臨床眼科 71巻5号 (2017年5月)

特集 第70回日本臨床眼科学会講演集[3]

原著

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要約 目的:視神経網膜炎を併発した猫ひっかき病の1例の報告。

症例:40歳女性が10日前からの左眼の視力低下で受診した。4週間前から発熱と頭痛があった。高血圧と糖尿病があり,加療中であった。

所見と経過:矯正視力は右1.2,左0.05で,左眼に乳頭の発赤腫脹があった。光干渉断層計で左眼の黄斑部に漿液性剝離があった。蛍光眼底造影で両眼の乳頭に色素漏出があった。問診で数頭の猫を飼育していることが判明した。血液検査でBartonella henselaeに対する抗体価が陽性で,猫ひっかき病による視神経網膜炎と診断した。トリアムシノロンのテノン囊下注射とアジスロマイシン内服を行い,乳頭腫脹と網膜剝離は軽快し,6か月後の最終視力として左右眼とも1.0が得られた。

結論:本症例の視神経網膜炎としての診断では,問診が重要な役割を果たした。

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要約 目的:虹彩病変から初めて乳癌の全身転移が判明した症例の報告。

症例:29歳女性が左眼痛を主訴に受診した。1年前に乳癌に対し乳房部分切除術と腋窩リンパ節郭清術を施行され,術後補助療法中であった。局所再発や遠隔転移は認めていなかった。

所見:矯正視力は左右とも1.2,眼圧は右12mmHg,左13mmHgであった。左眼虹彩に直径1〜3mmの半透明で淡白色の結節を4個認めた。PET-CTで多発転移を認め,虹彩結節も転移と推測された。結節の増大に伴い視力低下と眼圧上昇をきたし,電子線総量30Gyを照射した。腫瘍は縮小し視力は改善したが,初診から7か月後に死亡した。

結論:結節性虹彩病変を認めた際は,全身既往を詳細に確認することが重要である。

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要約 目的:中枢神経系の悪性リンパ腫に先行した網脈絡膜の滲出性病変が自然消退した1例の報告。

症例:77歳女性が左眼の網脈絡膜の滲出性病変で紹介受診した。2年前から右眼の加齢黄斑変性の疑いで経過観察中であった。

所見と経過:矯正視力は右1.2,左1.0で,両眼の前房と硝子体には異常がなかった。右眼底の中間周辺部に複数の網脈絡膜萎縮があった。左眼底には周辺部の2か所に大きな滲出斑があり,眼超音波検査でのその高さは最大約2.5mmであった。以後2か月間,右眼の所見には変化がなく,左眼の滲出性病変は萎縮化した。初診から3か月後に歩行障害が生じ,CTで右前頭葉に径3.5 cm大の腫瘍が発見された。生検で中枢神経系の悪性リンパ腫であるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断され,アポトーシスを伴っていた。化学療法で4か月後に脳腫瘍は消退した。初診から1年後の現在,両眼とも網脈絡膜萎縮の状態が続いている。

結論:本症例で左眼の網脈絡膜の滲出性病変が自然消退して萎縮化した理由として,アポトーシスの関与が推定される。

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要約 目的:硝子体手術を行った外傷性黄斑円孔3例3眼の報告。

症例:3例はすべて男性で,年齢はそれぞれ,12歳,19歳,22歳であった。外傷の原因は,1例は自転車荷台用のゴム紐先端の金属による左眼の打撲,他の2例は軟式野球の自打球による打撲であった。

所見と経過:初診時の患眼の視力は,それぞれ0.08,手動弁,0.3であり,それぞれ受傷眼に黄斑円孔があった。それぞれ受傷から14週,10日,24日後に硝子体手術を行った。1例では円孔周囲の内境界膜剝離,他の2例では内境界膜翻転を併用した。円孔は1例では閉鎖せず,他の2例では閉鎖した。最終視力は,それぞれ0.1,0.03,1.0であった。

結論:外傷性黄斑円孔に対する硝子体手術で,円孔周囲の内境界膜の剝離または翻転を行った。最終視力には,受傷の状況,円孔の大きさ,手術の時期,黄斑円孔に併発した網脈絡膜萎縮などが関係するので,これらを考慮した術式が望まれる。

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要約 目的:硝子体切除術および術後の抗菌薬硝子体内注射が奏効した内因性眼内炎の1例を経験したので報告する。

症例:肝膿瘍疑いのある69歳の男性で,左眼視力低下の主訴で当科を紹介受診した。左眼矯正視力は0.2であり,硝子体混濁および網膜下膿瘍を認め,肝膿瘍由来の内因性眼内炎が疑われた。翌日,眼内炎の増悪を認め,硝子体切除術を施行した。網膜下膿瘍の穿刺と排膿は行わず,水置換で手術を終了した。血液培養でKlebsiella pneumoniaeが検出され,術翌日より4日間セフタジジムの硝子体内注射を行った。6か月後には左眼矯正視力は1.2に改善した。

結論:眼内炎発症後早期に硝子体手術を施行し,術後に抗菌薬硝子体内注射を行ったことで,良好な治療後視力を得ることができた。

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要約 目的:イデベノンの大量投与を行ったレーベル遺伝性神経症の1例の報告。

症例:51歳男性が2週間前からの右眼の視力障害で受診した。

所見と経過:矯正視力は右0.04,左0.5であり,光干渉断層計で,両眼に視神経乳頭の耳側と下方の乳頭周囲網膜神経線維層の肥厚,右眼に神経線維層と神経節細胞層の菲薄化があった。ミトコンドリア遺伝子変異検査で11778変異があり,レーベル遺伝性神経症と診断した。コエンザイムQ10の誘導体であるイデベノンの大量投与を6か月間行い,その6か月間の経過を追った。神経線維層と神経節細胞層は徐々に菲薄化し,矯正視力は左右眼とも0.02に低下した。ハンフリー視野はいったん増悪し,以後改善の傾向を示した。

結論:レーベル遺伝性神経症の診断と経過観察に,光干渉断層計による検査が有用であった。

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要約 目的:シングルピース眼内レンズ(IOL)における眼軸長別のパーソナルA定数(個別A定数)の間隔を0.5mmから1.0mmに変更してIOL度数計算を行い,術後屈折誤差の精度を検討した報告。

対象と方法:対象は過去16か月間に白内障手術を施行した101例171眼。IOLはNS-60YG(NIDEK),角膜曲率半径はTMS-5(TOMEY),眼軸長測定はOA-1000(TOMEY)のContactモード,度数計算式はSRK/T式を用いた。A定数は過去4年間の白内障手術で得られた眼軸長0.5mm間隔(0.5mm群)と1.0mm間隔(1.0mm群)の個別A定数を用いて同じIOL度数における予測屈折値を算出した。術後1か月に自覚屈折値を算出し,予測屈折値と比較検討した。

結果:術後1か月における屈折値誤差平均値(絶対値平均値)は0.5mm群が0.12±0.43D(0.36±0.27D),1.0mm群は0.10±0.43D(0.35±0.27D)で,両平均値ともに両群間に有意差はなかった。予測屈折値との誤差が小さい症例数の割合は0.5mm群27.5%(47眼),1.0mm群48.5%(83眼),両群同値24.0%(41眼)であった。眼軸長別では短・標準眼軸眼では1.0mm群が,長眼軸眼では0.5mm群のほうが予測値に近かった。

結論:1.0mm間隔で算出した個別A定数は0.5mm間隔のそれと屈折誤差精度が同じであった。このことは本方法が精度を落とさずに算出や度数計算をより簡便にできることを示している。

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要約 目的:黄斑前膜の剝離手術で,黄斑前膜と中心窩の癒着が強い症例に対して,中心窩直上の黄斑前膜を残した場合の手術結果の報告。

対象と方法:手術を行った黄斑前膜75眼を対象とした。黄斑前膜と中心窩の癒着が強い8眼では中心窩直上の前膜を残し,癒着が少ない67眼では中心窩直上の前膜も合わせて剝離した。5か月以上の経過を追い,術前後の視力と中心網膜厚(CRT)を検討した。視力はlogMARとして評価した。

結果:術後の最高視力は,中心窩の前膜を残した8眼では−0.02±0.07,前膜を剝離した67眼では0.04±0.19であり,いずれも術前よりも有意に改善した。術後の最高CRTは,前膜を剝離した67眼では360.5±63.6μmであり,術前よりも有意に改善した。前膜を残した8眼では,術前後で有意差はなかったが,8眼中5眼ではCRTが減少し,正常値に近づいた。

結論:黄斑前膜と中心窩の癒着が強い症例での膜剝離手術で,中心窩直上の黄斑前膜を残しても,視力が有意に改善した。

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要約 目的:眼精疲労に対する三リン酸二ナトリウム(ATP-2Na)内服の効果の報告。

対象と方法:眼精疲労を訴える患者40例を対象とした。男性5例,女性35例で,年齢は25〜87歳,平均62.5歳である。全例に,ATP-2Na 200〜300mg/日を3か月間投与し,投与前,1か月後,3か月後の眼精疲労とそれに伴う全身症状と精神症状を調査した。効果の判定には,visual analog scale(VAS)を用いた。

結果:1か月間服用を継続した31例では,眼精疲労,全身症状,精神症状とも有意に改善した(p<0.005)。さらに継続して3か月間服用した26例でも,同様に有意に改善した(p<0.005)。服用1か月時に来院した33例で,副作用として下痢2例,悪心1例があり,服用中止で副作用は消失した。

結論:ATP-2Naの内服で,比較的早期に眼精疲労が軽減し,これに伴う全身症状と精神症状にも効果のある可能性がある。

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要約 目的:緑内障に対する選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)の既往がリパスジル点眼の眼圧下降効果に与える影響の報告。

対象と方法:通院加療中の開放隅角緑内障24例35眼を対象とした。男性18眼,女性17眼で,年齢は68.9±9.8歳である。点眼スコアは3.9±0.7であった。全員にリパスジルの追加点眼を開始した。18眼にはSLTの既往があり,17眼にはなかった。

結果:SLT既往群では,リパスジル点眼追加前の眼圧は15.1±4.6mmHgで,6か月後の眼圧は13.8±4.5mmHgであり,有意差はなかった(p=0.12)。SLT非既往群では,リパスジル点眼追加前の眼圧は17.8±5.7mmHgで,6か月後の眼圧は14.8±3.6mmHgであり,有意に下降した(p<0.01)。眼圧下降率は,SLT群と非SLT群の間に有意差はなかった。眼圧下降率が10%以上の有効例は,SLT群で11眼(61.1%),非SLT群で10眼(58.8%)であり,両群間に有意差はなかった。

結論:SLTの既往眼では,リパスジル点眼による眼圧下降効果が低かった。

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要約 目的:加齢黄斑変性(AMD)に伴う黄斑下血腫に対するt-PAの網膜下注入と硝子体ガス置換を併用した血腫移動術の効果を検討する。

対象と方法:対象は,AMDに伴う黄斑下血腫に対し,t-PAの網膜下注入と硝子体ガス置換による硝子体手術を施行した15例15眼である。硝子体切除後に38G網膜下注入針を用いてt-PA約0.1mlを黄斑下血腫部位に直接注入した後,硝子体ガス置換を行った。

結果:15眼中13眼(87%)で黄斑下血腫は良好に中心窩から移動し,視力と中心網膜厚は有意に改善した。

結論:AMDに伴う黄斑下血腫に対するt-PAの網膜下注入と硝子体ガス置換を併用した血腫移動術は有効である。

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要約 目的:乳癌の脈絡膜転移による網膜全剝離に対する硝子体手術の経過の報告。

症例:63歳女性が左眼の視力低下で紹介受診した。1年前から右乳房に腫瘤があり,皮膚が潰瘍化した。2か月前から左乳房に硬結が生じた。1か月前に乳腺外科を受診し,両側の進行性乳癌と診断され,全身転移を伴っていた。

所見と経過:矯正視力は右1.0,左0.07で,左眼に裂孔不明の胞状の網膜剝離があった。硝子体手術を行い,術中に脈絡膜腫瘍のあることが判明したので,シリコーンオイルタンポナーデを行い,術後にホルモン療法を実施した。4か月後に腫瘍性隆起は消失し,0.6の視力を得た。2年後の現在まで再発はない。

結論:転移性脈絡膜腫瘍に続発した網膜全剝離に対し硝子体手術を行い,良好な結果を得た。術前診断では,画像を含め慎重な検討が必要であった。

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要約 目的:点眼時間の変更で眼圧下降が得られた不均衡症候群の1例の報告。

症例:開放隅角緑内障がある65歳男性が副腎腫瘍の摘出を受け,23年前から週3回の午前中に血液透析を受けていた。透析の直後に左眼の霧視と疼痛が生じて受診した。眼圧はそれまで右22mmHg,左15mmHgで安定していた。

所見と経過:矯正視力は左右眼とも1.0で,眼圧は右28mmHg,左55mmHgであった。その2日後にも同様な発作があった。透析に付随した不均衡症候群と判断し,緑内障に対する点眼を透析直後に変更した。それ以降,透析日の左眼圧は10mmHgで安定した。

結論:房水量が増加する透析直後に点眼をすることで,眼圧下降が得られた。不均衡症候群での眼圧上昇は,透析中の血漿浸透圧勾配により血液から眼内に水の流入が生じる可能性がある。

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要約 目的:乳頭腫脹が顕性化する前から経過を観察し,薬物治療後にその所見が軽快した特発性頭蓋内圧亢進症の1例の報告。

症例:15歳女性が頭痛の精査のため脳神経内科から紹介受診した。2年前から左眼に中心暗点があり,視神経炎と診断された。拍動性頭痛が生じ,慢性化した状態にあった。父と姉に頭痛,妹に頭痛とアトピー性皮膚炎があった。

所見と経過:矯正視力は右0.2,左0.3で,乳頭腫脹はなかった。髄液の成分と圧は正常範囲にあった。MRIを含む全身検査で異常はなかった。21歳になってから両眼の乳頭が急激に腫脹し,左右眼とも視力が0.1以下になった。髄液圧の亢進があり,特発性頭蓋内圧亢進症と診断された。肥満に対する食事療法とアセタゾラミド内服を行い,乳頭腫脹は軽快し,右0.07,左0.15の矯正視力を得た。

結論:本症例では,原因不明の頭痛が発症してから8年後に乳頭腫脹が顕性化し,特発性頭蓋内圧亢進症と診断された。

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)のレーザー治療前後における硝子体中高輝度反射病巣(VHRF)の経時的変化の検討。

対象と方法:2012年6月〜2016年3月の間に国際医療研究センター病院眼科を受診し,蛍光眼底造影検査にて局所DMEと診断された36例58眼を対象とし,VHRFを修飾する可能性のある症例,糖尿病網膜症以外の網膜疾患および炎症性疾患の合併例を除外した。除外基準に該当しなかった2例3眼について,治療前後に光干渉断層計によるVHRFの増減を測定した。

結果:3眼全例においてVHRFはDMEの増悪とともに増加し,レーザー治療後に減少した。

結論:VHRFはDMEにおける病勢の視標となる可能性がある。

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要約 目的:近視に対する放射状角膜切開術の20年後に,鈍的外傷による重篤な眼球破裂が生じた症例の報告。

症例:41歳男性が自宅で転倒し,右眼の打撲後に視力障害を自覚して受診した。20年前に近視に対する放射状角膜切開術を他医で受けていた。

所見と経過:裸眼視力は右光覚弁,左眼1.0であった。右眼の角膜に放射状の切開創が8本あり,うち2,4,8時方向の切開創が離開し,その一部から硝子体が脱出していた。前房は消失し,水晶体はなかった。左眼にも放射状角膜切開術の術創があった。切開は角膜厚の90%を超え,ほとんどデスメ膜に達していた。左眼角膜内皮細胞の密度は2,662/mm2であった。右眼の角膜創を縫合したが,硝子体出血のため,最終視力は光覚弁であった。

結論:放射状角膜切開術の既往がある眼では,長期経過後であっても,軽度な外傷を契機に角膜創が離開することがある。

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要約 目的:翼状片に対して増殖組織を除去せず,頭部を移動させて有茎結膜弁移植とする無切除Z型切開回転術による手術成績の報告。

対象と方法:本研究は後ろ向き観察研究である。術後6か月以上経過観察できた翼状片30例33眼を対象とした。内訳は初発例29例32眼,再発例1例1眼,年齢は平均72.6歳,手術後観察期間は平均31.8か月であった。手術は全例において単一術者により施行された。

結果:全例で創口は良好な結膜弁にて被覆されていた。再発は2眼(6.1%)でみられたが,いずれも軽微な再発であり再手術は要していない。

結論:無切除Z型切開回転術は翼状片に対して低侵襲かつ再発率の低い有用な術式であると考えられた。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

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 本SIGは,眼光学領域の研究成果発表の場を増やし,本領域の最新の知識を眼科臨床医に啓蒙することを目的とし,日本眼光学学会のメンバーが中心となって企画するものである。

 眼球光学系を正確に評価し,それに基づいて治療戦略を立てることは,眼科医療の基本である。眼疾患の治療によって良好な視機能を獲得するためには,眼表面から視覚中枢に至るまでの機能の正確な評価が必要である。近年,波面センサーや光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)などの眼光学機器が臨床応用されてから,新しい診断法や疾患概念・治療へのアプローチが生まれた。これら眼光学領域の正しい知識をアップデートすることは,少子・高齢社会におけるquality of visionの追求という社会的な背景と相まって,眼科医の重要課題といえる。

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 症例は24歳,女性。10歳時に1型糖尿病と診断。以後,内科にて長期インシュリン治療が行われていたが,眼科診療は自己判断にて3年前に中断。糖尿病コントロール不良下での非計画的妊娠による悪阻で,加療中の産婦人科より当科へ紹介受診。初診時の視力は右0.7(1.2×−0.5D()cyl−1.25D 180°),左0.7(1.5×−1.0D()cyl−1.0D 180°)。眼底所見より増殖糖尿病網膜症と診断。妊娠2か月のため,安全性を考慮し蛍光眼底造影検査は施行せず,無灌流領域・新生血管の評価にはOCT angiographyを用いた。下記の方法で取得したパノラマOCT angiographyにて両眼に4象限にわたる無灌流領域と新生血管が確認できたため,汎網膜光凝固を施行し,現在は経過観察中である。

 撮影にはZEISS社製CIRRUSTM HD-OCT Model 5000を用いた。十分な散瞳を確認後,内部固視灯にて9方向,さらに周辺を外部固視灯にて可能な限り広域に撮影。網膜全層6×6mm画像を12枚抽出し,マニュアルで合成しパノラマOCT angiography mapを作成した。周辺部撮影の際は固視微動などでアーチファクトが混入することが多いが,本症例は若年のため中間透光体に混濁がなく,固視良好で広範囲にわたり鮮明な画像の取得が可能であった。

連載 今月の話題

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 硝子体手術の進歩や抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬の導入により,近年の網膜疾患の治療成績は飛躍的に向上している。そして現在,網膜疾患の治療評価の指標は視力と光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)での網膜形態である。しかし,視力とOCT所見が問題ないレベルにあるにもかかわらず,視力以外での視機能面での不満を愁訴とする患者が増えている。治療の最終目標は患者の視覚の質(quality of vision:QOV)を改善し,quality of life(QOL)を向上させることにある。したがって,われわれはもっと視力以外のQOVに目を向けなければならない。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第16回

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今月の症例

【患者】77歳,男性

【主訴】右眼圧のコントロール目的

【現病歴】70歳頃,近医で両眼の緑内障を指摘された。左眼は線維柱帯切除術により眼圧は安定した。右眼は点眼にて経過観察していたが,徐々に眼圧コントロール不良となり,治療方針のコンサルト目的で当科を紹介受診した。

【全身疾患】認知症

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第17回

サルコイドーシス 内村 英子
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疾患の概要

 サルコイドーシスは眼,肺,心臓,皮膚などの多臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を形成する疾患である。診断基準は2006年に日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会による診断基準が改訂されているが,2015年1月に新たな難病法が施行され,重症度分類と合わせて2015年1月に厚生労働省の診断基準も新しく確定された。診断は全身いずれかの臓器で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が陽性である組織診断群と,全身検査所見を2項目以上満たし,かつ2臓器以上に特徴的な臨床所見を認める臨床診断群に分けて診断される。眼病変の臨床所見は表1に示すように6項目あり,2項目以上有する場合にサルコイドーシスの眼病変が強く示唆される。

 眼病変は両眼性に慢性に経過し,肉芽腫性の汎ぶどう膜炎を生じることが多い。眼における病態は肉芽腫性血管炎である。眼底では網膜血管周囲炎が主に静脈を主体に生じ,血管周囲には血管周囲結節を認めることもある。血管炎は眼底周辺部に生じることが多く,ろう様網脈絡膜滲出斑は特に眼底下方にみられることが多い。フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)では,主に静脈に生じる肉芽腫性の網膜血管周囲炎,血管閉塞,囊胞様黄斑浮腫,視神経炎などの病変の有無や,炎症の活動性の評価を行う。

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要約 目的:網脈絡膜疾患に対するフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)と光干渉断層血管撮影(OCTA)の臨床的有用性の比較。

対象と方法:4施設の共同研究として,3種類の眼底疾患のいずれかがある同一患者にFAとOCTAを行い,病変検出率,検査時間,副作用を検討した。91例109眼が本研究の対象になった。男性51例,女性40例で,年齢は38〜90歳,平均69.8±10.3歳である。内訳は糖尿病網膜症43眼,網膜静脈分枝閉塞症33眼,滲出型加齢黄斑変性(AMD)33眼である。

結果:FAとOCTAによる検出率は,糖尿病網膜症の毛細血管についてはそれぞれ100%と97.4%,無灌流については63.7%と100%,網膜静脈分枝閉塞症での無灌流については81.0%と100%,AMDでの脈絡膜新生血管については87.9%と96.8%であった。検査時間はFAよりもOCTAが有意に短く(p<0.001),副作用はFAでは5例に生じ,OCTAでは皆無であった。

結論:FAとOCTAによる病変検出率はほぼ同等であった。検査時間はFAよりもOCTAが有意に短く,副作用はOCTAでは皆無であった。

海外留学 不安とFUN・第17回

UCLAでの留学生活・3 鹿嶋 友敬
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日々の仕事

 3月号で述べたようにUCLA Stein Eye InstituteのInternational Fellowship Programでは,国際フェローに対してカリフォルニア州の特別ライセンスが与えられる。しかし,このライセンスは完全なものではないため,米国の医師の指導が必要であり,単独で手術を行ったり処方をしたりすることはできない。このため日々の仕事は教授について手術や処置を学び,患者へのムンテラに参加するということになる。つまり,日本の研修医が行うようなことが日々の仕事であった。

 クリニックでは新規患者の既往歴を聴取して電子カルテに記載し,さまざまな検査を行い,教授にブリーフィングを行うのである。患者の数も多く,自分の拙い英語では伝えられることが限られていたため苦労した。ネイティブである国内フェロー(日本でいう後期研修医)の2人や自分の前任・後任の国際フェローは英語に堪能であったため,それほどの苦労はなかったように見受けられた。

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要約 目的:角膜の混濁が強く,前房と隅角の観察が十分に行えず,初診時の診断に難渋した若年性黄色肉芽腫の症例の報告。

症例:生後8か月の女児が左眼の結膜充血と角膜混濁で紹介受診した。右眼は隅角の所見を含め,眼科的に正常であった。左眼は角膜の浮腫と混濁が強く,詳細な観察が困難であった。小児緑内障の疑いで,複数の眼圧下降薬を点眼し,角膜浮腫は軽快した。2週間後の再診時に前房出血と前房内の炎症所見があり,続発緑内障の可能性を考えたが,眼内に腫瘍性病変はなかった。同時期に背部に皮疹が生じ,生検で若年性黄色肉芽腫と診断され,これに続発した緑内障と判断した。

結論:角膜の混濁が強く,診断に苦慮した乳児の緑内障が,若年性黄色肉芽腫に続発して生じたことが判明した。

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 私が専門医をめざし臨床で修練をしていた時代,コンパクトにその領域の知識や情報をまとめてくれた本がどれだけ欲しかったことか。今でもそういう要望を持つ研修医やレジデントは多い。これまでその課題解決を目標に多くの本が出版されてきたが,満足するものがほとんどなかったのが現実である。

 『がん診療レジデントマニュアル』の初版は1997年にさかのぼり,以来20年,国立がん研究センターの若手医師・レジデントが,実際に自分たちにとって役に立つ,欲しい・知りたい情報を徹底的に書き込んで作ってきた。幸いこれまで非常に高い評価を得ている。がん診療に関わる情報はこの間,指数関数的に増え,膨大なものとなった。このたび出版された第7版は,そのような状況にありながら,がん診療の基本—インフォームドコンセントや臨床試験,がん薬物療法の考え方から,各がんの診療に必須の医学知識や情報,診断・治療法,薬剤情報を網羅し,しかもコンパクトである。確かにこれほどよくまとまった本はない。

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 眼科医として経験を積んでくると,自分が初期研修医だったころから現在に至るまでの30数年間の眼科医療の進歩を感慨深く反芻できるようになる反面,自分があまり専門として関わってこなかった領域の知識は年々疎くなってしまっているのに愕然とすることがある。特に,私のように大学病院で紹介患者の診療を主に行っていると,自分の専門領域に関係なくありとあらゆる種類の眼疾患に曲がりなりにも対応することを余儀なくされるような状況となり,患者を目の前にしてその都度当該疾患の専門家の意見を聴きたくなることは日常茶飯事である。そのような時に役立つ第一級の座右の友とも言うべき著作が,このたび上梓された「今日の眼疾患治療指針 第3版」である。

 これは2007年の第2版の刊行から9年を経て,さらにこの間に急速に新しくなった眼科学の進歩を取り入れてバージョンアップされた,言わば現代の眼科学の粋を結集した書物と言える内容になっている。この第3版では眼科の各分野を網羅的に632の項目に整理して,各項目に当代の専門の執筆者を迎え,さらに各執筆者が現時点で想定される最高の知識をご自身の経験をまじえて過不足なく記載されたことが窺える。特に網羅的であることが重要で,この本に書かれていないことはよほどまれなことであるという判断もできる。しかも各項目とも疾患概念から診断の要点,さらに治療法と系統立って記載されているので筋道立てて理解しやすい。加えてカラー写真や図表をふんだんに使用して視覚的な理解にも配慮されており,忙しい臨床医にとっては大変嬉しい内容として仕上がっている。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 誤植
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 昆虫のなかで,群を抜いて嫌われているのはゴキブリだと思います。黒くてギラギラしていて,眼が黒く無表情であることなど,理由はいろいろありますが,なによりも蚊と蝿が身近にいなくなったことが嫌われる大きな原因のようです。

 昆虫だけでなく,嫌われる対象をムシ一般に広げるなら,ゲジゲジで代表される多足類もそうでしょうか。ゲジゲジには「蚰蜒」という漢字があり,いかにもナメクジのような汚い感じがします。ただし,これと似たムカデ「蜈蚣,百足」やヤスデ「馬陸」は,地方によっては殺してはいけないことになっています。これは「客足がつく」とか「おあしが多い」とかの縁起をかつぐためです。

べらどんな 魚の白内障
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 「水族館にいる魚には白内障が多い」ことを,ずっと以前この欄に書いた。仙台で学会があったときの経験からである。

 たまたまこの話を思い出して,急に気になった。「なぜ?」という疑問からである。

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次号予告

あとがき 寺崎 浩子
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 青葉の季節となりました。ゴールデンウィークも明け,皆様忙しい診療に戻られていることかと存じます。『臨床眼科』5月号のご紹介をいたします。「今月の話題」は,「網膜疾患患者が本当に困っている見え方」です。タイトルは興味深く,また,大変重要な内容です。術前のインフォームドコンセントのみならず,より良質な手術をするための示唆に富む論文となっております。

 本号では,シリーズものの「蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス」で取り上げられたサルコイドーシス,学会原著での悪性リンパ腫,乳癌転移,猫ひっかき病など,目と全身とのかかわりについての論文が目に留まります。高齢社会に向かい,悪性腫瘍に関する話題はこれからも増えると思います。また,緑内障の罹患率も高まるでしょうし,「緑内障道場」で示されているように,認知症患者も増えていきますので,本原稿を読みながら考えを深めていただければ幸いです。表紙や「臨床報告Selected」では,話題のOCT angiographyが取り上げられ,最近の画像診断の進歩について知ることができます。どうぞ楽しんでお読みいただければと思います。

基本情報

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臨床眼科
71巻5号 (2017年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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