臨床眼科 71巻10号 (2017年10月)

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要約 目的:結膜小切開斜視手術「結膜タッセル法」を考案し,実施例を提示し,その利点について述べる。

対象と方法:結膜タッセル法とは,手術筋付着部近傍の結膜を円蓋部に向かって放射状に切開を1か所くわえ,切開部より通糸した制御糸で手術筋を覆う結膜とテノン囊を一塊として束ね術創を拡げ,制御糸を開瞼器の縁に固定することで術野を確保する方法である。水平斜視に対しての前後転術に行った結膜タッセル法と輪部コの字結膜切開(以下,輪部切開)の手術操作性と術後の創傷の状態を比較し,評価した。

結果:結膜タッセル法は輪部切開と同等の術野を確保することができ,また輪部切開に比し手術時間の短縮が得られ,術後創部の瘢痕が小さく眼瞼下に創部が隠れるので整容的に優れ,自覚する疼痛も少なかった。

結論:結膜タッセル法は,小切開法の整容面の利点をもち,かつ輪部切開と同等の術野が確保できる。難易度の高い操作や特別な器具も必要としない有用な手術法である。

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要約 目的:角膜内皮移植(DSAEK)術後に発症した角膜炎に対し,混合感染を疑い網羅的病原体ゲノム解析を行った1症例を報告する。

症例:89歳女性,水疱性角膜症に対してDSAEK施行後約1か月目に樹枝状病変が認められた。角膜ヘルペスを疑い,アシクロビル眼軟膏にて一時改善するも,遷延性上皮欠損が出現し,さらに羽毛状角膜浸潤を認めた。混合感染を疑い網羅的病原体ゲノム解析を施行,全リード数は2,435,307本で真菌由来が636,661本で99.7%がCandida parapsilosisであった。ウイルス由来リードは検出されなかった。培養にてC. parapsilosisが検出されたため,真菌性角膜炎と診断し,ピマリシン眼軟膏投与で改善した。

結論:角膜移植術後は易感染状態であり,混合感染の有無を確認するのに網羅的病原体ゲノム解析が有用であった。

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要約 目的:網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)における黄斑虚血の評価において,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)による無灌流領域(NPA)と,レーザースペックルフローグラフィ(LSFG)によるmean blur rate(MBR)との関連を検討した。

対象と方法:対象は,黄斑部にNPAを伴うBRVO 26例26眼。平均年齢は63.7±11.2歳であった。中心窩を中心とした3mm円内において,閉塞領域および対側の健常灌流領域のMBR比とNPA面積との関連を検討した。

結果:NPA面積は,平均0.57±0.46乳頭面積であった。閉塞領域のMBR/健常灌流領域のMBR比は平均82.6±10.2%であり,MBR比とNPA面積は有意な負相関を示した(r=−0.46,p=0.019)。

結論:LSFGによる血流解析は黄斑部の毛細血管および毛細血管前後の細動静脈における灌流状態を反映し,ある程度虚血性変化を把握でき,LSFGによりBRVOにおける黄斑虚血を評価できる可能性が示唆された。

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要約 目的:正常眼圧緑内障(NTG)と原発開放隅角緑内障(POAG)患者の使用薬剤を調査する。

対象と方法:2016年3月7日〜13日に57施設に受診したNTGとPOAG患者の使用薬剤を調査した。

結果:薬剤数はPOAG(2.1±1.3剤)がNTG(1.5±1.0剤)より多かった。単剤例では両病型ともPG関連薬の処方が最も多かった。2剤使用例では,両病型ともPG/β配合剤の処方が最も多かった。

結論:PG関連薬は単剤処方例,PG/β配合剤は2剤使用例で第一選択となっていた。NTGとPOAGでは使用薬剤に差はなかった。

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要約 目的:角膜移植に用いる提供眼のメシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)陽性率と背景因子の報告。

対象と方法:2015年までの8年間に順天堂医院で強角膜片を作製した646眼の眼球保存液を対象として細菌培養を行い,MRSAによる汚染の有無を検索した。提供眼の背景因子として,提供者の年齢,性別,死因,眼内レンズの使用の有無,死亡から眼球摘出または強角膜片作製までの時間,角膜内皮細胞密度などを多変量解析で検討した。

結果:646検体中391検体(60.5%)で細菌が培養され,うちMRSAは60検体(9.3%)から検出された。MRSA陽性群での提供者の平均年齢は85.1歳で,陰性群での75.6歳より有意に高く(p<0.001),死亡から強角膜片作製までの時間が有意に長く(p<0.007),角膜内皮細胞密度が有意に低かった(p<0.001)。性別,死因,眼内レンズの使用の有無は,両群間に差がなかった。

結論:角膜移植用の眼球保存液のMRSAによる汚染は,高齢者からの提供眼球と,死亡から強角膜片作製までの時間が長いときに,頻度が高かった。

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要約 目的:近視性脈絡膜新生血管(mCNV)への抗VEGF薬硝子体注射後の網膜構造変化の検討。

対象と方法:mCNVに対して硝子体注射を施行され6か月以上経過観察可能であった13例15眼。硝子体注射前および術後1,3,6か月の網膜構造変化について光干渉断層計を用いて後ろ向きに検討した。

結果:術前の滲出性変化として最多は網膜下滲出物(SRE),次いで網膜下液(SRF)で各々14眼(93%),8眼(53%)に認めた。術後1か月ではSREは4眼(27%),SRFは1眼(7%)に減少。CNVは術後1か月で7眼(50%),6か月で9眼(64%)が高輝度ラインで完全に囲い込まれた。

結論:mCNVの活動性評価にSREおよびCNV周囲の高輝度ライン所見が有用である可能性が示された。

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要約 目的:滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対してアフリベルセプトに切り替え,treat-and-extend(TAE)法で投与間隔を長期間延長できた29症例の報告。

対象と方法:ラニビズマブに抵抗がある29例29眼を対象とした。本症例群は,過去43か月間にラニビズマブを4週ごとに3回投与しても滲出性変化が消退しないためにアフリベルセプトに切り替えた66例66眼のうち,投与間隔を12週に延長できた症例である。本症例群について,背景因子,再発の有無,投与間隔を12週に延長する直前の中心窩網膜厚につき,診療録の記述に基づいて検索した。

結果:再発は10眼に生じた。再発の有無は背景因子に関係せず,再発前後の視力に差がなかった。投与間隔を12週に延長する直前からの中心窩網膜厚は,再発群で大きかった。

結論:加齢黄斑変性に対するアフリベルセプトのTAEによる投与では,投与間隔を12週に延長する直前からの中心窩網膜厚が再発の指標となる可能性がある。

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要約 目的:傍中心窩急性中間層黄斑症(PAMM)は,深層網膜毛細血管の虚血性病変で,光干渉断層計(OCT)での内顆粒層の帯状の高反射像が特徴的である。網膜中心動脈閉塞症による一過性網膜虚血に伴ったPAMMの1例を報告する。

症例:53歳,男性。未治療の高血圧。右眼の視力低下を自覚。翌日視力1.5。OCTで内顆粒層の帯状高反射部がみられた。フルオレセイン蛍光造影では網膜血流は正常で,OCT血管造影(OCTA)でも表層および深層の網膜毛細血管血流は保たれていた。1か月後,明らかな内顆粒層萎縮はみられなかった。

結論:虚血の程度の軽いPAMMを経験した。PAMMの診断,虚血の程度の評価にOCT,OCTAは有用である。

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要約 目的:コレステロール塞栓症と考えられた急性腎不全の症例の報告。

症例:79歳の女性が,腹部大動脈瘤に対するステント手術を受け,術後にアスピリン100mg/日の内服が行われた。1か月後に血清のクレアチニン値が3.1mg/dlに上昇し,進行性の腎機能低下と診断され,眼科に紹介された。

所見と経過:矯正視力は左右とも1.2で,右眼網膜の2か所に動脈枝の塞栓子があった。蛍光眼底造影で血流の途絶はなく,視野異常もなかった。頸部血管エコーで右内頸動脈に中等度以上の狭窄があった。2週後に両眼の網膜動脈に塞栓子が認められ,コレステロール塞栓症が推定された。腎生検では腎硬化症の所見のみがあり,塞栓子はなかった。血清のクレアチニン値は1.1mg/dlに低下し,ステント手術の3か月後以降は網膜動脈の塞栓子は生じなかった。

結論:本症例は,急性腎不全に併発したコレステロール塞栓症であると推定され,眼底検査がその診断に有用であった。

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要約 目的:原発開放隅角緑内障に対するエクスプレス®挿入後の早期成績の報告。

症例:過去2年間に原発開放隅角緑内障に対してエクスプレス®を挿入した連続36例48眼を対象とした。18眼では白内障手術を同時に行い(併用群),11眼は有水晶体眼であり,19眼は無水晶体眼であった。これら3群間で術後の眼圧,点眼スコア,1年後の生存率を比較した。

結果:それぞれ群で12か月後の眼圧(mmHg)は,13.8,12.4,12.3で,各群間に有意差はなかった。点眼スコアは,1.9,0.9,2.1で,各群間に有意差はなかった。1年後の生存率は,55.0%,72.7%,60.7%であり,各群問に有意差はなかった。

結論:原発開放隅角緑内障に対するエクスプレス®の挿入1年後の評価で,眼圧,点眼スコア,1年生存率について,白内障同時手術の有無,有水晶体眼,無水晶体眼の間に有意差はなかった。

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要約 目的:網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブ硝子体注射の短期成績の報告。

対象と方法:BRVOに伴う黄斑浮腫に対し,初診時の視力にかかわらず,ラニビズマブ硝子体注射を行い,6か月以上の観察ができた33例33眼を対象とした。男性17例,女性16例で,年齢は55〜86歳,平均72歳であった。矯正視力,中心網膜厚,黄斑浮腫の再発とその回数,ラニビズマブ投与回数を検討した。視力はlogMARとして評価した。

結果:視力は治療前0.37±0.05,最終観察時0.1±0.05で,有意に改善した。中心網膜厚は治療前529±31.75μm,最終観察時274.5±18.0μmで,有意に減少した。黄斑浮腫の再発と治療前視力に正の相関があり,黄斑浮腫が軽快した症例では,治療前視力が良好であるほど寛解までの期間が短く,ラニビズマブの投与回数が少なかった。

結論:BRVOに伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブ硝子体注射により,6か月以降の視力が改善し,中心網膜厚が減少した。

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要約 目的:裂孔原性網膜剝離に対してバックリング手術を施行した晩期症例に,後部硝子体剝離の存在下で黄斑円孔を生じた2例の報告。

症例:76歳の男性と73歳の女性がバックリング術後10年以上の経過で視力低下と歪視を生じた。

所見と経過:2例とも光干渉断層計で1/5乳頭径大の黄斑円孔と黄斑前膜が認められ,硝子体手術を施行し後部硝子体剝離の存在が確認された。症例1では術後7か月に黄斑円孔が再発し再手術となったが,2症例とも最終的に円孔閉鎖を確認した。

結論:後部硝子体剝離の発症後でも,黄斑前膜が存在すると長期経過で黄斑円孔が生じる可能性が示された。

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要約 目的:網膜中心静脈閉塞症(CRVO)の血流動態をフルオレセイン蛍光造影(FA)とレーザースペックルフローグラフィ(LSFG)を用い検討した。

対象と方法:対象は経過観察中にFAで無灌流領域(NPA)を認めたCRVO症例11例11眼,平均年齢62.8±10.4歳,男性6例,女性5例である。FAでNPA面積を算出し,LSFGでは視神経乳頭部mean blur rate(MBR)を測定した。初診時および最終観察時の10.2±13.3か月後におけるNPA面積の変化量と視神経乳頭部MBR変化率の関連を検討した。

結果:FAのNPA面積は,平均7.4±10.4disc area(DA)(初診時)から27.8±16.9DA(最終観察時)と有意に増加した(p<0.01)。視神経乳頭部MBRは,初診時と比較して,平均73.7±14.8%(46.1〜93.7%)に低下し,NPA変化量と視神経乳頭部MBR変化率には負相関があった(r=−0.47 p<0.05)。

結論:視神経乳頭部MBR低下は,網膜内循環血流量の低下を表し,NPA面積拡大に関連した。LSFGを用いることで,CRVOの虚血性変化を評価できることが示された。

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要約 目的:佐賀大学における急性網膜壊死(ARN)の臨床的特徴の報告。

対象と方法:1998〜2013年に当科を受診しARNと診断した14眼12例を検討した。

結果:片眼10例,両眼2例で,性差は男性7例女性5例であった。年齢は13〜85歳で平均50.4歳であった。病因は単純ヘルペスウイルス2眼,水痘・帯状疱疹ウイルスが12眼であった。薬物療法のみで治療したのは4眼で,手術加療を必要とした症例は10眼であった。平均手術回数は2.3回であった。全症例において,最終視力は0.1以下が8眼,1.0以上が4眼であった。

結論:当院におけるARNは水痘・帯状疱疹ウイルスが多く,網膜剝離をきたす症例が高頻度で,手術加療を行っても予後不良なことが多い。

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要約 目的:細菌感染と自己免疫機序が関与したと考えれられる壊死性強膜炎の1例の報告。

症例:75歳の男性が2週間前から次第に増悪する右眼の眼痛と視力低下で受診した。10年前に右眼に翼状片手術を受けていた。

所見と経過:矯正視力は右0.6,左0.9で,右眼に翼状片手術によると推定される癒痕と石灰化があった。球結膜充血と毛様充血があり,前房に炎症の所見があった。初診時に採取した眼脂から6日後に緑膿菌が検出され,抗菌薬の全身投与などで前眼部の炎症は軽快した。第14病日に右眼4時方向の強膜が融解し,プレドニゾロン内服を追加した。強膜所見は改善した。プレドニゾロンを減量し,抗菌薬を中止すると炎症が増悪した。タクロリムス点眼,プレドニゾロンの増量,抗菌薬の静注で消炎し,15か月後まで安定している。

結論:翼状片手術の既往がある壊死性強膜炎の治療に,抗菌薬と免疫抑制薬が奏効した。

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要約 目的:近視化と脈絡膜肥厚が光干渉断層計(OCT)でわかり,早期診断に至ったVogt-小柳-原田病(原田病)の1例を報告する。

症例:41歳,女性。起床時に左眼視力低下を自覚し原因精査依頼にて紹介受診。視力右1.2,左0.5(1.0×−3D),検眼鏡所見に異常はなく左眼は−3D矯正で視力が改善した。OCTで黄斑部網膜の異常はなく,経過観察としたが所見を見直したところ脈絡膜の肥厚に気づき翌日前眼部OCTにて左眼の浅前房化を確認した。原田病を疑い蛍光眼底撮影を施行し,左眼網膜に点状多発性の蛍光漏出と,右眼脈絡膜に過蛍光を認め,非典型的であるが原田病と診断した。

結論:OCT検査は診察でわかりにくい浅前房や脈絡膜肥厚を証明することが可能で原田病の早期診断に有用である。

今月の表紙

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 視細胞内節のエリプソイドにはミトコンドリアが密集しており,エネルギー源として視細胞外節の機能維持に重要な役割を果たしている。本図は家兎の視細胞内節を割断して走査電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)でみたもので,エリプソイドに杆状形態のミトコンドリアの断面と一部,外表面が観察される。エリプソイドにみられるミトコンドリアは内節の長軸に平行に配列しており,内部にはよく発達した管状,板状のクリスタが認められる〔なお,本稿の写真は,「眼の神秘 SEMアトラス」(筆者の自費出版)からの転載である〕。

 SEMは組織の自由表面だけでなく,試料作製を工夫することにより,内部構造,基底面まで微細構造レベルで3次元的に観察することができる。本図は樹脂冷凍割断法を改良したオスミウム-DMSO-オスミウム法を応用して視細胞内節の断面をSEMでみたもので,ミトコンドリアの内部に見られるクリスタまで明瞭に観察することができた。今回の写真撮影に使用した検査機器はフィールドエミッションSEM,HFS-2(分解能は3nm)で,写真倍率は3万倍である。

連載 今月の話題

ドライアイ診療のポイント 山田 昌和
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 ドライアイという病名は感覚的にわかりやすく,医療関係者だけでなく一般に広く認知されている。しかし,ドライアイの定義や疾患概念は固定されたものではなく,近年の臨床研究や基礎研究の発展,進歩とともに見直され,変貌を遂げてきている。ここでは最近改訂されたドライアイの定義と診断基準1)について,その背景や根拠,治療法を示しながら概説する。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第21回

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今月の症例

【患者】48歳,男性

【主訴】両眼の視力低下

【現病歴】近医にて無治療の糖尿病と両眼の増殖糖尿病網膜症(proliferative diabetic retinopathy:PDR)を指摘され,2011年に紹介となった。当科初診時,左眼は血管新生緑内障(neovascular glaucoma:NVG)により失明していた。右眼はPDRによる硝子体出血をきたしていたため,全周結膜切開による20G硝子体切除術を施行し,汎網膜光凝固術(panretinal photocoagulation:PRP)を施行した。術後,網膜症は良好に経過したが,眼圧が30mmHgと高かったため,緑内障治療点眼薬を3剤開始した。しかし,十分な眼圧下降が得られず経口炭酸脱水酵素阻害薬(carbonic anhydrase inhibitor:CAI)(アセタゾラミド)を開始した。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第20回

眼虚血症候群と高安病 大口 泰治
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疾患の概要

 眼虚血症候群と高安病は,いずれも眼動脈での血流量低下により生じるため,網膜中心動脈閉塞症と異なり脈絡膜循環も同時に障害されることが特徴である。その本態はいずれも慢性虚血による変化である。虚血が慢性化することで,網膜動脈の血管内皮障害や網膜血管関門のバリア機能の破綻が生じる1)

 眼虚血症候群は,年齢とともに生じる粥状動脈硬化症による内頸動脈の狭窄・閉塞により引き起こされる疾患で,80%は片眼性である2)。その要因は高血圧症・高脂血症・糖尿病などで,65歳前後の男性に好発するとされている3)。一方,高安病の発症機序は不明である。血管炎の分類に用いられるChapel Hill分類4)で巨細胞性動脈炎とならび大型血管炎に分類されているが,あらゆるサイズの動脈が影響を受け,両眼性に変化を生じる。その9割は女性で,15〜35歳の若い女性に発症することが多いとされているが,内科的な治療が進んだ現在進行した病変をみる機会は少ない。

海外留学 不安とFUN・第22回

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留学先での出会い

 Moorefields Eye Hospital(MEH)の仕事場では,私と同じ2012年春から留学していた鈴木克佳先生(山口大,鈴木眼科医院)がおられ,1年間一緒に仕事をさせていただきました。鈴木先生は1年間で帰国されましたが,その間にLancetに掲載された有名なUnited Kingdom Glaucoma Treatment Study(UKGTS)の論文のデータ解析に携わり論文の共著者となっております。恐らく鈴木先生がいなければ,こんなに早く論文としてデータが出せることにならなかったのではないかと思います。

 また,同じ仕事場ではありませんでしたが,私の留学期間中にMEHに併設されているUniversity College Londonの研究室に西口康二先生(東北大),楠原仙太郎先生(神戸大),岩田大樹先生(北大),山口真先生(山口眼科),藤波 芳先生(東京医療センター),佐藤 茂先生(阪大)が留学されていました。みなさんロンドンで初めてお会いした先生方でした。仕事終わりに近くのpubで各々のロンドンでの仕事について,また日本での仕事についてなどいろいろな話ができて楽しかったことを覚えています。このように,普段日本ではなかなかお会いする機会のない先生方と知り合いになれたことも留学ならではだと感じています。

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要約 目的:脈絡膜骨腫では,約半数で脈絡膜新生血管などにより視力が低下するとされている。脈絡膜骨腫に続発した脈絡膜新生血管に対し,1回のベバシズマブ硝子体注射と光線力学療法で視力が改善し,長期に維持された症例の報告。

症例:17歳の女性が2週間前からの左眼視力低下と中心暗点で紹介受診した。紹介医により左眼黄斑部に漿液性網膜剝離が指摘された。

所見と経過:矯正視力は右(1.2),左(0.4)で,右眼に−5D,左眼に−6Dの近視があった。左眼後極部に境界が明瞭な黄白色の病変があった。CTで眼球後壁に石灰化があり,諸検査の結果,脈絡膜新生血管を伴う脈絡膜骨腫と診断した。ベバシズマブ硝子体注射と光線力学的療法を行い,1か月後に出血は消失し,10か月後に視力は(1.2)に改善した。2年後の現在,左眼の眼底病変は沈静化し,(0.8)の視力を維持している。

結論:脈絡膜骨腫に続発した脈絡膜新生血管に対する1回のベバシズマブ硝子体注射と光線力学療法で,視力が改善し,以後2年間眼底病変が鎮静化している。

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要約 目的:視野異常を伴う視神経乳頭黒色細胞腫の2例報告。

症例:症例1は45歳,女性。右眼の乳頭鼻下側に約2/3乳頭径大の黒色腫瘤を認め,ゴールドマン視野検査(GP)では,マリオット盲点拡大と鼻上側視野狭窄を認めた。症例2は32歳,男性。左眼の乳頭下鼻側に約1乳頭径大の黒色腫瘤を認め,GPでは鼻側に軽度視野狭窄を認めた。2例とも視神経乳頭黒色細胞腫と診断し経過観察を行ったが,眼底,視野とも変化を認めなかった。

結論:2症例の病変部位はいずれも乳頭鼻側であったが,視野異常は鼻側に生じていた。本疾患では視野異常と腫瘍部位との間には特に明確な関係はないとする報告がみられるが,今回もそれを支持する結果であった。

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 近時,世の中は不安定でストレスが多く,生活習慣病も多く,その上高齢者社会になり,めまい・平衡機能障害患者が増えている。これらの患者への対応として,病歴をよく聴いて自覚症状を知ると同時に平衡機能検査を行って他覚的所見を把握し,診断と治療をすることが必要である。検査には体平衡検査と眼運動(眼振)検査がある。前者で平衡障害の特徴を知り,後者で眼振や異常眼運動が出現すれば,それらの所見は病巣局在診断,病状の推移や治療効果判定に貢献することが大きい。

 従来,眼球運動異常は肉眼観察が主であったが,他覚的に記録することにより,記録として残るのみではなく定量的な検討を加えることが可能となった。この記録法として電気眼振計(electoronystagmography:ENG)がある。

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 日本神経学会監修の『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』が出版された。同学会は2010年に多発性硬化症治療ガイドラインを作成しているが,今回のガイドラインは患者および家族も対象にし,治療だけでなく診断,検査さらには医療経済,社会資源まで診療全般に関するガイドラインになっており,改訂版ではなく内容構成が全く異なる新ガイドラインである。

 特徴は診療において問題になる重要事項を漏れなく質問し,回答するQ & A形式で作成されていることである。回答は1990〜2015年の25年間に発表された両疾患に関する全ての論文を医学文献検索専門家と疫学専門家も加えた作成委員会で検討した上でなされている。検索された論文には本邦からの小規模の研究報告も無視せずに含まれている。これらの論文を基にしてガイドライン作成委員会は委員の意見が一致するまで協議し,有効のエビデンスがあると意見が一致した治療法は強弱をつけた推奨度を付して紹介されている。作成委員間で意見の一致が得られないあるいは有効の根拠がまだ不十分な治療法は推奨度を付さずに紹介されている。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 予後
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 病気の診断では,「いま何があるか」のほかに,2つのことが望まれます。「なぜ,いつからこうなったのか」,そして「これからどうなるのか」がそれです。英語のdiagnosisには厳密な意味ではetiologyとprognosisが含まれるということです。

 ある英英辞典でdiagnosisを引いたら,identification of a disease by careful investigation of its symptoms and history(症状と経過を慎重に調べて病名を決定する)となっていました。接頭辞のdiaには,「間に」という意味と,「徹底して」という意味があります。前者の例としては,diaphragma(横隔膜)が「胸腔と腹腔の間にある膜」を上手に表現しています。

べらどんな シベリア寒気団
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 梅雨の時期にはときどきだるい日がある。

 「だるい」を英語で言うのは難しい。幾通りも表現があるなかで,tiredは「疲労」だし,dullは意味が多すぎるのでピンとこない。結局のところ,実際の実例は少ないけれども,languidがこれに相当するのではと思う。

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次号予告

あとがき 稲谷 大
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 今月号の原稿の締め切りはお盆休み直後なので,例年,原稿の集まりが悪く,あとがきに何を書こうかいつも困ってしまいます。

 さて,本号で第70回日本臨床学会講演集の掲載が最後になります。終わった瞬間から,次の学会のアナウンスになってしまいますが,付録に第71回日本臨床眼科学会のプログラムがついております。年齢が上がってくると,1年の過ぎるのが早く感じるとよく言われます。なぜそうなるのか色々諸説はありますが,臨眼が終わった瞬間から,次の臨眼のシンポジウムの企画を考えたり,そう思ったら,日眼の抄録の締めきりが迫っていたり,年を重ねるにつれて,どんどん次の仕事に向けて何か月も前から準備を追われるような毎日になってしまうからなのかなと思います。では,みなさん,まずは目先の次の臨眼でお会いしましょう。

基本情報

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臨床眼科
71巻10号 (2017年10月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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