Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヴェルハーレンの『天才について』―病跡学と進化論
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.472
発行日 2014年5月10日
Published Date 2014/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110504
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高村光太郎は,ベルギーの詩人エミール・ヴェルハーレン(1855~1916)の『天才について』(『高村光太郎全集第18巻』,筑摩書房)の翻訳を大正11年に発表しているが,ヴェルハーレンが1900年頃行った講演の草稿とされる『天才について』は,病跡学的な現象を進化論的な観点から説明している点で,興味深い論考である.
ヴェルハーレンは,当時ロンブローゾによって喧伝されていた天才の欠陥と言われるような特徴は,「一切の進化は退化を伴う」という進化の法則から理解すべきだと主張する.進化論によれば,新しい種が形成される際には,有利なものを得たのを償うかのように,新しい発達に不用若しくは有害な特質を失う.これが「退化無き進化無し」という公理であるが,これを天才に当てはめると,天才とは特殊で未聞な能力を与えられた者なのだから,彼らが有する欠陥は,進化に伴う代償的な退化として理解すべきである…….
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