Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
ほとんどすべての人間の活動は,何らかの形で中枢神経のコントロールを受けている.中枢神経は,体の隅々から送られてくるさまざまな感覚情報を受け取り,その情報を整理し,それに関わる方策を立てて実効する命令を運ぶ電線の通路でもあり,戦略中枢でもある.中枢神経は,自分の体や環境からの感覚情報を取り入れることで初めて機能し発達するため,感覚情報は脳の栄養源であると言える.また,中枢神経にはさまざまな種類の膨大な感覚入力がもたらされるが,目的に応じて不要な刺激を抑制し,必要な情報のみを抜き出して処理している.このように感覚が統合され,それに適した反応をすることで中枢神経は発達していく.
感覚入力は胎児期からすでに始まっており,誕生後の発達につながる準備がなされている.誕生直後は生命維持に関わる心肺機能,血圧や体温調整,哺乳などの機能以外はほとんど白紙の状態である.また,これらの機能は反射によるものが主であり,そのほとんどが触覚や固有受容覚,前庭感覚の刺激によって誘発される.その後,社会の中で生きていく上で必要な適応能力は,触覚,固有受容覚,前庭感覚,視覚,聴覚からの感覚情報の処理を土台としたさまざまな感覚運動体験を通して育まれる.体を自分の思うままに動かすことや,姿勢を保つ,バランスをとる,手を巧みに使いこなすなどの能力はこれらの土台の上に成り立ち,さらにその最終産物として情報のコントロールやコミュニケーション能力,有能感,学習能力,行動の組織化能力などが育つ.このように,感覚統合は積木で積み上げられたピラミッドのように発達するのである.感覚統合の発達に多少のつまづきがあってもそれなりにピラミッドは積み上がるが,土台となる感覚情報の処理が十分に働かなければ,その上に発達するさまざまな能力の発揮に影響が出やすい.よってこの感覚処理の過程のどこにつまづきがあるのかを評価することがその後の支援につながる一助となると考える.
本稿では感覚処理障害について概説し,感覚処理障害に対するアセスメントを紹介する.
![](/cover/first?img=mf.1552110494.png)
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.