総合リハビリテーション 45巻3号 (2017年3月)

特集 歩行訓練のエビデンス

今月のハイライト
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 歩行訓練はリハビリテーションの基本であり,リハビリテーションにおいていかに効果的な歩行訓練を行うかは重要である.本特集では,運動学習の基本も踏まえ,各病態におけるガイドラインレベルのエビデンスから,最新の機器を用いた方法のエビデンスについて解説いただいた.

脳卒中 斉藤 公男 , 島田 洋一
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はじめに

 脳卒中は,主要死因となるのみならず,後遺障害の最大要因として保健衛生上の最優先課題のひとつとされている.厚生労働省の「人口動態統計の概況」によると,最新の統計では,脳卒中死亡数は11万1973人,全体の8.7パーセントを占め,全死因の第4位である.今後,さらなる高齢化の進行に伴い,患者数はますます増加していくと予想される.脳卒中は,いずれの病型であっても,永続的な後遺症が残存する可能性が高く,介護が必要な原因疾患として全体の約21.5%を占めており,要介護者の割合では24.1%と1位である1).脳卒中患者の歩行障害は,約6割の確率で起こるとされ2,3),自立した生活が不可能となり,患者とその家族の負担,医療費の増大に繋がる.そのため,リハビリテーションにより歩行障害を軽減することは重要な課題といえる.本稿では,脳卒中患者に対する歩行訓練について,電気刺激や歩行補助ロボットリハビリテーションを中心にエビデンスに基づき概説する.

脳性麻痺 瀬下 崇
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はじめに

 脳性麻痺は,胎児期や周産期に脳に障害が起きることで発生する.0〜2歳にかけて脳は発達の過程で急激に組織化されていき,この際に有効に機能していない脳細胞やシナプスは,効率のよいネットワーク形成のためにアポトーシスなどを起こし刈り込まれていく.脳性麻痺症例の場合,本来は運動発達に必要な脳のネットワークがこの時期に十分機能できていないために刈り込まれ2次災害的に破壊されてしまう.これまでの脳性麻痺の脳障害は,厚生省の定義に代表されるように「不可逆的だが非進行性の病態」とされてきたが,実際には流動的である.脳のネットワーク形成を促進することに関しては,これまで早期療育の観点から多くが論じられてきたが,脳障害を軽減することも治療の鍵となる.Dengら1)は,脳障害を軽減する治療についてシステマティックレビュー(SR)を報告しており,低体温療法のほか,薬物治療として,動物実験レベルではあるが,N-アセチルシステイン,ミノサイクリン,エリスロポエチンなどを有効性が期待される薬剤として取り上げており,今後の発展が期待される.

パーキンソン病 中島 孝
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パーキンソン病におけるリハビリテーションの重要性

 パーキンソン病(Parkinson's disease)は代表的な指定難病であり,日本では100〜150人/10万人と推定されている.一般的に,50〜65歳の発症年齢が多いとされる1).常染色体優性または劣性遺伝病による若年性パーキンソン病があり40歳未満の発症者に対しても対応が必要である.パーキンソン病は高齢になると発病率が増加する.さらに,高齢者で未診断,未治療のパーキンソン病患者が多いため,人口構成の高齢化に伴い今後大きな社会問題となる.このため,パーキンソン病のリハビリテーションは専門的なリハビリテーションとしてだけでなく,高齢者一般の運動機能障害者のリハビリテーションとしての重要な要素となる.

 パーキンソン病治療薬に対する効果はほとんどないが,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,多系統萎縮症などといったパーキンソン症状を起こす疾患群は高齢障害者群の中に潜在している神経疾患である.これらもまた,パーキンソン病のリハビリテーション技術を準用しながら対応する必要のある疾患群である.

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はじめに

 わが国の脊髄損傷発生数は年間約5,000例であり,その総数は10〜20万人とされている1).交通事故や高所からの転落が主な受傷原因であり,損傷高位以下の運動感覚機能障害が生じる.損傷後数か月程度は回復が期待できるものの,その後の急激な変化は望めない2,3).多くの脊髄損傷患者は,下肢や体幹の運動感覚機能障害が生涯残存し,日常生活の移動手段は車椅子となる.

 車椅子は安定性やエネルギー効率に優れた移動手段であるが,長期間の車椅子生活は,骨粗鬆症4),関節拘縮5),心肺機能障害6,7),膀胱直腸障害8)などの身体的問題や,低い目線での生活に起因すると考えられる生活満足度低下などの心理的問題を引き起こす9,10).そのため,歩行能力改善は多くの脊髄損傷患者の望みであり,リハビリテーション医学として重要な課題である.

 本稿では,まず主要な歩行訓練手法の歩行能力改善効果をまとめた.次に,身体的問題,心理的問題に対する歩行能力以外の副次的改善効果についてまとめた.最後に,脊髄損傷患者の歩行訓練におけるエビデンス構築に必要な観点について述べる.

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はじめに

 変形性股関節症(hip osteoarthritis;股OA)患者は,長い罹患期間を経て股関節の機能障害が進行し歩行障害を呈する.運動療法は,機能障害の改善に有効であるというエビデンスがある1).しかしながら,運動療法が実施されても跛行が残存することや人工股関節置換術(total hip arthroplasty;THA)後においても円滑な歩行を獲得できない場合もある.これらの事実は,運動療法の効果が得られにくい患者が存在することを示唆する.運動療法の適応・適応外を判断するためには,歩行能力が改善するための条件,すなわち歩行の予後を予測する要因も知る必要がある.なぜなら,歩行の予後予測要因は,運動療法の効果を左右する要因になると考えられるからである.

 そこで,本稿は股OAに対してTHAを施行した患者の歩行練習の効果や歩行に対する予後予測について最新のエビデンスを概観する.さらにTHA後の歩行練習に関する今後のエビデンスの発信について私見を述べる.本稿が股OAに対するTHA患者を施行した患者に対する運動療法研究のさらなる発展に寄与できれば幸いである.

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はじめに

 加齢に伴う歩行機能の特徴的な変化は歩行速度の低下である.歩行速度低下には,バランスや筋力といった体力要素の低下が強く関連することはよく知られている.一方では歩幅の短縮,両脚支持期の延長,遊脚期での足の挙上の低下,歩隔の増大,腕の振りの減少,不安定な方向転換などとさまざまな徴候リスクとの関連性については詳細な検討が必要であると考える.本稿では,歩行速度のみならず歩行パラメーターと各種徴候との関連性を調べたうえで,各種徴候を有する集団に対する指導が歩行機能の改善に及ぼす影響について詳細に記述する.

 歩く速さはさまざまな健康指標として活用され,多数のカットポイントが提案されている.アメリカでは普段の日常生活で必要とされる歩行速度の目安である横断歩道を渡りきる速さを1.22m/sと設定し1),1.0m/s以下になると下肢障害や入院,死亡の危険性が上昇することが指摘されており2),また0.8m/s以下はサルコペニア(sarcopenia)の診断基準の1つとして使用している3).このように,カットポイントには差があるものの歩行速度は高齢者の生活機能の自立や日常生活の良し悪しを判断する指標として幅広く採用されている.一方,歩行速度と6年間のADL障害との関連性を検討したShinkaiら4)の報告では,65〜74歳の前期高齢者の場合,通常歩行速度の低下(hazard ratio;HR=2.43)よりも最大歩行速度の低下(HR=5.15)が日常生活動作(activities of daily living;ADL)障害の危険性が高まるが,75歳以上の後期高齢者においては,通常歩行速度の低下(HR=6.18)が最大歩行速度の低下(HR=3.45)よりもADL障害の危険性が高いことを検証し,歩行速度の影響は年代によって異なることを指摘している.

 Sauvagetら5)は1994年から1996年までの2年間,宮城県W地域在住65歳以上の男女3,590人を調査し,余命に対するADL,手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living;IADL),移動能力の自立期間を調べている.自立期間が最も短い機能はIADLである.移動能力の自立期間は65〜69歳男性13.2年,女性14.7年,70〜74歳男性9.6年,女性11.7年,75〜79歳男性6.7年,女性7.6年,80〜84歳男性4.6年,女性4.6年,85歳以上男性2.2年,女性1.7年と短いと強調している.このように,加齢に伴う歩行速度や歩行パラメーターの変化はさまざまな健康リスクと密接にかかわっていることから,いくつかの徴候に焦点を当て記述する.

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 昨年,東京都のリーフレット「もしかしたらお子さんは高次脳機能障害かもしれません」が完成しました.このリーフレットは東京都心身障害者福祉センターが作成したものですが,実はさまざまな人の思いがこめられています.

 筆者は7年前,成人の病院から異動となり,現在は小児の急性期病院に勤務しています.作業療法の対象疾患は,こどもの病気すべてと言ってもよいほど多岐にわたり,そのなかには,脳症・脳血管疾患・脳外傷・脳腫瘍など脳機能障害を発症したこどもも大勢います.教科書にあるとおり,こどもの脳には可塑性があり,大人のそれとは比べものにならないほどの,驚くべき回復力をもっています.例えば,弛緩性の片麻痺のこどもが数週間で何事もなかったかのように歩き,早々に退院していくことがあります.また,高次脳機能障害がはっきりしにくい乳幼児の場合,医学的な管理が終了し,運動機能が回復すれば,直接自宅に退院し,リハビリテーションも終了となるケースが多いのが現状です.これは大変喜ばしいことではありますが,危うさも感じます.

入門講座 リンパ浮腫のリハビリテーション・3

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はじめに

 乳癌術後の二次的後遺症として発症する上肢リンパ浮腫は,薬物療法では治療効果を得ることが困難であり,症状が重症化すると重篤な後遺症となり日常生活動作(activities of daily living;ADL)のみならず生活の質(quality of life;QOL)低下をももたらす.北村1)による調査では,乳癌術後の上肢リンパ浮腫発症率は50.9%に及ぶとの報告がされており,リンパ浮腫は決して稀な症状ではなく見逃すことのできない後遺症の1つといえる.今回,上肢リンパ浮腫に対するリハビリテーションの概論を述べる.

実践講座 リハビリテーションにおける医療安全管理・3

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はじめに

 病院内での感染症への対応については,通常時からの感染予防,早期発見の体制整備ならびにアウトブレイクが生じた場合の早期対応が重要となる.医療機関などにおける院内感染対策について,リハビリテーション分野においても重要な義務の1つである.

 リハビリテーションの現場では,セラピストが,さまざまな病棟や科の患者に対し,同じ空間・同じ器具を使用しリハビリテーションを実施しているため,セラピストと患者による身体接触とリハビリテーション器具による間接的接触が問題となる.さらに,リハビリテーション科は病院内のさまざまな病棟の患者と接点があるという点において,病院全体へ感染を拡大させてしまうリスクがあることを念頭に置く必要がある.病室でリハビリテーションを実施する場合もまた,セラピスト自身が感染拡大を引き起こす可能性がある.

 また,リハビリテーションを受ける患者のなかには,抗がん剤治療やステロイド治療によって免疫力が低下し,感染症になりやすい患者もおり,易感染性をもつ患者への対応も注意すべき点である.

 院内感染は病院にとって不利益な事象であるが,リハビリテーションにとってもまた大きなデメリットをもたらす.第一に,院内感染によって個室隔離や訓練場所の制限が指示され,活動が制限されることは離床や運動の妨げとなり,もともと治療で臥床を余儀なくされがちな急性期ではさらなる臥床や廃用症候群を引き起こす要因となってしまう.

 第二に,急性期リハビリテーションは,回復期や維持期(生活期)へ患者をつなぐ役割があるが,感染によって転院先や施設入所,在宅サービスの利用にも制限を及ぼし,退院・転院に難渋してしまうケースもある.

 第三に,疾患の治療の妨げになるだけでなく,院内でアウトブレイクした際は病院の費用面,評判面でも痛手となってしまう.

 第四に,患者自身の精神的な負担となり,うつ傾向や全般的な意欲の低下につながってしまうケースもある.そのため,病院職員として院内感染の意識を高め,実践していくことは,リハビリテーションスタッフにおいてもきわめて重要な責務である.

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要旨 【目的】歩行速度と下肢荷重率および等尺性膝伸展筋力との関係を検討すること.【対象】65歳以上の高齢入院患者155名(平均年齢77.8±7.0歳)とした.【方法】最大歩行速度が1.0m/秒以上をfast群,1.0m/秒未満をslow群に分類した.そして,receiver operating characteristic曲線(ROC曲線)解析より,下肢荷重率で1.0m/秒以上の歩行速度の可否を判別する至適カットオフ値を算出した.さらにfast群とslow群が混在する筋力域において,カットオフ値を適応した際の判別精度を求めた.【結果】1.0m/秒以上の歩行速度の可否を判別する下肢荷重率の至適カットオフ値は82.5%であり,高精度で検出が可能であった〔感度:94.3%,特異度:86.8%,曲線下面積(area under the curve;AUC):0.966〕.Fast群とslow群が混在する筋力域(0.25〜0.55kgf/kg)において,カットオフ値を適応して1.0m/秒以上の歩行速度の可否を判別した場合の陽性適中率は91.7%,正診率は89.5%であった.【結語】等尺性膝伸展筋力が0.25〜0.55kgf/kgの筋力域において,重心移動能力が歩行速度に強く影響するものと考えられた.

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はじめに

 第一・第二鰓弓症候群とは,第一および第二鰓弓の発生時の異常により骨や軟部組織の形成不全を生じる先天性疾患である.特徴的な変形は外耳道閉鎖と耳の形態をなさない小耳症および下顎部に認められ,多くは片側性であり顔面は非対称となる1).発生頻度は,診断基準により幅があるが,おおむね3,000〜5,000出生に1人と報告されており,男女差はない2,3)

 これまで,耳介形態を問わない小耳症例53例中25例に軟口蓋の運動不良を伴うこと4)や,外耳道閉鎖症を伴う小耳症例16例中13例に軟口蓋の運動不良を伴うこと5),第一・第二鰓弓症候群あるいは小耳症例の48例中24例に軟口蓋の運動不良,そのうち7例に鼻咽腔閉鎖機能不全があること6)が報告されている.これらの報告では,小耳症の変形の程度はさまざまであり,第一・第二鰓弓症候群の症例の鼻咽腔閉鎖機能と音声言語に関する報告はほとんどみられない.

 国立成育医療研究センター(以下,当院)では,鼻咽腔閉鎖機能不全のある症例に対して,口蓋裂チーム外来による評価を行っている.本稿では,当院の口蓋裂チーム外来を紹介し,第一・第二鰓弓症候群と診断された個々の症例についての考察を報告する.

 当院の口蓋裂チーム外来とは,関連する形成外科医師,耳鼻咽喉科医師,歯科医師,リハビリテーション科言語聴覚士が一堂に会して,鼻咽腔閉鎖不全の症例の検討を行うものである7).口蓋裂チーム外来は,1か月に1回の頻度で行い,症例は10例を上限に行っている.表1のごとく,各科の医師,言語聴覚士らが専門性を活かし,多面的に評価を行う.症例によって異なるが,口蓋裂チーム外来の当日までに表1の評価を組み合わせて行い,当日は,耳鼻科医師により鼻咽腔内視鏡を用いて,会話時と復唱時の鼻咽腔の動態を各診療科医師および言語聴覚士らで評価する.内視鏡検査では直接,鼻咽腔の閉鎖動態を観察でき,閉鎖時の軟口蓋,咽頭側壁,咽頭後壁の動きを同時に知ることができ,産生する音の比較などが可能である8).また,本人および家族を含め全員で観察するため,現状の評価をもとに方針が明確になりやすく,有益であるといえる.

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 本連載も最終回である.寄せられた質問の中から最終回に相応しいと思われる「研究テーマの決め方」と「研究者の成長プロセス・ライフワーク」を取り上げる.

連載 リオパラリンピックレポート—東京パラリンピックへの道

障がい者水泳 吉岡 政子
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 昨夏開催されたリオパラリンピックに水泳日本代表チームは選手19名を派遣した.パラリンピックは,4年に1度の最高峰の大会である.今回,そのパラリンピックにスタッフとして参加させていただいたので,見聞きしたことを踏まえつつ,障がい者水泳(以下,パラ水泳)について紹介する.

連載 呼吸リハビリテーションの評価

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基本的診察と情報収集の必要性

 呼吸リハビリテーションの評価の多くは医学的情報の収集に基づく.急性期,慢性期,維持期・生活期など病期によって必要となる項目は多少異なるが,時系列に沿って収集した情報をもとに患者がどのような状態であり,どの方向に向かっているのか,許容されるリハビリテーションはどの範囲であるのかを判断する.呼吸リハビリテーションの導入にあたり,患者評価として必要な項目を表11)に示した.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 1834年に発表されたバルザック(1799〜1850)の『「絶対」の探求』(水野亮訳,岩波書店)は,中年期以降に化学の研究に没頭して家族を顧みなくなり,遂には破産してしまうバルタザールという男の話だが,彼は,「その精神上の病には段階があって,次第につのる症状を経てはじめて手もつけられないはげしさに達し,ついに一家の幸福をぶちこわすに至った」と,慢性・進行性の病を抱えた人間とされている.研究に没頭するようになってからのバルタザールについては,「何をするにも上の空だったが,その放心ぶりはことに夫婦の語らいに一番つよく現れる」という放心,「かつて愛していたすべてのものに無関心となり,満開のチューリップの世話を忘れ,そして子供たちのことも,もはや考えなくなっていた」という無関心,「ときとすると彼の目は,ビードロのようにどんより曇った色になった.まるで視覚が方向を変えて,魂の内側に働きかけてでもいるようであった」という自閉的な態度など,精神的な病を抱えた人間という設定にされているのである.

 そして,59歳になったときには,娘から「おとうさまは気が狂ってしまった」,「解決できるものではない問題の探求に専心没頭したことが,父のすぐれて聡明だった頭を荒廃させてしまった」と言われるだけでなく,「じっとすわった目つきや,失意の人らしいようすや,絶え間ない不安が,そこに痴呆特有の徴候を,いや,そういうよりもむしろあらゆる種類の痴呆の徴候を彫りつけていた」というような状態に陥るのだが,そんなバルタザールについては,妻も次のような病跡学的な認識を述べている.「俗人の目から見れば,天才は狂人に似ている」,「あなたは偉大であったすべてのものとおなじように,生きていらっしゃるあいだは不幸な目にあうでしょう」.

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 言葉を字義通り受け取る.言外の意味を捉えることが苦手.これは,自閉症スペクトラムなどの発達障害当事者がしばしば口にすることだ.となれば,セリフの奥に隠された別の意味を察するというところに面白さがある小津安二郎(1903〜1963)の作品は,苦手克服に向けた学習テキストになる可能性がある.この観点から3つのシーンを取り出してみた.「お早よう」(1959)では,加代子(沢村貞子)が弟の平一郎(佐田啓二)に「お天気の話ばっかりして,肝腎なこと一つも言わないで……」とボヤいていたが,天気談義に意味をもたせる自作への当てつけのようにも聞こえた.

 本稿は,それに倣って「天気」に焦点を定める.

私の3冊

私の3冊 村岡 香織

学会印象記

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 2016年10月15・16日,本州よりも一足早く晩秋の訪れを感じさせる北海道札幌市にて,第32回日本義肢装具学会学術大会が開催され,北海道科学大学保健医療学部義肢装具学科教授の野坂利也先生が大会長を務められました.本学会は義肢装具や福祉用具にかかわる医師,義肢装具士,作業療法士,理学療法士やエンジニアなど多職種の集まる学術団体であり,義肢装具士が大会長を務めるのは歴代6人目となりました.また,北海道での開催は第16回大会(2000年,石井清一大会長)以来14年ぶり2回目で,開拓へのフロンティア精神の根付いた,北海道ならではの「義肢装具のフロンティア〜夢の実現を目指して〜」をテーマに,参加者数(有料入場者数)は1,100名,機器展示やランチョンセミナー協力に50社,一般演題245演題(口述194題,ポスター51題),特別企画・講演7題と盛会に行われました.

 野坂大会長は開会の挨拶の後,大会長講演「義足構成要素の技術進歩とそれらに対する評価の試み」をテーマに先生の長年の研究テーマである義足構成要素とエビデンスに基づいた評価について基本的な考え方をご講演されました.作業療法士である筆者にもとてもわかりやすく勉強になる内容でした.

お知らせ

第114回 東北整形災害外科学会

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文献抄録

次号予告

編集後記
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 先日ずいぶん久々に献血に行ってみたら受付が指静脈認証になっていました.銀行のATMやスマートフォン,PCのログインなど,「生体認証」が身近になっています.生体認証に使われる情報にはさまざまなものがあります.指紋,静脈,顔,網膜,音声,そしてリハビリテーションの分野でおなじみの「歩容解析」を用いた「歩容認証」.歩き方には思っている以上に人それぞれの個性が出るそうで,その歩き方の個性を利用して個人を識別する歩容認証は,すでに犯罪捜査で応用されているとのこと.確かに顔認証と違って歩くシルエットであれば,防犯カメラに小さく映った画像であっても識別できそうです.そういえば,雪がなくても一年中「ペンギン歩き」のわが家の東北人は,ひざを曲げて足の裏全体で地面を蹴ってのっしのっしと歩くため,遠くからでもすぐにわかります.なお,西日本出身のわが母もなぜかよく似た歩き方で,地面を踏みしめてドスドスと歩く姿は,どんな人ごみの中でも容易に発見できます.すかさず見つけて駆け寄ると,母に言われました.「あんたはガニ股でドスドス歩くで,遠くからでもようわかるわ.っていうか,足音だけでもわかるわ」

基本情報

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総合リハビリテーション
45巻3号 (2017年3月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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