Japanese
English
特集 表面筋電図による動作解析
歩行時の運動制御の解析
Motor Analysis of Human Walking using Surface EMG.
長谷 公隆
1
Kimitaka Hase
1
1慶應義塾大学リハビリテーション医学教室
1Department of Rehabilitation Medicine, Keio University School of Medicine
キーワード:
歩行
,
運動制御
,
表面筋電図
Keyword:
歩行
,
運動制御
,
表面筋電図
pp.1029-1036
発行日 1999年11月10日
Published Date 1999/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109097
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はじめに
関節運動は,中枢神経系(central nervous system;CNS)により制御された筋収縮によってもたらされる筋張力と,行おうとしている動作の力学的要求との相互関係の結果として起こる1).表面筋電図はその“neural drive”を直接的に知るための基本的手段として,動作解析に用いられてきた.
歩行分析においても,フットスイッチや床反力計により,歩行周期を“phase”に分けて評価できるようになったことで,それぞれの筋活動のEMGプロフィール(profile)は,関節角度変化との関係において,詳細に検討されてきている.
しかし,歩行というダイナミックな動きのなかでの筋電信号の処理方法や,定常状態の歩行においてもみられる歩行周期ごとの変動性(variability)をどのようにして平均化するかといった問題は,表面筋電図を用いた歩行分析の臨床応用に制約を加えており,注意深い対処を必要とする.
人体をリンクモデルとして扱うことによってなされた多くの生体力学的解析は,CNSが,身体の重心(center of mass;COM)に作用するさまざまな外力に対して,その空間的位置を保持し,その軌跡を効率的に制御していることを実証してきた2).定常状態に達した歩行はその典型であり,さまざまな角度から解析されている.しかし,歩行中の頭部・体幹の姿勢調節や,歩行の開始・停止・方向転換といった複雑な運動制御についての研究は,現在もまだ多くの課題を残している分野である.
そこで本稿では,表面筋電図を歩行分析に用いるうえで必要な知識を述べ,これらの話題についての知見を概説する.
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