Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「抱きしめたい―真実の物語―」―記憶や肢体に障害を負っても心は折れない
二通 諭
1
1札幌学院大学文学部人間科学科
pp.473
発行日 2014年5月10日
Published Date 2014/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110505
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「抱きしめたい―真実の物語―」(監督/塩田明彦)は,テレビドキュメンタリー「記憶障害の花嫁―最後のほほえみ―」の被写体となった小柳つかささんと雅巳さんの実話を映画化したものである.映画公開に先立って,北海道放送報道部取材班著『記憶障害の花嫁』(小学館)が刊行されている.同書を読むとつかささんの世界により接近できる.
記憶障害の花嫁こと小柳つかさは,1982年,網走市の農家の子として生をうける.小学校ではスピードスケート,中学校ではバレーボールの選手として活躍.高校では恋やファッションに憧れつつ,養護教諭になる夢を抱く.周囲を明るくさせる発光体的存在でもあった.そんな彼女に悲劇が襲う.高校2年の3月,先輩の車に同乗していたところ,飲酒運転・信号無視の車が衝突.つかさは,外傷は軽かったものの,「びまん性軸索損傷」と診断され,1週間以内に命を落とすか,意識が戻らない「植物状態」になる可能性が示唆された.すなわち,社会復帰できる可能性はほぼゼロという状態になったのである.
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