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はじめに
2016年度版高齢社会白書によると本邦の高齢化率は26%を超えており1),65歳以上の高齢運転免許保有者も20%を超えている2).また,近年高齢運転者が引き起こす重大事故も多く報道されている.これには高齢免許保有者が増加していることと,加齢の影響により安全運転が困難になった者が運転を継続していることの双方の影響が考えられる.また,単に高齢者といっても免許保有者10万人あたりの交通死亡事故件数は,65〜74歳の年齢層については他の年齢層に比して高くない(図1).しかし75歳以上は倍以上になり,80歳以上はさらに高まるとみられている3).運転免許保有者を年齢層別にみると40歳台が男女とも免許保有者数のピークであり,今後彼らが高齢者になるまで高齢免許保有者数は増加すると考えられる(図2).
それに伴い,近年問題になっている認知症やてんかんなど「運転に支障のある一定の病気」をもちつつ,運転継続を希望する者も増えている.2014年6月に改正された道路交通法では,免許の取得・更新時に一定の病気に関する質問票の提出が義務づけられ,虚偽記載には罰則も設けられた.その結果,今まで医療機関に相談なく免許の更新を行っていた脳血管障害などの既往歴をもつ者が,入院していた病院などに診断書の依頼に来院することも急性期病院を中心に増加している.近年,回復期リハビリテーション病棟をもつ専門病院では,ドライビングシミュレーターなど,運転に関する評価機器を備えるところも増加しているが,急性期病院では,そのような機材をもつことは困難であると思われる.今後,地域包括ケアを推進し,地域生活の再構築を支援するには,急性期病院を含めて地域の医療機関でそれぞれの役割に応じて運転適性を評価し,適切な指導を行うことがますます重要になってくると考えられる.
運転に支障のある一定の疾患をもつ者には運転再開にあたって, ① 疾患や障害が運転に支障のない程度の者,② 定期的な医学的管理が必要な者,③ 身体的障害が問題となる者,④ 認知(高次脳)機能障害が問題となる者,およびそれらが重複した問題をもつ者がいるが,本稿では認知機能について運転行動との関係を考えつつ,どのような評価を行うべきか現状を踏まえて概説し,さらに実際の運転状況を評価・指導する方法の1つを提案する.
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