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はじめに
高齢社会の進展に伴い,加齢や脳血管障害を原因とした摂食嚥下障害の有病率はますます増加している.嚥下機能評価や嚥下障害の診断には情報量が多く精度の高い方法として,嚥下造影検査1)や嚥下内視鏡検査2)が用いられているが,診断コストや身体負荷が高く日常的に実施することは難しい.
嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査に代替する簡便な定量的診断方法として,頸部聴診法3,4)や喉頭挙上にかかわる筋群の筋電(electromyography;EMG)計測5,6)を行う方法が存在する.頸部聴診法は日常的な嚥下機能評価を可能にし,嚥下障害スクリーニングに有用な手法である.またEMG計測は,喉頭運動に影響を及ぼす中枢および末梢神経やその支配筋の障害である誤嚥の評価に重要な情報を提供する.それぞれ,ノイズ混入や筋群を構成する各筋の筋電が分離困難などの問題が指摘されているが,簡便かつ定量的な方法として現在でも嚥下機能評価における有用性は高い.さらにこれら双方を同時に計測することでより高精度な嚥下機能評価や嚥下障害スクリーニングが期待できる7).また,リハビリテーションにおけるバイオフィードバック療法において,筋電信号を嚥下音から同定する嚥下タイミングと関連づけてフィードバックすることで,正常嚥下に必要な舌骨挙上の大きさのみならずタイミングの訓練を行うことが可能となる.しかし嚥下音と舌骨上筋群の筋電計測を同時に行う場合,必要な装置の可搬性やコストなどの利便性は決して高くない.頻回なベッドサイド診断やバイオフィードバック装置として,在宅リハビリテーションで用いるには同装置の小型化,低コスト化が重要な課題である.
そこで本研究では,頸部聴診法による嚥下音および舌骨上筋群の筋電を同時計測し,視覚的にフィードバック可能な小型低コストバイオフィードバック装置の開発を行った.同装置の妥当性を検証するため,唾液および少量の水を嚥下する条件下で嚥下音と舌骨上筋群EMGの特徴および両者の関係性を分析し,過去の研究との比較検証を行った.
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