Japanese
English
講座 言語聴覚障害学―理論と臨床―
5.運動障害性構音障害の病態と治療
Dysarthria: Characteristics and Treatment.
熊倉 勇美
1
,
濱村 真理
2
Isami Kumakura
1
,
Mari Hamamura
2
1川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科言語聴覚専攻
2有馬温泉病院リハビリテーション部言語療法科
1Division of Speech-Language Pathology and Audiology, Department of Sensory Science, Faculty of Medical Profession, Kawasaki University of Medical Welfare
2Speech and Language Rehabilitation Service, Department of Rehabilitation, Arima Onsen Hospital
キーワード:
運動障害性構音障害
,
病態
,
治療の考え方
,
治療効果
Keyword:
運動障害性構音障害
,
病態
,
治療の考え方
,
治療効果
pp.1043-1050
発行日 1999年11月10日
Published Date 1999/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109099
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はじめに
Darleyら1)は,dysarthria(運動障害性構音障害)を「神経・筋系の病変により,発声発語器官(肺・声帯・軟口蓋・舌・口唇・下顎など)に筋緊張の異常,筋力低下,協調運動の障害,運動速度の低下などの運動障害が生じ,そのために呼吸,発声,共鳴,構音,プロソディが障害され,音が歪んだり省略され,話しことばが全体に不明瞭になったり異常になったりするもの」と定義している(図1).いわゆる「構音」の障害ではなく,呼吸,発声,共鳴,プロソディを含めた「発話」の障害として捉えるものである.dysarthriaの日本語訳については議論のあるところであるが,本稿では運動障害性構音障害ということばを用いる.
臨床においては運動障害性構音障害の原因,種類,発話特徴を明らかにしなければならないのはもちろんであるが,精神機能の低下(いわゆる痴呆)や言語機能の障害(失語症),認知機能の障害などを合併していることもあり,これらの鑑別も重要な問題となる.Apraxia of speech(発語失行)との鑑別もしばしば問題にされるが,明確に区別される.さらに,運動障害性構音障害の患者は,しばしば摂食・嚥下機能が重複して障害されるため,発話の問題ばかりでなく,摂食・嚥下機能の障害も,近年,特に注目されている.言語聴覚士(以下,ST)の果たすべき役割が従来の「コミュニケーション障害」という枠組みから大きな広がりを見せていると言えよう.
本稿では,以下,運動障害性構音障害の病態(種類,原因,発話特徴)に触れ,治療の考え方や訓練効果,さらに補助・代替コミュニケーションのあらましを紹介する.
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