臨床眼科 74巻7号 (2020年7月)

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するマイクロパルス閾値下凝固後の網膜毛細血管瘤(MA)の変化を評価する。

対象と方法:チャートレビューによる後ろ向き観察研究。聖路加国際病院にてマイクロパルスレーザー(IRIDEX IQ577TM)を用い,MAを有する糖尿病黄斑浮腫患者に対しMA凝固を行わずに網膜色素上皮層に閾値下レーザーを施行し,術前および術後1か月までOCTA(ZEISS Cirrus® HD-OCT 5000 OCT angiography)にて経時的にMAを撮影し,術前後のMAの評価が可能であった症例を抽出した。En face OCTA画像とBモードのドップラー像を用いてレーザー前後のMAの数,ドップラー像による血流の変化を評価した。主要評価項目は術1か月後の網膜全層,浅層,深層のMAの数の変化,副次評価項目は,術前,術1か月後の最高矯正視力,中心窩網膜厚(CRT),黄斑体積の変化とした。

結果:11名11眼(男性7名,女性4名,平均年齢66.7歳)の結果が評価可能であった。OCTAによって描出された3×3mm2の画角のなかの平均MAの数は全層,浅層,深層でそれぞれ治療前7.5,4.2,3.4,治療1か月後5.8,3.5,2.4であり,全層と深層では有意に減少した(p<0.01)。視力(logMAR),CRT(μm),黄斑体積(mm3)はそれぞれ治療前0.12,343.3,11.0,治療1か月後0.19,329.2,10.6であり,いずれも有意な変化はなかった。

結論:マイクロパルス閾値下凝固後では比較的早期からMAが減少し,これが浮腫減少につながることが示唆された。

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要約 目的:網膜動脈閉塞症を契機に感染性心内膜炎の診断に至った1例を報告する。

症例:67歳,男性。2019年4月中旬の深夜に右眼上方視野異常を自覚し,近医にて網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)と診断され当院を受診した。初診時の矯正視力は右0.9,左1.5。右眼の眼底は下半側の網膜が白濁し,ロート斑を全象限に認めた。光干渉断層計にて白濁した網膜に一致した網膜内層の肥厚と輝度の上昇を呈していたため,BRAOと診断した。全身所見として,2か月以上続く不明熱(38.6℃),白血球数13,260/μl(好中球86.2%),CRP 3.84mg/dlと全身性炎症反応が上昇していた。このため全身精査したところ,僧帽弁閉鎖不全症と疣贅を伴う感染性心内膜炎を認めたため,抗菌薬静脈内投与と僧帽弁形成術を施行した。治療開始7日後に硝子体出血を認めたが,経過観察にて出血は吸収され,治療開始5か月後に右眼矯正視力は1.0となり,全身状態とともに回復した。

結論:感染性心内膜炎を伴う網膜動脈閉塞症の症例を経験した。生命にかかわる全身性疾患が網膜動脈閉塞症の原因となる可能性があるため,十分な病歴聴取と全身精査を行う必要がある。

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要約 目的:トリアムシノロンテノン囊下注射施行後に強膜炎を発症し,診断に苦慮したノカルジア強膜炎の1例を経験したので報告する。

症例:82歳,女性。近医にて左網膜静脈分枝閉塞症,黄斑浮腫に対してトリアムシノロンテノン囊下注射を施行した。注射の7週間目に強膜炎を発症し,抗菌薬とステロイドの点眼治療を開始したが改善せず,千葉大学医学部附属病院眼科に紹介となった。

所見:左眼の耳側結膜に充血と強膜壊死を伴う結節性病変がみられた。前房内には炎症細胞とフィブリンの析出を認めた。抗菌薬とステロイドの点眼,内服を開始後,症状は改善傾向にあったが,その後増悪し,左眼窩膿瘍も出現した。強膜の結節性病変から得られた膿よりNocardia elegansが検出されたため,ノカルジア強膜炎と診断した。スルファメトキサゾール・トリメトプリムの内服治療を開始したところ,症状は速やかに改善した。

結論:ステロイドのテノン囊下注射を含む処置後に生じた難治性強膜炎では,ノカルジア強膜炎の可能性も念頭に置いて治療にあたることが重要である。

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要約 緒言:緑内障手術の代表である線維柱帯切除術(TLE)は,マイトマイシンC(MMC)の併用によりその手術成績は向上し,より長期の眼圧下降が期待できる手術として普及しているが,濾過胞感染の危険が伴う。和歌山県立医科大学附属病院眼科で施行したMMC併用TLEの術後感染について後ろ向きに検討した。

対象と方法:対象は2008年1月〜2019年2月の約11年間に当科でMMC併用上方円蓋部基底のTLEを施行した384例460眼である。後ろ向きにカルテベースで感染発症率と術後感染症例の経過について検討した。

結果:術後感染を460眼中5例5眼に認め,発症率は1.0%であった。平均年齢は71.6±15.0歳(48〜87歳),男性4眼,女性1眼であった。Stageに応じた治療を施し,5例中4例は良好な経過をたどった。

結論:当科でのMMC併用TLE術後の感染症の発症率は1.0%で,既報と相違なかった。緑内障術後の濾過胞感染に対し,症例に応じた治療法の選択が求められる。

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要約 目的:腎癌および多発肺転移に対するニボルマブによる治療中に生じたVogt-小柳-原田病(VKH)様汎ぶどう膜炎の1例の報告。

症例:66歳,男性。腎癌とその多発肺転移に対して,関西医科大学附属病院腎泌尿器外科で,2018年12月よりニボルマブ投与を開始した。2019年2月に近医で両眼の虹彩炎を認め,ステロイドの点眼を開始した。しかし,両眼の霧視が増悪し,2019年3月に当科を受診した。初診時矯正視力は右0.7,左0.9で,前眼部には両眼とも前房内炎症細胞は認めず,色素性角膜後面沈着物と虹彩後癒着があり,両眼眼底には視神経乳頭の発赤・腫脹,後極部に漿液性網膜剝離を認めた。フルオレセイン蛍光眼底造影で視神経乳頭の過蛍光および蛍光漏出,網膜下蛍光液貯留がみられ,インドシアニングリーン蛍光眼底造影で脈絡膜充盈遅延と斑状低蛍光,光干渉断層計(OCT)で漿液性網膜剝離および著明な脈絡膜肥厚を認めた。ニボルマブによるVKH様汎ぶどう膜炎と診断し,腎泌尿器外科と相談のうえ,ニボルマブの投与中止,ステロイドの点眼とテノン囊下注射を行った。治療1か月後には,矯正視力右0.8,左0.9とほぼ不変であったが,OCTでの異常所見は軽快し,眼底所見の改善を得た。

結論:ニボルマブによるVKH様汎ぶどう膜炎は,ニボルマブ投与を中止し,ステロイドの局所投与により改善が得られることがある。

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要約 目的:梅毒血清反応検査がprozone現象を示した前房蓄膿を伴う梅毒性ぶどう膜炎の症例報告。

症例:30歳,男性。1か月前から右眼の飛蚊症と視力低下があり,当科を受診した。

所見:矯正視力は右指数弁,左1.5,右眼は毛様充血と前房蓄膿を伴う強い前眼部炎症があり,眼底は硝子体混濁のため透見不能であった。梅毒血清反応検査では梅毒トレポネーマラテックス凝集試験(TPLA)が98.4U,迅速血漿レアギン試験(RPR)が3.1R.U. と陽性であったが,眼内炎症の活動性とは矛盾する低値であった。希釈した検体で再測定したところ,TPLA 51,624U,RPR 1,974R.U. と著明な高値を示し,初回測定値は梅毒抗原が過剰なために抗原抗体反応が抑制されたprozone現象と判明した。

結論:活動性の高い梅毒性ぶどう膜炎では,血清中の抗原過剰によるprozone現象が生じることがあり,検査結果の解釈に注意を要する。

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要約 目的:急性後天共同性内斜視(AACE)における融像域について検討する。

対象と方法:複視で発症したAACE 4例(平均年齢15.3±5.1歳:7〜21歳)を対象とした。眼位は交代プリズム遮蔽試験で,融像域は大型弱視鏡で測定した。治療方針は屈折矯正とフレネル膜プリズムを第一選択とし,改善しない場合に発症後半年以降で斜視手術を行った。融像域と治療効果などについて検討した。

結果:眼位は全例が基礎型の内斜視で30〜45PDであり,適切な屈折眼鏡装用をしている症例はなかった。受診後,全例に適切な屈折矯正眼鏡の装用とプリズム療法を行ったところ,融像域が正常であった2例(20°と41°)は,プリズム療法に反応し,最終的に斜位になった。融像域が正常以下の2例(1例は検査不可能,1例は6°)は斜視手術に至った。術後眼位は良好で,2例とも術後の融像域は正常となった。

結論:融像域が広い段階でのAACEに対する適切な屈折矯正眼鏡装用とプリズム治療は有効であった。いったん破綻した融像域も手術治療後に回復した。

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要約 目的:糖尿病により著明な高血糖をきたし,急速に過熟白内障に至った2症例を報告する。

症例:症例1は48歳,男性。数日前からの視力低下を主訴に来院した。矯正視力は右0.1,左0.04であり,両眼に高度の皮質混濁,前囊下混濁を認めた。血糖375mg/dl,HbA1c 16.6%であり,内科で血糖管理を行い,翌週に白内障手術を施行した。手術時はさらに白内障が進行していた。術後視力は右1.2,左1.0であった。症例2は50歳,女性。体調不良で近医内科を受診し,血糖906mg/dl,HbA1c 19.2%,糖尿病ケトアシドーシスで当院内科に入院した。1か月前から視力低下があり,当科受診時の矯正視力は右0.05,左0.6であった。右眼に著明な皮質混濁,膨化白内障を認めた。両眼とも狭隅角であり,翌週に白内障手術を施行した。手術時は両眼とも過熟白内障で,視力は眼前手動弁であった。術後視力は右1.2,左1.2であった。2症例とも眼底は正常であった。

結論:血糖,HbA1cの著明な高値を認め,急速に進行した白内障のために重篤な視力障害をきたしていた。若年で進行した白内障を認めた場合は,糖尿病を疑う必要があると考えられる。

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要約 目的:3年間に当院眼科で入院加療を要した角膜潰瘍38例38眼の検討。

対象と方法:2016年4月〜2019年3月の角膜潰瘍入院例を対象に,誘因,検出菌,観血的治療の有無,入院日数,視力予後などについてレトロスペクティブに検討した。

結果:平均年齢は73.6±16.1歳〔20〜93(標準偏差)歳〕で,男性19例,女性19例であった。誘因として考えられたものは糖尿病が10例と最も多い一方,コンタクトレンズ装用は1例であった。菌検出率は37眼中10眼(27.0%)であった。角膜穿孔発症例は7例(18.4%)に認めた。観血的治療を要した例(手術群)と要さなかった例(非手術群)は,ともに38例中19例(50.0%)ずつであったが,透析患者は4例全例が手術群で,うち3例は糖尿病腎症によるものであった。平均入院日数は非手術群の14.1±9.3日に対して,手術群は23.6±15.6日と,統計学的に有意に長かった(unpaired t-test,p=0.029)。最終視力が0.01未満の視力予後不良例は,両群間に差がなかった。

結論:当院周辺には中核病院が少なく重症例の紹介が多いためか,観血的治療の有無にかかわらず視力予後不良例が多かった。糖尿病および透析は角膜潰瘍発症および重症化のリスクファクターと思われた。高齢の症例が多く,高齢化社会の日本の現状が浮き彫りになりつつあると思われた。

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要約 目的:急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は,中枢神経系に脱髄を伴う急性炎症性疾患であり,抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)抗体は炎症性脱髄病変を引き起こす自己抗体である。今回,抗MOG抗体陽性のADEMによる小児視神経炎を経験したので報告する。

症例:5歳,男児。2018年4月,麻疹・風疹ワクチン接種。5月中旬から発熱・頭痛・嗜眠・視力障害を自覚し,近医眼科を受診した。矯正視力は右1.0,左0.2。両眼視神経乳頭の発赤腫脹,網膜血管の拡張蛇行を認め,翌日視神経炎疑いで当科を紹介され受診となった。当科初診時視力は右0.07,左0.04とさらに低下した。眼所見と病歴から,感染やワクチン接種契機のADEMに伴う視神経炎を疑い,同日当院小児科に精査加療目的で緊急入院となった。咽頭粘液から溶連菌が検出され,頭部MRIでは脳室周囲の白質に散在性の高信号域を認めた。ADEMの診断でステロイドパルス療法を2クール施行した。治療後の最終矯正視力は両眼1.2に改善したが,初診から2か月後の頭部MRIで新たに異常高信号域を認め,血清検査で抗MOG抗体陽性であった。さらに2か月後の頭部MRIで白質病変は消失し,その後再発はない。

結論:ADEMは一般的に単相性の経過をとるが,抗MOG抗体陽性の場合は再発する可能性があるもののステロイドの反応性が良好であると考えられた。抗MOG抗体の測定は,ADEM患者の経過を予測するうえで有用と考えられた。

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要約 目的:抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎に生じた両側の眼窩先端部症候群の症例報告。

症例:78歳女性,前医内科にてANCA関連血管炎の治療中,右眼の視力障害を自覚した。前医眼科にて視神経炎として治療されるも増悪し,構音障害,嚥下障害も出現したため香川大学医学部附属病院眼科へ紹介となった。当科初診時の視力は右光覚なし,左(0.6),右相対的瞳孔求心路障害は陽性であった。右眼瞼下垂,右眼の全眼球運動障害と,左眼の軽度の内転制限を認めた。両眼視神経乳頭に腫脹はなかった。頭部造影MRIで右の眼球直後と先端部の視神経周囲に造影効果があり,両側の眼窩先端部と側頭葉先端部に硬膜の肥厚と造影効果を認めた。ANCA関連血管炎に併発した肥厚性硬膜炎による眼窩先端部症候群と診断した。ステロイドパルス療法2クール後の視力は右(0.2)に改善,シクロホスファミドパルス3クールを追加し眼球運動障害も消失した。治療開始90日目に視力右(0.03)と再燃した。ステロイドパルス,シクロホスファミドパルス各1クールを追加したところ,視力右(0.5)に改善した。その後は再燃なく徐々に改善し,160日後の現在,視力は右(0.9),左(1.0)と再燃前以上の視力を維持できている。

結論:ANCA関連血管炎に伴った肥厚性硬膜炎による両側の眼窩先端部症候群を経験した。右眼の光覚を消失するほど視機能障害が重篤であったにもかかわらず,治療により良好な改善を認めた。

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要約 目的:真菌による眼窩先端部症候群は重篤な転帰をたどることがある。画像所見と採血所見が乏しく,診断に苦慮した副鼻腔アスペルギルス感染症の1例を報告する。

症例:64歳,男性。左眼視力低下で受診した。矯正視力は右1.2,左0.02。視神経乳頭に軽度腫脹を認め,左相対的瞳孔求心路障害が陽性であった。眼球運動時痛と眼球運動障害はなかった。造影MRIにて視神経管に造影効果および蝶形骨洞の粘膜肥厚を認めた。採血にてβ-Dグルカン上昇などの明らかな異常所見を認めず,真菌感染症は考えにくいとの判断でステロイドパルスを施行した。1クール終了時に乳頭腫脹は軽快し,矯正視力と自覚症状は改善したが,2クール終了時に自覚症状が悪化した。画像検査にて蝶形骨洞の肥厚した骨皮質と左視神経管内への炎症の波及が認められ,真菌感染症が疑われた。CTでは骨破壊像はなかった。副鼻腔生検を施行したところ,篩骨洞内の上方から天蓋部にかけてアスペルギルス塊を認め,副鼻腔アスペルギルス症による眼窩先端症候群の診断に至った。

結論:本症例の副鼻腔アスペルギルス症は骨破壊のない非浸潤型で,左視神経管内への炎症波及による視神経症と考えられた。画像所見と採血結果において,副鼻腔真菌症を積極的に示さなかったことが診断を困難にしていた。副鼻腔真菌症では,β-Dグルカンの測定が有用とされているが必発ではなく,臨床的に副鼻腔真菌症を疑った際は早期の生検が診断に有用であると考えられた。

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要約 目的:災害等の停電時に眼科器械へ給電するための発電機には騒音や排気ガス中毒,蓄電池には給電時間が短いなどの欠点がある。そこで,電気自動車(PHEV)の外部給電機能を利用する方法を試みた。

対象と方法:アウトランダーPHEV(三菱自動車)は,容量約14kWhの蓄電機能とガソリンを使用した発電機能を併せもつ。車外の100Vの電気機器に対し,消費電力の合計が1,500W以下なら最長約80時間PHEVから給電できる。PHEV車内の給電口から市販の延長コードを使用するのみで眼科器械へそれぞれ単独に接続し,器械ごとに給電され作動するかを検討した。さらに,PHEVから複数の眼科器械へ一度に同時に接続し眼科診療を試みた。

結果:細隙灯顕微鏡(消費電力の目安は50W),眼底倒像鏡(50W),オートレフ・ケラトメータ(70W),眼圧計(70W),電動光学台(150W),電動椅子(200W),YAGレーザー(500W),レセプトコンピュータ(400W),超音波白内障手術器械(400〜500W),手術顕微鏡(400〜700W)および手術ベッド(400W)は,それぞれ単独で接続した状態で起動し作動した。レセプトコンピュータ,細隙灯顕微鏡,電動椅子,眼底倒像鏡および眼圧計へ一度に同時に接続した状態で2時間の診療が行えた。その際,レセプトコンピュータのプリンターおよび細隙灯顕微鏡の上下移動は消費電力が大きいため使用しなかった。蓄電容量は全容量の約1/10を消費しただけであった。オートレフ・ケラトメータと眼圧計への供給電圧を100Vから70Vまで低下させても,測定値には差はほとんどなかった。

結論:停電時にPHEVの給電機能を利用した眼科診療は可能であるが,一度に使用できる消費電力(1,500W)に制限がある。解決法として,PHEVと診療所の間にV2Hシステムの設置もしくはPHEVの複数台利用が考えられる。

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 アイベータ®は,α2作動薬であるブリモニジンとβ遮断薬であるチモロールを組み合わせた日本では今までになかった配合薬であり,房水産生抑制とぶどう膜強膜路流出促進の両方の作用を併せもつ。本稿では,アドヒアランスを考慮したアイベータ®の使用位置づけについて,他の配合薬との比較および海外の報告から解説したい。

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症例

患者:57歳,女性

現病歴:9年前に原発閉塞隅角緑内障と診断され,時間外に緊急で東海大学医学部附属病院眼科(以下,当科)に紹介され受診となった。初診時の眼圧は,右60mmHg以上,左20mmHgであった。右眼には角膜浮腫も認められ,D-マンニトール点滴,ピロカルピン塩酸塩を含む点眼治療後,両眼レーザー虹彩切開術を施行し眼圧は下降した。その後,炭酸脱水酵素阻害薬内服ならびに交感神経β受容体遮断薬とベタメタゾン点眼を処方した。

 再診時の矯正視力は,右0.9,左1.0で,眼圧は右9mmHg,左8mmHgまで下降した。ハンフリー視野検査の結果を図1に示す。内服薬は中止し,ビマトプロスト点眼を両眼1回/日として経過観察を行った。当初は両眼とも眼圧12mmHg程度に落ち着いていたが,眼圧は不安定であった。時折の眼圧上昇に対し,カルテオロール塩酸塩点眼を追加,チモロールマレイン酸塩とドルゾラミド塩酸塩の配合薬への変更,ブリモニジン酒石酸塩の追加,一時的な炭酸脱水酵素阻害薬の内服処方で対処していた。3年前から近医で経過観察を続けていたが,今回,右眼圧が41mmHgに上昇したため再び当科を受診することとなった。

連載 眼炎症外来の事件簿・Case23

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患者:78歳,男性

主訴:右眼視力低下

既往歴:糖尿病(無治療),フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ球性白血病(以下,Ph陽性ALL)(チロシンキナーゼ阻害薬を中心にした化学療法をしていたが,2年前を最後に治療自己中断),不安定狭心症,認知症,スティーブンス・ジョンソン症候群(被疑薬はイマチニブ)

家族歴:特記事項なし

現病歴:右眼の視力低下を自覚して近医眼科を受診したところ,右眼に前房内蓄膿および虹彩ルベオーシスがみられたため,広島大学病院ぶどう膜炎外来に紹介された。過去には何度か前房内炎症があり,0.1%フルオロメトロン点眼で加療したことがある。

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要約 目的:側方視での複視を初発症状とした加齢に関連した斜視の臨床像を明らかにすること。

対象と方法:右方視での複視を自覚して受診した3症例と左方視での複視を自覚した3症例につき,回旋偏位を含む自覚的・他覚的斜視角を検討した。

結果:患者の年齢は61〜74歳。初診時の正面視での上下斜視角は1〜3°と小さい。側方視での上下ずれの増加(4名),外方回旋ずれの増加(1名),内斜視・外方回旋ずれの増加(1名)が主因となり,融像を維持できなくなり複視が出現したと考えられた。4症例で経過中に斜視の悪化を認めた。

結論:正面視では微小角の斜位であるが,側方視で回旋を含めた斜視角が増加することにより,複視を自覚する加齢関連斜視があるので留意したい。

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要約 目的:発症から長年にわたってMALTリンパ腫として加療を受けたが,注意深い観察により診断に至ったIgG4関連眼疾患を経験し,ステロイド治療により視力の回復を図ることに成功したため報告する。

症例:70歳台,男性。主訴は眼球突出,視力低下。現病歴は1991年に眼球突出を自覚した。1999年に両側球後部の腫瘤の組織学的検討が行われ,間質へのBリンパ球の浸潤,胚中心細胞類似細胞が指摘された。軽鎖不均衡は証明されなかったが,細胞形態からMALTリンパ腫が強く疑われた。局所照射により症状は軽快したが,その後も再燃を繰り返し,免疫化学療法やリツキシマブ単独投与により改善した。2019年に両側眼窩内腫瘤が再増大し,高度の視力低下をきたした。球後部腫瘤,顎下腺への対称性フルオロデオキシグルコース集積,血清IgG4高値を認め,IgG4関連疾患が鑑別に挙がった。唾液腺生検と診断時の眼窩腫瘤標本を再評価し,両組織とも多数のIgG4陽性形質細胞,間質の線維化が確認され,IgG4関連疾患と診断された。ステロイドを投与され,眼球突出は消失し視力も回復した。

結論:IgG4関連疾患は,2011年に診断基準が確立された比較的新しい疾患概念である。眼科領域では涙腺炎や眼窩内腫瘤を呈し,MALTリンパ腫との鑑別が必要とされる。診断基準策定前に診断されたMALTリンパ腫のなかには,IgG4関連疾患が含まれている可能性がある。発症から長期間を経てもステロイド治療は有効であり,同疾患を念頭に置いた症例の検討が重要である。

今月の表紙

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 患者は49歳,女性。両眼の視力低下を自覚し,近医を受診した。両眼の増殖糖尿病網膜症と診断され,当院へ紹介された。初診時の所見は増殖変化に伴う右眼後極部の牽引性網膜剝離,左眼網膜全剝離が認められた。視力は右(0.2),左光覚弁(+)であった。

 右眼優先の早急な手術計画となったが,初診時にHbA1c 14.5%の未治療の糖尿病であったため,糖尿病・内分泌内科と連携のうえ,初診時から約2週間の血糖コントロール後に入院し,手術加療となった。この間に右眼に対して抗VEGF療法および汎網膜光凝固術を施行した。注射後1週間で,初診時に右眼の走査レーザー検眼鏡(SLO)検査で認められた網膜新生血管が著明に消退していることを確認できた。

海外留学 不安とFUN・第54回

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 2019年9月より米国オレゴン州ポートランドにある,Oregon Health and Science University(OHSU),Casey Eye InstituteのCenter for Ophthalmic Optics & Lasers(COOL)ラボに留学しています(執筆時点で約6か月が経過しています)。留学にあたり,準備から現在に至るまで,短い期間ですが多くの経験をさせてもらいました。この経験を少しでも皆様,特に今後留学を考えられている方々に伝えることができればと思います。

Book Review

眼内腫瘍アトラス 小幡 博人
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 著者の後藤浩先生は,眼腫瘍,ぶどう膜疾患がご専門であり,ぶどう膜悪性黒色腫をはじめとする眼内腫瘍をわが国で最も診ている眼科医である。本書は,虹彩腫瘍,毛様体腫瘍,脈絡膜腫瘍,網膜腫瘍,視神経乳頭腫瘍,眼内リンパ腫,白血病の各章からなり,多数のきれいかつ貴重なカラー写真がこれでもかというほど掲載されている。通常,眼内腫瘍といえば,網膜芽細胞腫,脈絡膜悪性黒色腫,転移性脈絡膜腫瘍,悪性リンパ腫を思い浮かべることと思う。しかし本書は,それらはもちろんのこと,虹彩の囊胞・母斑,虹彩・毛様体の黒色細胞腫(メラノサイトーマ)・悪性黒色腫,脈絡膜の血管腫・骨腫・母斑,網膜の血管腫・星状膠細胞腫・過誤腫・網膜色素上皮過形成(肥大),視神経乳頭の黒色細胞腫(メラノサイトーマ)・毛細血管腫などの症例写真も多数掲載されており驚愕する。

 眼内腫瘍は患者数が少ないため,遭遇したときに診断や対処に困ることが多い。本書は,同じ疾患でもバリエーションの異なる写真が多数掲載されているため,各疾患の特徴がよくわかり,学習効果が高い。見たことのない臨床像も多く,“なぜこんなことが眼内で起こるのか?”と自然界の不思議に思いをはせることもしばしばである。

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目次

欧文目次

第38回眼科写真展 作品募集

べらどんな +14D
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 学会の参加者には「おみやげ」が出ることが多い。

 いままで参加した学会では,大きな置時計や,名刺のような銅板などがあったが,電卓のこともある。電気計算機がまだ珍しい時代で,大きな8桁のをいただいた。その後価格が大きく下がり,ワンコイン以下になったことは周知の通りである。

学会・研究会 ご案内

希望掲載欄

アンケート用紙

次号予告

あとがき 井上 幸次
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 このあとがきを書いているのは5月の後半で,大阪や京都の緊急事態宣言が解除になりましたが,首都圏はまだという状況にあります。半年前の1号のあとがきを書いていたときには2020年はオリンピックを中心に動く年になるとばかり思っていたので,その落差に驚きます。私は角膜感染症を専門としていることもあって,常日頃,感染症は医学の中ではとても重要な分野なのだということを学生さんや若い先生方に話をしており,再生医学のような先端的な医学も大事だが,もっと感染症が重要視されるべきだと思っていました。それがまさかこんな形で全世界のすべての人が感染症に注目するようになるなんて,思ってもみませんでした。報道で,再生医学の最先端を担っておられる山中伸弥先生が新型コロナウイルス感染についてのさまざまなコメントを出されているのも象徴的な現象だなと感じています。

 眼科でもやはり感染症が重要なことは間違いなく,例えば本号の日本臨床眼科学会講演集の13の論文のうち,6つの論文には感染症が絡んでいるのです。眼科診療における感染症の重要性を示す一つの証左だと我田引水的に思っています。

基本情報

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臨床眼科
74巻7号 (2020年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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