総合リハビリテーション 45巻4号 (2017年4月)

特集 自動車運転再開に向けた取り組み

今月のハイライト
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 高齢運転者が引き起こす重大交通事故の報道が相次いでいる.2017年3月より改正道路交通法が施行され,リスクの高い運転者への対策として,臨時適性検査制度の見直し,臨時認知機能検査・臨時高齢者講習制度の新設など,特に高齢運転者への重点的な対応が図られている.しかし,買い物や仕事など社会生活を送るうえで自動車運転を必要とするものの,身体機能障害者,高次脳機能障害者,その他医学的管理を要する疾患など病態や障害が各人で異なるため,具体的な基準や手順が整備されていない状況にあり,医療現場でも混乱がみられている.一方で,本テーマを主題とする各研究会が連携し,全国的にも大きなうねりをみせている.本特集では,自動車運転再開にあたって,臨床現場で知っておくべき内容をリハビリテーションの観点から解説していただいた.

現状と課題 蜂須賀 研二
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はじめに

 自動車運転に関するリハビリテーションの取り組みを自動車運転リハビリテーション(driving rehabilitation;DR)と称するならば,DRの試みは1960年代に始まり,公的な大規模リハビリテーション施設を中心に実施されるようになってきた.自動車運転は,座位を保持してハンドルやペダルを適切に操作する運動情報処理と判断,注意の保持や配分,円滑で効率的な操作処理など,一定レベルの総合的な認知・身体機能を必要とする.当初はポリオ,切断,関節障害,対麻痺(脊髄損傷)など,身体障害者の運転操作訓練が主体であったが,対象疾患は脳卒中や高次脳機能障害など,認知機能に障害を有する患者へと広がってきた.近年,超高齢社会の到来,高次脳機能障害支援モデル事業・支援普及事業の実施,てんかんや認知症患者の自動車事故報道などにより,高齢者や脳に何らかの疾病を有する者の自動車運転や運転再開が,社会的にもきわめて注目されるようになってきた.そこでわが国におけるDRの歴史,産業医科大学における自動車運転再開の取り組み,そして現状と課題に関して概説することにした.

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はじめに

 2016年度版高齢社会白書によると本邦の高齢化率は26%を超えており1),65歳以上の高齢運転免許保有者も20%を超えている2).また,近年高齢運転者が引き起こす重大事故も多く報道されている.これには高齢免許保有者が増加していることと,加齢の影響により安全運転が困難になった者が運転を継続していることの双方の影響が考えられる.また,単に高齢者といっても免許保有者10万人あたりの交通死亡事故件数は,65〜74歳の年齢層については他の年齢層に比して高くない(図1).しかし75歳以上は倍以上になり,80歳以上はさらに高まるとみられている3).運転免許保有者を年齢層別にみると40歳台が男女とも免許保有者数のピークであり,今後彼らが高齢者になるまで高齢免許保有者数は増加すると考えられる(図2).

 それに伴い,近年問題になっている認知症やてんかんなど「運転に支障のある一定の病気」をもちつつ,運転継続を希望する者も増えている.2014年6月に改正された道路交通法では,免許の取得・更新時に一定の病気に関する質問票の提出が義務づけられ,虚偽記載には罰則も設けられた.その結果,今まで医療機関に相談なく免許の更新を行っていた脳血管障害などの既往歴をもつ者が,入院していた病院などに診断書の依頼に来院することも急性期病院を中心に増加している.近年,回復期リハビリテーション病棟をもつ専門病院では,ドライビングシミュレーターなど,運転に関する評価機器を備えるところも増加しているが,急性期病院では,そのような機材をもつことは困難であると思われる.今後,地域包括ケアを推進し,地域生活の再構築を支援するには,急性期病院を含めて地域の医療機関でそれぞれの役割に応じて運転適性を評価し,適切な指導を行うことがますます重要になってくると考えられる.

 運転に支障のある一定の疾患をもつ者には運転再開にあたって, ① 疾患や障害が運転に支障のない程度の者,② 定期的な医学的管理が必要な者,③ 身体的障害が問題となる者,④ 認知(高次脳)機能障害が問題となる者,およびそれらが重複した問題をもつ者がいるが,本稿では認知機能について運転行動との関係を考えつつ,どのような評価を行うべきか現状を踏まえて概説し,さらに実際の運転状況を評価・指導する方法の1つを提案する.

運転に求められる身体機能 武原 格
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はじめに

 自動車運転において,ドライバーは認知・予測・判断・操作を適切に繰り返すことで,安全運転を実現している.認知には,運転に必要な多くの情報を得られる視機能および聴覚が重要な役割を果たす.適切な認知・予測・判断が行われたのち自動車を運転するためには,アクセルやブレーキペダルを操作する下肢機能や,ハンドルや方向指示器,ライトなどを操作する上肢機能が用いられる.

 現在,高次脳機能障害と自動車運転再開について議論されることが多い.これらの高次脳機能障害患者の多くは,身体機能障害がないか,あるいは非常に軽度の身体障害をもつ患者である.しかし脳損傷を生じると,麻痺や失調,固縮,視野欠損,複視,失語などさまざまな身体機能障害が出現する.そのため,どの程度の身体機能障害までならば運転再開を検討するのか,また,身体機能障害をもつ患者の運転再開を支援するためには,どのような運転補助装置を用意する必要があるのかについて,知識を習得することは重要である.

 本稿では,自動車運転再開を検討するための身体機能および必要な運転補助装置について解説する.

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はじめに

 リハビリテーション医療の分野では,脳卒中や外傷性脳損傷,脊髄損傷などにより障害をもつ患者の社会復帰は重要な目標の1つであり,職場復帰や生活の質の向上を図るうえで自動車運転再開を望む者は多く,医療者のかかわりは重要である.特に脳損傷者が自動車運転を再開する際には包括的自動車運転評価が重要視され1),その評価は疾病の把握,身体機能評価,高次脳機能評価,シミュレーターや有効視野検査等の非路上評価などの医療機関評価に加え,構内や公道の実車運転を含む路上評価からなる.

 われわれは,包括的評価の一部として松永らが考案した認知反応検査,タイミング検査,走行検査から成るKM式安全運転助言検査2)が臨床応用可能であると考え,2006年に試験的に使用を開始した.実際の運転は周囲の状況やミラーを見ながらハンドル・ペダルを操作する注意配分能力が重要であるため2009年に注意配分検査を追加した.以上の4つの検査を含むシミュレーターを簡易自動車運転シミュレーター(Simple Driving Simulator;SiDS)と命名した.2013年に「自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究班」を結成し,医学的判断基準に関する検討を重ねSiDS評価を含めた「高次脳機能障害者の自動車運転再開の指針(Ver. 2)(表1)」(以下,指針)を作成した3).研究班ではこの指針を基にSiDSを用いた多施設共同研究を実施し中間報告を示している4).本稿では,指針を基に自動車運転再開に関する医学的判断,シミュレーターや実車教習を含む包括的評価手順に関して概説し,最後に多施設共同研究の結果に基づき実施すべき机上課題を提案する.

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研究会発足の背景

1.自動車運転再開の必要性

 公共交通機関が発達している大都市をのぞけば,日本国中が車社会となり自家用車なしでは買い物や通勤,通院など日常生活を維持することが困難となっている.新潟県も例外ではなく,全国第5位の面積をもち約230万人の人口を擁するが,都市部を除くと公共交通機関がほとんどない地域が広範に存在しており,それこそ田畑に行くにも自家用車が必要である.このように日常生活には自動車運転が必須であり,県民の3分の2にあたる約158万人が運転免許証を保有している(図1).

 このような状況では,軽症の脳損傷患者が自宅に退院するとすぐにでも自動車運転が必要となるため,患者本人だけでなく家族も早急な運転再開を希望し,自己判断で運転を始めてしまう場合も多い.さらに最近の脳卒中治療の進歩は著しく,短期間に運動機能障害が軽度かほぼ残らない程度に回復し,自宅に退院できる患者が増えている.しかしそのなかには,表面上はわからない注意障害や記銘力低下,遂行機能障害などの高次脳機能障害を有した,自動車運転に危険がある患者も存在している1).病識がなく自己の認知機能低下や判断能力低下を自覚できない人は,周囲の助言を無視して自己判断で運転を再開してしまうこともある.自己判断での運転再開を予防するには,治療にかかわる医療者が患者,家族に対して,医療機関で安全に運転できるかどうかを確認し,医師に診断書を書いてもらったうえで免許センターで臨時適性検査を受け,許可をもらってから運転再開することを説明しておかなければならない.

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 「リハビリテーション科医は何をしていると思いますか?」私は,臨床実習の初日に,リハビリテーション科に回ってきた医学部6年生全員に,まずこの質問をする.ほとんどの医学生が,少し考えて「患者さんを診て,訓練の計画をたてます」というような内容のことを答える.私は,すぐに「それだけ?」と再度質問をする.多くの学生は「う〜ん」とその先の答えに困る.そこで,さらに私は「将来リハビリテーション科医になりたいですか?」と聞く.すると多くの学生は「……」.私の手前,無言ではあるが,恐らく答えは「いいえ」であろう.医学に触れてきた医学生であっても,リハビリテーション科医のイメージは“患者さんの診察をしてリハビリテーション計画をつくる”くらいだと思う.確かに,リハビリテーション科医にとって,患者さんの評価をして,適切なリハビリテーション計画をたてることは重要であり,医学生が言っていることは間違いではない.しかし,医学生には,なぜそれをリハビリテーション科医が行うことが重要であるのか,そして,リハビリテーション科医が医師として医療のなかで果たさなければならない本当の役割が理解できていないと思う.このため,多くの医学生にはリハビリテーション科医が魅力的な医師像にはみえていないと思う.

 2010年の厚生労働省の調査により,診療科別の必要医師数倍率においてリハビリテーション科が最も高い倍率となり,リハビリテーション科は最も医師不足が進んでいる科であると示された.つまり,実際の医療の現場において,多くのリハビリテーション科医が求められていることは間違いなく,リハビリテーション科医の育成は急務である.また,2018年度より開始予定である新専門医制度において,リハビリテーション科は基本診療科の1つとなっている.新専門医制度のシステムを考えると,リハビリテーション科医が増えるためには,医学生や初期研修医がどれくらいリハビリテーション科専門医の道を選んでくれるかにかかっているといっても過言ではない.このためには,医学生や初期研修医を教育する立場にあるわれわれが,医学生や初期研修医にとってリハビリテーション科医が魅力的な医師像に映るように教育し診療にあたることが重要である.

入門講座 リンパ浮腫のリハビリテーション・4

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はじめに

 わが国ではこの10年間でリンパ浮腫に対する関心が高まっており,診療報酬制度やリンパ浮腫に対応可能な施設が整備されてきている.現代医学ではリンパ浮腫自体を治癒させることは難しいが,病態を十分に理解して発症早期から適切な生活指導や治療を行えば,それ以上の悪化防止や進行例の浮腫を改善させることが可能である.リンパ浮腫によって患者の生活の質(quality of life;QOL)を低下させないように早期から対応することが勧められる.

 外来でのリンパ浮腫治療は,保険上限られた期間内で最大限の浮腫改善と患者教育を目標とする.本稿では,「下肢リンパ浮腫」を中心に,外来で指導する際の注意点などを理学療法士の立場から実際の外来での経験もあわせて解説する.

入門講座 障害者権利条約・1【新連載】

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連載にあたって

 日本の障害分野にあって,「黒船」は幾度か渡来している.国連による障害者の権利宣言(1975年)や国際障害者年(1981年),世界保健機関(World Health Organization;WHO)による国際障害分類〔International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps(ICIDH)1980年〕や国際生活機能分類〔International Classification of Functioning, Disability and Health(ICF)2001年〕などがそれにあたる.それらのなかでも,今般の「障害者の権利に関する条約」(Convention on the Rights of Persons with Disabilities,以下,権利条約)は,従来の「黒船」とは次元を異にするといってよい.そこに込められている理念と内容は,リハビリテーション分野を含む日本の障害分野の将来に多大な影響を及ぼすことになろう.

 冒頭で紹介しておきたいのは,権利条約に備わる「三大すばらしさ」についてである.1つ目は,障害分野に関する初の「世界ルール」が成ったことである.法的な拘束力を有する権利条約には,いくつもの定義や概念が明示された.今後の国際交流や共同研究,諸領域での国際基準作成などに新たな地平が開かれることになろう.2つ目は,障害分野での共通目標ともいうべき「北極星」を得たことである.掲げられている多岐に及ぶ条項は,そのまま関係者が一致しての目指すべき方向になるように思う.3つ目は,権利条約の全体が「社会へのイエローカード」になっていることである.決して良好とはいえない現代社会と障害のある人との関係であるが,権利条約は障害のある人の立場で社会の標準値や中央値をとらえ直すべきとしている.

実践講座 リハビリテーションにおける医療安全管理・4

医療事故調査制度 後 信
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はじめに

 医療事故調査制度の開始より1年が経過して,実際に稼働している制度の現実の姿が明らかになってきた.具体的には,制度開始前から国が示してきた報告件数の試算や仕組みの説明に対し,現実に報告された件数や,行われてきた院内事故調査やセンター調査の件数などの運営の実態が明らかになってきた.最近では,特に医療事故発生の報告の判断の標準化が不十分であることや,報告件数が少ないことが指摘されている.

 2016年6月には,医療法の附則に基づき,中央レベルと地方レベルに支援団体連絡協議会を制度的に位置づけることや,管理者は院内で発生する死亡事例を遺漏なく把握できる体制を確保することなどの見直しが行われ,同協議会では医療事故の判断の一層の標準化が期待されている.

 本稿では,医療事故調査制度に関し,筆者が所属する九州大学病院(以下,当院)における医療事故の判断の経験や,医療事故調査制度のいわゆる支援団体である公益財団法人日本医療機能評価機構の担当者として制度の説明を行った際の医療判断に関する議論などの経験に基づき,特に医療事故の判断や報告の仕組み,現状および課題について述べる.

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要旨  【目的】上肢痙縮を認める慢性期脳卒中患者に対するA型ボツリヌス毒素(botulinum toxin typeA;BTXA)投与下の上肢運動課題の効果について検討する.【対象・方法】対象は,上肢痙縮を認める慢性期脳卒中患者8名である.介入は40〜60分/1回,2〜3回/週を3か月間実施した.評価は,投与前,投与から3か月後に痙縮の評価としてmodified Ashworth Scale(MAS),上肢機能評価としてFugl-Meyer Assessmentの上肢項目(FMA),Wolf Motor Function Testの課題遂行時間(WMFT),肩関節屈曲のactive range of motion(肩関節屈曲A-ROM),肘関節伸展のA-ROM(肘関節伸展A-ROM),日常生活動作(activities of daily living;ADL)での麻痺側上肢の使用頻度にはMotor Activity Logのamount of use(MAL)を用いた.【結果】MAS,FMA,WMFT,A-ROM,MALで統計学的に有意な向上が認められた.【結語】BTXA毒素投与下での上肢運動課題は過剰な筋緊張の軽減や上肢機能の改善に寄与することが示唆された.

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要旨  【目的】失語症者のケアに従事する専門スタッフの失語症に関する理解度を評価する新しい尺度Aphasia Knowledge Test-20(AKT-20)を開発し,失語症の啓発活動を行う際の課題について検討した.【方法】対象は医療・介護系スタッフ261名である.AKT-20はbiomedical knowledge(BK)8問,coping knowledge(CK)7問,services knowledge(SK)5問からなる計20問で構成されている.AKT-20の信頼性係数〔再テスト法:級内相関係数(intraclass correlation coefficient;ICC)〕と妥当性(表面的妥当性と内容的妥当性)を検証し,各スタッフの正答率の傾向から問題点と応用性を分析した.【結果】対象内訳は男性75名,女性186名,職種内訳は,介護支援専門員13名,看護師57名,理学療法士36名,作業療法士26名,言語聴覚士15名,社会福祉士14名,介護福祉士100名である.AKT-20の正答率は61.0%(BK:63.8%,CK:68.3%,SK:50%)で,信頼性係数(ICC)は0.603〜1.000,表面的妥当性(言語聴覚士3名による適切性判断)と内容的妥当性(言語聴覚士群の正答率:86.9%,BK:95.8%,CK:87.6%,SK:77.3%)より,AKT-20の臨床的有用性を確認した.言語聴覚士以外のスタッフの正答率は全体と3つの下位項目のすべてにおいて,言語聴覚士群より有意に低下していた.質問項目別ではCKとSKの正答率が特に不良であった.【結語】失語症者をケアするスタッフの,失語症に関する基礎知識の不足が明らかとなった.言語聴覚士は他職種との連携を深め,失語症状への対処法や社会サービスに関する教育プログラムを充実させた啓発活動に努める必要がある.AKT-20は,失語症ケアに対する多職種連携の指標となる可能性が示唆された.

連載 リオパラリンピックレポート—東京パラリンピックへの道

ボッチャ 片岡 正教
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ボッチャの概要

 ボッチャは,四肢や体幹に重度の機能障害がある脳性麻痺者が参加できるようヨーロッパで考案されたパラリンピックの正式競技であり,ジャックボールと呼ばれる白の的球に,赤と青それぞれ6球のカラーボールを相手よりいかに近づけられるかを競うターゲットスポーツである.脳性麻痺者を対象に行われてきたボッチャは,頸髄損傷や筋ジストロフィーなど,非脳原性疾患による重度四肢麻痺者も対象とするようになった.2013年1月に国際ボッチャ競技連盟(Boccia International Sports Federation;BISFed)が統括団体となり,現在は世界50以上の国や地域がBISFedに加盟し,広く楽しまれているスポーツである.日本ボッチャ協会に登録している会員は500名程度で,そのうち選手として登録している者は約230名,うちパラリンピックに関係するクラス(後述)の選手は約150名である.他は審判員や競技アシスタント,普及員などとしての登録である.

 ボッチャは自身で投球できない選手も,競技アシスタントを擁し,「ランプ」と呼ばれる競技用補装具(勾配具)を用いることでボールを転がし,競技に参加することが可能となっている.パラリンピック競技の中でも最重度の障がい者が競技用補装具を用いて参加できる競技であるといえる.

連載 呼吸リハビリテーションの評価

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はじめに

 日常生活の状態の評価には,呼吸困難感,日常生活動作(activities of daily living;ADL),身体活動性などさまざまな指標が存在し,介護度の決定やリハビリテーションの効果の評価などに活用されている.これらはいずれも患者の主観的判断に依存するため,妥当性の検証された質問票を用いた評価が中心であったが,身体活動性に関しては,近年,歩数計や加速度計を用いた客観的な評価法が注目されてきている.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 昭和9年に発表された『彼は昔の彼ならず』(新潮社)という短編は,太宰治が,天才と狂気の関係という病跡学的な問題に関心を寄せていたことを示唆する作品である.

 この作品の主人公は,木下という男に家を貸すのだが,この木下は,とんでもない大嘘つきだった.そもそも彼が最初に名乗った「自由天才流書道教授」という肩書自体,何か職業がなければ家を貸してもらえないことから思いついた嘘だったのだが,その後も木下は,「私はほんとに発明家ですよ」,「私は役者ですよ」,「私はほんとうは,文学書生なんですからね」など,主人公から問われるまま,出鱈目放題のことを言い募った.そればかりか木下は,同棲する女性をしょっちゅう変えて家賃すら払わないという,「どうしても普通でない」人間だったのである.

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 近年,学校の部活がネガティブな文脈で話題になっている.運動部における体罰事件や,「ブラック部活」と形容される若手教員を中心とする部活顧問の過剰負担が問題視されているのだ.一方,映画に目を転じるなら,部活はポジティブな文脈で語られている.というのも中学生・高校生の成長を描くとなれば,部活のほか,修学旅行や学校祭などの特別活動,換言すれば教科外活動が主要な舞台となるからだ.

 学校教育において人生に影響を与えたものは何かと問われたなら,多くの人々は,地道に取り組まれている各教科の授業の意義を認めつつも,人との出会いや,部活・特別活動の経験を口にするはずだ.それゆえ,この数年を振り返っても,「桐島,部活やめるってよ」(映画部),「幕が上がる」(演劇部),「アオハライド」(修学旅行),「心が叫びたがってるんだ.」(地域交流ミュージカル),「ちはやふる上の句・下の句」(競技かるた部),「青空エール」(吹奏楽部),「くちびるに歌を」(合唱部),「鈴木先生」(生徒会役員選挙・学校祭),「ガールズ・ステップ」(ダンス部)など,部活・特別活動映画がコンスタントに製作されている.観客が自身の人生と重ね合わせることができるジャンルであり,高い訴求力をもつ.

私の3冊

私の3冊 井上 那築

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 今回で最後となる第11回日本リハビリテーション医学会専門医会学術集会が2016年10月29日,30日の両日金沢市文化ホールにて代表世話人八幡徹太郎先生(金沢大学附属病院リハビリテーション科)のもと開催された.当日はあいにくの曇天であり,久しぶりの金沢の地を訪問するには少し肌寒い気候であった.しかし訪れた金沢は新幹線が開通した影響だろうか予想以上に賑わいがあり,活気に満ちた観光地となっていた.

 専門医会学術集会は本来の目的である専門医のさらなる学術的,技術的向上を目指して専門医会が中心となって運営されてきた.その専門医会学術集会は11回を数えるにあたってその目的が実り始めたところかもしれないと今回出席してみて感じた次第である.しかし,新専門医制度が始まるにあたり,理事会を中心として専門医会学術集会の魂はそのままにさらなる日本リハビリテーション医学会の発展を目指して,2017年度からは年2回の学術集会が開催(春季および秋季)されることとなった.

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1.ロコモティブシンドロームの重度化に関連する因子の検討—地域住民コホート調査GAINA study

 鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部

  松本 浩実・他

 [目的]ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)の重症化に影響を与える因子について調査すること.[方法]鳥取県米子市および日野町の地域住民の425名を研究対象とし,ロコモ5および身体・運動機能評価を行った.[結果]プレロコモは膝痛,握力低下と有意に関連し,ロコモは歩行速度と関連した.[結論]膝痛,筋力低下により活動性の低下が起こり,その結果歩行機能が低下してロコモが重度化すると考えられる.

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 人は生まれながらにして不平等である.遺伝的要因は,社会・環境的要因など(本書での記述に従えば「生まれ」は「育ち」,p38)を通して,人の生き方に大きな影響を与える.その結果,人の健康や寿命にも大きな格差を生み出す.

 現在盛んに行われているライフコース・アプローチ的研究により,遺伝,周産期,小児期の生物学的・社会経済的因子が成人になってからの人の健康状態や疾病の発症に影響を及ぼすことを示す証拠が続々と明らかにされている.最も有名なライフコース・アプローチ的研究は,成人病(生活習慣病)胎児期発症説(Barker説)であろう.

ニュース/お知らせ

第28回日本末梢神経学会学術集会

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文献抄録

次号予告

編集後記
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 「ゴールド免許」とは,「過去5年以内に加点対象となる交通違反などがない優良運転者に与えられる運転免許証」です.もちろん私はゴールド免許保持者です.5年どころか,20年以上無事故無違反,そして無運転です.

 「あまりにも本数が少ない時刻表」のことを「地獄表」(笑)と言うそうで,わが家のお墓のある町の駅がまさに「地獄表」.電車1本逃すともう帰れません.毎回のお墓参りは実にスリリングな時間とのたたかいです.お墓参りの度に「車が運転できればなあ」とつくづく思います(免許はあるんですけどね).

基本情報

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総合リハビリテーション
45巻4号 (2017年4月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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