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はじめに
この章でいう発達障害者とは発達障害者支援法第2条に定義される発達障害,すなわち「自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害,その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」のあるものとする.2005年4月に施行された発達障害者支援法は,その気づきや対応が遅れがちであった上記の障害を「発達障害」と総称して,それぞれの障害特性やライフステージに応じた支援を国・自治体・国民の責務として定めた法律である.2011年には障害者基本法が改正され,障害者の定義の見直しのなかで,発達障害が同法の対象となることが明文化された.したがって今後発達障害者が障害福祉サービスを利用する機会は増加すると考えられる.
青年期・成人期における発達障害者への支援については,障害者福祉,労働,精神科医療などの領域で取り組みが始まっている.労働領域では,2005年に障害者職業総合センターにおいて発達障害者のワークシステム・サポートプログラムが開始された1).現在はハローワークにおける職業相談・職業紹介,若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム,地域障害者職業センターにおける職業リハビリテーション,障害者職業能力開発校における職業訓練などを発達障害者が利用可能である(厚生労働省ホームページ「発達障害者の就労支援」http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/06d.html参照).発達障害者に対する職業リハビリテーション研究については,障害者職業総合センターの資料に詳しい2,3).また雇用側への啓発については,厚生労働省より「発達障害のある人の雇用管理マニュアル」が発行されている4).
一方で障害者福祉領域においては,2015年より施行される障害者総合支援法の対象に発達障害者が含まれることが明確化されたこともあり,利用が増大することが予想されるが,青年・成人期に提供される就労系福祉サービスの支援手法についての臨床研究は端緒についたばかりである.就労系福祉サービスとしては就労移行支援,就労継続支援があるが,明らかな知的障害のない発達障害者を対象とした場合,一般就労を目指す就労移行支援を利用する機会が多いと考えられる.現時点で発達障害者を受け入れている就労移行支援事業所はまだ多くはないが,今回の制度上の整備を受け,発達障害の特性を考慮した支援プログラムの提供は喫緊の課題であり,その取り組みが紹介されつつある5,6).ここではわれわれが2008年度より当初モデル事業および研究事業として開始した発達障害成人に対する就労移行支援事業のなかで得た知見とそれをもとに現在提供している就労移行支援プログラムの概要について紹介する7).また就労を目指す発達障害者の活動と社会参加に関して,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)に基づいて評価するアセスメントを開発し,予備調査を行ったので紹介する8,9).最後に発達障害者の就労に役立つことが期待される68の個別支援ツールを,縦軸をICFの心身機能,横軸を活動参加とする支援ツールマップを開発したので,これを紹介する10).
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