総合リハビリテーション 27巻11号 (1999年11月)

特集 表面筋電図による動作解析

今月のハイライト
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 表面筋電図は多チャンネルを同時に記録することができるため,運動や動作の解析には不可欠な手段である.しかも非侵襲的に実施できるため,理学療法士・作業療法士が記録することも可能であり,リハビリテーション医学の臨床,研究面で幅広い応用が期待できる.今回は,「表面筋電図による動作解析」として,上下肢・体幹の運動を取り上げると共に,もっとも表面筋電図による研究が盛んな歩行解析,さらに鴨下運動に関しても動作解析の面から取り上げてみた.

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はじめに

 神経筋骨格系の疾患および障害を扱うリハビリテーション医学においては,神経筋の電気生理学は必要不可欠の分野である1).疾患の診断に威力を発揮することはもちろんのことであるが,筋電図バイオフィードバック訓練や低周波電気刺激に代表されるように,治療面でも電気生理学はリハビリテーション医学の臨床に応用されている.

 本稿では電気生理学のなかでも,特に運動や動作の解析などに広く用いられている表面筋電図について,記録上の留意点,リハビリテーション医学の分野での応用などを紹介したい.

上肢運動の解析 道免 和久 , 木村 彰男
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はじめに

 表面筋電図は定性的な動作解析に用いられることが多いが,運動ニューロンの発火を反映した「生体情報」ととらえると,表面筋電図の情報のなかに重要な中枢神経系の運動制御機構に関する情報が隠されていると考えることができる.近年の波形処理の技術を利用すれば,従来定性的であった表面筋電図を定量的に利用することは十分に可能であり,実際に神経科学の基礎研究において定量的に解析した研究は増加している.

 本論文では,表面筋電図によって上肢の動作を定量的に解析する方法論とその研究について概説する.

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はじめに

 動作分析のプロジェクトを発足させて十数年になる.この間,私達の動作分析は筋電図や画像解析装置を利用した運動学的な計測を主体としたハード面の確認から,次第にソフトを重視した患者の治療へと変わってきた.その流れは,ボバース概念をベースにクライン・フォーゲルバッハの運動学や,主だったところとしてアッフォルターの概念,エンゲシュトロームの概念,生態学的な概念を導入してきた過程ともいえる.

 このようななかで私達の体幹や姿勢の捉え方も大きく変化した.提示できるのは過去の実験結果であるが,現在の考え方で解釈して体幹の運動学的特徴,治療法を検討してみたい.

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はじめに

 表面電極を用いた筋電図解析は,侵襲を伴わないため広く用いられている.そのうち,立ち上がり動作は日常生活において,基本的で回数も多いことから,さまざまな検討がなされている.

 われわれは,機能的電気刺激(functional electrical stimulation;FES)を用いて対麻痺患者の起立・歩行再建を行っている1,2).FESは,失われた生体機能の再建を目的として行われる電気刺激法3)であり,対麻痺に対しても下肢の神経や筋の刺激を制御することで,起立,歩行などの動作再建が可能である.FESによる立ち上がり動作は,膝をロックする下肢装具とは異なり,より生理的である.

 われわれは,対麻痺の立ち上がり動作再建プログラム作成を目的に,表面筋電図を用いて動作解析を行い,臨床応用してきた.本稿では,Akita FES Projectで行われた立ち上がり動作に関する研究を紹介する.

歩行時の運動制御の解析 長谷 公隆
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はじめに

 関節運動は,中枢神経系(central nervous system;CNS)により制御された筋収縮によってもたらされる筋張力と,行おうとしている動作の力学的要求との相互関係の結果として起こる1).表面筋電図はその“neural drive”を直接的に知るための基本的手段として,動作解析に用いられてきた.

 歩行分析においても,フットスイッチや床反力計により,歩行周期を“phase”に分けて評価できるようになったことで,それぞれの筋活動のEMGプロフィール(profile)は,関節角度変化との関係において,詳細に検討されてきている.

 しかし,歩行というダイナミックな動きのなかでの筋電信号の処理方法や,定常状態の歩行においてもみられる歩行周期ごとの変動性(variability)をどのようにして平均化するかといった問題は,表面筋電図を用いた歩行分析の臨床応用に制約を加えており,注意深い対処を必要とする.

 人体をリンクモデルとして扱うことによってなされた多くの生体力学的解析は,CNSが,身体の重心(center of mass;COM)に作用するさまざまな外力に対して,その空間的位置を保持し,その軌跡を効率的に制御していることを実証してきた2).定常状態に達した歩行はその典型であり,さまざまな角度から解析されている.しかし,歩行中の頭部・体幹の姿勢調節や,歩行の開始・停止・方向転換といった複雑な運動制御についての研究は,現在もまだ多くの課題を残している分野である.

 そこで本稿では,表面筋電図を歩行分析に用いるうえで必要な知識を述べ,これらの話題についての知見を概説する.

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はじめに

 嚥下は生命維持に重要な機能であり,嚥下が正しく行われるためには口腔,舌,咽頭,喉頭,食道の知覚と円滑な協調運動が必要である.嚥下に関係する器官は呼吸機能や音声機能と共通であり,その中枢調節も互いに密接に関連している.

 最近の医療の高度化により,脳血管障害や腫瘍性疾患の急性期において多くの患者を救命することが可能となった.しかし,慢性期に残存した嚥下障害は患者の社会復帰の妨げとなるだけでなく,Quality of Life(QOL)を大きく損ない,さらには誤嚥による肺炎により生命予後をも大きく損なうことになる.したがって,高齢化の進む現状では,嚥下障害の正しい診断と治療は患者のQOLを保つうえでますます重要となっている.

 本稿では,嚥下のメカニズムとそれに関係する神経,筋肉の活動を解説し,表面および筋電図の導出法と診断について述べる.

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 わが国において,障害者リハビリテーションに携わる者は,障害者基本法に掲げられた目的「障害者の自立と社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進する」,基本的理念「すべての障害者は,社会を構成する一員として社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられる……」,障害者の自助努力「障害者は,その有する能力を活動することにより,進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない」を実現すべき役割の一翼を担っているはずである.実際には,各種リハビリテーション関連専門職員の努力にもかかわらず,その目的・理念は実現していない.そのため,社会への適合あるいは順応を目指す治療や訓練を主体とした医学モデル(Medical Model)に立脚するリハビリテーション・アプローチへの批判が高まっている.

 健常者を基準とした社会が障害者に対して向けている障壁,バリアが障害者自身の主体的な取り組みを含む障害研究(Disability Studies)によって明らかにされつつある.その結果,新たに社会学的アプローチによる社会モデル(Social Model)が提唱され,1990年代になってからは,社会変革を求めた研究発表や大学における教育,社会政策上への提言が次第に活発になっている.欧米では,障害にかかわる社会的運動は,障害者の問題を代表するような組織において,障害者自身が進めていく活動へと変化している.国との関係や政治的な対処において,障害者の組織(BCODPなど)は障害者のための組織(RADARなど)とは異なる問題提起を行うようになった.障害は社会の要求に応じられないという個人の問題ではなく,潜在的障害の存在への認識欠如,障害から生ずる特殊なニーズに取り組むことへの社会の集団的失敗という問題意識への変換である.

講座 言語聴覚障害学―理論と臨床―

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はじめに

 Darleyら1)は,dysarthria(運動障害性構音障害)を「神経・筋系の病変により,発声発語器官(肺・声帯・軟口蓋・舌・口唇・下顎など)に筋緊張の異常,筋力低下,協調運動の障害,運動速度の低下などの運動障害が生じ,そのために呼吸,発声,共鳴,構音,プロソディが障害され,音が歪んだり省略され,話しことばが全体に不明瞭になったり異常になったりするもの」と定義している(図1).いわゆる「構音」の障害ではなく,呼吸,発声,共鳴,プロソディを含めた「発話」の障害として捉えるものである.dysarthriaの日本語訳については議論のあるところであるが,本稿では運動障害性構音障害ということばを用いる.

 臨床においては運動障害性構音障害の原因,種類,発話特徴を明らかにしなければならないのはもちろんであるが,精神機能の低下(いわゆる痴呆)や言語機能の障害(失語症),認知機能の障害などを合併していることもあり,これらの鑑別も重要な問題となる.Apraxia of speech(発語失行)との鑑別もしばしば問題にされるが,明確に区別される.さらに,運動障害性構音障害の患者は,しばしば摂食・嚥下機能が重複して障害されるため,発話の問題ばかりでなく,摂食・嚥下機能の障害も,近年,特に注目されている.言語聴覚士(以下,ST)の果たすべき役割が従来の「コミュニケーション障害」という枠組みから大きな広がりを見せていると言えよう.

 本稿では,以下,運動障害性構音障害の病態(種類,原因,発話特徴)に触れ,治療の考え方や訓練効果,さらに補助・代替コミュニケーションのあらましを紹介する.

実践講座 整形外科疾患の評価

3.変形性股関節症 水落 和也 , 安藤 徳彦
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 股関節の解剖学的特徴1-4)

 股関節は寛骨臼と大腿骨頭との間に作られる臼状関節である.これは球関節の一種で,多軸性であるが,関節頭の2/3が関節面として深い関節窩にはまりこむために,その運動は制限される.

 寛骨臼は上方の腸骨,後下方の座骨,前下方の恥骨からなり,前方,側方,下方に開口する.関節面は半球状で,その周壁の月状面のみが関節軟骨に被われ,大腿骨頭に接する.中央の深い寛骨臼窩は脂肪組織でうずめられ,その表面は滑膜で被われる.大腿骨頭靱帯は大腿骨頭窩から起こり,寛骨臼切痕を挟む月状面に着き,滑膜に被われ,大腿骨頭に入る血管を導く,寛骨臼の縁には線維軟骨性の関節唇が着いて関節窩を深くするとともに,関節唇の遊離縁はやや内方にせばまっているので,大腿骨頭を包み込むような形をとる.関節唇は寛骨臼切痕のところではその上を超架して寛骨臼横靱帯をつくり,これと切痕との間の間隙を通ってまわりの脂肪組織が血管とともに関節腔に入りこむ.

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はじめに

 高齢者の大腿骨転子部骨折において,積極的な手術的治療を行い,早期離床,早期歩行を獲得することは,二次的合併症を防ぐうえで重要である.

 近年,より早期荷重を可能にする目的で開発されたガンマネイル(図1)が内固定材料として用いられるようになり,当院においても1993年よりその症例が増加しつつある.従来,当院で行われていたエンダーネイル(図2)に比べ,固定性が強く,不安定型骨折においても早期荷重が可能であるという特徴をもつ.

 今回,われわれは,従来群としてエンダーネィルを,早期荷重群としてガンマネイルを選択し,手術方法の違いが術後経過および歩行能力に与える影響について比較検討を行ったので報告する.

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はじめに

 患者は病床にいて,何かして欲しい場合に,病室に設置された押しボタン式ナースコールやブレスコールを用いて看護婦を呼んでいる.しかし,病状の悪化により,それまで使用してきた機器で看護婦を呼べなくなった患者は,自分に代わって介護者に操作してもらうことになる.その際に,患者本人にとっては自分で操作できないもどかしさと不安があり,介護者にとっては負担が増えることが問題となっている.

 今回,四肢の運動機能に障害をもつ患者で,センサに息を吹きかけて操作する非接触タイプのブレスコールが使用できなくなった症例に対して,重度障害者向けの環境制御装置・意志伝達装置で用いられているストローなどで息を吸き込むタイプの呼吸気スイッチやタッチセンサ,唇で操作する自作マイクロスイッチなどを接続し,ナースコールとして使用した.

 この製作経験から,いろいろな障害レベルの患者にすぐ対応できるように,各種スイッチをナースコールに接続して利用するコネクタを製作し,モジュール化したので報告する.また,今回対応した症例についても述べる.

対談:Meet the Expert

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 蜂須賀 今回は,総合せき損センターの泌尿器科部長としてご活躍の岩坪先生に脊髄損傷(以下,脊損)のトータルケアに関しまして,今までのご経験を含めて話をお伺いします.まず,先生が泌尿器科医を志し,脊損医療に関わるようになっていった経過からお話しいただけますか.

一頁講座 話題の疾患

VDT(Visual Display Terminal)症候群 藤代 一也
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 近年,職場のみならず家庭においてもワープロ,パソコン等のVDT(Visual Display Terminal)機器使用が進んでいる.これらVDT機器取り扱い作業者では,不適当な姿勢による使用や長時間使用によって眼精疲労や頸肩腕関連の症状,はてはインターネット依存等の精神科的フォローの必要なものまで多彩な健康障害が問題となってきた.特に最近,VDTからの電磁波がマスコミ等で取り上げられ,社会的関心を呼んでいる.(ちなみに,現段階ではVDTからの電磁波では健康障害を起こすことは否定的な結論となっている.)そこで本稿ではVDT症候群について概説する.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 障害者問題という言い方がある.問題があるなら解決されるべきだ.では,なにをもって問題が解決されたと言えるか.問題解決のイメージが提示されなければならない.

 ゴツゴツした言い回しになったが,これが私の日頃から考えているテーマである.なかでも関心を持っているのが障害者の性へのアクセスのこと.問題解決の答を求めて,オランダのセックス・ボランティア団体“SAR”のメンバーにも会ってきた.そこには一つのイメージ(到達点)があった.

 しかし,映画の中の障害者は現実の障害者と同じように苦闘している.「7月4日に生まれて」,「マイ・レフト・フット」,「ウォーターダンス」の男性障害者達は,性への熱い想いを,時にはセックスができない無念さとして,時には心だけでなく肉体も愛してもらいたいという高らかなる宣言として謳い上げる.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 国木田独歩の『春の鳥』(明治37年)は,一般にはワーズワースの流れをくむ「白痴賛美」の物語と言われている.確かに,この小説では,六蔵という精神遅滞の少年が,お城の石垣で空を見上げながら歌を歌ったり,独歩その人を思わせる主人公が六蔵の個人教育にあたるなど,いかにも牧歌的で人道主義的な小説という趣を呈している.しかし,独歩自身の体験に基づくと言われるこの作品を,今日的な視点から読んでみると,精神遅滞に対する誤解や偏見と言わざるを得ない記述があることに気がつく.

 まず気になるのは,六蔵について,「不具のうちにもこれほど哀れなものはないと思いました.(中略)言う能わざる者,聞く能わざる者,見る能わざる者も,なお思うことはできます.思うて感ずることはできます.白痴となると,心の唖,聾,盲ですからほとんど禽獣に類しているのです」と語っていることである.ここでの六蔵は,禽獣同様の,不幸で同情すべき対象と見なされているのであって,彼にも人間としての意志や感情があることは無視されている.そういえば,この小説の最後では,石垣から落ちて死んだ六蔵のことを,鳥の真似をして飛ぼうとしたのではないかと推測しているが,これなども単にロマンティックな想像というよりは,精神遅滞者と動物の類縁性を意識すればこその発想と見ることもできる.事実,この作品には,「春の鳥は自在に飛んでいます.その一つは六蔵ではありますまいか.よし六蔵でないにせよ,六蔵はその鳥とどれだけ違っていましたろう」と,六蔵と鳥を同一視したような表現も見られるのである.

学会印象記

第38回国際パラプレジア医学会 岩坪 暎二
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 第38回国際パラプレジア医学会は,平成11年6月18,19,20日に,コペンハーゲン病院健康福祉局所長でリハビリテーション医であるFin Biering Sorensen博士(Chairman)のお世話で,デンマークのコペンハーゲン市,スカンディックホテルで開催された.北欧圏パラプレジア医学会(Nordic Medical Society of Paraplegia)との共同開催でもあり,出席者はおよそ500名以上と盛況であった.

 学会前日の17日には朝から各種役員会と機関誌「Spinal Cord」編集会議,午後は学会前ワークショップ「尿失禁の治療:薬物療法,手術療法,仙骨前根電気刺激療法,尿失禁装具」が行われた.役員会終了後,会長招宴がホテル前に5年の歳月をかけて建設された天文博物館で行われたが,開宴前にPlanetarium theaterで披露された躍動感あふれる映画「大ナイル河の旅」には,このような映写技術もあるのかと度肝を抜かれた.観客席から大ナイルの蕩々たる流れに振り落とされそうな錯覚を覚える臨場感である.

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 1.専門的リハビリテーションを取り入れた身体障害者デイサービス―3年間の経験から

  れいんぼう川崎在宅支援室 松本圭司・岩田直美・渕上正道・大島有喜子・清水訓子・宮崎芳幸

 れいんぼう川崎の在宅支援機能の一つであるデイサービスの内容が,利用者にどう影響しているかを,利用者に対するアンケート結果とわれわれ支援員の経験と観察も踏まえて報告する.アンケートでは申請時と現在の利用目的の比較,身体機能面・ADL面・APDL面・社会参加についてデイサービス利用前との変化を質問した.結論として,専門的リハビリテーションをデイサービスメニューに取り入れ,そのリハビリテーションを中心としたデイサービスメニュー総体が利用者の身体機能面や,生活状況に良い影響を与えているのではないかという感触を得ることができた.また老人デイサービスと異なり,比較的若年のデイサービスでは利用者の自立度を高めたり,社会参加の度合いを高めるという視点が必要である,利用者のQOLの維持向上の役割を担う重度身体障害者を対象にしたデイサービスにはこれらを観点にしたプログラムが必要である.

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 いうまでもなく記憶は,人間にとって重要な精神活動である.どれだけ重要であるかは,リハビリテーションの現場に訪れてくる記憶障害者の当惑ぶりを見るとわかる.しかし,記憶障害が脳損傷の後遺症である場合,これを医学的に治療する手段はない.身体障害がなく,記憶障害だけが問題となった場合,利用できる福祉や労働分野のサービスは少ない.

 本書の著者は,記憶障害患者へどのように対応すべきかを研究してきた第一人者である.関連の著書もいくつか邦訳されている.本書は特に,「患者さんと家族のためのガイド」と副題がついている.そのため活字の大きさや字体,イラストなどが工夫されていて,医学や心理学をまったく知らない人でも読み通すことができる.さらに患者が,CT検査や神経心理学的検査などを受けることを想定して,それらの検査を受けることへの不安を解消する文章もある.本書のメッセージは,「記憶障害が治らないとしても,対応する手段はある」という前向きのものである.こういった著者の意図は,邦訳となっても見事に活かされており,読みやすい文章となっている.

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文献抄録

編集後記
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 ・10月初旬に行われた「大学病院リハ部連絡協議会国立大学部会ワークショップ」は「国立大学の独立行政法人化」がテーマだった.国の直轄でなくなるから予算は自由に使え,企業からの受託研究費や寄付金は直接大学の収入となり,大学運営に自主性・自律性がもたらされる.その代わり運営は自己責任においてしなければならないからコスト・人員削減など経営努力が要求される.いわば大学の企業化であり,大学の浮沈も経営手腕次第,人気のない地方の大学や金にならない基礎研究の分野は冷や飯を食わされ,切り捨てられていく可能性もでてくる.そんな中で国立大学リハ部はどうなるのだろうか?どう対応すればよいのか?ということで白熱した議論.この数日後,宇沢弘文先生が本誌の対談で社に来られた折もこの話が出た.先生の「社会的共通資本」の理論では,教育・医療・福祉などの制度資本は,市場万能主義を排し,社会全体にとって共通の財産として社会的な基準によって管理・利用されなければならない,という.だからこれは極めて馬鹿げた案だ,と言っておられた.

基本情報

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総合リハビリテーション
27巻11号 (1999年11月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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