総合リハビリテーション 46巻8号 (2018年8月)

特集 身体障害者の移動手段

今月のハイライト
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 広辞苑では「移動」とは移り動くこと,移し動かすこと,としています.前者は主体的な活動で,その能力を英語ではmobilityと表現します.一方後者は英語のtransportationに相当します.身体障害者の社会参加にとってはいずれも重要な意味をもつのみならず,成人病予防の観点からも「移動」は必要です.最近,脳卒中後や認知症患者の自動車運転再開に関する研究が多く行われていますが,本特集では対象を身体障害者,なかでも肢体不自由者に限り,社会参加を見据えた移動手段について多面的に解説していただきました.

Introduction 芳賀 信彦
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 2006年に国連総会で採択され2008年に発効した「障害者の権利に関する条約」の第二十条には,「個人の移動を容易にすること」というタイトルがつけられ1),この条約を締約した国には,「障害者自身ができる限り自立して移動することを容易にすることを確保するための効果的な措置をとる」ことが求められている(表1).日本は2014年に本条約を批准し,これに対応して制定された「障害を理由とする差別の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が2016年4月から施行された.

 このように「移動の確保」は障害者の社会参加にとって基本的な権利であり,特に運動器や感覚器に機能障害をもつ身体障害者では重要な意味をもつ.「総合リハビリテーション」誌では,発刊から間もない1975年に「身体障害者と移動手段」の特集が組まれたのをはじめとし,1981年に特集「移動手段」,1988年に講座「障害者の移動」,1990年に実践講座「障害者と共に生きる環境づくり」,1995年に特集「福祉の街づくり」,など障害者の移動に関する企画が組まれている.1975年の特集には5つの論文と1つの座談会が掲載され,論文のうち3つは自動車に関するもの,残りは地下鉄のシステムと電動車椅子に関するものである.これから40年以上が経過した今,この1975年の特集を振り返ることは,技術や社会システムが進歩した点,しなかった点を考えるのに役立つと考える.今回の特集に先立ち,1975年の特集(総合リハビリテーション,3巻7号)を少し振り返ってみたい.

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障害者にとっての移動までの歴史(表)

 わが国に鉄道が走りはじめたのが1929年のこと.鉄道の運賃割引制度は1950年の国鉄による身体障害者割引制度(障害者に対する運賃割引方)がはじまりといわれていて,その対象は視力障害者,肢切断・肢体不自由者,神経中枢障害者で,外見で障害がわかる人々を対象としてきた歴史がある.前年の「身体障害者福祉法」の制定が原動力となっている.戦後の混乱期になぜ?と思うだろうが戦争により障害を負ってしまった人を救う,いわば戦傷病者を主な対象としたものがはじまりといわれている.

 その後1952年に「身体障害者旅客運賃割引規程」を国鉄が正式に公示され,1952年にはバスの身体障害者割引制度がはじまった.運転免許では1960年の道路交通法改正により身体障害者の運転免許取得が認められているが,交通政策としてはまだまだ不十分であった.そのため,心身障害者対策基本法成立(1970年)の社会情勢があるなかで,1976年には川崎市で路線バスの「車椅子による乗車のお断り」を端にした障害者のバス籠城行動が起こり,各地に障害者運動が飛び火したものの,全体としては大きな前進なく月日が経過した.

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はじめに

 肢体不自由者にとっての旅行や仕事,就学,その他の社会参加を支援する移動手段として,多種多様な車椅子が開発され市販されている.車椅子を駆動方法で分けると,①本人が上肢で駆動する手動車椅子,②介助者が押して移動する介助用車椅子,③電動で移動する電動車椅子,シニアカーとかセニアカーとよばれる電動三・四輪車,そして近年開発が進んでいる④電動補助装置を手動車椅子に装着して移動する改良型ハンドル型車椅子などの種類がある.そして各種類には,多数のメーカーがさまざまなデザインや機能を装備して,多様な車椅子を販売しており,本人の生活方法やライフスタイル,身体機能,生活環境などに合わせて選択できるようになってきた.総合支援法や介護保険法などの公的支援を使って入手する場合は,さまざまな制限もあるが,選択できる車椅子が増えてきている.

 また近年では,車輪のホイールの中にモーターを組み込んだ車輪(モーターインホイール)を自転車や自動二輪車,自動車,そして車椅子にも装備できるようになってきたことやバランス機能などを向上させるジャイロやカメラ,センサーそしてGPSでのナビゲーション機能などの発達によって,移動補助機具としての車椅子の発展と社会参加する人や社会貢献する人を増大させていくと思われる.

 このような状況のなかで,肢体不自由者が車椅子で屋外を移動するためには,どのような車椅子が求められているか,また,社会環境には何が求められるのかについて記述する.

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はじめに

 今,この論文をお読みになられている方は脊髄損傷者の車椅子使用者が自動車運転(以下,運転)をする事実は疑わないであろう.しかし,さかのぼること60年前は,自動車を運転すること自体,考えられなかったことである.歴史をひも解いてみると,1959年に厚生省社会局厚生課が警察庁保安局交通課に依頼して,障害者の自動車運転免許取得の検討を依頼していた.数回の検討会の結果,1960年の道路交通法の施行により,免許取得が開かれた.そして,1961年,当センターでは寄贈された東洋工業のR360クーペで入所者のクラブ活動の一環として「自動車操作訓練」が始まった.その後1974年,九州の農協共済別府リハビリテーションセンター,1978年,兵庫県立総合リハビリテーションセンターと続く.

 このように障害者の自動車運転訓練,免許取得が当然となった.そして,自動車の進歩,特に安全装置の進歩,道路網の発達などによるモータリゼーションの著しい発展は,障害者の社会参加に寄与したと考える.本稿では身体障害者のうち脊髄損傷者において,自操型(市販車ベースに運転補助装置を後付け)で実際に行われている自動車への乗降,車椅子の搭載,実際の運転操作方法,さらに日本における福祉車両の普及状況,理学療法士(PT)からみた課題について述べる.

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公共交通のバリアフリー化状況

 2000年4月に介護保険のサービス提供が開始された.これは高齢者ができるだけ住み慣れた地域に住み続けられるように,困難な日常生活を保険制度で支援する仕組みである.この背景には高齢者人口が増えた一方で子供の出生数が減り続けたため,家族による介護が困難になってきたという社会的な問題がある.そして介護が必要となる前の高齢者には,できるだけ自立した生活を送ることが期待された.そのためには高齢者が公共交通機関を使って町の中心に出かけられるように交通環境を整備する(バリアフリー化)ことが喫緊の課題であり,これに応えるように,2000年11月に「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(通称名は,交通バリアフリー法)が施行された.そして2006年に改正され,その呼称は「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称名は,バリアフリー法)と改まり,今年で施行から18年となる.この法律は強制力がある法律であり,ガイドラインの基準に違反すると罰金が科せられる.

 以下に各公共交通機関の現状について解説する.

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はじめに

 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて,国は2017年ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議を設置した1).公共施設や交通インフラのユニバーサルデザイン化,心のバリアフリー,ユニバーサルツーリズムの推進などを通じ,高齢者や障害者を含む多様な方々の社会参加可能な共生社会の実現に向けた動きが加速している.一方で,多くの障害者,高齢者が普通に旅行に出かけているかというと,そうではなく,旅に出ることをあきらめてしまっている人や,どのように公共交通を使って旅に出たらよいかがわからない人がまだ多い.初めてツアーに参加した人からは,「病気で車椅子になってからは,旅行に行けないと思っていた」,「もっと早くこんな旅行があることを知っていたら良かった」,「いつか行きたいと思っていた○○に行くのはあきらめていた」という声をいただくこともある.

 KNT-CTホールディングスグループのクラブツーリズム株式会社(以下,当社)が1997年から提供しているバリアフリー旅行の経験から,障害者の旅行がどのようなものか,移動交通における現状やこれからの課題などを解説する.

巻頭言

50年の重みとこれから 森田 千晶
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 1968年.メキシコオリンピックそして,のちに映画「白い恋人たち」となったグルノーブル冬季オリンピックが開催された年.国内では大学の学生闘争のまっただなか,3億円事件の起きた年でもあった.わたしはまだ小学生だったが,この年の7月に日本義肢装具学会の前身である義肢装具研究同好会が発足した.さかのぼること5年,1963年に日本リハビリテーション医学会が発足し,その3年後1966年に「理学療法士及び作業療法士法」が施行され日本のリハビリテーションが本格的に始動した.1960年代はわが国のリハビリテーションにとってはまさにスタートの時代であり,その時の先輩たちの意欲とパワーが現在のリハビリテーションの発展を担ってきたと考える.1968年に発足した義肢装具研究同好会は1972年11月に日本義肢装具研究会と名称変更し,研修セミナーや学術大会を行い,1984年11月からは名称が現在の「日本義肢装具学会」になり,2013年に一般社団法人の認可を受けた.当学会は医師,セラピスト,義肢装具士,エンジニアと多職種が参加するわが国唯一の学術団体である.そして2018年,50周年という大きな節目を迎えた.私が神奈川県総合リハビリテーション事業団に入職した年に初めて学会出張に行かせてもらったのが日本義肢装具研究会だった.作業療法士以外の多くの職種が義肢装具に関した研究や臨床での実績を発表していて,非常に興味深く,とても楽しかった.神奈川リハビリテーションセンターにはその当時としては画期的なリハビリテーション工学科があったが,この義肢装具研究会への出張も私が義肢装具,福祉用具に深くかかわることになったきっかけの1つといえる.

 義肢装具・福祉用具はこの50年で大きく発展してきた.特に最近ではロボットテクノロジーや3Dプリンターの進歩によって,ハード面での機能は加速的な進歩をしている.特に筋電義手はこの数年で飛躍的にその機能が進歩している.今までの筋電義手は母指と示指,中指の三指つまみが主流であったが,さまざまな把持形態やつまみができ,マウス操作も可能な手指機能を持ったものや,解剖学的にも「手」のかたちを再現し,見た目がとても自然なものが市販されている.しかし,どちらも非常に高価で実際にはなかなか使うことができない.この20年で筋電義手が価格表に載り,特定補装具として試験給付できるまでにこぎつけたが,その間に新しい機能の筋電義手が市販されるようになってしまった.さらに高額になった義手.日本で普及できるのだろうか,できるころにはもっと新しい機能をもったものが出てきて……いつまでたっても必要としている人にタイムリーに使ってもらえるようにはならないのだろうか.

入門講座 感覚障害とリハビリテーション・1【新連載】

聴覚障害 進藤 美津子
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はじめに

 聴覚は,人間が音声言語によるコミュニケーションを行ったり,音の情報によって周囲の状況を理解したり,音楽を楽しむことができる重要な感覚である.乳幼児期から聴覚障害が生じると,耳から得られる音やことばの情報の受信に制約があるため,音声言語の発達が遅れてしまう.学童期から成人期に聴覚障害になると,音声言語のコミュニケーションに支障が生じるとともに,心理面では孤独感や寂寥感が強くなり社会的な活動に影響が出てしまう.

 21世紀に入り,補聴器の技術革新によるフィッティングの進歩や人工内耳埋込み手術による聴覚補償がなされ,重度の聴覚障害があっても残存聴力の活用が期待されるようになった.一方,かつてろう教育において使用が禁止されていた手話は,ろう文化の広がりとともにろう学校幼稚部から導入する学校がみられるなど,教育や医療・福祉・コミュニケーションなどの領域で普及してきた.

 聴覚障害の発見については,検査法および機器の技術開発により,検査の実施や判定が容易になり,早期発見が進み,聴覚障害児の訓練・指導,聴覚障害児者への支援が展開されてきた.本稿では,聴覚障害の種類とその対策などリハビリテーションや支援を中心に取り上げることにする.

実践講座 リハビリテーション看護・1【新連載】

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はじめに

 リハビリテーションは,環境との相互作用における健康状態の個人の機能の最適化と,障害を軽減するために設計された介入のセットである.急性・慢性の疾患,障害,外傷,妊娠,老化,ストレス,先天異常などの状況を含んだあらゆる健康状態の人に対して,生きて働き,学び,潜在能力を最大限に引き出すための活動である1)

 日本リハビリテーション看護学会は,リハビリテーション看護を,疾病・障害・加齢等による生活上の問題を有する個人や家族に対し,障害の経過や生活の場にかかわらず,可能な限り日常生活活動(ADL)の自律,QOL(生命・生活・人生の質)の向上を図る専門性の高い看護である,と定義している2)

 本稿ではこれらの定義に基づいて,リハビリテーション看護とは,どのような専門性のもとに,何を成果とする看護であるのかを解説したい.日本において看護がどのように規定され体系化されているのか,そのなかでリハビリテーション看護がどのように位置づけられているのかを解説する.そしてリハビリテーション看護の理念と専門性,リハビリテーション看護師に求められるコンピテンシーを概観する.そしてリハビリテーション看護師のキャリアパスを概観したうえで,組織実践としてのリハビリテーション看護の実践について解説をする.

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要旨 【目的】東京湾岸リハビリテーション病院(以下,当院)におけるmodified Constraint-Induced Movement Therapy(以下,修正CI療法)の現状とその有効性について報告する.【対象】2014年5月〜2017年5月の3年間で,当院作成の適応基準を満たし,介入前後ですべての上肢機能評価が実施可能であった回復期脳卒中片麻痺患者14名.【方法】1日3時間を週5日,3週間(計45時間)の修正CI療法(課題指向型訓練とtransfer package)を実施した.効果判定には,Fugl-Meyer Assessment (FMA),Wolf Motor Function Test-Functional Ability Scale (WMFT-FAS),Simple Test for Evaluating Hand Function (STEF),motor activity log (MAL)を用いた.【結果】すべての上肢機能評価について,介入前に比べて介入後に有意な改善を示した(p<0.01).特徴として,FMA,WMFT-FAS,STEFは効果量「中」,MALは効果量「大」であり,修正CI療法は,麻痺肢の生活内における参加状況において,より効果を上げていることが明らかとなった.【結語】回復期リハビリテーション病棟においては,日常生活活動(activities of daily living;ADL)の改善を優先しつつも,麻痺肢に対して積極的な介入を行うことで,退院後の「学習性不使用の防止」に貢献できる可能性が考えられる.

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要旨 【背景】著明な嚥下障害を生じる重症心身障害に対して腹臥位姿勢での摂食嚥下訓練を行い,その有効性を検討した.【対象】症例は47歳,女性.診断名は痙直型アテトーゼ脳性麻痺である.38歳時に胃瘻造設術を施行後も摂食機能維持のため昼食時のみ車椅子座位での食事摂取を行っていたが,46歳ごろから徐々にむせ込みが頻回となった.【方法】ビデオ透視嚥下検査を用いて嚥下機能評価を行い,嚥下前誤嚥が主たる要因であると判断した.腹臥位姿勢での摂食機能が良好であったため,腹臥位装置での摂食嚥下訓練を開始した.【結果】腹臥位ではムセや嘔吐が減少したため大幅に経口摂取量が改善し,胃瘻部からの栄養補給が不要となった.食事メニューの目視も頻回となり,摂食時の呼吸状態も安定した.【結語】本症例のように嚥下前誤嚥が主たる要因の場合,腹臥位姿勢をとることによってオーラルコントロールが容易となる.また重力による下顎後退・舌根沈下の減少,上気道の確保による努力呼吸の軽減,唾液の流出と停滞の軽減も摂食機能の改善に影響したと考えた.

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はじめに

 高齢社会の進展に伴い,加齢や脳血管障害を原因とした摂食嚥下障害の有病率はますます増加している.嚥下機能評価や嚥下障害の診断には情報量が多く精度の高い方法として,嚥下造影検査1)や嚥下内視鏡検査2)が用いられているが,診断コストや身体負荷が高く日常的に実施することは難しい.

 嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査に代替する簡便な定量的診断方法として,頸部聴診法3,4)や喉頭挙上にかかわる筋群の筋電(electromyography;EMG)計測5,6)を行う方法が存在する.頸部聴診法は日常的な嚥下機能評価を可能にし,嚥下障害スクリーニングに有用な手法である.またEMG計測は,喉頭運動に影響を及ぼす中枢および末梢神経やその支配筋の障害である誤嚥の評価に重要な情報を提供する.それぞれ,ノイズ混入や筋群を構成する各筋の筋電が分離困難などの問題が指摘されているが,簡便かつ定量的な方法として現在でも嚥下機能評価における有用性は高い.さらにこれら双方を同時に計測することでより高精度な嚥下機能評価や嚥下障害スクリーニングが期待できる7).また,リハビリテーションにおけるバイオフィードバック療法において,筋電信号を嚥下音から同定する嚥下タイミングと関連づけてフィードバックすることで,正常嚥下に必要な舌骨挙上の大きさのみならずタイミングの訓練を行うことが可能となる.しかし嚥下音と舌骨上筋群の筋電計測を同時に行う場合,必要な装置の可搬性やコストなどの利便性は決して高くない.頻回なベッドサイド診断やバイオフィードバック装置として,在宅リハビリテーションで用いるには同装置の小型化,低コスト化が重要な課題である.

 そこで本研究では,頸部聴診法による嚥下音および舌骨上筋群の筋電を同時計測し,視覚的にフィードバック可能な小型低コストバイオフィードバック装置の開発を行った.同装置の妥当性を検証するため,唾液および少量の水を嚥下する条件下で嚥下音と舌骨上筋群EMGの特徴および両者の関係性を分析し,過去の研究との比較検証を行った.

連載 職業リハビリテーション関連機関の知識

就労継続支援B型 小西 隆史
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 障害者総合支援法の訓練等給付には,前号で紹介した[就労継続支援A型]のほかに,[就労継続支援B型]がある.就労継続支援B型は,雇用契約を結ばない[非雇用型]であり,雇用契約を結ぶ[雇用型]の就労継続支援A型とでは,サービス内容に違いがある.福祉的就労は,障害者個々に合った働く場を選択することができる仕組みになっている.

 今回は,就労継続支援B型の概要と利用の流れを説明する.

連載 災害と医療体制

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 第二次世界大戦後の日本においては,3つの大きな震災,阪神・淡路大震災,東日本大震災,熊本地震をきっかけに災害医療体制が大きく変化してきた.それぞれの大地震による被害を目の当たりにして,医療全体がどのように向き合い,医療支援をより充足させることができるかという議論が各方面で進んできた.その議論は今も検討が続いており,避けることができない今後の大災害に備えて,国全体での災害医療体制を構築しようとしている.

 最初に3つの災害の特徴を振り返って災害医療支援の変化について考察してみる.

連載 補装具支給・判定Q & A

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A 医療の臨床場面,在宅生活者あるいは施設入所者からの相談場面などで,上記のような疑義が生じることがあるかと思います.「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)で作製する更生用装具いわゆる補装具と医療保険で作製する治療用装具の違いは何か,どちらの制度を利用すべきかを考える場合,身体状況はもちろんのこと,その使用目的,制度の優先性,装具などの種類,身体障害者手帳取得の有無,利用者の経済面,などさまざまなことを勘案する必要があります.それらを検討することで答えはおのずとみつかるでしょう.

連載 公害・薬害とリハビリテーション

水俣病 臼杵 扶佐子
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 水俣病は,高度経済成長に重点がおかれ,環境保護の意識がまだ希薄だった時期に,工業排水が原因で住民に大きな健康被害が発生した公害病である.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 明治38年に発表された『吾輩は猫である』の冒頭には,漱石の分身的な主人公である中学教師の苦沙弥が胃病・胃弱のためにタカジアスターゼを服用する場面があるが,漱石の胃病が本格的に悪化したのは明治42年頃のようで,鏡子夫人が昭和3年に発表した『漱石の思ひ出』(改造社)の36章には,「この時分から段々胃が本式に悪くなって行ったものらしいですが,痛んで来ると自分では懐炉かなんかで暖めておいたらいい位にしか考えて居なかった」という記述がある.また,翌43年の状態についても,37章に「次の年になりましてから,胃の工合が益々いけません」,「始終痛む様子ですが,やっぱり手当はいい加減なその場限りで,ありきたりな胃病の薬をのんで,通じでもつけとくといった手軽さです」と記されていて,漱石は自らの病をそれほど深刻に考えておらず,自己流に対処するだけで,なかなか専門医を受診しなかった様子がうかがえる.

 それでも,この年の6月になると,鏡子夫人らの勧めもあって東京・内幸町にあった長与胃腸病院を受診するが,その結果,便中の出血が確認されて胃潰瘍の診断を下されている.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 「女になる」(監督/田中幸夫)は,神戸の性同一性障害の大学生・中川未悠の性別適合手術前後の時間にフォーカスしたドキュメンタリー.子供の頃から女性になることを夢見ていた未悠(みゆ)は,高校時代に家族にカミングアウトし,大学入学後に女装を開始する.女性として社会に出ることをめざして,大学3回生の春休みに性別適合手術を受ける.

 「爽やかLGBTsドキュメンタリー」というサブタイトルをつけた本作は,トランスジェンダー仲良し3人組の十数分にわたるガールズトークから始まる.全体尺数73分ということを考えれば,けっこうな時間の割き方だ.おそらくこれはガールズトークへの強い憧れ,情念の賜物.そうだとしても,このシーンから自身の不安や思いの出力先・共有先としての仲間(ピア)の重要性が浮き上がってくる.男の子時代の幼少期の写真を互いに見せ合い,彼氏やセックスの話ができるのも同じ境遇のピアゆえのこと.

私の3冊

私の3冊 藤田 真樹

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 このたび,川平和美先生,弓削類先生,紀ノ岡正博先生編集による『再生医療とリハビリテーション』が三輪書店より上梓された.

 再生医療は,これまで治療が困難と考えられてきた疾患に対して行われる後遺症や障害を残さない根治治療を目指した新規治療法と考えられていたが,臨床試験が進むにつれ,細胞治療後のリハビリテーションの重要性が示されるようになってきた.つまり今,再生医療を行う側とリハビリテーション医療を行う側の連携が非常に重要になってきているわけであるが,それにもかかわらずその連携の実態が明確に見えてこない状況もある.その中で,再生医療,リハビリテーション医学,ロボット工学,脳科学に関する科学の進展と知識の普及を目的とし「再生医療とリハビリテーション研究会」が2013年に発足され,多くの国内外の関連領域が連携しながら,研究者と臨床家の橋渡しのシステム化を進めてきた.本書はそれら関連領域の連携を深めるための必需品とすべく,再生医療,リハビリテーション医学,ロボット工学,脳科学領域に携わっておられる33名の研究者や臨床家からなる執筆陣が,各領域の内容を全3章178ページにコンパクトにまとめられたものである.

お知らせ

第32回日本靴医学会学術集会

CRASEEDセミナー

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 「誰か,私を上まであげてください」車椅子の少女が駅の階段の下で小さな声でいう.「どなたか,私を上まであげてください」勇気を出して大きな声でいう.気づいた数人が駆け寄り車椅子を抱え上まであげてくれる.その様子を見ていた母親が泣き崩れる…….名作ドラマ「車輪の一歩」のラストシーン.1979年11月の放映から約40年経った現在,ほとんどの駅にエレベーターが設置されています.国土交通省の「鉄軌道駅及び鉄軌道車両のバリアフリー化状況」によると,エレベーターが設置されている駅の割合は,2001年度末には13%程度.つまりたったの20年足らずの間にハード面でのバリアフリー化は急激に進んだといえます.

 さて,バリアフリー化は,車椅子をはじめとした障害者だけでなく,ベビーカーや高齢者の外出も可能にしました.スーツケースやキャリーバッグを持っての移動も楽ちんです.駅のエレベーターはキャリーバッグを持った人たちで満員,多機能トイレはお母さんが赤ちゃんのオムツ替えで長時間使用中…….

基本情報

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総合リハビリテーション
46巻8号 (2018年8月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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