Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「きこえなかったあの日」—東日本大震災とその後の災害に立ち向かってきた聴覚障害者を活写
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.611
発行日 2021年6月10日
Published Date 2021/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202252
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「きこえなかったあの日」(監督/今村彩子)は,東日本大震災(2011),熊本地震(2016),西日本豪雨(2018),新型コロナウイルス感染症の流行(2020)といったこの10年の災害下における聴覚障害者の状況を捕捉したドキュメンタリー.
今村作品には,どこか病みつきになるような快い反復性がある.それは,自身の認識をより高めようとする自己教育性.前作「友達やめた.」(本欄2021年1月号参照)では,今村自身が聴覚障害者ゆえ,マイノリティとしての共通性を有するアスペルガー症候群のまあちゃんと友達になれると考えたが,それほど簡単なものではないということがわかり,次にまあちゃんの行動をアスペルガー症候群の「概念」を駆使して理解しようとする自身の態度を反省し,必要なのは自身の「常識」を疑い,本当の気持ちを「語り」として引き出す対話であるという境地に達する.
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