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連載にあたって
日本の障害分野にあって,「黒船」は幾度か渡来している.国連による障害者の権利宣言(1975年)や国際障害者年(1981年),世界保健機関(World Health Organization;WHO)による国際障害分類〔International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps(ICIDH)1980年〕や国際生活機能分類〔International Classification of Functioning, Disability and Health(ICF)2001年〕などがそれにあたる.それらのなかでも,今般の「障害者の権利に関する条約」(Convention on the Rights of Persons with Disabilities,以下,権利条約)は,従来の「黒船」とは次元を異にするといってよい.そこに込められている理念と内容は,リハビリテーション分野を含む日本の障害分野の将来に多大な影響を及ぼすことになろう.
冒頭で紹介しておきたいのは,権利条約に備わる「三大すばらしさ」についてである.1つ目は,障害分野に関する初の「世界ルール」が成ったことである.法的な拘束力を有する権利条約には,いくつもの定義や概念が明示された.今後の国際交流や共同研究,諸領域での国際基準作成などに新たな地平が開かれることになろう.2つ目は,障害分野での共通目標ともいうべき「北極星」を得たことである.掲げられている多岐に及ぶ条項は,そのまま関係者が一致しての目指すべき方向になるように思う.3つ目は,権利条約の全体が「社会へのイエローカード」になっていることである.決して良好とはいえない現代社会と障害のある人との関係であるが,権利条約は障害のある人の立場で社会の標準値や中央値をとらえ直すべきとしている.
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