総合リハビリテーション 42巻5号 (2014年5月)

特集 リハビリテーションに直結する先進医学

今月のハイライト
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 再生医学・医療をはじめとする医学の進歩は著しく,医療全体の大きな変化をもたらしています.幅広い境域をカバーするリハビリテーション医学は,必然的にさまざまな領域で先進医学と関わる機会が増えてきました.そのため,本特集ではリハビリテーション医学に関連する先進医学として,臨床応用に直結する最新のトピックスを取り上げ,現在の進歩の状況,今後の実用化・普及などについて解説していただきました.

現状と課題 角田 亘 , 安保 雅博
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はじめに

 国内外において,数多の医師・医学者が日夜さまざまな基礎研究・臨床研究に従事している医学・医療の分野は,常に進歩の過程の真っただ中にあるといえよう.そして,かつては想像もできなかったような治療法・治療機器が“先進医学”という名のもとで注目されるようになってきている.本邦においても,厚生労働省による“先進医療制度”や,文部科学省による“橋渡し研究支援推進プログラム”が始まるなど,先進医学のさらなる発展を促す,国をあげての支援体制が着々と整いつつある1)

 先進医学の定義は一定していないが,その範疇に含まれると思われるものを思いつくままに挙げてみると,およそ表1のようになる.それでは,このような多くの先進医学のなかで,われわれリハビリテーション医に,そしてリハビリテーション医学に直結するものは,いずれであろうか?

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はじめに

 グルコースやアミノ酸など生体の維持に必須な有機物質の多くは水親和性である.細胞はこれら水溶性有機物質を脂質二重膜で構成される生体膜を効率的に通過させるための膜輸送装置,すなわちトランスポーターをもっている.トランスポーターは全身に存在しているが,特に脳神経系や腎臓・肝臓などの消化器系に多く発現している.このトランスポーターが関連する疾患・病態は,いわゆる生活習慣病など50歳以降の高齢化疾患関連遺伝子の約10%と報告されおり1),生活習慣病の治療薬開発の標的分子とも考えられる.臨床的にトランスポーターが関連する病態として,抗癌剤の薬剤耐性の獲得には薬物排出トランスポーターが関与し,また抗生剤の薬剤耐性にも細胞内から細胞外への薬物排出トランスポーターが関与している.生活習慣病関連では,インスリン刺激によりグルコース取り込みを促進するのはグルコーストランスポーター(glucose transporter;GLUT)であり,インスリンの投与により小胞が細胞膜下から細胞膜に融合し糖の取り込みを促進する.インスリンを除くと可逆的に細胞膜から小胞が形成され,それに輸送体は取り込まれて細胞内に帰る.この一連のダイナミックなプロセスにより血中濃度が調節されている.筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)は,脊髄前角と大脳皮質運動野の運動ニューロンの脱落を特徴とする進行性の神経変性疾患であるが,その病因に対する仮説の1つにグルタミン酸トランスポーターの障害が挙げられている.グルタミン酸トランスポーターは,グルタミン酸を細胞内に取り込むことによって細胞外のグルタミン酸濃度を低値に保ち,神経細胞をグルタミン酸の興奮から保護する役割を果たしている.そのためグルタミン酸トランスポーターの機能障害により局所のグルタミン酸濃度が上昇して神経細胞死が生じると考えられている.銅代謝の先天性遺伝子異常として肝臓に過剰な銅が蓄積するWilson病は体内に銅が異常蓄積する代表疾患であるが,銅を運搬する蛋白質をコードする遺伝子の異常が原因と考えられている.このように臨床的にも身近な疾患や病態でトランスポーターは関与している.このなかでもモノアミントランスポーターは抗うつ薬の作用点であり,リハビリテーション領域では脳卒中後うつやアパシーに関わりがあるといえる.特にノルエピネフリンとセロトニンは気分障害に大きく影響しており,それぞれのトランスポーターは抗うつ薬の作用点である.ここではリハビリテーションと関連が深いモノアミントランスポーターに焦点を当て,その薬理学的特性や薬物療法について述べる.

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はじめに

 膝関節の軟骨は,膝関節を構成する大腿骨と脛骨,膝蓋骨の関節面を被覆し,起立や歩行,ジャンプなどの荷重を分散し,膝関節の摩擦を軽減し円滑で無痛な膝関節運動を担保している.膝関節の軟骨は外傷や加齢によって損傷され,膝関節の機能障害だけでなく,変形性膝関節症の誘因となる.しかし,軟骨内の細胞密度は粗で,血管や神経組織を欠くため,軟骨組織の自己修復能や再生能力は乏しく,自然治癒を期待できない.軟骨損傷に対してmicrofracture法や軟骨柱移植術などの治療が開発されてきたが,修復困難な関節軟骨損傷が存在する.これに対して2013年4月より膝軟骨の再生医療として自家培養軟骨細胞移植(autologous chondrocyte implantation;ACI)が保険適用となったので,自家培養軟骨細胞移植の適応とリハビリテーションについて述べる.

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はじめに

 脳卒中はわが国において,要介護者の原因疾患第1位であり,憂慮すべき国民病となっている.その後遺症は回復が難しく,社会復帰が困難なケースが多いことから,費やされる医療・介護費,家族の労力などの社会的損失は膨大である.現在,脳梗塞に対する積極的な回復が期待できる治療として,超急性期における血栓溶解療法があるが,時間的な制約から対象となるものは全体の数%にとどまっている.中枢神経の損傷により一度失われた日常生活動作(activities of daily living;ADL)の回復は,長期にわたるリハビリテーションに委ねられるが,残された機能の強化が主な目的である.しかし,神経幹細胞の発見を契機に神経再生へ向けた研究がここ20年余で急速に発展しており,これまで不可能とされてきた「神経機能の回復」を目指す,神経再生医療の希望の光が見出されてきた.

 神経再生医療は,主に2つの方法に分けられる.1つは自己複製能と多分化能を有した内在性の神経幹細胞を何らかの方法で活性化させる方法,また,もう1つは外在性細胞を何らかの方法で移植し神経系細胞へと導く方法である.外在性細胞移植のドナー細胞としては,神経幹細胞,嗅神経鞘細胞(olfactory ensheathing cell;OEC),シュワン細胞などの神経系の細胞に加えて,胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)や骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell;MSC)も挙げられる.われわれは,神経系細胞を始めとする種々のドナー細胞から特に神経幹細胞などの幹細胞に注目し,基礎研究を展開してきた.近年では,臨床応用に最も近いと思われる骨髄由来の幹細胞をドナー細胞とした神経再生について研究を進め,基礎的研究成果を数多く報告してきた1,2,4-16).そのなかでも神経再生作用が特に強い骨髄間葉系幹細胞は,実験的脳梗塞に対し経静脈内投与においても著明な治療効果が認められることを明らかにした.これらの基礎研究結果に基づき,2007年1月より脳梗塞亜急性期の患者を対象とした自己骨髄間葉系幹細胞の静脈内投与について,安全性と治療効果を検討する臨床研究を行い,良好な結果を得た3).現在はこの臨床研究の結果をもとに,治療効果を詳細に明らかにするため,2013年3月から大規模な医師主導第Ⅲ相治験を実施している(図1).

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はじめに

 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy;DMD)は,小児に発症する最も重篤な進行性の遺伝性筋疾患である.DMDは,幼児期に筋力低下で発症し,年齢とともに筋萎縮が進行して12歳までに車椅子生活になる.さらに筋萎縮は進行し,20歳代に心不全あるいは呼吸不全を合併し,生命が脅かされる.DMDは伴性劣性遺伝型式をとる進行性の筋萎縮症として100年以上にわたり認知されてきた.しかし,その進行を阻止する有効な治療法はなく,リハビリテーションが唯一の治療法と考えられてきた.

 このような状況を変えたのが1986年にDMDの責任遺伝子としてジストロフィン遺伝子がクローニングされたことであり,この発見を契機としてDMDの病態解析が分子レベルで急速に進んだ.そして,DMDの治療法の確立をめざして多くの研究がなされ,現在ではDMDの根本治療を目指した世界的な臨床治験が実施されるようになった.

 そこで本稿では,DMDについて治療法全般を紹介するとともに,現在治験が進んでいる2つの治療法について重点的に紹介する.

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 リハビリテーション心理学と聞いて思い浮かべるのは何だろうか.「障害受容」か,「脳卒中後のうつ」であろうか.筆者は,リハビリテーション目的で入院している患者の「意欲低下」,「リハ拒否」,「依存的」といった患者さんの気持ち(心理)を理解するためにも必要な教養科目であると思っている.

 脳卒中患者を例にとってみると,病期のレベルでは急性期,回復期,慢性期とわけられる.発症当初は,脳神経外科,神経内科などで急性期治療を受けることになる.治療を「受ける」という立場上,あるいは急性期のリハビリテーションにしても「受ける」感すなわち「受動的」な感じが強く,いわゆる「患者」であるわけだが,容態が安定し急性期治療が終わり,リハビリテーションが主となると回復期という時期になる.その場も,急性期治療を受ける病院からリハビリテーションのための回復期リハビリテーション病棟を主体とする病院に移行する.リハビリテーションにおいては患者側の努力や意欲,学習といった「主体的」な態度が求められる.「回復期」というように,その時期には神経学的にも,あるいは症状,機能障害といった面からも回復が期待できるわけだが,気持ちの切り替えができるかどうかは意識レベル,認知機能,あるいは症状の重症度によっても異なる.まして,急性期病院から回復期リハビリテーションの病院への転院が早くなってくると,患者さんにとっては訳がわからないまま転院が決まってしまうことがあり,気持ちの準備や切り替えが難しい場合が多くなってきている気がするのである.それでも回復の期待できる時期であることに変わりはないわけだが,逆に回復期のスタッフから「障害受容ができていない」などとカンファレンスでコメントされることがあり,「障害受容」という言葉は知っていても意味を考えたことがないと思わざるをえない.むしろ,深く意味を考えると「障害受容」という言葉は簡単には使えないはずなのである.

入門講座 脳卒中の予後予測【新連載】

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はじめに

 人口の高齢化に伴い,本邦の脳卒中患者数は今後増加することが予想される1).ほとんど後遺症のない患者がいる一方,重度の片麻痺や失語症・失行などの重い高次脳機能障害のために日常生活動作(activities of daily living;ADL)が著しく低下する患者も少なくない.このように脳卒中患者の予後は多様である.個々の患者に応じた効率的なリハビリテーションを行うためには適切な予後予測が必要である.しかし急性期医療の現場において,予測寄与率の高い標準的な予後予測法は確立されていない.本稿では,発症直後の数週間の急性期病院での予後予測の考え方を概説し,さらに筆者が取り組んでいる核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging;MRI)による脳画像を用いた新しい予後予測法の試みを紹介する.

実践講座 小児発達検査・第5回

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はじめに

 ほとんどすべての人間の活動は,何らかの形で中枢神経のコントロールを受けている.中枢神経は,体の隅々から送られてくるさまざまな感覚情報を受け取り,その情報を整理し,それに関わる方策を立てて実効する命令を運ぶ電線の通路でもあり,戦略中枢でもある.中枢神経は,自分の体や環境からの感覚情報を取り入れることで初めて機能し発達するため,感覚情報は脳の栄養源であると言える.また,中枢神経にはさまざまな種類の膨大な感覚入力がもたらされるが,目的に応じて不要な刺激を抑制し,必要な情報のみを抜き出して処理している.このように感覚が統合され,それに適した反応をすることで中枢神経は発達していく.

 感覚入力は胎児期からすでに始まっており,誕生後の発達につながる準備がなされている.誕生直後は生命維持に関わる心肺機能,血圧や体温調整,哺乳などの機能以外はほとんど白紙の状態である.また,これらの機能は反射によるものが主であり,そのほとんどが触覚や固有受容覚,前庭感覚の刺激によって誘発される.その後,社会の中で生きていく上で必要な適応能力は,触覚,固有受容覚,前庭感覚,視覚,聴覚からの感覚情報の処理を土台としたさまざまな感覚運動体験を通して育まれる.体を自分の思うままに動かすことや,姿勢を保つ,バランスをとる,手を巧みに使いこなすなどの能力はこれらの土台の上に成り立ち,さらにその最終産物として情報のコントロールやコミュニケーション能力,有能感,学習能力,行動の組織化能力などが育つ.このように,感覚統合は積木で積み上げられたピラミッドのように発達するのである.感覚統合の発達に多少のつまづきがあってもそれなりにピラミッドは積み上がるが,土台となる感覚情報の処理が十分に働かなければ,その上に発達するさまざまな能力の発揮に影響が出やすい.よってこの感覚処理の過程のどこにつまづきがあるのかを評価することがその後の支援につながる一助となると考える.

 本稿では感覚処理障害について概説し,感覚処理障害に対するアセスメントを紹介する.

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はじめに

 排尿障害や排便障害などの排泄障害は生活の質(quality of life;QOL)の低下や社会生活を制限させる大きな要因である1).後述するが,これらの排泄障害は高齢になるに従って頻度が増加する2,3).本邦の人口統計によると,65歳以上の人口は2015年には3,188万人に達すると予想され4),さらに将来的な高齢人口の増加も見込まれており,これらの人口予測は排泄障害を有し,治療やケアを要する人口の確実な増加予測と言える.本稿では,これらの排泄障害の有病率やその特徴,排泄障害に関連する医療経済について概説する.

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要旨:〔目的〕介護老人保健施設(老健施設)で簡単に評価できることを目的とした施設版FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure;G-FIM)を作成し,信頼性・妥当性について理学療法士・作業療法士(リハビリテーション職),介護福祉士(介護職)で検討した.〔方法〕埼玉県内の4つの老健施設において2012年5月時点で入所していた利用者295名を対象とした.われわれが公式マニュアルにしたがって機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;FIM)およびG-FIMの採点教育を行ったリハビリテーション職14名と介護職16名で評価を実施した.〔結果〕一定期間後の検者内信頼性の結果について,級内相関係数(intraclass correlation coefficient;CCI)(1,1)が総合点で0.998,運動項目点で0.999,認知項目点で0.994と非常に「優秀」な結果を示した.職種の違いによる検者間信頼性の結果について,CCI(2,1)が総合点で0.933,運動項目点で0.928,認知項目点で0.869となり,検者間の信頼性も「優秀」な結果であった.G-FIMとFIMにおけるSpearman順位相関係数は,総合点で0.984,運動項目点で0.991,認知項目点で0.976と高い相関関係が示された.〔結語〕G-FIMは高い検者内・検者間信頼性とFIMとの高い妥当性が認められ,リハビリテーション職が少ない老健施設において日常生活活動(activities of daily living;ADL)評価として有用であると考えられた.

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要旨:[目的]高次脳機能障害者の自動車運転における行動特徴と機能特性を明らかにし,運転適性に有用な評価について検討する目的で,ドライビングシミュレーター(driving-simulator;DS)を用いて日常的に自動車を運転している健常者と比較検討した.[方法]運転再開を希望する明らかな麻痺のない高次脳機能障害者と健常者を対象に,Trail-Making-Test(TMT),棒反応時間測定,体幹・下肢運動反応検査(任天堂社製Wii-Fit),DSによる運転行動評価(以下,DS評価)を行った.[結果]高次脳機能障害者は,健常者と比べてTMTの所要時間が有意に長く,Wii-Fitの得点が低かった.DS評価では,飛び出しに対するブレーキ反応時間の遅延,空走距離の延長がみられた.[結語]高次脳機能障害者の運転適性を考えるうえでは,配分性注意と情報処理速度に焦点を当てた機能評価と,複雑な状況判断が求められる運転行動評価を組み合わせることが有用であると考える.

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要旨:経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation;tDCS)は経頭蓋磁気刺激よりも安全性が高いとされているが,明確な安全ガイドラインは確立されていない.今回,脳卒中慢性期片麻痺患者に対するtDCS下ロボット支援訓練による併用療法実施中のtDCSの有害事象に関して検討を行った.対象は中等度から重度の片麻痺上肢を有する慢性期脳卒中患者18例とし,tDCS装置,ならびに,両側手関節の屈伸運動ならびに前腕の回旋運動を反復訓練させるロボット支援訓練装置(robot-assisted arm training;AT)を用いて,各対象者には1日当たり1セッション(1mA×10分間のtDCSおよび約60分間AT訓練)の治療介入を10セッション実施した.評価は第1,5および10セッションの各介入終了直後に,聞き取りで介入中の有害事象の有無を調査した.予定された合計180セッションはすべて実施され,脱落はなかった.疲労の訴えが61%と最も多かったが,最終の第10セッション時には39%まで低下した.次に頻度が高いものは,その他(上肢のだるさ,肩痛,温まるなど)39%であり,他の症状は6~16%と少なかった.症状は終了後~翌日までにはほぼ消失した.tDCS実施中,介入を中止するような重度の有害事象はみられず,介入後の消失,介入の慣れによる低減があり,上記の条件では安全に遂行できることを確認した.

集中講座 臨床研究倫理ことはじめ・第5回

介入研究(1) 神山 圭介
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介入研究とは

 前回の観察研究に続き,今回から数回に分けて介入研究について述べます.

 第1回で触れた通り,臨床研究における「介入」(intervention)の本来の意味は,対象となる研究協力者(被験者)が研究参加中に受ける医療その他のさまざまな外因性影響,すなわち「曝露」(exposure)を,研究者が管理するということです.研究の一部として何らかの介入を行うものが介入研究(interventional study)であり,介入を全く行わない研究,つまり曝露を研究者が一切左右しない研究が観察研究(observational study)です.

連載 家屋改造の実際

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 脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration;SCD)とは,歩行時のふらつきや,手の震え,ろれつが回らないなどを症状とする神経の病気である(難病情報センターホームページより).動かすことはできるのに,上手に動かすことができないという症状であり,進行の状況にもよるが,在宅生活では,移動時の安全確保がもっとも重要な課題となることが多い.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 高村光太郎は,ベルギーの詩人エミール・ヴェルハーレン(1855~1916)の『天才について』(『高村光太郎全集第18巻』,筑摩書房)の翻訳を大正11年に発表しているが,ヴェルハーレンが1900年頃行った講演の草稿とされる『天才について』は,病跡学的な現象を進化論的な観点から説明している点で,興味深い論考である.

 ヴェルハーレンは,当時ロンブローゾによって喧伝されていた天才の欠陥と言われるような特徴は,「一切の進化は退化を伴う」という進化の法則から理解すべきだと主張する.進化論によれば,新しい種が形成される際には,有利なものを得たのを償うかのように,新しい発達に不用若しくは有害な特質を失う.これが「退化無き進化無し」という公理であるが,これを天才に当てはめると,天才とは特殊で未聞な能力を与えられた者なのだから,彼らが有する欠陥は,進化に伴う代償的な退化として理解すべきである…….

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 「抱きしめたい―真実の物語―」(監督/塩田明彦)は,テレビドキュメンタリー「記憶障害の花嫁―最後のほほえみ―」の被写体となった小柳つかささんと雅巳さんの実話を映画化したものである.映画公開に先立って,北海道放送報道部取材班著『記憶障害の花嫁』(小学館)が刊行されている.同書を読むとつかささんの世界により接近できる.

 記憶障害の花嫁こと小柳つかさは,1982年,網走市の農家の子として生をうける.小学校ではスピードスケート,中学校ではバレーボールの選手として活躍.高校では恋やファッションに憧れつつ,養護教諭になる夢を抱く.周囲を明るくさせる発光体的存在でもあった.そんな彼女に悲劇が襲う.高校2年の3月,先輩の車に同乗していたところ,飲酒運転・信号無視の車が衝突.つかさは,外傷は軽かったものの,「びまん性軸索損傷」と診断され,1週間以内に命を落とすか,意識が戻らない「植物状態」になる可能性が示唆された.すなわち,社会復帰できる可能性はほぼゼロという状態になったのである.

学会印象記

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はじめに

 2013年10月26,27日の2日間にわたり,佐賀市文化会館にて浅見豊子大会長(佐賀大学医学部附属病院先進総合機能回復センター・リハビリテーション科診療教授)のもと,第29回日本義肢装具学会学術大会が開催された.「義肢装具を創るということ~物,人,そして繋がりを~」という大会テーマで222演題の発表が行われ,約1,800名が参加した.大会プログラムは,会長講演,特別講演2本,教育講演3本,パネルディスカッション3本,シンポジウム2本,ランチョンセミナー8本,ミートザメンター11本,マニュファクチャラーズワークショップ6本,飯田賞記念講演,装具製作コンペティション,女子会 in JSPO Saga,市民公開講座と盛りだくさんの企画であった.

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 いまやリハビリテーションは,疾患を問わず多くの症例に必要とされている.そして,リハビリテーションというのは,「療法士による訓練」で,医師はその後ろで内科管理だけしていると思ったら大間違い.診断にも,治療にも,訓練にも,医師の仕事は多い.この書籍は「リハ医師の着眼点・考え方・行動範囲」について紹介する,ほぼ独立した63章より成り,その多くが一般病院での内科・外科・高齢者の症例エピソード+解説の形での読みやすい内容である.読めば知識もつくし,リハビリテーションマインドも伝わる.

 著者の3名の先生は,1980年卒,1986年卒,1992年卒,のリハビリテーション専門医であり,このお三方の病院で,「加賀能登2大学1施設連携一体型リハ科専門医師後期研修プログラム」を構築しておられる元気な先生方である.地域に根ざした,多年にわたる豊富な臨床経験から,このたびエッセンスとしての本書が誕生している.

ニュース

ソチパラリンピック閉幕

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文献抄録

投稿規定

投稿および著作財産権譲渡承諾書

次号予告

編集後記
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 「コピペ問題」が世間を騒がしています.モラルの低下,教育の問題などいろいろ言われていますが,レポートや宿題を丸写しという不正は昔からありました.ただ,違うのはその簡便さ.昔は手書きで一苦労でしたが,今は「コピペ」であっという間です.

 「手書きの原稿」を本当に見なくなりました.ほんの十数年前まで,原稿は手書きかワープロでした.校正などのやり取りは郵送が基本で,近い場合には直接いただきに出向くことも多くありました.急ぎの時はFAXを使うこともありましたが,画像は写真やスライドをそのままお借りするのでFAXでは無理です.今ではメールで原稿も図表もクリックひとつ.便利になりました.

基本情報

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総合リハビリテーション
42巻5号 (2014年5月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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