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「リハビリテーション科医は何をしていると思いますか?」私は,臨床実習の初日に,リハビリテーション科に回ってきた医学部6年生全員に,まずこの質問をする.ほとんどの医学生が,少し考えて「患者さんを診て,訓練の計画をたてます」というような内容のことを答える.私は,すぐに「それだけ?」と再度質問をする.多くの学生は「う〜ん」とその先の答えに困る.そこで,さらに私は「将来リハビリテーション科医になりたいですか?」と聞く.すると多くの学生は「……」.私の手前,無言ではあるが,恐らく答えは「いいえ」であろう.医学に触れてきた医学生であっても,リハビリテーション科医のイメージは“患者さんの診察をしてリハビリテーション計画をつくる”くらいだと思う.確かに,リハビリテーション科医にとって,患者さんの評価をして,適切なリハビリテーション計画をたてることは重要であり,医学生が言っていることは間違いではない.しかし,医学生には,なぜそれをリハビリテーション科医が行うことが重要であるのか,そして,リハビリテーション科医が医師として医療のなかで果たさなければならない本当の役割が理解できていないと思う.このため,多くの医学生にはリハビリテーション科医が魅力的な医師像にはみえていないと思う.
2010年の厚生労働省の調査により,診療科別の必要医師数倍率においてリハビリテーション科が最も高い倍率となり,リハビリテーション科は最も医師不足が進んでいる科であると示された.つまり,実際の医療の現場において,多くのリハビリテーション科医が求められていることは間違いなく,リハビリテーション科医の育成は急務である.また,2018年度より開始予定である新専門医制度において,リハビリテーション科は基本診療科の1つとなっている.新専門医制度のシステムを考えると,リハビリテーション科医が増えるためには,医学生や初期研修医がどれくらいリハビリテーション科専門医の道を選んでくれるかにかかっているといっても過言ではない.このためには,医学生や初期研修医を教育する立場にあるわれわれが,医学生や初期研修医にとってリハビリテーション科医が魅力的な医師像に映るように教育し診療にあたることが重要である.
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