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わが国において,障害者リハビリテーションに携わる者は,障害者基本法に掲げられた目的「障害者の自立と社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進する」,基本的理念「すべての障害者は,社会を構成する一員として社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられる……」,障害者の自助努力「障害者は,その有する能力を活動することにより,進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない」を実現すべき役割の一翼を担っているはずである.実際には,各種リハビリテーション関連専門職員の努力にもかかわらず,その目的・理念は実現していない.そのため,社会への適合あるいは順応を目指す治療や訓練を主体とした医学モデル(Medical Model)に立脚するリハビリテーション・アプローチへの批判が高まっている.
健常者を基準とした社会が障害者に対して向けている障壁,バリアが障害者自身の主体的な取り組みを含む障害研究(Disability Studies)によって明らかにされつつある.その結果,新たに社会学的アプローチによる社会モデル(Social Model)が提唱され,1990年代になってからは,社会変革を求めた研究発表や大学における教育,社会政策上への提言が次第に活発になっている.欧米では,障害にかかわる社会的運動は,障害者の問題を代表するような組織において,障害者自身が進めていく活動へと変化している.国との関係や政治的な対処において,障害者の組織(BCODPなど)は障害者のための組織(RADARなど)とは異なる問題提起を行うようになった.障害は社会の要求に応じられないという個人の問題ではなく,潜在的障害の存在への認識欠如,障害から生ずる特殊なニーズに取り組むことへの社会の集団的失敗という問題意識への変換である.
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