総合リハビリテーション 41巻11号 (2013年11月)

特集 障害者の社会参加と就労支援

今月のハイライト
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 2011年に改定された障害者基本法では,精神障害に発達障害や高次脳機能障害が含まれ,難病患者についても障害者総合支援法の対象となりました.一方,障害者雇用促進法の2006年の改正では精神障害者にも適用されることになりました.そこで今回は,新たに障害者福祉の対象となった障害を中心に,社会参加と就労支援の取り組みについて,その現状や課題,今後の展望などを紹介していただきました.

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はじめに

 リハビリテーションを総合的に展開しようとすれば,「労働及び雇用」分野を省いてならないことは本誌読者であれば百も承知であろう.教科書風に言えば,「職業リハビリテーション」は常にリハビリテーションの主領域の一つに位置付けられ,リハビリテーションのゴールとも目されてきた.繰り返しになるが,障害のある人の「労働及び雇用」(本稿では,障害者権利条約第27条のタイトルである「労働及び雇用」をそのまま用いる)が重要分野であることは論を争うまい.

 ところで,この「論を争うまい」の「労働及び雇用」分野について,リハビリテーション関係者の間で案外と正確に認識されていないことに気付かされる.制度面などの仔細な知識は別として,あまりの問題意識の希薄さに一抹の不安と危惧を覚える.例えば,「日本の障害のある人のうち,何らかの仕事に就いている人はどれくらい存在するでしょう」の問いに,きちんとした返答は少ない.「障害のある人のうち雇用されている人は一割にも満たないのです」と説くと,大抵は驚きの反応を示す.それぞれが持ち場の専門分野で尽力すべきは言うまでもないが,一方で「木を見て森を見ず」では困る.障害のある人に向き合うとき,一緒に将来の方向を考えることを含めて,いわゆる「人間丸ごと」の視点で接することが肝要となろう.人間丸ごとの視点があれば,自ずと他分野との連携の接合断面が広がり,結果として自分たちの立ち位置や実践上の役割もみえてこよう.ここにきて,「木を見て森を見ず」どころか「枝葉を見て森を見ず」の傾向が強まっているような気がしてならない.リハビリテーションをより本格的に進展させていくためにもぜひとも「労働及び雇用」分野へも関心を深めていただきたい.

 さて,既に気付かれているかもしれないが,本誌の特集テーマである「社会参加と就労支援」は決して目新しくない.平凡そのものである.しかし,平凡の内にはしばしば本質問題が潜み,実際にも重要なテーマでありながらあるべき姿にたどり着けないでいる.看過できないのは,障害当事者の多くから事態の好転を願う声が絶えないことである.平凡さの印象とは別に,本テーマに込められた意味は重く,好転を見ない限り幾度繰り返されてもいいように思う.

 なお,「労働及び雇用」の重要性は国際的にも共有されている.障害者権利条約の分野別条項においては,教育に次いで「労働及び雇用」に多くの文字数を割き,またインチョン戦略(国連ESCAP策定)においても,設定された10のゴールのうち,第一番目のゴールに「貧困を削減し,労働及び雇用の見通しを改善すること」が掲げられている.

 本来,「労働及び雇用」には自営業も含まれるが,本稿においては紙幅の関係もあり,福祉的就労と雇用に重点を置いた構成になっていることをあらかじめ断っておく.

高次脳機能障害者 高岡 徹
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はじめに

 高次脳機能障害に対するリハビリテーションは決してごく最近始まったものではない.今では古典的と言われる失行や失認はもちろん,記憶障害や行動障害などへの対応,グループプログラムの導入などは数十年前から試みられている.

 しかし,現在のように高次脳機能障害が広く認知されたのは,2001年に開始された高次脳機能障害支援モデル事業に依るところが大きい.その結果,2006年から「高次脳機能障害支援普及事業(http://www.rehab.go.jp/ri/brain_fukyu/)」,および2013年からは「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」が開始され,支援拠点機関の設置が全国的に展開されるなどの成果に結びついている.

 障害者自立支援法,そして今年度(2013年4月1日)施行された障害者総合支援法における障害者の対象範囲の拡大に伴い,高次脳機能障害は障害者施策の支援対象として確認され,また精神障害者保健福祉手帳の取得も可能となっている.古くて新しい障害である高次脳機能障害は,今後のさらなる普及と発展が期待される分野である.

 本論では,高次脳機能障害の解説に続き,横浜市総合リハビリテーションセンター(以下,当センター)における就労支援の取り組みを紹介する.そして,高次脳機能障害のリハビリテーションに関する課題や社会参加・就労支援のポイントに言及する.なお,今回は個々の症状に対する具体的な治療については触れない.

発達障害者 深津 玲子
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はじめに

 この章でいう発達障害者とは発達障害者支援法第2条に定義される発達障害,すなわち「自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害,その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」のあるものとする.2005年4月に施行された発達障害者支援法は,その気づきや対応が遅れがちであった上記の障害を「発達障害」と総称して,それぞれの障害特性やライフステージに応じた支援を国・自治体・国民の責務として定めた法律である.2011年には障害者基本法が改正され,障害者の定義の見直しのなかで,発達障害が同法の対象となることが明文化された.したがって今後発達障害者が障害福祉サービスを利用する機会は増加すると考えられる.

 青年期・成人期における発達障害者への支援については,障害者福祉,労働,精神科医療などの領域で取り組みが始まっている.労働領域では,2005年に障害者職業総合センターにおいて発達障害者のワークシステム・サポートプログラムが開始された1).現在はハローワークにおける職業相談・職業紹介,若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム,地域障害者職業センターにおける職業リハビリテーション,障害者職業能力開発校における職業訓練などを発達障害者が利用可能である(厚生労働省ホームページ「発達障害者の就労支援」http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/06d.html参照).発達障害者に対する職業リハビリテーション研究については,障害者職業総合センターの資料に詳しい2,3).また雇用側への啓発については,厚生労働省より「発達障害のある人の雇用管理マニュアル」が発行されている4)

 一方で障害者福祉領域においては,2015年より施行される障害者総合支援法の対象に発達障害者が含まれることが明確化されたこともあり,利用が増大することが予想されるが,青年・成人期に提供される就労系福祉サービスの支援手法についての臨床研究は端緒についたばかりである.就労系福祉サービスとしては就労移行支援,就労継続支援があるが,明らかな知的障害のない発達障害者を対象とした場合,一般就労を目指す就労移行支援を利用する機会が多いと考えられる.現時点で発達障害者を受け入れている就労移行支援事業所はまだ多くはないが,今回の制度上の整備を受け,発達障害の特性を考慮した支援プログラムの提供は喫緊の課題であり,その取り組みが紹介されつつある5,6).ここではわれわれが2008年度より当初モデル事業および研究事業として開始した発達障害成人に対する就労移行支援事業のなかで得た知見とそれをもとに現在提供している就労移行支援プログラムの概要について紹介する7).また就労を目指す発達障害者の活動と社会参加に関して,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)に基づいて評価するアセスメントを開発し,予備調査を行ったので紹介する8,9).最後に発達障害者の就労に役立つことが期待される68の個別支援ツールを,縦軸をICFの心身機能,横軸を活動参加とする支援ツールマップを開発したので,これを紹介する10)

精神障害者 中川 正俊
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はじめに

 精神障害者の社会参加が論文テーマとなること自体が,わが国の精神障害者が置かれている立場を如実にあらわにしていると言えば,皮肉が過ぎるであろうか.わが国の精神障害者対策は,精神科病院における入院医療を中心に展開してきた.退院可能精神障害者の地域移行に国が積極的に関与を始めたのは,わずか数年前のことである.

 その結果,精神障害者に対する世間一般のイメージは,非社交的で生活意欲に欠け,希望や目標もないまま人生を送る人たちという,極めてネガティブなものになってしまった.地域社会でともに暮らした経験がなければ,それも当然の結果と言えよう.

 しかしながら,統合失調症をはじめとする精神障害者の支援を通して感じるのは,彼らの“人間らしさ”ないしは“人間くささ”である.就労や結婚などの“一人前”の生活を強く望み,言葉で表出しないまでも,きわめて明確な人生上の志向課題を有している.その社会志向性は,2008年の厚生労働省による実態調査1)において,就業していない精神障害者(手帳取得者)のうち,就業を希望する人の割合が6割に及んでいることからもうかがえる.

 本論文は,精神障害者の社会参加と支援にまつわる諸問題を,就労を中心に論じることを目的とする.

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はじめに

 2013(平成25)年4月より「障害者自立支援法」が「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」へ改正・施行され,制度の谷間のない支援を提供する観点から,難病患者等が障害者の定義に追加されるとともに,障害福祉サービスなどの対象になった.

 その対象となる難病患者等は,障害者総合支援法においては「治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者」(以下,指定疾病)とされている.具体的な疾病は,厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会での検討が続けられていることから直ちに結論を得ることが困難な状況であるための移行措置として,難病対策における難治性疾患克服研究事業の対象疾患(以下,対象疾患)と同じ130疾患及び関節リウマチとされた.ただし,指定疾病の名称は,対象疾患と名称が異なっている場合もあり,関節リウマチを含め130疾病となっている1)

 本稿では,これまでの難病対策と,難病患者等の社会参加への支援の留意点を補装具等の福祉用具の導入や活用事例をまとめることで現状を示すとともに,今後の施策等の課題を解説する.

巻頭言

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 筆者は高次脳機能障害支援普及事業の支援拠点機関に勤務している.あらためて述べれば,ここで言う高次脳機能障害とは高次脳機能障害支援モデル事業において作成された診断基準による「脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されており,現在,日常生活または社会生活に制約があり,その主たる原因が記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などの認知障害であるもの」である.高次脳機能障害者の症状や家庭環境,社会との関わりは一人一人異なり,抱える問題にひとつとして同じものはない.そのなかでも記憶障害を抱える方々が語る言葉には当初から強い印象を受けている.映画「レナードの朝」の原作者としても知られる神経学者オリバー・サックスの著書のなかにもコルサコフ症候群により重度の記憶障害を生じた男性について著者の驚きと洞察に満ちた一編をみることができる.

 さて,作中に登場した「魅力的で好感がもてたし,頭の働きも活発で知的」な49歳のジミー・Gには病識がなかった.一般に認知リハビリテーションを行ううえで患者が病識をもつことは好ましいとされる.重度の記憶障害そのものを根本的に改善させる手段に乏しい現状では,むしろ病識やメタ記憶こそがリハビリテーションのダーゲットとも言える.しかし,自分の記憶障害に気づいて過ごす胸中は決して平穏ではありえない.まず障害に気づき,受けとめる過程で大きな葛藤を経験するのはもちろんである.そして,その後も気を張りつめた暮らしを強いられる.メモリーノートやスマートフォンなどの代償手段を駆使して積極的に社会参加している方が「電話がかかる度に自分が約束を忘れたのではと心臓が縮みあがる」と嘆かれる.粘り強い努力で就労を果たした方が「何度も同じ話題をだして変に思われているのではないだろうか.人と話すのが不安でたまらない」と訴えられる.ここに挙げた例は,他者にとっては些細なことに思えるかもしれない.だが,自分が生きていく時間の連続性を絶たれ,あらゆる場面で不安を感じながらの生活とはどのようなものであろうか.

入門講座 英文論文作成法

総説 赤居 正美
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はじめに

 英文論文を執筆してわが国から情報発信を行うにはどうすればよいかというテーマは重要である.以前に学会長を務めた第48回日本リハビリテーション医学会においてもワークショップとして取り上げたことがある.招待した外国人講演者も全員が国際誌の編集に携わっており,意見交換と共に有益な助言も行われた1)

 その際の議論も踏まえ,本講座を進めて行くこととする.

入門講座 アジアのリハビリテーション事情

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台湾におけるリハビリテーション医学の興隆

 第2次世界大戦後,台湾には非常に多くのポリオ患者がいたが,当時提供されていたリハビリテーション・ケアは不十分なものであった.医師のI-Nan Lien氏とDow-Chang Hsu氏がポリオ患者支援の分野での経験を有する特別医療スタッフを集めた.同時に,世界保健機関(World Health Organization;WHO)がアジアにおける医療の質,特にリハビリテーション医学分野の質を向上させる計画を立て,アジアの医師が米国において関連する研修を受けるための奨学金を提供した.I-Nan Lien氏はその奨学金で1967年から1968年までニューヨーク大学での研修コースに参加した.

 National Taiwan University Hospital(国立台湾大学病院,以下,台大病院)リハビリーション科の創設は1962年に遡る.しかし,リハビリテーションの医療チームはこの分野の諸課題すべてに対応できるほど能力はなかった.1968年夏に帰国したLien氏は,医師のChi-Chow Huang氏の協力を得てリハビリテーション科の再編成を行い,医療チームを強化するために,理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST),義肢装具士を集めた.この時期,Lien氏は医学生にリハビリテーション医学という専門分野を紹介しようと,台湾のほとんどすべての医学校においてリハビリテーション医学の講義を行った.また,リハビリテーションに関心をもつ医学部卒業生に対するレジデント研修プログラムを開設した.その後,台大病院のリハビリテーション科は急成長し,1970年代には近代的なリハビリテーションセンターとなった.Lien氏は,間違いなく台湾におけるリハビリテーション医学の創始者と見なされている.2012年には,台湾におけるリハビリテーション医学の発展に多大な貢献をしたとして,Ma Ying-Jeou(馬英久)総統から特別医学貢献賞を授与された(図1).現在,約900人のリハビリテーション科医,約3,000人のPT,約2,000人のOT,約400人のST,約200人の義肢装具士がリハビリテーション医療に従事している.台湾におけるリハビリテーション医療は三次医療システムに属している.すべての中核病院において質が高く国際水準のリハビリテーション医療が提供されている.

実践講座 頭部外傷後の高次脳機能障害の薬物療法・第2回

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はじめに

 本稿では,第1回1)の頭部外傷後の高次脳機能障害の総説,器質性人格障害に続いて,頭部外傷後のうつ病性障害,適応障害と外傷後ストレス障害,身体表現性障害について,疾患の概略と薬物療法に関する最近の知見を述べる.

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要旨:〔目的〕前腕回内,回外肢位が肩関節外旋運動に及ぼす影響について二次元動態分析を用いて検討した.〔対象と方法〕対象は健常男性6名とした.〔方法〕前腕回内,回外90°位とし,各前腕肢位で肩関節外旋0°,20°,40°に設定した.頭上からX線撮影を行い,各前腕肢位における上腕骨外旋角度,上腕骨外旋変化および肩関節外旋0°での橈骨と尺骨の内外反角を測定した.〔結果と考察〕肩関節外旋20°における上腕骨外旋変化は回内位が回外位と比較して有意に増加した(p<0.01).肩関節外旋40°では両者間に有意差を認めなかった.回内位は橈骨内反,尺骨外反角が増加した.このことから尺側側副靱帯と橈側側副靱帯の双方が伸張されることで肘関節内外反が固定され,上腕骨外旋変化に影響したと考える.〔結語〕運動療法の評価や治療,スポーツ指導の際,前腕肢位が肩関節外旋運動に与える影響を考慮する必要がある.

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要旨:運動イメージは,脳卒中患者のリハビリテーションとして有効と考えられ,運動イメージを用いた具体的な訓練方法が求められている.本研究は手の心的回転課題が運動イメージ訓練に応用できるかを検証することを目的とした.対象は健常者12名と慢性期脳卒中患者11名とし,患者は麻痺手の肘屈筋腱振動刺激による運動錯覚あり群となし群の2群に分け解析を行った.被験者は,自己の手の位置を変化させ課題を行いその反応時間が計測された.その結果,健常群と錯覚あり群では手の位置変化により,最も遅くなる反応時間の回転角度(ピーク角度)が変化し,なし群は手の位置変化がピーク角度に影響しなかった.手の位置を変えて行う課題では,実際の身体の位置情報を参照し,自己の身体像の心的回転操作が行われていると考えられ,ピーク角度の変化は運動イメージを利用していることを反映している.この手の位置を変える課題は運動イメージ訓練への応用が期待できる.

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要旨:日本リハビリテーション・データベース,回復期リハビリテーション病棟協会の実態調査,地域連携クリティカルパスなどにより,多施設のデータを解析することが可能になり,リハビリテーションの質・量とリハビリテーション成果に関する研究が進んだ.患者重症度の違いという課題に対しては,入院時の日常生活活動(ADL)で患者を限定する方法,標準重症度分布を用いたADL利得(退院時ADL-入院時ADL)の補正,多変量解析などが行われている.ADL利得に影響を及ぼす要因は数多いが,入院時ADL,年齢,発症からリハビリテーション初日までの日数,訓練時間については補正することが望まれる.一定期間のADL利得は,ADL利得やADL効率(ADL利得/在院日数)よりも在院日数の影響を受けにくいと考えられる.訓練時間とADL利得・効率には関連があると報告されているが,その関連が1日9単位(3時間)まで認められるのか明らかにされる必要がある.いくつかの研究報告はあるが,病院のリハビリテーションの質を評価する手法は確立されていない.ADL利得を病院間で比較する際には,各病院でADLが正確に採点されていることが前提となり,採点の正確性を評価することも必要である.ADLだけでなく機能障害の回復や費用対効果に関する調査も望まれる.

連載 社会生活力プログラムの実際

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 本連載「社会生活力の実際」の第1回は「社会リハビリテーションと社会生活力」のテーマのもとで,総合リハビリテーション,社会リハビリテーション,社会リハビリテーション・障害者福祉・障害者施策の違い,そして「社会生活力」とは,についてまとめた.連載第2回目は,社会生活力プログラムの開発,3つの社会生活力プログラム,社会生活力プログラムの理念と実施方法についてまとめたい.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 1929年に発表されたクレッチマーの『天才人』(内村祐之訳,岩波書店)は,近代病跡学を代表する著作の一つであるが,そこには,その直後にナチスによって展開される優生学的な施策と対峙するような記載がみられる.

 たとえば,第1部第4章「天賦の陶冶」では,純粋な人種は天才を産み出しにくいとして,「純粋人種の学説,即ち才能に恵まれた人種例えば北方人種の如きが,それ自身天才的才賦の保持者であるという意見は,多くの歴史的事実,或は地理的統計的事実と全く相反している」と語る.クレッチマーは,北西部ドイツの比較的純粋な北方人種からなる地域や,他種族と交配のなかった古代ギリシアのスパルタを例に挙げて,「何等交配されず,永い間同種族の内に止まった人種或は民族は,彼等が屡々甚だ有能な民であるにも係らず,天才を生む事が驚く程少ない」と,天才の出現には,人種的な純粋性はむしろマイナスに作用すると指摘するのである.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 学校は,いじめや不登校,体罰といった病理を抱えている.これらはマスコミを賑わす現象であるが,深く静かに潜伏している病理もある.その一つが,「スクールカースト」と呼ばれる学校内序列構造であり,近年,いじめの背景因子としても注目されている.

 「桐島,部活やめるってよ」(監督/吉田大八)は,スクールカーストの虚妄性を描いたという点で出色.某高校の金曜日から火曜日までに起きたことを,主要登場人物の視点から反復し,人間模様の全体を見せる.時系列の刻み方が見事で,まさに目が離せない.

リハビリテーション関連Q & A

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Q:身体拘束を回避するために福祉用具を活用したいと思いますが,どのような点に着目する必要があるでしょうか?

(岐阜県・O)

A:わが国では,どの程度の拘束をもって「身体拘束」として問題(否定)にされるのでしょうか? 介護福祉士として,まずはその点を最低基準として認識しておくべきでしょう.表1,2に「身体拘束」を問題にした裁判の判決結果とその解説を示しましたので,参考にしてください.

学会印象記

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 第50回日本リハビリテーション医学会学術集会は2013年6月13~15日に昭和大学医学部リハビリテーション医学教室の水間正澄教授を大会長として,東京国際フォーラムで行われた.東京国際フォーラムは東京駅から近いことと,会場と駅が直接つながっているために利便性がよいのが特徴である.今年は1963年に日本リハビリテーション医学会が設立されてから50周年という記念大会であり,メインテーマを「こころと科学の調和―リハビリテーション医学が築いてきたもの」として開催された.初日の昼過ぎから歴史を語るというプレナリー講演が3題行われた.最初が会長講演であり,水間教授ご自身のリハビリテーション医としての歩みとメインテーマであるこころと科学の調和について語られた.続いて,米本恭三先生が「新たな扉を開き続けた十年の歩み」としてリハビリテーション医学のいわば創生期に大変ご苦労された話をされた.なかでも,リハビリテーション科が標榜診療科として認められたときの話や,科学研究費細目にリハビリテーション科学を認めてもらう経緯,医師国家試験出題基準へのリハビリテーション医学の参入についての大変興味深い話があった.続いて「日本リハビリテーション医学会の50年―振り返れば一本道?」として江藤文夫先生から専門医制度をめぐっての話を聴くことができた.われわれは,ともすれば現在の状況を当たり前のこととして考える傾向があるが,決してそれは当たり前のことではなく,多くの先人が苦労して成し遂げた成果であることを忘れてはいけないことを痛感した.50周年という節目の年に改めてそのことを振り返ることができた貴重な機会であった.

 50周年記念企画シンポジウムとして,「アジア・リハビリテーション医との交流」,「関連専門職シンポジウム―未来のリハビリテーション医学会への期待」の2つが行われた.アジア・リハビリテーション医との交流では中国,モンゴル,インドネシア,タイからのリハビリテーション医による各国のリハビリテーションの現状が語られた.世界のリハビリテーション医をみても,必ずしもその守備範囲は同一ではない.そのなかでアジア諸国は距離的にも日本に近く,アジアとの連携はこれからの日本リハビリテーション医学会にとって,最重要となるべき課題と思われた.また,リハビリテーションはチーム医療が最も重要な科であり,関連専門職シンポジウムでは言語聴覚士,理学療法士,作業療法士,看護師の各協会から日本リハビリテーション医学会への期待が述べられた.初日の夕方には50周年記念講演として,韓国のHan先生,千野直一先生,米国のFrontera先生から講演が行われ,その後に日本リハビリテーション医学会設立50周年記念式典も盛大に行われた.記念式典では筆者は末席から参加させていただいたが,50周年に恥じない,歴史を感じさせる会であった.

お知らせ

第5回つながり映画祭

第16回日本在宅医学会大会

ニュース

介護の離職率17%―2012年度調査

避難支援指針を策定―内閣府/他1件

病床の医療機能が4区分に

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 いまや国民病と言われる脳卒中はリハビリテーションにかかわるすべての人に避けて通れない疾患である.しかも,脳卒中の現す病態はリハビリテーションに携わる者にとって勉強に事欠くことはない手ごわい対象でもある.現在,リハビリテーション医療の治療はエビデンスに基づいたものが強く要求されるようになり,なかでもきちんとした機能評価と予後予測なしでプログラムを組むことは,めざすべき港のない漂流船が海図なしで暗闇の海原を航海するような無謀極まりないものと言われるようにさえなった.すなわち機能評価・予後予測は必須中の必須になっている.しかしその全貌を理解するためのわかりやすい書はこれまで見当たらなかった.

 本書には,評者が敬愛する道免和久教授の「患者のQOLをどう支えるか」というリハビリテーションの思想が基軸にあり,教授のリハビリテーションに対する熱い思いがこのマニュアル書を貫いていることがよくわかる.特に第Ⅰ部の第1章から第4章は,あたかも道免教授から直接実践統計学の講義を受けているような気さえする.洗練された文章は読みやすく,しかも無駄がない.後期高齢者の筆者は,臨床にいるときに出合えばよかったという思いに包まれ,現在の臨床家は幸せだとさえ思った.

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 医療者プロフェッショナルの到達点は,患者の立場を真に理解して治療やケアが行えることであろう.医療者の立場として,疾患の病態は説明できるが,病気や障害のつらさを語ることは難しい.それを補う唯一の方法は,患者側の立場となった人々の体験談から真摯に学ぶことである.

 まさにプロフェッショナルを目指す医療者にとって待ち望んだ絶好の本が出版された.本書は,言語聴覚士である著者が脳卒中となって倒れ,その後片麻痺を克服して復職し,さらに新しい人生を獲得されるまでの物語がつづられている.ただし,本書は体験に基づいた体験記という範疇を超えて,高次脳機能障害のテキストであるとともに,自ら被験者となって取り組まれた臨床研究をまとめた学術書でもある.

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文献抄録

投稿規定

投稿および著作財産権譲渡承諾書

次号予告

編集後記
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 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定で,世間は大いに盛り上がりました.今年の流行語大賞の予想でも,有力候補の「じぇじぇじぇ!」,「倍返しだ!」をここにきて「お・も・て・な・し」が猛追している模様.

新国立競技場の「宇宙船」を彷彿とさせる完成予想図などを見るとまるで「近未来」と言う気がしてしまいますが,2020年は実際にはたかだか7年後.7年後の自分は?と想像してみると,定年までまだまだあるし,きっと今とたいして変わらぬサラリーマン生活をおくっているであろうことは想像に難くありません.それでは,7年後の東京は? 東京都知事本局のホームページに「2020年の東京」というのがありました.それによると,東京に住む人の「4人に1人が高齢者」で,「高齢者の4人に1人は一人暮らし」,「65歳以上は約84万世帯」で,「うち75歳以上が約46万世帯」…….これは「世界が経験したことのない超高齢」都市であるとのことです.つまり,老人だらけの「超高齢都市東京」に世界中から若きアスリートが大集結……なわけですね.むむむ……これは盛り上がらずにはいられません.

基本情報

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総合リハビリテーション
41巻11号 (2013年11月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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