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リハビリテーション心理学と聞いて思い浮かべるのは何だろうか.「障害受容」か,「脳卒中後のうつ」であろうか.筆者は,リハビリテーション目的で入院している患者の「意欲低下」,「リハ拒否」,「依存的」といった患者さんの気持ち(心理)を理解するためにも必要な教養科目であると思っている.
脳卒中患者を例にとってみると,病期のレベルでは急性期,回復期,慢性期とわけられる.発症当初は,脳神経外科,神経内科などで急性期治療を受けることになる.治療を「受ける」という立場上,あるいは急性期のリハビリテーションにしても「受ける」感すなわち「受動的」な感じが強く,いわゆる「患者」であるわけだが,容態が安定し急性期治療が終わり,リハビリテーションが主となると回復期という時期になる.その場も,急性期治療を受ける病院からリハビリテーションのための回復期リハビリテーション病棟を主体とする病院に移行する.リハビリテーションにおいては患者側の努力や意欲,学習といった「主体的」な態度が求められる.「回復期」というように,その時期には神経学的にも,あるいは症状,機能障害といった面からも回復が期待できるわけだが,気持ちの切り替えができるかどうかは意識レベル,認知機能,あるいは症状の重症度によっても異なる.まして,急性期病院から回復期リハビリテーションの病院への転院が早くなってくると,患者さんにとっては訳がわからないまま転院が決まってしまうことがあり,気持ちの準備や切り替えが難しい場合が多くなってきている気がするのである.それでも回復の期待できる時期であることに変わりはないわけだが,逆に回復期のスタッフから「障害受容ができていない」などとカンファレンスでコメントされることがあり,「障害受容」という言葉は知っていても意味を考えたことがないと思わざるをえない.むしろ,深く意味を考えると「障害受容」という言葉は簡単には使えないはずなのである.
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