総合リハビリテーション 48巻2号 (2020年2月)

特集 回復期リハビリテーションに求められるもの

今月のハイライト
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 回復期リハビリテーション病棟は,脳血管疾患 や大腿骨頸部骨折などの患者に対し,日常生活活動(activities of daily living;ADL)の向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目的に,リハビリテーションを集中的に行うための病棟として2000年に制度化された.そして,その病床数は年々増加し続け,現在は85,000床を超えている.回復期リハビリテーション病棟では,退院後の患者・家族の生活を総合的に想定し,それらが生活期のなかでどのように変容し,どのような対策・支援が必要となるのか,地域リハビリテー ションの観点から学際的に検討・計画される必要がある.

 本特集では,それら回復期リハビリテーションの質の向上をはかるために何がなされるべきか,各分野の専門家に,その現状と課題を解説していただいた.

医師のマネジメント 菅原 英和
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回復期リハビリテーション病棟の医師の構成

 回復期リハビリテーション病棟の医師には内科的な管理だけにとどまらず,さまざまな機能障害への適切な評価,予後予測に基づいたゴール設定,リハビリテーション処方や装具処方,嚥下造影・嚥下内視鏡などの特殊検査,患者のやる気をも引き出すインフォームド・コンセント,福祉関連の知識,チーム医療でのリーダーシップなど,きわめて幅広い能力が求められる.つまり,リハビリテーション医療への精通が求められる.

 全国の回復期リハビリテーション病棟(2018年時点で82,279床,1,836病棟,1,445病院)で主治医を担当している医師(以下,回リハ医)7,858人(推定)を,リハビリテーション医学への精通の度合いという観点から分類してみると,① リハビリテーション科専門医(403名),② リハビリテーション医学会臨床認定医(以下,臨床認定医)(286名),③ 非リハビリテーション科専門医・非臨床認定医の日本リハビリテーション医学会会員(1,912名),④ 日本リハビリテーション医学会非会員(5,051名)の4つに分けられる(図1:文献1)より推計).おのおのの役割や課題について述べていきたい.

スタッフ教育 竹内 茂伸 , 今田 健
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はじめに

 2000年4月の診療報酬改定に伴い創設された回復期リハビリテーション病棟は,回復期リハビリテーション病棟協会による2018年度の調査において当初想定された病床数を超え,現在8万床を超えている1).創設後間もなく理学療法,作業療法,言語聴覚療法(以下,POS)スタッフへの教育が管理者らを中心に思索されているが,その重要性は増す一方である.2020年からは理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則が一部改正され,理学療法管理学ならび作業療法管理学などが新たな単位要件として新設される2).管理運営は,もはや役職に就いた者が学ぶものではなくなった.2019年度より施行された働き方改革と併せ,スタッフ個々が各自のキャリアデザインを見据えた日々の過ごし方を今一度見直す契機ととらえ,その時流が訪れているのであろう.

 社会福祉法人こうほうえん錦海リハビリテーション病院(以下,当院)は2006年の開院当初よりもれなく教育の課題に直面し,現在に至るまでその暗中模索が続いている.本稿では,当院にて試行を続ける4分野(臨床・研究・教育・地域活動)に注力する運営3)を供覧し,さらなる改善に向けた一助としたい.

病院機能評価 宮井 一郎
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はじめに—回復期リハビリテーション病棟に対する質の評価

 回復期リハビリテーション病棟に対する質の評価は2008年より診療報酬に導入された.それをストラクチャー(S:構造),プロセス(P:過程),アウトカムO:(転帰)に分類して整理すると(図1),2008年には日常生活機能評価(看護必要度B)で規定される重度患者受け入れ(P)とその改善,在宅復帰率(O)が入院料要件に組み入れられた.急性期病院との地域連携パス(P)も評価された.2010年には1日6単位以上や休日のリハビリテーション提供に対する加算(P)が導入された1).2012年には入院料1の看護師配置は15:1から13:1となり(S),重症度・看護必要度A項目(P)が入院料1の要件となった.2014年には医師(2000年には専従要件)と社会福祉士専従という体制強化加算(S)が追加され,上位入院料では医師・看護師・看護補助者・各療法士・社会福祉士の重装備の専従配置が設定された2).2016年にはA項目が見直され,実績指数という独自のアウトカム指標が導入された.2018年には管理栄養士の専任配置(S)が努力義務となった.

 実績指数は運動Functional Independance Measure(FIM)効率(利得/在院日数)を疾患ごとの算定可能な最大在院日数で補正した係数(Σ運動FIM利得/Σ(在院日数/疾患ごとの算定上限日数))で,疾患構成の異なる病院間のアウトカム比較が可能となる3,4).2016年度改定では疾患別リハビリテーション6単位以上の包括基準として実績指数が27未満,2018年に入院料1では37以上,入院料3,5では30以上が設定された.実績指数(症例ごとの修正FIM効率として示す)の中央値は導入前の2015年から2018年にかけて,23.4から37.5と著明に増加した(図2).入院時運動FIMは2015年から2018年にかけて51から46と6点低下した.退院時は75から77と2点のみの増加,利得は13から21と8点増加,回復期リハビリテーション転棟時の発症後日数は24日から21日と3日短縮,在院日数は69日から63日と6日短縮した.よって実績指数の顕著な増加の主因は入院時FIM低下と考えられ,ダウンコーディングが懸念される5,6).届け出によるアウトカム評価の限界を示すものであろう.

 医療の質のプロセスでは数値化が難しい要素が多い(図1).適正な臨床評価を行う体制や教育,リハビリテーションケア介入の質,リハビリテーション時間以外の活動性の確保,チームとしての共有と分担などは,現場での確認が適切である.第三者評価の意義はアウトカムに到るプロセスの妥当性の担保とその改善にあると考えられる.

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はじめに

 回復期リハビリテーション病棟は,急性疾患による要介護状態を,集中したリハビリテーションにより改善させる,いわゆる「リハビリテーション前置」を体現させる場として,介護保険制度の施行と同期して2000年に制度化された.日常生活動作(activities of daily living;ADL)能力を向上させるだけでなく,住み慣れた地域への在宅復帰が重要な目的とされた.

 その後も日本の高齢化は進展し,2008年の社会保障国民会議で団塊の世代が後期高齢者に入る2025年に向けた医療・介護機能の再編として,「入院医療の機能分化と連携」,および「地域包括ケア体制の整備」が2大目標とされた.2014年には病床機能報告制度が導入され,医療の機能分化を具体的に進めるため,医療機関が医療機能を選択して各地域で調整する仕組み(地域医療構想)が推進されている1).これらに伴い急性期・回復期・維持期の医療機能が定義され,リハビリテーション機能は図1のように整理されている.

 回復期リハビリテーション病棟は2016年に実績指数が導入され,2018年にはその基準が引き上げられた.効果的・効率的な入院リハビリテーションがより一層求められ,平均在院日数は短縮傾向にある.しかし回復期リハビリテーション病棟は「早く良くして早く地域に返す」だけが目的ではない.「定められた期間内に,住み慣れた地域へソフトランディング(軟着陸)させ,その生活をできるだけ長く継続させる」ことが重要である2).そのため回復期リハビリテーション病棟は,機能分化が進む入院医療と地域包括ケアをつなぐ重要な役割を担っている.

 本稿では地域生活へのソフトランディングと退院後のフォローアップについて,まず診療報酬や病院機能評価で求められているものについて述べ,さらに西広島リハビリテーション病院(以下,当院)の取り組みを紹介する.

現状の課題と展望 三橋 尚志
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20年間の推移と直近の課題

 回復期リハビリテーション病棟は脳血管疾患や大腿骨近位部骨折などで急性期病院での治療後,集中的にリハビリテーションを提供し,「日常生活動作(activities of daily living;ADL)を向上し,寝たきりを防止し,在宅復帰を促進する」ことを達成する目的で2000年4月に制度化された.施設基準もハード面,ソフト面で規定され,特に多職種協働のチームアプローチが図れるように看護師以外の医師,理学療法士,作業療法士を病棟専従(2000年当時)とされた.

 2008年からは「質の評価」が導入され(表1),2年ごとの診療報酬改定(以下,改定)で在宅復帰率,重度患者の受け入れおよびADL改善,リハビリテーション提供単位(個別リハビリテーションを最低1日2単位以上提供し,6単位以上を評価),休日のリハビリテーション提供,病棟専従職種の拡大(言語聴覚士,社会福祉士),管理栄養士の選任配置(努力規定),急性期病院からの早期受け入れ(A項目の導入),アウトカム評価(実績指数)などの評価指標が導入された.回復期リハビリテーション病棟協会(以下,協会)が毎年実施している「回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書」(以下,実態調査)の2019年度版1)によると,質の評価が導入された2008年度以降,回復期リハビリテーション病棟入院料は複数存在しているが,入院料が3段階となった2012年度以降では入院料1の割合が徐々に増加し,2017年度は61.9%と6割以上の病棟が入院料1を算定していた(図1)1).これは多くの病院が質の評価に対してしっかりと対応してきた証といえる.

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 神奈川県は筋電義手を普及させるために神奈川リハビリテーション病院に予算をつけた.筋電義手は高価であり,一側上肢が問題なければ生活に支障はないなどから障害者総合支援法では容易に認可されず,海外と比べて大幅に遅れをとっている.そこで,筋電義手を普及させるために,神奈川リハビリテーション病院では外来窓口としてかながわリハビリロボットクリニック(Kanagawa Rehabili Robot Clinic;KRRC)を設置し,HAL®,ReWalkTMといったロボットや筋電義手希望者に対応することになった.筋電義手希望者に対しては,筋電義手の訓練を行い,さらに6か月〜1年を目安に長期に貸し出し,学校や職場,家庭で使用していただく.実際に生活場面で必要か,能動義手では不十分か,など評価し,筋電義手が生活で必要不可欠であり,かつ実用的に使用できると判断した場合に労災や障害者総合支援法などの制度で申請していく.この長期貸し出し用の筋電義手を県の予算を用いて作製している.この原稿を書いている時点では4名に長期貸し出しを行い,そのうち3名が公費での申請中である(労災1名,障害者総合支援法2名).

 筋電義手の長期貸し出しを行うと,職場,学校,家庭などそれぞれの場面で工夫しながら使用することでスキルが上達し,使用範囲が拡大していく.また,片手動作で自分のことが十分にできるといった意見でも,実際には左右対称性が崩れ,かなり無理をした動作で行っていたりする.これで本当にできるといってよいのだろうかと思うこともある.しかし,筋電義手を使用することで崩れていた左右対称性が改善し,無理なく動作を遂行することができ,片手でできている動作でも有効性を認める場合がある.このように長期貸し出しを行うことは本当に生活に必要かどうかの評価ができ,有効なシステムといえる.

入門講座 リハビリテーション医療のエビデンス—言語聴覚療法・2

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はじめに

 音声障害の治療は,薬物療法,外科的治療,行動学的治療(音声治療)の3本柱からなっている.このうち,言語聴覚士が担当するのは,行動学的治療と呼ばれる音声治療である.

 2018年3月に日本音声言語医学会と日本喉頭科学会が共同で,「音声障害診療ガイドライン2018年版(以下,音声障害診療ガイドライン)」を刊行した1).ガイドラインの作成にあたっては,耳鼻咽喉科医と言語聴覚士が作成委員として参加した.医師は音声障害の薬物療法や外科的治療についての文献的エビデンスを,言語聴覚士は音声治療の文献的エビデンスをそれぞれ検討して最終的なガイドラインとして上梓した.しかし,ガイドラインの下敷きとなった文献は2014年までの文献に限られていたことや,2015年以降,音声治療に関する系統的レビューが急増したことを勘案して,本稿では,その後のレビューを含めた音声治療のエビデンスについて詳述する.

実践講座 ケースレポート—脳損傷の在宅リハビリテーション・2

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はじめに

 脳損傷患者のリハビリテーションは急性期病棟から始まり,回復期リハビリテーション病棟を経て退院し,介護保険の訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションを利用することが標準的なコースであろう.

 医療・介護保険制度を踏まえると,回復期リハビリテーション病棟への入院当初から2つの制度にわたるリハビリテーション提供をワンパッケージとして捉える計画が求められる.どこまでを入院で行い,退院後は何を行うかを入院中から検討することが必要である.

 入院中は,カンファレンスのたびに予後の推定や目標を見直し,家屋評価や外泊などの情報に基づいて計画の修正などを行う.そして在宅でのリハビリテーションの見込みをまとめていくことになる.退院後は入院中の情報に基づき,安定した生活や社会的交流の拡大を目指した取り組みを行う.患者・家族も含めた意思疎通や合意において,リハビリテーション提供の全体の見取り図を示しつつ「目標の実現に自宅で行うことは○○」というような提示の仕方が必要となる(図1).

 リハビリテーション提供側が国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)における活動や参加レベルを主眼と考えていても,本人が機能障害への取り組みに固執している場合も多くある.カンファレンスなどで本人も交えて話し合ったとしても,容易に納得を得られるわけではない.

 回復期リハビリテーション病棟の全国の平均在院日数は70日前後と考えられる1).この程度の在院日数では,症状が完全に固定してから退院する患者がすべてではない.痙縮や中枢性疼痛が退院後に顕在化することもまれではない.また,自宅退院後の症状の変化や小さな出来事に不安になったり,抑うつ的になったりする患者も多い.生活期のリハビリテーションにおいても専門職の関与が求められる.

 本稿では,坂総合病院(以下,当院)の訪問リハビリテーションの取り組みの概要と事例を提示しつつ,訪問リハビリテーションにおける留意事項を論じる.

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要旨 【目的】本研究の目的は,体幹に対するrhythmic stabilization(RS)が静的立位バランスのみならず,動的立位バランスや歩行バランスに及ぼす影響を明らかにすることである.【対象】対象は健常大学生10名とした.【方法】端座位で体幹に対し1分間RSを実施した条件と実施しない条件とで,静止立位ならびに最大前方リーチ位での重心動揺を測定し,また,5m継ぎ足歩行テストを行った.【結果】RSの実施によって,静的立位バランスが向上し,5m継ぎ足歩行時間が短縮した.しかし,最大前方リーチ位での重心動揺は,RSの施行の有無で差を認めなかった.【結語】RSの実施による静的バランス,歩行バランスの向上は,姿勢制御機構が促通されたためと考えられる.一方,動的立位バランスにRSの施行が影響しなかったのは,測定課題とした最大前方リーチ位で前傾姿勢を保つこと,ならびに下肢後面の筋作用が求められることが影響したためと考える.

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要旨 【背景】食事に関する自助具は万能カフなどいくつかあるが,機能状態によっては既存の自助具が適合しないこともある.筆者らは,両上肢機能障害のために自身での食事自助具の装着が困難な症例に対し,新たな自助具を考案した.【対象】脳梗塞および脊髄梗塞と診断された60歳台の女性.不全四肢麻痺を認め,日常生活活動(activities of daily living;ADL)は全介助であった.両手ともピンチ力は0kgであったが,右上肢での口元へのリーチは可能であり,食事自助具が適用となった.しかし,自助具の装着は自身では不可能であった.【実践】筆者らが考案した自助具は,母指,示指および中指での把持部分に窪みをつけ,そこに各手指を当てることで,ベルトなどの固定が不要な形態とした.新たな自助具の使用により,症例は自身での自助具の装着が可能となり,食事動作が遂行可能となった.【結論】考案した自助具は,手指への固定が不要であり,食事動作の自立度を高める自助具として役立つと考える.

集中講座 評価法の使い方 シリーズ1 総論①・第2回

評価法の選択 青栁 潤 , 道免 和久
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 リハビリテーション医療の現場においては現在数多くの評価法が使用されているが,採血検査値などのように客観的に数値化できる指標は少なく,麻痺の程度や日常生活動作(activities of daily living;ADL)といった臨床家が観察によって評価する項目が多い.このため評価を数値に変換する評価法の確立と普及が非常に重要なテーマになる.一方で評価法を使用する側も当該評価法の特徴や限界を理解したうえで,評価法を選択・使用する姿勢が求められる.

連載 海外留学・国際交流のすすめ・第2回

言語聴覚士の立場から 稲本 陽子
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 筆者自身,海外留学は2回経験している.一度目は,大学在学中のハワイ大学の交換留学,そして二度目が言語聴覚士(ST)になって6年目の米国ジョンズ・ホプキンス大学の留学である.この2度の留学はいずれも1年間であるが,これまでの人生を振り返っても,濃厚で思い出深い日々であり,その後の人生に大きく影響を与えた.本稿では,留学経験を紹介するとともに,留学の意義および摂食嚥下領域の国際性の必要性についての私見を述べたい.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 わが国の戦後を代表する作曲家の一人である吉田正のデビュー作にして出世作の『異国の丘』は,吉田のシベリア抑留中に作られた曲で,シベリア抑留者はもとより,戦後の窮乏状態にあった人々に希望を与えた歌だが,この歌がかくも多くの人の心を癒した要因には,吉田の曲の素晴らしさとともに,やはりシベリアの収容所にいた増田幸治によって書かれた詞(佐伯孝夫補作詞)が,鬱病の治療原理に適うものだったということも,与って力が大きかったのではないかと思われる。

 というのも,この歌の詞をみていくと,まず「今日も暮れゆく異国の丘に」と,抑留者の心情を象徴するような情景描写に続いて,「友よ辛かろ切なかろ」と,かかる苛酷な状況に置かれた友の辛さや切なさを察する詞で始まっているからである。

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 筆者は,「2011年3月11日東日本大震災,障害のある人と支援者の物語」(宣伝文)をテーマとする「星に語りて〜Starry Sky〜」(監督/松本動)が上映された札幌市の拓北・あいの里地区研修会の場に講師として居合わせた.240名もの地域住民が来場し,感想アンケートの回収率が90%を超えるという事実を目の当たりにし,本作は,地域のコミュニティづくりの一環として,町内会などを核として上映されるべき作品であるとの感を強くした.

 本作でも取り上げている被災6か月後のNHKの調査(被害の大きい陸前高田市などは含まれず)によれば,岩手・宮城・福島の沿岸部の全人口に占める死亡率が1.03%であったのに対して,障害者は2倍の2.06%.障害者が災害弱者であることを白日のもとに晒した.また,本作のベースになったと思われる『満天の星空-障害のある人たちの東日本大震災』(KSブックレット18 2012年3月11日)によれば,震災当時,障害者は各避難所に一人くらいしかおらず,支援者は「消えた障害者」を探すという課題と向き合うことになった.

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 本書はわが国の認知症作業療法領域を牽引する研究者である田平隆行氏,田中寛之氏を編者に迎えた良書である.編者らの認知症リハビリテーションに対する熱意が本書の節々に感じられる.

 本書の特筆すべき点は大きく2点あると考える.

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 多くの方はご存じであろうと思うが,私は脳卒中に代表される中枢神経障害を持つ患者の理学療法をより専門にしている.とはいえ,回復期リハビリテーション病棟のみで構成される病院に勤務していることから運動器に問題を持つ入院患者も相応に存在する.多重骨折や頭部外傷を伴う骨折例も多く,人工股関節では回復過程で難渋する事例が多い.その問題に直面したときに長年,札幌医科大学解剖学教室で学んださまざまな知識や思考過程が生かされている.

 運動器の障害を持つ患者の理学療法は脳卒中のそれとは比較にならないほど科学的であると受け止めているが,時に私には理解できないような説明がなされることがある.それは評価においても運動療法においても存在する.一番大きな原因として私自身に十分な経験がないことが挙げられる.書籍で矢印を用いて運動方向などを細かく図説されていてもリアルに理解することはかなり難しいことである.

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 日本の少子高齢化が止まりません.厚生労働省の統計によれば2018年の出生数は91万8,397人,合計特殊出生率は1.42で出生数,出生率とも3年連続の減少となっています.こどもが少なくなれば,当然こどもの整形外科疾患患者も少なくなり,全国で小児整形外科疾患を診る機会がますます少なくなってきています.

 そのような状況の中,日本小児整形外科学会が行った発育性股関節形成不全(DDH)全国多施設調査では,2年間の乳幼児未整復脱臼例1,295人中,199人(15%)が1歳以上の診断遅延例で,また3歳以上まで診断されなかったこどもたちが36人いて,調査するとそのほとんどが乳児健診を受けており,さらにその中には医療機関を受診していたにもかかわらず診断されていなかったこどもたちも多くいました.DDHのみならず,こどもの整形外科疾患の見逃しや誤診断は,こどもや家族に与える影響は大きく,時にはその後のこどもの人生に大きな負担をかけることにもなります.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 1990年から続いたセンター試験ですが,今年が最後の実施となり,来年からは「大学入学共通テスト」にかわります.何となく「センター試験」は「天気が荒れる」というイメージですが,今年も首都圏では雪がちらつく寒い日となりました.幸い交通機関に大きな乱れなどなく,受験生の足に影響はありませんでしたが,いずれにしても今の時期は一年で最も寒く,そしてインフルエンザが猛威を振るう季節です.せっかくなので,これを機に試験の日程も変更できないものでしょうか.いっそのこと世界の多くの国々と同じように9月を年度始まりにすれば,おそらく受験シーズンは6〜7月ぐらいになりそうです.ちょうど梅雨時でレジャーも少ないし良いアイデア! と思ってみたところで,すでに第1回の共通テストの日程は2021年1月16,17日に決まっている模様.

 医師国家試験をはじめ,各種国家試験ももうすぐです.お天気やインフルエンザに負けず,皆さまが存分に実力を発揮できるようお祈りしております.

基本情報

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総合リハビリテーション
48巻2号 (2020年2月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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