臨床眼科 71巻9号 (2017年9月)

特集 第70回日本臨床眼科学会講演集[7]

原著

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要約 目的:異なる方法で治療した猫ひっかき病に伴う視神経網膜炎の2例の報告。

症例:それぞれ34歳と53歳の女性で,いずれも片眼に発症した。2例ともに猫の飼育歴があり,数日前に発熱があった。患眼の矯正視力は,それぞれ0.09と0.02で,乳頭浮腫,乳頭黄斑間の網膜下液の貯留,星芒状白斑があった。血清学的にBartonella henselae抗体が陽性で,猫ひっかき病と診断した。1例には副腎皮質ステロイドの全身投与を行い,他の1例は無治療とした。それぞれ3か月後と14か月後に,1.0と0.8の最終視力を得た。

結論:猫ひっかき病による眼病変への治療法は確立していないので,病状に応じた加療を選択するべきである。

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要約 目的:結膜下に線虫を1隻認めたため摘出し解析を行ったが,虫体の同定には至らなかった症例の報告。

症例:44歳の男性,左眼異物感で受診した。10年前にタイ,アメリカ,イタリアへの渡航歴があるも,そのほかに特記すべき既往はない。左結膜下に蠕動運動する線虫体を1隻認めたため摘出した。

所見:摘出した虫体は獨協医大熱帯寄生虫病教室で解析。形態学的には旋尾線虫目に属する線虫の雄と判明したが,種の同定には至らなかった。

結論:特記すべき既往がなくても結膜下に寄生虫を認める症例があり,原因不明の結膜炎症例の鑑別の1つとして念頭に置く必要があると思われた。

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要約 目的:涙囊炎症状を呈した若年の涙囊部悪性リンパ腫の症例の報告。

症例:29歳男性。左涙囊部腫脹のため近医を受診し,左涙囊炎の診断で治療を開始され,いったん症状は改善した。数か月後に再発したが,治療により改善がみられないため精査加療目的で当科を紹介された。

所見:左涙囊部に発赤と腫脹があり,左眼球は上外側に偏位し,画像検索で眼窩から副鼻腔にかけて腫瘤性病変を認めた。生検での病理所見より悪性リンパ腫と診断され,化学療法を行った。治療後,涙囊部腫脹は改善し寛解が得られた。

結論:涙囊部腫瘍は涙囊炎を併発することがあるため,治療に抵抗性のある場合は若年であっても腫瘤性病変を念頭に置き,早期の画像検索を行う必要がある。

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要約 目的:巨細胞性動脈炎に併発した虚血性視神経症の1例の報告。

症例:85歳女性が2か月前からの右眼視力低下で受診した。同時期に咀嚼時の顎関節痛があった。

所見と経過:矯正視力は右手動弁,左0.2であった。両眼の視神経乳頭が蒼白で,乳頭陥凹はなかった。血液検査で白血球増加,CRPと血沈が亢進し,全身の炎症が推定された。これらの所見から巨細胞性動脈炎による虚血性視神経症が疑われ,ステロイドパルス療法を行った。浅側頭動脈の生検で,巨細胞動脈炎に矛盾しない所見が得られた。初診から87日後に他界するまで,左眼視力は0.3を維持した。

結論:進行した巨細胞性動脈炎によると推定される虚血性視神経症に対するステロイドパルス療法で,片側の視力が維持された。

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要約 目的:白内障術後に水痘帯状ウイルス虹彩炎が生じ,経過中に交感性眼炎が発症した症例の報告。

症例:72歳女性が左眼の虹彩炎と眼圧上昇で紹介受診した。2か月前に両眼の白内障手術を受けていた。

所見と経過:矯正視力は右1.2,左0.7で,眼圧は右8mmHg,左22mmHgであった。左眼にフィブリン形成を伴う虹彩炎があり,術後の眼内炎が疑われた。3日後に眼内レンズの交換と硝子体手術を行い,前房水の細菌培養の結果は陰性であった。初診の11日後に前眼部炎症が再燃し,眼圧が上昇した。左眼の硝子体手術と線維柱帯切除術を行い,前房水から水痘帯状ウイルスDNAが検出された。抗ウイルス薬投与を行い,炎症は改善した。初診から5か月後に脈絡膜剝離と虹彩炎が両眼に生じ,交感性眼炎と診断した。ステロイドの全身と局所投与で2か月後に炎症は消退し,両眼とも1.2の視力を得た。

結論:眼手術の回数が多いほど交感性眼炎が生じやすい可能性を本症例は示している。

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要約 目的:外傷性角膜穿孔後に急速にBacillus cereus眼内炎に至った1例の報告。

症例:71歳の男性が,左眼を竹で突き,翌日近医を受診,角膜潰瘍の診断にて紹介され受診した。左眼視力は手動弁で,多量の眼脂が認められ,角膜潰瘍部は穿孔しており,角膜は全体的に強い浸潤と浮腫で混濁していた。直ちに,細菌性と真菌性の両方の可能性を考慮して治療を開始した。2日後,角膜擦過物の培養検査からBacillus cereus菌が検出されたため,感受性のある抗菌薬へ変更を行った。角膜混濁が改善した11日後に保存角膜によるパッチ移植術,白内障手術,前部硝子体切除を施行した。現在,角膜は混濁が残存するものの,矯正視力は0.05まで改善している。

結論:急激に進行する外傷性角膜潰瘍・眼内炎はBacillus cereus菌も疑い,早急に感受性のある抗菌薬の治療を開始する必要がある。

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要約 目的:両眼の動眼神経麻痺による内転制限と内方回旋が上斜筋移動術により軽快した症例の報告。

症例:29歳男性。18歳時に交通事故により両眼の動眼神経麻痺が生じた。強い外斜視と左下斜視,左眼には内転制限と上転制限があり,両眼に強い眼瞼下垂があった。

経過:両眼の外直筋後転術と左眼下直筋後転術を行い,上眼瞼の吊り上げ術を同時に行った。その7か月後に残存する外斜視と右上斜視に対し,両眼の内直筋短縮術と右眼上直筋の後転術を行った。残存する左眼の上転制限と内方回旋に対し,19か月後に左眼の上斜筋移動術を行った。これにより,左眼の内転と上転制限が改善した。

結論:上斜筋移動術により,内転,下斜視,内方回旋が改善した。

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要約 目的:白内障眼における,LENSTAR LS900®(LS900;HAAG-STREIT社)とIOLMaster® 700(モデル700;Carl Zeiss Meditec社)の測定値を比較した。

対象と方法:対象は,北里大学病院にてLS900とモデル700で測定した白内障眼58名92眼,平均74.5±7.7歳。両機種間の眼軸長(AL),角膜厚(CT),前房深度(ACD),水晶体厚(LT),角膜屈折力(K),角膜径(WTW)を比較した。

結果:LS900,モデル700における各要素の測定値の平均値はAL:24.01±1.64mm,24.01±1.60mm,CT:535±26.44μm,546±26.68μm,ACD:3.01±0.35mm,2.97±0.34mm,LT:4.54±0.36mm,4.58±0.38mm,K:44.39±1.29D,44.37±1.31D,WTW:11.6±0.35mm,11.7±0.32mmであり,ACDはLS900が,LT,CT,WTWはモデル700で有意に大きかった(p<0.0001,p<0.0001,p<0.0001,p<0.05:ウィルコクソンの符号順位検定)。

結論:眼内レンズ度数決定への影響は少ないと考えられるが,両機器間の測定値には有意差のある要素がある。

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要約 目的:後房型有水晶体眼内レンズ(ICL)術後早期の網膜厚と脈絡膜厚の変化を前向きに検討した。

対象と方法:光干渉断層計で測定した24例47眼の中心窩網膜厚と中心窩下脈絡膜厚の変化を統計解析した。

結果:術前/1日/1週/1か月の平均中心窩網膜厚は,248.5±28.9/246.6±28.9/247.5±26.3/248.7±30.0μm,平均中心窩下脈絡膜厚は,214.3±79.6/215.2±82.2/215.3±78.6/215.4±77.9μmで,いずれも術前後に有意な変化はなかった。

結論:ICL挿入術は術後早期の黄斑部形態変化を生じず,低侵襲な内眼手術であることが示唆された。

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要約 目的:インフリキシマブの投与中に関節痛と皮疹が生じたベーチェット病の1例の報告。

症例:33歳女性が頭痛と両眼痛で紹介受診した。

所見と経過:矯正視力は右0.8,左0.6で,両眼で非肉芽腫性汎ぶどう膜炎,再発性口腔内アフタ性潰瘍,結節性紅斑様皮疹があった。HLA-B51が陽性であり,ベーチェット病と診断した。インフリキシマブの全身投与を行い,汎ぶどう膜炎は鎮静化した。27か月後から両手の関節痛が生じ,39か月後に両下腿に瘙痒を伴う皮疹が生じた。53か月後にインフリキシマブ投与に対する反応が生じ,抗インフリキシマブ抗体の関与が疑われた。

結論:インフリキシマブの全身投与中に関節痛や皮疹が生じたときには,抗インフリキシマブ抗体の陽性化に伴う効果減弱や投与時反応が出現する可能性がある。

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要約 目的:アイトラッカーを用いて能動的に誘発されるlook optokinetic nystagmus(LOKN)と,受動的に誘発されるstare optokinetic nystagmus(SOKN)の差異を検討する。

対象と方法:対象は健常者23名,視線位置の測定にはアイトラッカーTobii TX300を使用した。視覚刺激は0.3cycles/degreeの矩形波チャートを水平方向へ5秒間ずつ5,10,15degree/s(dps)の速度で移動させた。視線位置からOKNの緩徐相速度を算出し,速度の最頻値から利得を求めた。

結果:LOKNの緩徐相速度はSOKNに比べ有意に速かった(p<0.0001;マン・ホイットニーのU検定)。各刺激速度(5,10,15dps)の利得はLOKNで0.90,0.75,0.64,SOKNで0.30,0.08,0.06であった。

結論:アイトラッカーで記録されたOKNの緩徐相を解析した結果,LOKNとSOKNには明らかな差異があった。

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要約 目的:乳児内斜視の術後に生じた交代性上斜位(DVD)の治療成績の報告。

対象と方法:過去21年間にDVDに対する手術を行い,2年以上の経過を追えた28例を対象とした。乳児内斜視の初回手術の時期と,DVDの手術方法による術前,術1か月後と2年後の上方偏位量と水平眼位を検討した。

結果:内斜視に対し,9か月以内の超早期手術が5例,早期手術が17例,晩期手術が6例に行われた。DVDに対し,両眼の上直筋の大量後転術が17例,両眼の下斜筋の前方移動術が11例,両術式の併用が5例に行われた。超早期群では術後のDVDは改善し,上方の偏位量が全例で10Δ未満に減少した。超早期と早期手術群では,いずれの術式によっても上方の偏位量が減少し,術前後の水平眼位に変化はなかった。

結論:両眼の上直筋の大量後転術と両眼の下斜筋の前方移動術は,いずれもDVDの改善に有効であった。

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要約 目的:自動車運転の相談があった視覚障害者手帳に該当しない3例のFunctional Vision Score(FVS)の評価を行ったので報告する。

対象と方法:症例1は53歳男性,緑内障。症例2は55歳男性,網膜色素変性。症例3は46歳女性,下垂体腫瘍。FVSおよび,イリノイ州(米国),英国,および日本の運転免許の資格基準で比較した。

結果:症例1はFVS67.4。身体障害者5級相当の視覚障害を認めた。運転は米国で適格あり,英国と日本で適格なし。症例2はFVS54.7。手帳は該当なし。運転は米国と日本で適格あり,英国で適格なし。症例3はFVS77.6。手帳は該当なし。運転は米国と日本で適格あり,英国で適格なし。

結論:運転の不自由さは,FVSや英国の視野規定では実勢に即して評価できる可能性が示唆され,中心暗点の症例ではFVSにより正確に評価できた。

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要約 目的:高知医療センターにおける未熟児網膜症(ROP)の発症に関連する因子と治療適応となる因子の検索。

対象と方法:2013年1月〜2015年12月の3年間に眼底精査を施行した新生児158例をレトロスペクティブに調査した。

結果:ROPは47例(29.7%)に発症し,そのうち19例(12.0%)は光凝固治療を受けた。出生体重,在胎週数,動脈管開存,人工換気,濃厚赤血球輸血が発症に関連する因子であった(p<0.01)。治療適応の判定に関与する因子は確認されなかった。光凝固を受けた全例が鎮静化した。

結論:高知医療センターにおいても,既報と同様にROPの発症には,出生体重,在胎週数,人工換気,動脈管開存,濃厚赤血球輸血が影響していた。

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要約 目的:学校保健安全法施行規則により,幼稚園と保育園において視力検査が義務づけられている。宮城県眼科医会は,4年前より幼稚園教諭と保育士に対して視力検査実技研修会を実施しているので報告する。

対象と方法:対象は県内の幼稚園教諭,保育士。方法は視力検査実技研修会を開催し,アンケート調査を行った。

結果:研修会は好評であったが,毎年各園に依存するのではなく,眼科医会や視能訓練士の会が動いて実施してはどうかという意見があり,県内での幼稚園と保育園における視力検査実施率は10%以下にとどまっている。

結論:園の先生方が積極的に園で視力検査を実施するように,今後も教育,啓発していく必要がある。

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要約 目的:原田病に対するステロイドパルス療法とこれに続くトリアムシノロンのテノン囊下注射の成績の報告。

対象と方法:過去41か月間に治療した原田病の新鮮例のうち,眼外症状が強い5例を除く16例32眼を対象とした。男性8例,女性8例で,年齢は27〜64歳,平均46.1±10.5歳である。治療として,全例にメチルプレドニゾロン1,000mgを3日間点滴静注し,最終日にトリアムシノロンのテノン囊下注射を行った。ステロイド内服による後療法は行わなかった。

結果:32眼中26眼(81%)が再燃または遷延なく寛解した。18眼(56%)はトリアムシノロンのテノン囊下注射の単独またはステロイドパルス療法の併用による追加治療を必要とした。これら18眼では,追加治療を必要としなかった14眼と比較し,初回治療3か月以内の脈絡膜が有意に肥厚していた。

結論:原田病に対するステロイドパルス療法とこれに続くトリアムシノロンのテノン囊下注射で,約半数の症例が寛解し,ステロイドの内服を行わない追加治療でほぼ全例が寛解した。

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫に対する抗血管内皮増殖因子薬の硝子体注射の成績の報告。

対象と方法:過去2年間に糖尿病黄斑浮腫に対してラニビズマブまたはアフリベルセプトの硝子体注射が行われた14名19眼を対象とした。男性9名12眼,女性5名7眼で,年齢は平均68.4±11.8歳であった。治療歴として,汎網膜光凝固が12眼,部分的光凝固が4眼に行われていた。視力はlogMARで評価した。

結果:抗VEGF薬の投与は平均2.17±1.3回行われた。視力は投与前0.41であり,投与3か月後まで有意に改善し,以後は不変であった。中心網膜厚は投与前は平均578μmであり,1年後に419μmと有意に改善した。

結論:糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF薬の硝子体注射で,3か月後の視力が改善し,1年後までの中心網膜厚が減少した。3か月後以降の視力改善がなかったのは,投与回数が少なかった可能性がある。

今月の表紙

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 症例は73歳,女性。右眼上方の視野異常を自覚し,近医を受診した。網膜細動脈瘤と黄斑浮腫を指摘され,当院へ紹介となった。初診時の右眼視力は(0.2)。中間透光体には軽度白内障がみられた。中心窩の下耳側に網膜細動脈瘤(矢印)があり,黄斑部に漿液性網膜剝離と輪状硬性白斑(枠内)を認めた。フルオレセイン蛍光眼底造影で網膜細動脈瘤からの蛍光漏出が確認されたので,動脈瘤に対しレーザー光凝固を行った。治療後,漿液性網膜剝離は消失した。治療に先立ち,黄斑部にかかる硬性白斑を撮影した。

 撮影はImagine Eyes社製補償光学(AO)網膜イメージングカメラrtx1TMで行った。rtx1TMはAOシステムを搭載することで角膜や水晶体の高次収差による歪みを抑え,視細胞(錐体細胞)撮影が可能なカメラである。最初に錐体細胞撮影を試みたが,白内障と黄斑浮腫のため,残念ながら錐体細胞は写らなかった。その後フォーカスを浅くすることで硬性白斑にピントを合わせた。白内障のためAOシステムが機能しない場面もあったが,撮影光路の選択により難渋しながらも硬性白斑のAO画像を撮影することができた。

連載 今月の話題

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 iPS細胞の世界初の臨床応用例となった,自家iPS細胞から作製された網膜色素上皮(RPE)細胞の加齢黄斑変性患者への移植と,2017年に開始された,他家iPS細胞から作製したRPE細胞の移植の臨床研究,また,研究開発の進む視細胞移植治療の最近の動向を紹介する。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第20回

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今月の症例

【患者】60歳,男性

【主訴】右眼の視力低下

【現病歴】右眼の血管新生緑内障(neovascular glaucoma:NVG)にて近医より紹介され受診となった。当院初診時,右眼の虹彩上に新生血管を認め,眼圧は30mmHgと上昇していた。フルオレセイン蛍光眼底造影検査で右眼の網膜血管の流入遅延(図1),およびMRIで右内頸動脈の99%狭窄があり,脳神経外科へ紹介となり,右内頸動脈狭窄症の手術加療を受けた。右眼の眼虚血症候群(ocular ischemic syndrome:OIS)によるNVGと診断し,硝子体手術で網膜最周辺部までの汎網膜光凝固術(panretinal photocoagulation:PRP)を行い,2時方向に線維柱帯切除術(trabeculectomy:TLE)を施行した。術2年後に眼圧上昇をきたし,ニードリングを施行したが眼圧下降が得られなかったため,追加の緑内障手術として10時方向にバルベルト®緑内障インプラント(Baerveldt® glaucoma implant:BGI)手術を行った(図2)。術後の眼圧はmiddle〜high teenで経過していたが,術後1年半より再度眼圧上昇をきたし,2年時点で30mmHgとなった。BGI術後の眼圧経過を図3に示す。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第19回

脈絡膜新生血管 小笠原 雅 , 齋藤 昌晃
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疾患の概要

 脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)は,滲出型加齢黄斑変性(exudative age-relatied macular degeneration:AMD)の主要所見の1つとされ,出血や滲出性変化をきたし,視力低下や変視症,視野障害をもたらす重要な所見である。CNVは病理組織学的分類で網膜色素上皮(retinal pigment epithelium:RPE)の上にあるtype 2 CNV,RPEの下に位置するtype 1 CNVに大別される(Gass分類)1)(第11回のBasic Note参照)。

 AMD以外の疾患でCNVを伴うことがある。主な疾患には,変性近視,網膜色素線条(angioid streaks:AS),原田病をはじめとする網脈絡膜炎,外傷性脈絡膜破裂,などがあり,これらを除いた若年〜中高年に発症する原因不明の黄斑部のCNVを特発性脈絡膜新生血管(idiopathic CNV:ICNV)と呼ぶ。これらのCNVはtype 2 CNVであることが多く,フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)では造影初期に境界鮮明な過蛍光を示し,後期では旺盛な蛍光漏出を示すclassic CNVを呈する。近年光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の測定速度や解像度の向上,さらにはOCT angiographyの登場により,OCT所見はCNVの有無の診断や,主な治療である抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)療法の追加治療の判定に重要な存在となっている。

海外留学 不安とFUN・第21回

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留学への扉は突然に開く

 眼科医になった当初より「海外に研究留学してみたい(というより海外生活をしてみたい)」と漠然と思っていました。しかし,実際にどのように行き先を決めるのか,そもそもどんなタイミングで留学に乗り出すのか… 見当もつかないまま大学院で視野の研究に勤しんでいました。そんな日々を過ごしていた2010年,大西洋にあるスペイン領のカナリア諸島で開催された国際視野学会(International Perimetric Society:IPS)に参加した際にそのタイミングが訪れました。そこにハンフリー24-2を緑内障セクター分けしたGarway-Heath mapで有名なMoorefields Eye Hospital(MEH)のGarway-Heath教授(Ted)も出席されており,「これはチャンス!」と下手くそな英語で直接Tedに自分のやっていること,MEHに留学に行きたい旨を伝えたところ快く了承いただき,ロンドンへの留学の扉が開かれました。

 後日Tedとメールでやり取りして詳細を詰め,下村嘉一教授に留学の了解をいただき,期間は2012年4月〜2014年4月までの2年間ロンドンに行くこととなりました。

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要約 目的:光干渉断層計(OCT)が診断に有用であった網膜および網膜色素上皮過誤腫の1例の報告。

症例:11歳男児が左眼視力低下で紹介受診した。6年前から斜視で近医に通院し,1年前の矯正視力は右1.2,左1.0であった。最近になり硝子体黄斑牽引症候群が疑われた。

所見と経過:矯正視力は右1.5,左0.15で,右眼に+3.5D,左眼に+1.5Dの遠視があった。右眼には異常がなく,左眼に乳頭周囲の血管が鼻側に牽引される乳頭逆位があった。乳頭黄斑間に黄色調の隆起があり,毛細血管が拡張していた。フルオレセイン蛍光眼底造影で色素の貯留があり,OCTで網膜が肥厚し,網膜外層に色素上皮の腫瘤があった。網膜および網膜色素上皮過誤腫と診断した。以後3年後の現在まで所見は変化していない。

結論:網膜および網膜色素上皮過誤腫の診断に,OCTが有用であった。

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要約 目的:トリアムシノロンテノン囊下注射(STTA)が奏効した間質性腎炎ぶどう膜炎症候群の小児例の報告。

症例:15歳女児が7日前からの左眼の結膜充血,眼痛,霧視で受診した。

所見と経過:矯正視力は左右とも1.2で,両眼の角膜後面沈着物,虹彩結節,前房に細胞の浮遊,視神経乳頭の発赤腫脹があった。初診7日目に近医から腎障害があるとの連絡を受け,精査の結果,間質性腎炎ぶどう膜炎症候群と診断した。ベタメタゾン点眼でぶどう膜炎が軽快しないので,初診8日目にSTTAを行い,2週後にほぼ寛解した。ぶどう膜炎が3か月後に再燃し,STTAで消炎した。

結論:間質性腎炎ぶどう膜炎症候群での眼病変にSTTAが奏効したが,再燃があった。

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 《眼科臨床エキスパート》シリーズの最新巻として,『眼形成手術——眼瞼から涙器まで』が上梓された。このシリーズの中でも最も厚みがある,力のこもった眼形成の手術書の誕生である。

 眼科のさまざまな領域にあって,眼形成の領域は,整容面や視機能の改善はもとより,場合によっては悪性腫瘍を取り扱うことから,生命予後にも直結することもある重要な一領域である。その反面,「好きこそものの上手なれ」の領域であるとも言える。眼形成に携わっておられる先生方は,手術が大好きで,しかもご自分の手術に強いポリシー,すなわち「こだわり」と「こつ」を持って日頃手術に臨まれている。本書の執筆陣は45人に及ぶが,一般形成外科を専門としておられる専門家(形成外科医)は7人のみで,他は眼科の中にあって形成手術をサブスペシャリティとして熱心に勉強された上で活躍しておられる先生ばかりである。このような眼形成の専門家は,日本眼形成再建外科学会をはじめ,日本眼窩疾患シンポジウム,日本涙道・涙液学会,日本眼腫瘍学会などのさまざまな学会や研究会において,常に熱く語り合いながら,手術の考え方,手術適応や手技について切磋琢磨しておられる先生方が多く,誠に頭の下がる思いである。

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 めまい・平衡障害患者を取り扱う医師にとり,眼球運動異常を診断することは非常に重要である。今回,めまい・平衡障害分野の名医として広く知られている著者が,半世紀にわたる経験を基に自身で重要な眼振症例を注意深く記録として残されたものを広く公に発刊されたのが本書であり,まさに渾身の著作である。

 診察時に肉眼観察で眼球運動異常の有無を捉えて診断するのがわれわれ一般の臨床医である。その際重要な症例はビデオ記録として残すのが一般的である。それに加えてさらに他覚的定量的分析記録として角膜網膜電位差を応用した眼振図(ENG)を残し,後々に種々の定量的検討を加えることでめまい病態を把握することができるわけである。光学法や強膜サーチコイル法に劣るとはいえ,注意深くENGを記録することは患者側の負担も軽く臨床的には十分すぎる眼振検査法である。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 猫に小判
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 いまの医学では,遺伝子geneやゲノムgenomeなどの術語が頻発しますが,造語されたのは,geneが1909年,genomeが1920年と,かなり最近です。どちらも「生まれる」という意味のギリシャ・ラテン語から来ています。

 この系統の単語で知名度がもっとも高いのが,旧約聖書の最初にあるGenesis「創世記」だと思われます。神様はまず光を造り,続いて天と地,動物,そして最後にヒトを造りました。6日間ずっと働いて疲れたので,7日目には休むことにした。われわれは現在でもその恩恵を受けています。日曜日がそれです。

べらどんな 紙の本
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 近くの古書店に漱石全集が出ていた。24冊だかの本物である。

 近代の文学者のなかで,刊行された全集に関しては,その回数からも量からも,夏目漱石(1867〜1916)がだんぜん群を抜いている。英語と英文学が専門だったので,「蔵書への書き込み」まで入っている版まである。

学会・研究会 ご案内

希望掲載欄

アンケート用紙

次号予告

あとがき 中澤 満
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 ここに「臨床眼科」9月号をお届けいたします。小欄執筆はまだ7月,北日本でも梅雨にもかかわらず暑さ厳しい陽気ですので,本号がお手元に届く頃もさぞかしまだ残暑厳しい季節かと編集子は予想しています。

 本号では,「今月の話題」で網膜の再生医療についての最新の知見を先端医療センター病院の平見恭彦先生に解説いただきました。特に世界で初めて自家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植を受けた加齢黄斑変性の患者さんの術後経過が報告されています。今回の治験から安全性とある程度の有効性が示されたのではないかと思われます。さらに今後の他家iPS細胞移植治験へ進展することの具体的根拠,ならびに網膜色素変性に対する視細胞移植への展望がこれまでの地道な動物実験の成果から示されています。これらはいずれも現場で患者さんからの質問に回答する立場の我々にとって,とても重要な情報であるといえます。本研究を長年にわたって推進されている髙橋政代先生,万代道子先生,栗本康夫先生を中心とする研究チームの今後の成果には注目したいと思います。今月の「熱血討論!緑内障道場」では,眼虚血症候群による超難治性血管新生緑内障に対する病態の考え方とそれに基づいた治療方法の考え方がとてもわかりやすく解説されています。この病態は眼循環と緑内障との境界領域で発症するものですので,総合的な考察が求められます。糖尿病網膜症でも最後に残された難治性疾患といえるでしょう。特に2回目のインプラント手術に対する谷戸正樹,濱中輝彦両先生の考え方には眼からうろこが落ちるような感覚を覚えます。木内良明先生の言われる通り,学会や研究会には出席できなくとも,せめて「臨床眼科」を定期購読することで己の知識を刷新したいものです。その他,臨床現場で遭遇する可能性のある症例を疑似体験できる症例報告や臨床研究成果も満載です。

基本情報

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臨床眼科
71巻9号 (2017年9月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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