臨床眼科 71巻6号 (2017年6月)

特集 第70回日本臨床眼科学会講演集[4]

特別講演

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 今後の眼科診療は全身疾患をもつ高齢者の患者が増加し,加齢が危険因子となる。それらの治療には手術を含む外科的処置が必要である。そのため眼科手術を取り巻く環境は,安全・確実を求められることから多くのリスクマネジメントを必要とするようになった。本稿では,術者側のリスクとして手術中の針刺し・切創事故について,高齢者患者の手術時のリスクとして抗血栓薬使用患者と各種手術について,術後の満足度が得られないリスクとして周術期に発症するドライアイについて,また,術後感染のリスクを低減するために開発した新しいドレープ付き開瞼器について述べたい。

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要約 目的:緑内障に対する線維柱帯切除術後の毛様体脈絡膜剝離に関係する因子の報告。

対象と方法:この前向き研究は,過去20が月間に東京大学医学部附属病院で線維柱帯切除術を行った128例161眼のうち,十分な所見が得られた91例96眼を対象とした。内訳は,広義の原発開放隅角緑内障性58眼,原発性閉塞隅角緑内障5眼,落屑緑内障14眼,続発緑内障19眼である。毛様体脈絡膜剝離の有無は,手術の1か月後に前眼部光干渉断層計で評価し,年齢,眼圧,術後合併症などとの関連を検討した。

結果:毛様体脈絡膜剝離は19例19眼に生じ,その有無と,術前術後の眼圧との有意な相関はなかった。術後1か月以内に処置を必要とした浅前房の存在のみが,毛様体脈絡膜剝離の発症と有意に関連していた(オッズ比6.0,p=0.04)。

結論:線維柱帯切除術後の術後早期に生じる毛様体脈絡膜剝離には,術後の浅前房が関連していた。

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要約 目的:フィッシャー症候群3例の報告。

症例:それぞれ32歳の男性,36歳の男性,43歳の女性で,全例が上気道感染に続き複視が発症していた。全例に腱反射の低下があり,抗CQ1b抗体が陽性で,フィッシャー症候群と診断した。1例には運動失調と異常感覚,1例には嚥下障害と構音障害があった。1例には免疫グロブリン療法,他の1例にはステロイドパルス療法,1例は無治療で軽快した。ステロイド療法を行った例は1年4か月後に再発し,免疫グロブリン療法で寛解した。

結論:フィッシャー症候群の3例すべてに上気道感染があり,複視が続発し,抗CQ1b抗体が陽性であった。突発する複視の症例では,フィッシャー症候群の可能性を考え,先行感染の有無についての問診と,抗CQ1b抗体の検索が重要である。

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要約 目的:角結膜腫瘍切除術・冷凍凝固・マイトマイシンC併用療法が有効であった角結膜上皮内癌の報告。

症例:75歳,男性。左眼異物感自覚。初診時,耳側角膜表層混濁と球結膜の結節状隆起病変および流入血管を認めた。生検時の病理組織検査の結果,低悪性度の上皮内癌と診断。2週後球結膜腫瘍拡大切除術+角膜上皮掻爬術+輪部冷凍凝固術+0.04%マイトマイシンC(MMC)塗布を施行。病理組織検査結果は陰性であった。術翌日から0.04%MMC点眼(1日4回,3週間点眼)を1クール施行。1年6か月後も再発はなく経過良好である。

結論:結膜上皮内癌の治療には角結膜腫瘍切除術・冷凍凝固・MMCの3者併用療法が有効と思われた。

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要約 目的:眼部の帯状疱疹に眼球運動障害が併発した1症例の報告。

症例:66歳の男性が2週間前からの頭痛で脳神経外科を受診し,前額部の帯状疱疹と診断され,入院のうえアシクロビルなどでの治療を受けた。入院5日目に左眼に眼瞼下垂,眼球の外転位,内転障害が生じ,左の動眼神経麻痺が疑われた。その翌日に左眼の外転制限が生じた。MRIなどによる画像検査で頭蓋内に格別の異常はなく,眼部帯状疱疹による外眼筋麻痺と診断された。アシクロビルとプレドニゾロンの全身投与を行い,入院から11日後に眼瞼と眼球運動障害は消失した。以後7か月後の現在まで再発はない。

結論:眼部帯状疱疹に併発した眼瞼と眼球運動障害は,早期の診断と治療により,速やかに寛解した。

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要約 目的:未就学児での眼位と近見立体視を主とした両眼視機能の報告。

対象と方法:栃木県大田原市内の保育園と幼稚園に在籍する3〜6歳の1,597人を対象とした。眼位は交代遮蔽試験,近見時の立体視はTitmus stereo testで評価した。

結果:全体の2.3%に眼位異常があり,うち45.9%には眼科受診歴がなかった。正常範囲外にある近見時の立体視は,全体の4.4%にあり,うち42.6%では眼科的な異常所見はなかった。

結論:視力だけではなく,両眼視機能が発達段階にある未就学児では,両眼視機能検査を含めた健康診断が重要である。

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要約 目的:斑状網膜白濁を伴った乳頭血管炎4症例の臨床的特徴の報告。

症例:症例はいずれも片眼発症で,男性2例,女性2例であり,年齢は20〜41歳であった。視力はlogMARとして評価した。

所見と経過:罹患眼はすべて切迫型網膜中心静脈閉塞症の所見を呈し,斑状の網膜白濁は3眼では血管アーケードから後極側にあり,1眼では黄斑部の耳側にあった。2眼に毛様網膜動脈閉塞症の所見があり,うち1眼では網膜動脈分枝閉塞症が併発していた。相対的求心性瞳孔障害は2眼で陽性であった。中心暗点は3眼にあった。治療として前房穿刺が1例,血栓溶解療法が1例,ステロイドパルス療法が2例,抗血小板薬の内服が4例に行われた。平均視力は初診時に1.03,最終観察時に−0.01であった。

結論:若年者の乳頭血管炎は,斑状虚血性網膜白濁を伴う場合には,視力の予後が良いことを示す可能性がある。

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要約 目的:両眼性の隔壁を伴う漿液性網膜剝離(SRD)を呈し,眼底自発蛍光(FAF)で特徴的な所見が得られた急性リンパ性白血病(ALL)を報告する。

症例:21歳の男性が右眼の視力低下で紹介受診した。15年前にALLを発症し,4年前に再発で化学療法を受けている。

所見と経過:視力は右0.5,左1.2で,光干渉断層計(OCT)で,Vogt-小柳-原田病(VKH)に類似した両眼眼底に隔壁を伴うSRDがあり,FAFでは高輝度と低輝度の入り混じったごま塩状陰影がみられ,OCTではSRD,脈絡膜の肥厚,網膜色素上皮の不均一な肥厚がみられた。ALLの再々発と診断され,化学療法施行後にこれらの所見は改善した。

結論:ALLに合併したVKH類似の両眼性のSRDの1例を経験した。FAFは本症とVKHを鑑別する一助となりうる。

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要約 目的:受傷7日目の外傷性視神経症に対し視神経管開放術が有効であった1例の報告。

症例:39歳の男性が自転車走行中に乗用車と接触して転倒。頭蓋骨骨折による気脳症のため総合病院脳神経外科入院。受傷7日目に当科受診。初診時の左矯正視力0.01,左眼の相対的求心性瞳孔障害陽性,左眼瞼外方に受傷痕を認めた。左眼視野は鼻側周辺のみであった。頭部CTで左視神経管上壁陥凹を認め,同日内視鏡下経鼻的視神経管開放術を施行し,術翌日よりステロイドパルス療法を併用した。左眼の中心暗点は術翌日より消失した。治療開始後37日目に左視力1.0となった。

結論:受傷1週間が経過した外傷性視神経症に対して外科療法およびステロイド全身投与を行い良好な経過を得た。

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要約 目的:治療後のVogt-小柳-原田病(原田病)の再燃についての報告。

対象と方法:高知大学附属病院眼科で過去5年間に原田病と診断され初回治療を行い,半年以上の経過を追えた19例38眼を対象として,診療録の記録を点検した。全例が初期治療としてステロイドパルス療法を受け,その後プレドニゾロンを経口投与されていた。

結果:19例中8例(42%)に原田病の再燃があった。再燃の回数は1回から5回,平均2.1回であった。初回治療から初回の再燃までの期間は2〜32か月,平均8.8か月であった。これら8例中5例(60%)での再燃は6か月以内であり,プレドニゾロンの総投与量は,再燃のなかった群よりも有意に多かった(p<0.05)。全症例の治療後の視力は,治療前よりも有意に改善していたが,3回以上の再燃があった症例では,2回以下の症例よりも不良であった。

結論:3回以上の再燃があった原田病の症例では,視力の転帰が不良であった。

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要約 目的:摘出豚眼にチン小帯断裂を施したモデルを作製し,水晶体吸引時における水晶体囊形状を検討した。

対象と方法:摘出豚眼10例に対しカプセルジアテルミーを用いて虹彩を根部で切開して除去した後,部分的なチン小帯断裂を作製し,断裂部方向の水晶体を吸引した。断裂の範囲は68.1〜117.7°,平均87.9°であった。

結果:吸引中における突起部の内側面積に対する囊に被われずに露出した面積の割合は,断裂範囲が90°未満では7.2%,90°以上では12.8%であり,90°以上で有意に拡大した(p<0.0001)。

総論:本モデルは,水晶体囊の形状変化を定量化することができ,囊支持器具の効果の検討に応用できる可能性があり,有用と考えられた。

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要約 目的:眼瞼部に発生した神経鞘腫の報告。

症例:39歳の男性が左下眼瞼の腫瘤切除を希望して受診した。腫瘤は,隆起性腫瘤として左下眼瞼鼻側縁に認め,レッセフェールテクニックにて切除した。

所見:組織病理的には,周囲との境界明瞭な充実性腫瘍を認め,紡錘形細胞が不規則な方向に流れるように増生していた。S-100免疫染色にて強陽性を示し,神経鞘腫と診断した。術後12か月経過した現在,再発はない。

結論:眼瞼部に発生する腫瘍の鑑別診断として,神経鞘腫も念頭に置くべきである。

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要約 目的:小児に発症したVogt-小柳-原田病(原田病)の1症例の報告。

症例:12歳の女児が右眼視力低下,霧視を主訴に受診した。

所見:矯正視力は右0.15,左0.7であった。両眼前房に炎症細胞,右眼底に漿液性網膜剝離があった。メチルプレドニゾロン500mg/日の点滴投与3日間,プレドニゾロン40mg/日から内服漸減し,治療12日後には炎症および漿液性網膜剝離はほぼ消退し,右眼矯正視力は0.7に改善した。副作用はなく,炎症の再燃はなかった。

結論:小児の原田病に対し,ステロイド薬のミニパルス療法が有効であった。

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要約 目的:線維柱帯切開術(TLO)と線維柱帯切除術(TLE)が行われた後に眼圧コントロールが不良となり,トラベクトーム手術が行われた2症例の報告。

症例:1例は61歳の男性で,ぶどう膜炎に続発した右眼の緑内障に対し,5年前にTLO,4年前にTLEと眼内レンズ(IOL)挿入が行われた。他の1例は73歳の男性で,右眼の開放隅角緑内障に対し,8年前にTLOとIOL挿入,1年前にTLEが行われた。2例ともその後眼圧が上昇し,最大薬物療法でもコントロールが不良になった。再手術として,結膜と強膜切開を要せず,術野を選んで線維柱帯が切開できるトラベクトーム手術が行われた。合併症はなく,手術から6か月後の眼圧は,薬物療法下で17mmHg前後に下降した。

結論:TLOとTLEの既往があり,眼圧コントロールが不良になった2症例にトラベクトーム手術を行い,6か月後に眼圧下降が得られた。

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要約 目的:白内障手術後に黄斑症を合併した視神経乳頭乳頭小窩(ピット)の報告。

症例と所見:患者は67歳の女性,以前より左眼ピットと診断されていた。矯正視力は右眼1.2,左眼は0.9。左眼にEmery-Little分類Ⅱの白内障を認め白内障手術を施行した。術中合併症はなく終了したが,術後11日に左眼視力は0.7に低下,乳頭ピットから黄斑部にかけて網膜分離の拡大,黄斑分離,後部硝子体剝離を認めた。術後3か月間は黄斑症は増悪したが,その後は徐々に改善し,約1年で網膜所見は正常化した。

結論:ピットを有する症例では白内障手術を契機に後部硝子体剝離が形成され黄斑症を合併することがあり,事前の説明と同意を要する。

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要約 目的:視力障害で初発し,2週間後に死亡した髄膜癌腫症の1症例の報告。

症例:61歳の男性が3日前からの右眼視力低下で受診した。矯正視力は右手動弁,左0.4であった。右眼に相対的瞳孔求心路障害と耳側周辺のみを残す視野欠損があった。眼底には異常所見がなく,造影MRI検査で頭蓋内に異常所見がなかった。その翌日に両眼の視野障害が進行し,髄液に異型細胞が検出され,CTで肺腫瘤が発見された。以上から肺癌に続発した髄膜癌腫症が疑われたが,初診から16日後に死亡した。

結論:本症例での急速に進行した視力と視野障害は,肺癌に続発した髄膜癌腫症がその原因であったと推定される。

今月の表紙

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 症例は47歳,男性。数日前からの視力低下,頭痛,肩こりを自覚し当院を受診した。

 初診時視力は右0.7(1.2×−0.25D()cyl−0.75D),左0.2(1.0×+1.50D),眼圧は右17mmHg,左16mmHgであった。両眼に軽度前房内炎症と,検眼鏡で後極部に漿液性網膜剝離を認めた。光干渉断層計では脈絡膜肥厚,網膜色素上皮皺襞を認めた。フルオレセイン蛍光眼底造影で,中期には顆粒状蛍光漏出,後期には網膜下への蛍光色素貯留を認めたため,Vogt-小柳-原田病と診断した。ステロイドパルス療法,プレドニゾロン内服で軽快した。

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 手術関係の学会に行くと,今や「眼科医総白内障surgeon時代」または「眼科医総硝子体surgeon時代」が到来したかの印象がある。確かに手術器械や手術手技が劇的に進化し,これまでよりはるかに低侵襲で,短時間で確実に手術が終了する時代になっている。しかし,内眼手術はあくまで眼科手術の一部であり,いくら白内障手術や硝子体手術が短時間で終了できてもそれが全てではない。これからの眼科専門医は白内障手術や硝子体手術以外の分野で,もう一つのサブスペシャリティを持つ必要がある。その中で眼科医にとって大きな割合を占めるものは緑内障や眼表面疾患,メディカルレチナの分野であるが,患者側からのニーズの割にサブスペシャリティとして選ばれていないのが眼形成の分野である。高齢者になると加齢性眼瞼下垂や上眼瞼皮膚弛緩症は必発と言ってよいほど高率にみられる。また,涙器の異常や眼窩の異常は年齢を問わず出現してくる。しかもこれらの患者は眼科専門医なら当然診療ができるはずとの認識で,まず眼科医を受診する。これらの患者に対応するためにも,眼形成手術の対象,基本的な手術手技,専門医へ送る基準などを知っておくことは極めて重要である。

 本書は眼形成手術のそれぞれの分野のエキスパートが,豊富な臨床経験に基づいてさまざまな手術手技の解説を行うものであるが,まず総説と総論とで140ページを費やし「解剖」や「初診時にどう診てどう考えるか」「診断・治療に必要な検査」「形成手術概説」を「眼瞼」「眼窩」「涙道」それぞれについて解説している。もちろん対象患者が受診した際に,本書の「各論」を疾患ごとに読むのも一つの読み方であるが,ぜひ時間があるときには「総論」をお読みいただきたい。これを読むだけでも十分本書を購入された価値がある。

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 本書を一読して,一貫してまったくブレていないと思った点があって,それは「著者の目線が一定」であるという点だった。著者自身が序文で,「専門外の疾患の相談は大学時代の同級生が一番良いと感じませんか?」と投げ掛けてもいるように,評者が本書から「一定した目線」を感じたのは,読んでいて常に非眼科医の先生と患者さんのことを意識した記述である印象を強く受けたからだ。どこを読んでも,である。

 評者は500床以上の総合病院の総合内科に所属する医師である。その意味で,本書のタイトルにもある「ジェネラリスト」なのかもしれないが一般に総合内科医・総合診療医というのは,自分のことを「ジェネラリスト」と呼ぶのをはばかる。勘違いを生まないように言っておくと,読者対象は要するに「非眼科医」ということでよいと思う。「ジェネラリスト」である必要はないと感じた。

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要約 目的:高血圧治療薬の服用後に,急性近視と狭隅角が生じた症例の報告。

症例:46歳の男性が遠見視力低下で受診した。2日前に高血圧治療薬としてインダパミド1mgを内服し,その夕方に視力低下を自覚した。

所見と経過:視力は右0.15(1.2×−2.25D()cyl−0.5D 80°),左0.15(1.2×−2.75D()cyl−0.75D 110°)であり,水晶体の前方移動と虹彩前攣による狭隅角があった。前房深度は右1.977mm,左1.946mmであった。超音波生体顕微鏡(UBM)で毛様体上腔に液貯留があった。インダパミドの内服を中止し,3日後に視力は右1.0(1.2×−0.5D),左1.0(1.2×−0.5D()cyl−0.5D 115°)になり,近視と遠見視力が改善した。内服中止から2週間後の前房深度は,右2.490mm,左2.470mmであり,UBMによる検査で毛様体上腔の液貯留は消失していた。

結論:インダパミドは非チアジド系の利尿降圧薬であり,その内服によって,急性近視と狭隅角が生じた。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第17回

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今月の症例

【患者】65歳,男性

【主訴】両眼霧視

【現病歴】9年前に原発開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma:POAG)と診断された。無治療眼圧は20〜24mmHg,最大耐用量の点眼治療で16〜18mmHgであったが,経過中右眼に裂孔原性網膜剝離を生じ,1年前に硝子体手術と水晶体再建術の同時手術を受けている。数か月前より右の眼圧が28〜34mmHgと上昇,左眼は白内障が増強してきたため紹介され受診した。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第18回

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疾患の概要

 急性後部多発性斑状色素上皮症(acute posterior mutifocal placoid pigment epitheliopathy:APMPPE)は眼底後極部に網膜色素上皮レベルの黄白色斑状滲出斑が多発する疾患で,1968年にGass1)によって報告された。

 10〜30歳代の比較的若年者に発症することが多く,性差はないとされている。通常両眼性であり,急激な視力低下や視野障害をきたす。視力予後は良好で通常1〜3か月程度で自然回復し,再発はほとんどない。原因は不明であるが,しばしば感冒様症状が先行することがあり,誘因として何らかのウイルス感染の可能性が指摘されている。典型例では急性期に1/4〜1/2乳頭径大の境界不鮮明な黄白色斑が眼底後極部から赤道部にかけて散在性に多発する。これらの病巣は2〜3週間で不明瞭になり,ほとんど瘢痕を残さずに消失するが,軽度の網膜色素上皮萎縮を残す場合もある。軽度のぶどう膜炎,乳頭炎,網膜血管炎,漿液性網膜剝離を伴うこともある。

海外留学 不安とFUN・第18回

UCLAでの留学生活・4 鹿嶋 友敬
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ウェットラボ

 米国では新鮮な(といっても冷凍の)遺体の入手が可能である。冷凍(後解凍)の遺体はホルマリン固定の遺体と違って,実物に近い感覚での組織の操作が可能である。米国ではシステムとしてある程度のお金を支払えばそれを使える環境にあり,このことは眼形成のトレーニングにかなり大きなアドバンテージとなる。つまり眼窩の手術のような非常に限られた症例しかない分野については,遺体を使用したトレーニングを積むことで,患者に過度な負担を強いることを減らすことができる。

 解剖に使える遺体の頭部は,日本円で大体15万円程度で入手できるため,Stein Eye Instituteでは“Orbital Course”や“Aesthetic Course”と称してそれぞれ2年に1度遺体を使った解剖とその手技のコース実習を用意している。留学中にその両方を経験できたのは,運が良かったとしかいいようがない。これらのCourseは有料で,日本円で20万円程度であるが,眼窩手術を行う医師は受講することをお勧めしたい。世界トップレベルの英知に触れられる稀な機会であるからである。また,フェイスリフトや下眼瞼の脂肪ヘルニアの治し方を学ぶことができるので,これから美容手術を習得したいドクターにもお勧めである。

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要約 目的:ブリモニジン点眼液0.1%(アイファガン®点眼液0.1%)の市販後の眼圧下降効果,副作用,点眼継続率の中間報告。

対象と方法:本研究は2012年に開始した前向き調査であり,ブリモニジン点眼液0.1%で加療した緑内障または高眼圧症を対象とした。435施設に配布した調査票4,663冊の記述を基にした。安全性と投与継続率は2,883例について検討し,内訳は男性45.3%,女性54.7%で,平均年齢は68.2±13.3歳である。病型は,原発開放隅角緑内障1,239例,正常眼圧緑内障1,213例,原発閉塞隅角緑内障100例,高眼圧症122例,続発緑内障163例,その他46例である。眼圧は点眼を12か月間継続した1,992眼を対象として評価した。

結果:生命表法による12か月の投与継続率は83.2±0.8%で,副作用は8.8%に報告され,アレルギー性結膜炎2.1%が主要な項目であった。平均眼圧は,投与開始時に16.0±4.5mmHg,最終観察時に13.6±3.8mmHgであり,有意差があった(p<0.0001,t検定)。

結論:緑内障に対するブリモニジン点眼液0.1%で,12か月以上の点眼期間中,有意な眼圧下降が得られた。12か月の時点での投与継続率は83%と良好であった。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 矯正
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 日本眼科学会は明治31年(1898)に発足しました。日本では解剖学会の次に古いそうです。ところが「眼科学そのもの」は,かなり歴史が浅いようです。

 整形外科学のorthopedicsは,フランス語のorthopédieがまず造語され,そのままの形で英語に入りました。Paris大学にその講座ができたのは1741年とされています。

べらどんな 本の活字
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 新聞の文字が大きくなってきた。1ページの大きさは,A2が標準であるが,新聞それぞれで微妙な工夫をしている。

 まず大きく違うのが,1ページに何段をとるかである。朝日と日本経済(日経)を例にとると,それぞれ12段と15段であり,格段に朝日のほうがゆったりしている。これを逆にいうと,一段の高さが,朝日の100に対し,80になる。

学会・研究会 ご案内

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アンケート用紙

次号予告

あとがき 鈴木 康之
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 第121回日本眼科学会が桜満開のなか,大盛況のうちに終了しました。特別講演,評議員会指名講演をはじめとして,力の入ったプログラムが盛りだくさんで大変勉強になるとともに多くの刺激を頂くことができました。その後も国内外のさまざまな学会が続いていますが,やはり春の日本眼科学会と秋の日本臨床眼科学会は特別であることを再確認いたしました。

 今号の「臨床眼科」は先日行われた第70回日本臨床眼科学会講演集の第4弾で,多くの原著論文が掲載されているとともに久留米大学教授の山川良治先生が発表された特別講演「眼科手術のリスクマネジメント」の内容を読むことができます。手術というのは個々の症例におけるバリエーションが多く,なかなかしっかりしたエビデンスが得られにくい分野であり,さらに周術期の合併症や,その対策などを検討するためには,詳細なデータを取ることが必要になります。そのため,しっかりした手術記録はもちろんのこと,手術前後の患者の全身状態や様子を記録し,術中のモニター記録などを含めた膨大なデータを解析しなければなりません。つい,術者は手術がうまくいけばそれでよいと満足してしまいがちではありますが,その時,その時の対応だけではなく,将来の手術環境の改善に向けたデータや工夫の積み重ねが大事であることが強く印象づけられた講演でした。その他の原著論文と合わせ,是非参考になさってください。

基本情報

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臨床眼科
71巻6号 (2017年6月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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