もう1年半近くもコロナ禍が続いています.突然強いられた新しい「生活様式」でしたが,1年以上が経過し,もうマスクは肌の一部と化し,最初は大いに戸惑ったリモートワークやリモート会議にもかなり慣れました.そして,「コロナ禍」そのものにも慣れてきてしまった感があります.この編集後記を書いている現在,3回目の緊急事態宣言真っただ中……のはずですが,「自粛疲れ」,「コロナ疲れ」ともいわれているように,通勤の電車や近所の商店街など人出は1回目の時よりも明らかに増えています.

 そんななか悲しいニュースが飛び込んできました.ミニシアター「アップリンク渋谷」が明日,2021年5月20日をもって閉館するとのこと.「映画で見るリハビリテーション」で紹介される映画の多くもここで上映されました.長く続くコロナ禍のなか,全国のミニシアター系映画館は苦境に立たされていると聞きます.ミニシアターを支援する取り組みはたくさん行われています.ここではすべて紹介できませんのでぜひ一度検索してみてください.

基本情報

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総合リハビリテーション
49巻6号 (2021年6月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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