臨床眼科 74巻8号 (2020年8月)

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要約 目的:膠様滴状角膜ジストロフィ(GDLD)は,常染色体劣性の遺伝性疾患であり,アミロイド沈着による角膜混濁をきたす。今回,筆者らは長期間加療・経過観察した6症例を経験したので報告する。

対象と方法:順天堂医院眼科でGDLDと診断し,20年以上経過観察が可能であった6例12眼を対象とし,レトロスペクティブに評価した。評価項目は初診時および最終受診時の平均年齢・視力,観察期間,角膜移植回数,重症度である。重症度分類は「角膜難病の標準的診断法および治療法の確立を目指した調査研究」のワーキンググループで定義した分類を使用した。

結果:対象は6例12眼(男性:4例8眼,女性:2例4眼),初診時年齢は24.0±7.5歳(14〜33歳),平均視力は0.02(logMAR視力1.70)であった。観察期間は39.8±7.3年(28〜48年),角膜移植回数は片眼4.3±2.2回(2〜9回),最終受診時の平均年齢は65.5±10.1歳(47〜77歳),平均視力は0.013(logMAR視力1.89),2眼は光覚消失となった。光覚消失の原因は,網膜剝離1眼,緑内障1眼であった。重症度はⅡ度1例,Ⅲ度2例,Ⅳ度3例であった。

結論:20年以上の長期に経過を追えたGDLDの臨床経過を報告した。GDLDは,初診時視力が不良の症例が多かった。若年発症であり,長期間の視力改善は認められず,角膜移植を繰り返した。

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要約 目的:佐賀大学医学部附属病院(当院)において最近経験した鼻性視神経症の症例の原因と経過について検討する。

対象と方法:2012年4月〜2019年3月に当院で真菌性鼻性視神経症に対して加療を行い,3か月以上経過観察できた4例を後ろ向きに検討した。3例が片眼性,1例が両眼性で,男性1例・女性3例,初診時平均年齢は71.0±16.0歳,平均経過観察期間は17.5±10.4か月であった。既往歴としてステロイド投与が3例,副鼻腔炎手術が1例にあった。

結果:初診時の矯正視力は0.03が1例,手動弁が1例,光覚なしが2例で,視力低下の自覚は2週間前〜3か月前であった。MRIで全例で鼻性視神経症が疑われたが,1例は明らかな骨破壊像はなかった。当院耳鼻咽喉科にて全例で内視鏡下副鼻腔手術を行い,いずれも切除病変の病理検査でアスペルギルス症と診断された。手術前後より抗真菌薬投与を行ったものの,最終視力は全例で光覚なしと不良であった。

結論:近年,免疫抑制薬や抗腫瘍薬の汎用に伴い,副鼻腔真菌症が増加傾向である。中枢神経系への浸潤は生命予後も不良となるため,眼痛を伴う著明な視力低下を認めた場合は,本症も念頭に早急な画像検査や耳鼻科診察が必要である。

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対象と方法:2009年からの10年間に,兵庫医科大学病院眼科で,内方回旋斜視に対して斜視手術を施行した29例(手術時年齢:中央値58歳)を対象とした。内方回旋偏位の測定には大型弱視鏡を,立体視検査にはTitmus Stereo Testを用いた。内方回旋斜視の背景と手術成績について後ろ向きに検討した。

結果:原因疾患は,動眼神経麻痺7例,筋原性斜視(甲状腺眼症・外眼筋炎)5例,重症筋無力症4例,癒着性斜視4例,白内障術後の恒常性外斜視3例,先天性2例,眼窩底骨折1例,原因不明が3例であった。術前,内方回旋偏位は平均9.5±4.5°で,外斜視の合併が26例,10PD以上の上下偏位の合併が15例に認めた。立体視はFly(−)が23例(79.3%)であった。術式は,下直筋耳側移動術が11例(両眼1例),上直筋鼻側移動術が9例(両眼1例),上下直筋耳鼻側移動術が2例,水平筋の上下移動術が7例であった。術後,内方回旋偏位は平均2.0±3.2°と有意に減少し(p=0.0020),Fly(−)も8例となった。複視は術前27例にあり,術後22例(81.5%)で消失した。動眼神経麻痺4例を含む5例(18.5%)で複視が残存した。

結論:内方回旋斜視は動眼神経麻痺に最も多くみられた。上下直筋の水平移動術は,内回旋偏位の矯正にも有用であった。

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要約 目的:網膜剝離を合併した朝顔症候群の治療法は確立していない。筆者らは,片眼性または両眼性の本症3例4眼の病状と治療経過,転帰について今後の治療法選択の一助となるよう報告する。

症例:症例1は14歳の女児(片眼性),症例2は43歳の女性(片眼性),症例3は20歳の男性(両眼性)で,症例3の左眼は前医で治療された後に眼球癆となった。

所見:症例1の矯正視力は,右1.0,左0.01で,左眼に朝顔症候群と黄斑を含まない乳頭周囲に限局した網膜剝離を認めた。網膜裂孔は同定されなかったため,経過観察を行い,初診から5年後に網膜は自然復位した。最終受診時視力は眼前30cm手動弁だった。症例2の矯正視力は右光覚弁,左1.0で右眼に朝顔症候群と網膜が全剝離した増殖硝子体網膜症を認めた。硝子体手術中に見つかった耳側の網膜裂孔に対して液空気置換後に網膜光凝固を行いシリコーンオイルを留置した。網膜は復位したが,術後5か月で視力0となった。症例3の矯正視力は右0.03,左0で右眼に朝顔症候群と耳側の網膜裂孔による網膜剝離を認めた。強膜内陥術が施行され,網膜は復位した。最終受診時視力は右0.03であった。

結論:筆者らの経験した本症4眼中3眼は,経過観察や手術で網膜が復位した。原因裂孔が見つからない場合の手術選択は,自然復位の可能性もあるため,剝離範囲の拡大の有無や,片眼性か両眼性か,他眼の視力などを考慮しながら慎重に行うのがよいと思われる。

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要約 目的:網膜細静脈瘤様の所見を呈した後天性網膜血管腫の1例の報告。

症例:65歳の女性が健康診断で右眼底に白斑を指摘され受診した。53歳時,右内頸動脈瘤(未治療)を指摘されたが,脳内や全身には異常はなかった。58歳時,右網膜上膜を当院にて指摘されたが,高血圧症や網膜静脈分枝閉塞症,糖尿病などはなかった。

所見と経過:右眼黄斑部下方に硬性白斑と下耳側網膜静脈遠位部に橙色腫瘤を認めた。光干渉断層血管撮影(OCTA)では網膜静脈に茎部を有する瘤が検出され,瘤内部にも血流を認めた。フルオレセイン蛍光造影とインドシアニングリーン蛍光造影(IA)でもOCTA同様網膜静脈に接する瘤が描出された。当初網膜細静脈瘤と思われたが,IA動脈相早期において瘤が描出されていた。OCTA像を再検討したところ網膜動脈からの細動脈が多数瘤内へ流入する所見を認めた。内頸動脈瘤以外全身所見はないため未成熟な後天性網膜血管腫と診断した。

結論:網膜細静脈瘤様所見を呈した網膜血管腫を認めた。今後典型的な流入,流出血管を有する網膜血管腫を形成するか経過観察が必要である。

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要約 目的:アッシャー症候群は,網膜色素変性症に両側の感音難聴を伴う常染色体劣性遺伝の疾患である。筆者らは,網膜色素変性症に加え先天性難聴を患っているアッシャー症候群疑いの三兄弟の遺伝子検査を施行し,アッシャー症候群が否定された症例を経験したので報告する。

症例:患者は同胞3人(12歳の長男,9歳の長女,6歳の次女)。長男は幼少期から難聴と視野狭窄の訴えがあった。長女はすでに網膜色素変性症の診断をされており,次女にも難聴があることから,この三兄弟がアッシャー症候群を疑われた。前医で網膜色素変性症に関する遺伝子検査を,転居後に当院で難聴に関する遺伝子検査,アッシャー症候群にかかわる遺伝子検査を施行した。

結果:長男は常染色体優性遺伝の網膜色素変性症の原因遺伝子PRPF31が陽性であった。また遺伝性難聴の原因遺伝子である常染色体劣性遺伝のGJB2も検出され,母と長男と次女はGJB2T86R)を,長男,長女および次女はGJB2235delC)が陽性であった。このことより遺伝性の網膜色素変性と遺伝性の感音難聴を合併していたことが判明した。遅れてアッシャー症候群にかかわる遺伝子検査も陰性であることが判明した。

結論:臨床的にアッシャー症候群が疑われたが,遺伝子検査の結果,アッシャー症候群は否定され,遺伝性網膜色素変性と難聴の合併が確認された1家系を経験した。

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要約 目的:転倒による打撲が原因で装用中の眼鏡レンズが破損し,多数のレンズ破片による複雑な形状の穿孔性角膜外傷を呈した1例を経験したので報告する。

症例:55歳,女性。自転車で転倒し右眼を強打して救急搬送された。初診時視力は右光覚弁,左0.1(1.2×−3.50D)。右眼圧測定不能。右眼のガラス製眼鏡レンズが破損しレンズ破片が眼内に飛入した。右眼角膜はフラップ様の裂傷を生じ,実質間に細かく破砕した多数のガラス片が挟まっていた。瞳孔領下方には角膜穿孔創があり虹彩脱出を認めた。同日全身麻酔下でガラス片摘出と角膜縫合術を施行した。術後2日目より前房は形成され,以後感染徴候なく経過し,術後2,6か月目に角膜抜糸を行った。眼底には明らかな異常はないが,外傷性白内障を生じてきたため術後9か月目に水晶体再建術を施行した。術後12か月目現在では右視力(0.3),角膜内皮細胞密度1,036個/mm2で経過している。

結論:本例は複雑な形状の角膜裂傷で実質に及ぶ創は広範囲であったが,全層を貫く創は一部で,角膜内皮細胞密度がある程度保たれていたため透明化が得られた可能性が考えられた。水晶体再建術にあたっては視認性確保のための瞳孔管理と角膜内皮保護が重要であった。ガラス製眼鏡レンズは破損した際に破砕する可能性があり,複雑な形状の角膜裂傷を生じ得るので眼鏡処方の際は十分な説明と注意が必要であると考えられた。

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要約 目的:獨協医科大学病院(当院)における90歳以上の超高齢者に対する白内障手術の成績についての検討。

対象と方法:当院で超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行した60〜89歳の30症例50眼(90歳未満群)と90歳以上の32症例52眼(90歳以上群)を対象とした。核硬度(エメリー・リトル分類),手術時間,術前後平均角膜内皮細胞数,術前術後視力,術中合併症についてレトロスペクティブに検討した。

結果:90歳未満群と比較し,核硬度は90歳以上群で有意に高かった。平均手術時間および術中合併症の発症率に有意差はなかった。術後の内皮細胞残存率は90歳以上群で有意に低かった。術後矯正視力は90歳以上群で有意に低かった。

結論:超高齢者に対する白内障手術は,良好な手術成績が得られるが,核硬度が高く,角膜内皮細胞数減少のリスクも高いため注意する必要がある。

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要約 目的:無菌性眼内炎(TASS)は白内障手術などの内眼手術後,非感染性物質によって前眼部に発症する炎症性疾患といわれている。今回,眼内レンズを挿入後,late-onset TASSを発症したと思われる連続2例を経験したので報告する。

症例:昭和大学病院附属東病院で同日に白内障手術が施行された73歳の女性と71歳の男性の2例であった。術中合併症はなかった。術翌日は1例に軽度の角膜デスメ膜皺襞を認めたものの,2例とも前房内炎症は軽度であった。視力はそれぞれ(1.0),(1.2)と改善していた。術12日目の再診で2例ともに霧視を自覚し,毛様充血,瞳孔領にフィブリンの析出を伴う無痛性の前房内炎症と虹彩後癒着,1例にデスメ膜皺襞を認めた。視力は(0.4),(0.4)にまで低下した。またレーザーフレアセルメータでフレア値の上昇を認めた。これらの結果からlate-onset TASSを疑い,術12日目から抗菌薬,副腎皮質ステロイド点眼に加え,非ステロイド性抗炎症薬,散瞳薬の点眼を追加した。点眼のみで2例とも前房内炎症,デスメ膜皺襞は徐々に改善した。術後6か月の時点で1例に虹彩後癒着の残存を認めるものの,視力は(1.2),(1.2)となり,自覚症状も改善した。

結論:白内障手術後はlate-onset TASSを発症する可能性があるため,術後注意深く観察する必要がある。

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要約 目的:右眼の前部虚血性視神経症と左眼の網膜動脈循環障害を生じた好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の1例を報告する。

症例:47歳,女性。主訴は両眼視力低下で,3年前に気管支喘息と診断されていた。視力は右(0.3),左(0.5)で,右眼に前部虚血性視神経症,左眼に網膜毛細血管前細動脈と毛細血管の循環障害を認めた。喘息の既往,好酸球増加,末梢血管炎の3症状および皮膚生検でフィブリノイド壊死を伴う血管炎を認めたのでEGPAと診断した。抗好中球細胞質抗体陽性であった。ステロイドパルス療法とシクロホスファミド大量療法により全身状態は改善し,視野障害は残存するも矯正視力は両眼1.2に回復した。

結論:早期診断および治療により全身的改善と両眼の視機能の改善を得た。

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要約 目的:オミデネパグイソプロピル(オミデネパグ)が使用されている症例の特徴と短期の眼圧下降効果および安全性を後ろ向きに調査する。

対象と方法:2018年12月から4か月間にオミデネパグが投与された緑内障および高眼圧症133例133眼を対象とした。処方パターン,緑内障病型,投与時眼圧,視野障害度(MD値),前投薬を調査した。投与時と投与1か月後の眼圧を比較した。投与後の副作用,中止例を調査した。

結果:処方パターンは,他剤からの変更77例,新規(無治療)50例,他剤に追加6例であった。緑内障病型は正常眼圧緑内障94例,原発開放隅角緑内障32例などであった。投与時眼圧は16.4±5.0mmHg,MD値は−5.53±5.35dB,変更例の前投薬はプロスタグランジン(PG)関連点眼薬58例などであった。PG関連点眼薬からの変更理由は副作用出現32例,眼圧下降効果不十分18例などであった。新規例は正常眼圧緑内障が43例で最も多かった。投与前後の眼圧は変更例は変化なし,新規例は有意に下降した。副作用は7例(5.3%)で出現し,結膜充血が最も多かった。中止例は6例(4.5%)であった。

結論:オミデネパグはPG関連点眼薬の副作用によりPG関連点眼薬から変更,正常眼圧緑内障に新規投与される症例が多い。短期の眼圧下降効果と安全性は良好であった。

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要約 緒言:オカルト黄斑ジストロフィの2例について視覚の身体障害者手帳(手帳)の新基準での等級判定とFunctional Vision Score(FVS)の評価を行ったので報告する。

症例:症例1は21歳,女性。17歳時に視力低下で井上眼科病院(当院)を受診した。診断ガイドラインを満たし,オカルト黄斑ジストロフィと診断された。21歳時に大学卒業後の就労相談で当院ロービジョン外来を受診した。手帳は視力4級で視野は該当がなかった。FVSは48〔Functional Acuity Score(FAS)は48,Functional Field Score(FFS)は100〕で,重度視覚喪失に該当した。以上から視覚障害の支援団体・支援機関のサポートを受け,障害者枠の雇用を勧めた。症例2は74歳,男性。視力低下を主訴に当院を受診し,オカルト黄斑ジストロフィと診断された。手帳は,視力・視野とも該当なしであった。FVSは74(FASは74,FFSは100)で,中等度視覚喪失に該当した。以上の結果から拡大鏡の自費購入となった。

考按:オカルト黄斑ジストロフィの視力評価は手帳よりFVSでの評価が実態に即していた。視野評価については手帳,FVSいずれの基準でも評価が難しかった。

連載 今月の話題

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 当研究室で開発したチャネルロドプシン遺伝子(mVChR1)は,幅広い可視光に応答し細胞内に陽イオンを透過させる機能をもつ。mVChR1を神経節細胞に導入し発現させることで,視細胞を利用しない光受容システムを作り出すことが可能である。本稿では,mVChR1を用いた視覚再生のための遺伝子治療の原理とその概要を解説する。

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症例

患者:20代,女性

現病歴・既往歴:突然右眼にもやがかかったように見えにくくなり,光が走るようになったため近医を受診した。右眼底に白斑を認めぶどう膜炎が疑われたため,原因精査のため名古屋大学医学部附属病院眼科(以下,当科)を紹介され受診となった。既往歴として,3週前に流産にて精神的なダメージを受けていた。

初診時所見:矯正視力は,右(0.3×−6.0D()cyl−1.0D 20°),左(1.2×−5.75D()cyl−0.5D 20°)で,眼圧は両眼とも正常範囲内であった。前眼部に炎症所見はなく眼底に淡い白点がみられた。限界フリッカ値は,右が22Hzと低下していた。静的視野は右眼の盲点の拡大がみられた(図1)。眼底に淡い白点が多数みられ(図2),光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)ではellipsoid zone(EZ)が不連続になっていた(図3)。眼底自発蛍光(fundus autofuluorescence:FAF)では,右眼の後極全体に過蛍光となっていた(図4)。また,多局所網膜電図(electro retinogram:ERG)では,右眼の視野異常を呈する部位に振幅の低下がみられた(図5の丸で囲まれた範囲)。フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)では後期に若干の蛍光漏出がみられる程度であったが,インドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyanine green angiography:IA)では後期に多発する斑状の低蛍光がみられた。全身検査の結果は特記すべき異常はなかった。

連載 眼炎症外来の事件簿・Case24

片眼性の視神経乳頭腫脹 原田 陽介
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患者:33歳,女性

主訴:左眼で見ると上半分が見えにくい

既往歴・家族歴:特記事項なし

現病歴:1週間ほど前から左眼のみ疲れた感じがして,その後,左眼で見ると上方が見えにくくなっていることに気づいた。近医を受診したところ,左眼の視神経が腫れており視神経炎の疑いがあるといわれ,広島大学病院眼科を受診した。患者は看護師で忙しく,頻繁には外来受診ができないため,あと数回の外来受診で完治させてほしいとの希望があった。

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要約 目的:McCannel法(眼外法)と眼内虹彩縫合(眼内法)による瞳孔形成術の特徴と有用性を比較した。

対象と方法:不可逆性散瞳および瞳孔偏位に対し,虹彩縫合による瞳孔形成術を施行した17症例18眼を対象とした。術式は主に眼外法を,極大散瞳症例で多方向からの縫合が必要な場合には眼内法を選択し,眼外法12眼,眼内法3眼,両方法の併用3眼を行った。最長瞳孔径と最短瞳孔径を計測ソフトウェア(Image J)で測定し,平均値を瞳孔径と定義し術前後で比較した。瞳孔偏位量はIllustrator®で画像的に角膜中心,瞳孔中心を同定し,2つの中心間の距離を瞳孔偏位量と定義し術前後で比較した。操作性の指標として,1か所当たりの虹彩の通針に要した時間を手術ビデオから測定し,眼外法と眼内法で比較した。

結果:瞳孔径は術前7.2±1.2mmから術後4.5±0.6mmへ,瞳孔偏位量は術前2.1±0.9mmから術後1.0±0.3mmと有意に減少した。通糸の所要時間は眼外法111.0±48.0秒,眼内法113.6±44.6秒で有意差はなかった。

結論:瞳孔形成術において,眼外法を第一選択とした本検討の結果は良好であり,眼外法が第一選択でよいと考えられた。各法の操作性は同等であると考えられた。多方向,特に垂直方向の縫合を要する症例には眼内法が有用である可能性がある。

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要約 目的:レンティス®コンフォート眼内レンズ(IOL)挿入眼でのオートレフラクトメータ値(オートレフ値)と自覚的屈折値との乖離について報告する。

対象・方法:対象は,2018年12月〜2019年6月に高須眼科で白内障手術を行い,レンティス®コンフォートを挿入した連続37眼である。術後予想屈折度は−0.12±0.09D(平均±標準偏差)を想定した。全例,白内障と屈折異常のほかに眼科疾患はなく,術中合併症はなかった。IOLは囊内に挿入し,6時-12時に軸合わせした。術翌日,術後1週間,術後1か月でオートレフ値(TONOREFTMⅢ NIDEK)を求め,自覚的屈折値に基づく視力検査(遠方,1m,近方40cm)を施行した。

結果:術後1週間の遠方小数視力は平均0.90(1.02),オートレフ値はS−0.67±0.50D,C−0.97±0.58Dであった。自覚的屈折値はS−0.10±0.23D,C−0.41±0.55Dであった。裸眼1m小数視力と裸眼近方小数視力は,それぞれ平均0.92,0.66であった。術後1か月の遠方小数視力は平均0.93(1.03),オートレフ値はS−0.42±0.46D,C−1.04±0.59Dであった。自覚的屈折値はS−0.01±0.28D,C−0.35±0.54Dであった。裸眼1m小数視力と裸眼近方小数視力は,それぞれ平均0.87,0.64であった。

結語 レンティス®コンフォート挿入眼は,術後1か月でオートレフ値と自覚的屈折値との間に等価球面に換算して−0.75Dの有意な乖離がみられた(t検定p<0.001)。

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 患者は42歳,女性。飛蚊症を主訴に近医眼科を受診した。眼底異常を指摘され,当院を紹介され受診となった。飛蚊症以外に症状はなく,両眼矯正視力(1.0)と良好であった。家族歴,既往歴はなかった。

 両眼眼底には血管アーケード内から外にかけて黄白色斑を認め,スターガルト病が疑われた。眼底自発蛍光検査では,黄白色斑部は過蛍光,網膜色素上皮の萎縮部は低蛍光,peripapillary sparing(視神経乳頭周囲に病変がない)も認めたが,背景蛍光の増強はなかった。ゴールドマン視野検査,および網膜電図は正常であった。遺伝子検査でPRPH2遺伝子の変異があり,multifocal pattern dystrophy simulating fundus flavimaculatusと診断した。フルオレセイン蛍光眼底造影でdark choroidがみられないことも鑑別点となった。

海外留学 不安とFUN・第55回

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 2019年9月からオレゴン州ポートランドに留学し,早6か月が経過しました(本稿執筆時点)。今回は留学準備,現地での生活の立ち上げに関する話をしたいと思います。

Book Review

眼内腫瘍アトラス 村田 敏規
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 後藤浩教授の『眼内腫瘍アトラス』(Atlas of Intraocular Tumor)を外来の診察室に置かせていただき,この本のありがたさを日々痛感しております。

 何よりも,その豊富な眼底写真,前眼部写真,画像診断の所見,病理組織所見に合わせて,具体的かつ的確な解説が全ての症例において記載されています。眼科の日常臨床においては,眼内腫瘍の経験の少ない先生方が大半だと思います。診断名がわからない外来患者がおられたら,まず,『眼内腫瘍アトラス』を手に取り,パラパラと1ページずつ,写真を1枚1枚見比べていきましょう。豊富な症例が記載されていますから,必ず似た所見の写真と解説を見つけることができます。そこから診断治療も含め,かゆいところに手が届く本書の解説を参考に患者さんに説明をしましょう。必要であれば,後藤教授をはじめとする眼腫瘍専門医に紹介することもできます。

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 海外の研究成果に学ぶ時代なら英語論文は読めれば良かった。が,医学研究において,日本が最先端の一角を占める分野が珍しくなくなった。つまり,英語での論文発表が求められる時代になった。その時代に不可欠なノウハウを,長年に渡る英語論文の執筆・添削指導をしてきた経験から引き出し,多くの添削事例とともにまとめたのが同名書の初版であった。1991年の出版以来,30年近く読み継がれてきた名著の新訂版が本書である。

 著者の植村研一先生は,中学時代に英語弁論大会に出場して以来,千葉大医学部卒業後は横須賀米国海軍病院でのインターンを経て,7年半にわたって米英に留学されるなど,英語をたくさん使ってきた経験を持つ。さらに帰国後も日本脳神経外科学会の英文機関誌に投稿される論文の英文添削にかかわり,日本医学英語教育学会や日本脳神経外科同時通訳団まで創設してしまった方である。

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目次

欧文目次

第38回眼科写真展 作品募集

学会・研究会 ご案内

希望掲載欄

アンケート用紙

次号予告

あとがき 坂本 泰二
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 臨床眼科の世界で一流誌といえばOphthalmology, JAMA Ophthalmology, American Journal of Ophthalmologyです。それぞれの歴史や編集方針が異なりますので,このうちのどれが最も優れているかはいえません。ただし,歴史の長さや眼科以外の社会への影響を重視しているという点では,JAMA Ophthalmologyが第一に挙げられるでしょう。編集長のNeil Bressler先生によれば,科学的な正しさはもちろんであるが,その内容が眼科や社会に強いインパクトを与える論文を重視するということです。そのような視点で読み比べると確かにJAMA Ophthalmologyは他誌とは異なる雑誌です。

 そのJAMA Ophthalmology誌で人気のコーナーが,「Clinical Challenge」です。珍しい症例を提示してその診断や治療に対して選択肢を提供し,最後に解説をするというものです。診断が難しい症例を提示して読者の知識を増やすだけではなく,クイズ形式にして娯楽性を加えたことが人気の原因です。ことの善悪は別にして,現代人はインターネットなどで短時間に正解を求める癖がついており,きちんとした論文が好まれないことも成功した一因かもしれません。

基本情報

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臨床眼科
74巻8号 (2020年8月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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