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神奈川県は筋電義手を普及させるために神奈川リハビリテーション病院に予算をつけた.筋電義手は高価であり,一側上肢が問題なければ生活に支障はないなどから障害者総合支援法では容易に認可されず,海外と比べて大幅に遅れをとっている.そこで,筋電義手を普及させるために,神奈川リハビリテーション病院では外来窓口としてかながわリハビリロボットクリニック(Kanagawa Rehabili Robot Clinic;KRRC)を設置し,HAL®,ReWalkTMといったロボットや筋電義手希望者に対応することになった.筋電義手希望者に対しては,筋電義手の訓練を行い,さらに6か月〜1年を目安に長期に貸し出し,学校や職場,家庭で使用していただく.実際に生活場面で必要か,能動義手では不十分か,など評価し,筋電義手が生活で必要不可欠であり,かつ実用的に使用できると判断した場合に労災や障害者総合支援法などの制度で申請していく.この長期貸し出し用の筋電義手を県の予算を用いて作製している.この原稿を書いている時点では4名に長期貸し出しを行い,そのうち3名が公費での申請中である(労災1名,障害者総合支援法2名).
筋電義手の長期貸し出しを行うと,職場,学校,家庭などそれぞれの場面で工夫しながら使用することでスキルが上達し,使用範囲が拡大していく.また,片手動作で自分のことが十分にできるといった意見でも,実際には左右対称性が崩れ,かなり無理をした動作で行っていたりする.これで本当にできるといってよいのだろうかと思うこともある.しかし,筋電義手を使用することで崩れていた左右対称性が改善し,無理なく動作を遂行することができ,片手でできている動作でも有効性を認める場合がある.このように長期貸し出しを行うことは本当に生活に必要かどうかの評価ができ,有効なシステムといえる.
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